アーカイブ - 2009年 9月 - book

9月 8日

1. 米国の図書館史に関する研究動向

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東京大学大学院 教育学研究科  三浦 太郎(みうら たろう)

 米国図書館史研究の第一人者ウィーガンド(Wayne A. Wiegand)フロリダ州立大学教授は、1999年、19世紀末以降の米国図書館学研究の動向をまとめたうえで、この分野の弱点として、研究範囲が図書館という「自分たちにだけ通用する土俵」に閉じており、権力と知識の結びつきに切りこむ批判理論や、図書を読む人びとの視座に立つ読書研究など理論的・学際的研究と隔絶している点を批判した(1)

 日本で米国図書館思想研究をリードする川崎良孝・京都大学教授も2005年、ヴァンスリック(Abigail A.

はしがき

第4章 米国の図書館に関する研究動向(はしがき)

 本章では、米国の図書館に関する日本国内の研究動向を見ていく。米国の図書館を実践モデルとして掲げてきたわが国では、館種やテーマを問わず米国図書館にかかわる多くの研究が行われてきた。本章では文献レビューの形で、日本におけるアメリカ図書館に関する研究動向を紹介する。

 実践に焦点を当てた研究が多くを占めるなかにあって、図書館史に関しては、米国の図書館の理念的基盤を扱う基本文献の翻訳が精力的に行われてきた。「図書館史に関する研究文献レビュー」では、翻訳された研究業績を中心に、米国における図書館史研究の動向が示されている。米国ではマイノリティ、メディア史、文化の政治的側面を視野に入れた図書館史研究が活発に行われており、図書館史は過ぎ去った過去を記述するものではなく、現在の実践と対峙しつつ参照すべき拠り所として捉えられている。

 「図書館における電子情報に関する研究文献レビュー」では、米国の大学図書館における電子的学術情報サービスの動向を紹介している。実践に直結するこの領域についてはタイムラグをおかず、米国の様々な動向が我が国に伝えられている。

はしがき

第3章 社会的な論点と図書館(はしがき)

 図書館は民主主義社会の基盤であるとの認識は図書館界のみならず、アメリカ社会にも深く浸透している。したがって、アメリカ社会で議論の対象となるテーマは、すなわち図書館活動のテーマとなる。

 移民の国アメリカには、現在でも多くの人々が流入し続けている。言語、文化の多様性はアメリカという国を発展させる原動力であり、同時にアキレス腱でもある。連邦政府が医療保険や年金制度を法律により保障していない状況を見ると、自分の生活は自分で守るという個人中心の社会であることがよくわかる。したがって、自分で生活情報を入手し、判断し暮らしていく社会となる。そこに図書館の情報提供源としての意義が見出せる。

はしがき

第2章 米国の一般的な図書館のすがた(はしがき)

 本章では、アメリカの公共図書館・学校図書館・大学図書館の実際のサービスをいくつか事例として紹介しているが、その際、小規模な図書館を中心に選んでいる。今回、小さな図書館をあえて選んだのには、次の理由がある。それは、大規模な図書館の活動については、すでに日本でも紹介されているケースが多いことである。それに対し、小規模な図書館のそれぞれの活動については、あまり知られていない。しかし、日本国内にも、小規模な図書館は多く、大規模な図書館に比べ、予算・スペース・スタッフ・資料、いずれをとっても不足気味であり、たいていが悪戦苦闘している。また、厳しい財政状態や図書館に対する周囲の無理解の中で、図書館の存続そのものが危ぶまれるような状態に追い込まれている自治体や教育機関もある。そのため、米国で工夫を凝らしながら活発に活動している小規模・中規模図書館の事例紹介は、その知恵が、日本国内の図書館にとって、参考になる可能性が高いと考えられる。

 もちろん、米国と日本では、文化的・社会的背景も、財源確保のシステムも、法制度も違うので、単純には比べられない。しかし、図書館の本質的な機能は同じである。現在、日本国内で各館種の図書館がさまざまな課題に直面している。

はしがき

第1章 米国の図書館の概況(はしがき)

 本章においては、アメリカ合衆国の図書館界とそれを構成するALAなどの関係団体、各館種の図書館の沿革と現況、図書館サービスと活動について、その全体像を多面的に描き出そうとした。図書館はいま、図書や雑誌といった伝統的な紙媒体資料を中心とした資料やそこで確認できる情報をライブラリアンを通じて提供する実在的な図書館(physical libraries)から、時空を超えるネットワークを通じてデジタル・コンテンツへのアクセスを提供する仮想的な図書館(virtual libraries)への過渡的な「ハイブリッド・ライブラリー」の姿をとっている。『数値で見る米国の図書館』は、このハイブリッド・ライブラリーの現実を、関係する年鑑やハンドブック、連邦政府のホームページなどを渉猟し、それらを具体的な数字で示すことに努めた。

 図書館にとどまらず、資本主義社会において一定の社会的な機能の発揮を期待される施設は、そこに配置されその職務を遂行する「ヒト」と、その人の日常的業務の展開に不可欠な「モノ」、そしてそれらの人を雇用し物を維持・調達するための「カネ」を必要とする。ヒト、モノ、カネといった資源を合理的に割り当てる役割をになうのが法と制度である。しかし、法と制度を小手先でいじってみても現実が大きく変化するわけではない。

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