E1404 - 米国統治時代の沖縄関係資料の現地収集及びウェブ公開の意義

カレントアウェアネス-E

No.233 2013.03.07

 

 E1404

米国統治時代の沖縄関係資料の現地収集及びウェブ公開の意義

 

 沖縄県公文書館は,2013年1月31日,「米国収集資料全文デジタル・データ」のウェブ閲覧システムを稼働させた。第一弾として,「国務省一般記録群」及び「陸軍参謀本部記録群」,「海軍法務総監室記録群」,「極東軍,連合国総司令部並びに国連軍記録群」,「国防長官室記録群」,「陸軍長官室記録群」から1,559簿冊のデジタル・データ(PDF)をダウンロードできるようにしている。

 当館は,NARA(米国国立公文書館)や大統領図書館で所蔵されている,沖縄戦及び米国統治時代の沖縄関係資料を,現地に専門員を置き,10年間(1997~2006年)かけて収集してきた。紙資料については,紙やマイクロフィルム撮影での複写も行ってきたが,今回公開分については,NARAにデジタル・スキャナーを持ち込んで原本を撮影し,TIFF形式で保存するという方法を用いた。

 全文デジタル・データのウェブでの公開に至った動機の1つは,公平なサービスの実現である。沖縄県には49もの有人島があるため,情報格差が生じやすい。その対策の一つとして県は,「沖縄21世紀ビジョン」で次のような将来像を描いている。「距離と時間を克服する情報通信技術の活用は,島しょが有する課題の克服に役立つと同時に,沖縄の地理的特性を活かし,自立的発展を支える有効なツールとなることから,沖縄全域においてユビキタスネットワーク社会を実現する」。当館は,このビジョンに沿って公平に情報を提供することを目指し,デジタル・アーカイブズを推進してきた。そこでは,写真や動画のようなビジュアルな資料に限らず,琉球政府公報や沖縄県公報,立法院会議録といった重要な文書のデジタル画像がウェブで閲覧できる環境を整備してきている。

 今回,全文デジタル・データ公開の嚆矢として米国統治時代の行政文書を優先的に選んだのは,公開を急ぎたい事情があるからである。それは,この時代に生きた人がまだ多く存命しており,今ならば,かれらによる歴史の検証が可能であるということである。

 また,沖縄の独自性を出すということも,この時代を選んだ理由である。米国による統治は,本土では1952年のサンフランシスコ平和条約発効で終えたが,沖縄ではそれ以降も1972年まで続いた。今後も,同時代に作成された文書の公開を積極的に進めていきたいと考えている。その対象となる主な文書は,「琉球政府文書」と「USCAR文書」である。

 県の貴重な財産である「琉球政府文書」については,パイロット事業として制作したデジタル・データを2月5日にウェブで公開したが,その数は,同文書の総数16万簿冊のうちまだ39簿冊である。また,「USCAR文書」については,全簿冊をデジタル・データ化する事業が1月に始まったばかりである。USCAR(琉球列島米国民政府)とは,司法・立法・行政の全般にわたり,琉球政府に対して強大な影響力をふるった米国政府の現地出先機関である。

 「USCAR文書」と「琉球政府文書」の全文デジタル・データを公開することは大きな意味を持つ。なぜなら,統治した側(米国)と統治された側(琉球)の両組織の資料を手軽に利用できる環境を作ることが,同時代の全体像の把握を容易にするからである。この両文書の公開コンテンツ量が大幅に増えれば,沖縄研究のみならず,日本戦後史の研究も飛躍的に発展するであろう。

 とはいえ,個人情報が含まれている可能性のある戦後の文書を,ウェブという情報伝達能力の極めて高い手段で積極的に公開するには,高いハードルを超えねばならない。また,システムの開発や維持に専門知識と多大な費用が必要になるというのも,ハードルを高くする原因となる。

 それでも公開を進めていくためには,まず,素早く正確に個人情報を含んだ文書を特定する方法を確立する必要がある。現在のところ,この作業を集中的に行う担当者を置きノウハウを作ることを考えている。事例を多く知ることにより個人情報か否かの判断能力が向上し,作業に取り組む心理的負担が低下するようになると期待している。

 また,閲覧システムの構築については,専門のシステム会社に委託せず,自前で行うことにした。その他,既存の所蔵資料目録データベースを活用することで,新規ソフトの購入費用なども不要とした。さらに,後に公開を控える資料群を考慮し,ITの専門知識のない職員でも,簡易なマニュアル操作によりコンテンツの追加や削除などの編集ができるように設計した。

 現在,両文書のウェブ公開の需要については調査中で,この場を借りて意見や要望を広く募りたい。多くの声が集まることを期待している。なお,能動的に声を聞く試みもすでに行っている。元琉球政府行政官の作家・大城立裕氏とのインタビューを参考にされたい。

(沖縄県公文書館・堀川輝之)
(沖縄県公文書館・本田祥子)

Ref:
http://www.archives.pref.okinawa.jp/publication/2013/02/pdf-web.html
http://www.pref.okinawa.jp/21vision/archives2/okinawa21_201004.pdf
http://www.archives.pref.okinawa.jp/collection/2013/03/post-458.html
http://www.archives.pref.okinawa.jp/publication/2012/12/uscar.html
http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/9141