E1432 - 2013年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

カレントアウェアネス-E

No.237 2013.05.23

 

 E1432

2013年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

 

 国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC)(CA1664CA1733参照)の総会及びワーキンググループ等関連会議(E1354等参照)が,スロベニア国立・大学図書館主催のもとリュブリャナにて,2013年4月22日から4月26日にかけて開催された。IIPC非加盟機関からの参加者も含め約100人が参加し,国立国会図書館(NDL)からは筆者が参加した。

 スロベニア国立・大学図書館長Snoj(Mateja Komel Snoj)氏のスピーチで総会が始まった。続いてIIPC議長である北テキサス大学のハートマン(Cathy Hartman)氏から総会のテーマが「これからのIIPC」(How can we plan for the future?)であることが発表された。午前中はIIPC加盟機関による状況報告が行われた。NDLからは,WARPのリニューアル,NDL東日本大震災アーカイブ,オンライン資料収集制度について紹介した。午後はIIPC設立当時を知るメンバーによるIIPC10周年パネルディスカッションが行われ,これまでの10年間に取り組んできた課題について議論がなされた。規模の異なる組織間での連携の重要性や,IIPCの意義を世界に広めることの困難さ等が意見に挙げられた。続いて,ハートマン氏とフランス国立図書館のイリエン(Gildas Illien)氏によりIIPCが今後目指すべき方向性について,これまでのワーキンググループ単位でのプロジェクト活動を継続すべきかどうか,また今後のメンバー間のコミュニケーションをどうすべきか等,いくつかの問題が提示され,参加者は3グループに分かれ,それらについて議論を行った。

 4月23日は,前日の議論の結果について各グループが発表を行った。クローラーである“Heritrix”やクロールしたウェブサイトを表示するツール“Wayback”のメンテナンス継続と開発ロードマップの公開,ウェブアーキビストの教育,ウェブアーカイブに関するイベントの開催やウェブアーカイブを実施していない国への支援といったアウトリーチ活動の重要性,標準指標を用いて各国のウェブアーカイブの情報を共有する必要性などがIIPCの今後の方向性として挙げられた。これらの意見は今後とりまとめられる予定である。

 4月24日には「収集」「保存」「提供」の各ワーキンググループが開催された。NDLが参加する「提供」ワーキンググループでは,フランス国立視聴覚研究所(INA)やカリフォルニア大学図書館等の参加機関から状況報告等が行われた。NDLからは,WARP新システムの詳細等について報告した。報告後,オンライン資料の書誌メタデータ収集方法について質問があり,各国における関心の高さがうかがえた。

 4月25日から26日にかけては,オープンセッションが行われた。25日は「ウェブアーカイブの学術利用」と題して,各国の事例発表が行われた。午前中は,研究目的で使われているシステムの事例や,ウェブアーカイブを使う際の課題,研究者へのアンケート調査の結果等の発表があった。午後は,各国のウェブアーカイブのリサーチツールについての紹介が行われた。その中の一つオランダの“WebART”プロジェクトでは,研究利用のためのツールを備えたウェブアーカイブを開発している。アーカイブ量はそれほど多くはないが,限られた資源の中でリンク解析等の様々な研究が可能とのことである。しかし“WebART”には課題も多く,何がアーカイブされているのかはっきりしない点や検索システムにより結果に差異が出てくる点などが挙げられていた。翌26日は,ワークショップが行われ,筆者は「未来のウェブ」に参加した。ウェブにおけるユーザ体験やアプリケーションの保存,スタンフォード大学のLOCKSSプロジェクトにおけるオンライン刊行物に対する書誌メタデータの作成,ウェブの収集・保存・提供の各段階におけるデータマイニング例等について紹介があり,議論が行われた。

 IIPCは10周年を迎え加盟機関は44へと達し,小さな組織から世界規模の組織へと成長しつつある。初期の頃はツールの開発が主な活動であったが,組織の拡大に伴い加盟機関間の情報共有が重要になっているように感じた。例えば,各国での法制度の違いにより,アーカイブする対象やアーカイブの公開範囲が異なっているが,そういった情報は加盟機関同士ではすぐには分からないのが現状である。これからのIIPCの活動により情報共有が進むことが望まれる。

 次回のIIPC総会は2014年5月にフランス・パリで開催される予定である。

(関西館電子図書館課・志村努)

Ref:
http://netpreserve.org/general-assembly/2013/overview
http://ws-dl.blogspot.jp/2013/05/2013-04-22-iipc-ga-2013.html
http://warp.da.ndl.go.jp/
http://kn.ndl.go.jp/
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/online_data.html
http://staff.science.uva.nl/~kamps/webart/
http://www.lockss.org/
http://netpreserve.org/resources/information-and-documentation-statistics-and-quality-indicators-web-archiving
CA1664
CA1733
E1354