E1776 - 東南アジア資料の共有に関する国際ワークショップ<報告>

カレントアウェアネス-E

No.299 2016.03.03

 

 E1776

東南アジア資料の共有に関する国際ワークショップ<報告>

 

 2016年2月19日,京都大学東南アジア研究所の主催で国際ワークショップ「東南アジア地域研究情報資源の共有をめざして―いま,ライブラリアンから伝えたいこと―」が開催された。同研究所の設立50周年を記念して開催されたもので,東南アジア地域研究情報,すなわち東南アジアで出版される図書や逐次刊行物等の共有にかかる課題を洗い出し,その解決に向けた方向性を探る,というのが開催の趣旨である。

 ワークショップは,セッション1「多言語書誌目録による情報共有をめざして」,セッション2「多様な媒体による共同保存・利用への途」及び総合討論の3部構成であった。セッション1(司会:京都大学東南アジア研究所・大野美紀子)では,東南アジア諸国における書誌情報の提供・共有の現状と,日本における多言語書誌目録による情報共有の取組について報告が行われた。東南アジア諸国については,それぞれの国において国際連携に積極的な機関からのもので,社会科学通信院(べトナム)のLe Thi Lan氏,ヤンゴン大学図書館情報学科(ミャンマー)のNi Win Zaw氏,国立農林業研究所政策センター(ラオス)のManoluck Bounsihalath氏,王立農業大学図書館(カンボジア)のYun Hak氏,タマサート大学図書館(タイ)のSivaporn Uthaisa氏による報告があった。日本の状況については,加藤さつき氏(東京外国語大学附属図書館)から「目録データの共有と多言語対応―日本の現状と東南アジア地域研究資料の課題―」,木谷公哉氏(京都大学東南アジア研究所)から「小規模多言語図書データベース構築の構想紹介―東南アジア逐次刊行物総合目録データベースを通じて―」と題する報告があった。加藤氏からは,既存の図書館のシステムでは多言語対応が依然として不十分であること,京都大学東南アジア研究所を中心に開発した東南アジア逐次刊行物総合目録データベースに,国内の図書館に加えインドシナ三国(ベトナム,ラオス,カンボジア)の図書館の所蔵情報も登録する計画であること,木谷氏の報告では,同データベースのインターフェースはインドシナ三国の言語にも対応済であり,今後,タイ語,ビルマ語にも対応していく方針であること,将来的には国立国会図書館サーチ,CiNii Books等の連携先となることも視野に入っていることなどが紹介された。

 セッション2(司会:小島浩之・東京大学大学院経済学研究科)では,村井友子氏(ジェトロ・アジア経済研究所図書館)から「地域研究情報資源としての新聞の保存と利用:アジア経済研究所の事例から」,石川一樹氏(東京大学附属図書館)から「東京大学における学内共同保存・共同利用への取り組み」,石岡克俊氏(慶應義塾大学大学院法務研究科)から「図書資料の共同保存・共同利用の法的論点」と題する報告が行われ,図書館における収蔵スペース狭隘化の問題や共同保存について具体的な取組が紹介されるとともに,リソースシェアリングにかかる著作権法上の論点の整理がなされた。

 総合討論では,セッション1,セッション2の各報告を受けて意見が交わされた。書誌情報・所蔵情報の共有については,日本国内では,アジア言語資料の書誌を作成できる人材の育成・確保という問題はもとより,システム面の言語対応の問題もあって書誌の作成が思うように進んでいない図書館が少なからず存在し,東南アジア地域研究情報の所蔵状況の把握には今なお課題があること,他方,東南アジア諸国では,総合目録の構築が途上であり,また,書誌コントロールが十分に行われていないといった課題を抱えている国が多いこと,そのため日本の経験,とりわけ総合目録データベースNACSIS-CATにかかる標準化の取組や研修事業が東南アジア諸国にとって参考になり得ること等が明らかになった。

 図書館資料の保存・共有については,商用データベースがほとんど存在しない地域であるため欧米資料の保存・共有とは状況が異なっていること,国内の図書館が所蔵している東南アジア地域研究情報資源の総量はどの程度か,現地語資料を活用した研究がさらに活発に行われるようになっていくための取組の必要性,そして千葉大学,お茶の水女子大学,横浜国立大学の三大学によるシェアードプリントが今後どのように推移し,また同種の取組が他の日本の図書館でも実施されるようになるかどうか等の論点について意見が交わされた。

関西館アジア情報課・渡邉斉志

 

Ref:
http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/databases/sealibdb/ws2015/
http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/info/db/sealib/?lang=ja
http://www.ocha.ac.jp/news/h260404.html
http://www.lib.ynu.ac.jp/hus/lib/11352/