E710 - 英国図書館の資料デジタル化プロジェクトの今

カレントアウェアネス-E

No.116 2007.10.31

 

 E710

英国図書館の資料デジタル化プロジェクトの今

 

 英国図書館(BL)は2005年6月に,2005年から2008年までの戦略『図書館を再定義する(Redefining the Library)』を公表し,デジタル情報資源の収集・保存・提供活動を強化していくことを明確にした(E349参照)。この戦略の実行については,マイクロソフト社の書籍デジタル化・検索サービス“Live Search Books”(E581参照)への参加など,その手法にも注目が集まっている。

 このような中,マイクロソフト社が開発に協力している貴重資料のオンライン・ギャラリー“Turning the Pages 2.0”が2007年1月にオープンしたことを記念し,BL・マイクロソフト社等がスポンサーとなって,デジタル化すべき「国の宝」を全国の公共図書館から募集するコンテストが開催され,その結果が2007年9月に発表された。応募のあった82件から,イングランドのドーセット州婦人会による第二次世界大戦の記録や,宗教改革期を生き延びたスコットランドのミサ典書など5件が選ばれた。これらはデジタル化されて,今後3年間“Turning the Pages 2.0”で公開されることになっている。

 また2007年10月には,英国情報システム合同委員会(JISC)と図書館向けレファレンスツールの大手出版社であるGale社と共同で,デジタル化した19世紀の新聞100万ページを提供するウェブサイトをスタートすることを発表した(E322CA1577参照)。このプロジェクトは英国の継続教育機関(FE)と高等教育機関(HE)をターゲットとしており,JISCからの助成金により,全てのFEとHEは無料でサービスを利用できるようになる。デジタル化の対象となったのは全国紙に加え,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドの地方紙等をあわせて46紙であるが,これにより現在まで歴史の陰に隠れてきた資料の存在が明らかになり,19世紀の研究に資するという。

 このような所蔵資料のデジタル化・保存・提供のほか,所蔵する豊富な雑誌のバックナンバーを利用して,出版社のバックナンバーデジタル化を代行するサービスも2007年1月より開始している(E590参照)。このサービスを利用することで,出版社はデジタル化の対象となる雑誌を収集するコストを節約できる上,BLの専門スタッフの技術を借りたデジタル化作業が可能になる。このサービスを利用した出版社の1つ,Emerald社は2007年9月,商学,経営学,図書館情報学,材料化学,工学分野の雑誌のバックナンバーのデジ タル化を完了したことを発表した。全120誌から5万件を超える論文がPDF形式でデジタル化され,古いものでは1800年代の雑誌も含まれているという。Emerald社は,今回作業を終えた資料を2008年初頭から提供する予定であると発表している。

 『図書館を再定義する』で掲げられたBLのミッションは,「人々が知識を高めて,人生を豊かにする手助けをすること(Helping people advance knowledge to enrich live)」である。資料のデジタル化はミッションを実現するための重要な手段の一つであるが,戦略の公表から2年,BLは着実に成果を積み上げている。

Ref:
http://www.bl.uk/news/2005/pressrelease20051104.html
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070103.html
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070813.html
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070905.html
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20071005.html
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20071022a.html
http://www.bl.uk/collections/britishnewspapers1800to1900.html
CA1577
E322
E349
E403
E581
E590