研究データ

学術雑誌の研究データポリシーの強度に影響を与える要因(文献紹介)

2020年10月13日、オープンアクセスジャーナルPeer Jが、”Data sharing policies of journals in life, health, and physical sciences indexed in Journal Citation Reports”と題した論文を公開しました。著者は韓国・梨花女子大学校のJihyun Kim氏ら5名です。

多くの学術雑誌は、データに関するポリシーを設けてきており、データ共有の実施、提出するデータの種類等が定められています。論文では、インパクトファクター、主題分野、ジャーナル出版者の種別、出版者の地理的位置等の要因が、データ共有ポリシーの強度にどのように関連しているかについて探られています。

対象となったジャーナルは、Web of Scienceの2017年版のJournal Citation Reportsの178の各カテゴリの各四分位数(Q1、Q2、Q3、Q4)のトップジャーナルです。このうち、生命科学、健康科学、物理科学の分野の700件が対象となりました。これらのジャーナルのWebサイトを著者が個別に閲覧することで、ジャーナルのデータ共有ポリシーを分類し、個々のジャーナルの特性を抽出しています。

Figshareで公開されたオープンな研究データの利用傾向に関する調査(文献紹介)

2020年10月4日付で、Sage社の刊行する情報科学分野の査読誌“Journal of Information Science”のオンライン速報版の論文として、“Do researchers use open research data? Exploring the relationships between usage trends and metadata quality across scientific disciplines from the Figshare case”が公開されています。

同論文では、オープンな研究データの利用率が低い要因としてしばしば指摘されるメタデータの品質との関連の実態を調査するために、研究データ公開プラットフォームFigshare上で公開されたデータの比較・検討が試みられました。著者らは、2019年10月から11月に取得したFigshare上の全21分野・約700万件のリソースのメタデータに対する体系的な品質評価等を実施し、その分析結果を報告しています。

分析の結果として、研究分野によらずオープンな研究データの利用には偏りがありごく少数のリソースが利用全体の大半を占めていることや、データの利用と評価ツールで測定したメタデータの品質との間に有意な相関関係が認められなかったことなどを報告しています。

文部科学省、提言「コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について」を公表:大学図書館及び多様な学術情報のデジタル化の推進等に言及

2020年9月30日付で、文部科学省のウェブサイトに、同省科学技術・学術審議会の学術分科会・情報委員会の提言「コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について」が公表されています。

この提言は、コロナ禍によって社会の在り方が変容し、その経験を踏まえた「コロナ新時代」を迎えつつあることを背景に、学術研究・情報科学技術が新時代の社会の負託に応えられるように、研究を継続するためのレジリエンスの確保、新しい研究様式への転換及び研究者の交流・連携の担保の政策的実現に関する、学術分科会と情報委員会の合同提言です。

新しい研究様式への転換のための振興方策に関する提言では、SINETなど国全体の一体的情報システム基盤及び大学等における情報システム基盤を整備・高度化すること、セキュアな研究データ基盤を構築すること、大学図書館及び多様な学術情報のデジタル化や著作権法の見直し・研究の遠隔化・スマート化などを通して研究環境のデジタル化を促進することに言及されています。

オープンな研究データの共有・利活用の促進要因と阻害要因に関する体系的な文献レビュー(文献紹介)

オープンアクセス(OA)の査読誌PLOS ONEに、2020年9月18日付けで、研究者によるオープンな研究データの共有・利活用の促進要因と阻害要因を扱った文献に対する体系的なレビューについて報告・分析した論文が掲載されています。

著者らは、主要な学術文献データベースや図書館情報学関係雑誌に収録され、2004年から2019年の期間に発表された、オープンな研究データの共有・利活用における促進要因と阻害要因の両方を扱った文献32件を選定し体系的なレビューの対象としました。レビューの結果は、「研究者の背景」「助成機関等から課せられた要件・公式な義務」「研究者個人に帰属する内発的な動機」「促進する条件」「データやその利活用等に対する信頼性」「期待される効果」「所属機関やコミュニティが及ぼす影響」「研究者自身に必要とされる作業」「研究者自身の経験と技能」「法規制」「データの特性」の11の観点に整理され、内容の分析・議論を行っています。

著者らはレビューの結果として、共有・利活用それぞれの促進要因・阻害要因と関連の深い観点を指摘した上で、これらの観点が特定の文脈や研究分野で重要であるかどうかを検証するためにはさらに研究が必要であることなどを結論として報告しています。

ドイツ医学中央図書館(ZB MED)、研究データ管理(RDM)・公正な研究実践における電子実験ノートの選定・導入・活用等に関するガイドを公開

2020年10月7日、ドイツ医学中央図書館(ZB MED)は、生命科学分野を対象とした電子実験ノート(Elektronische Laborbücher:Electronic Lab Notebook)に関するガイドの改訂更新版を公開したことを発表しました。

研究室での実験過程を電子的に記録する「電子実験ノート」を活用する研究機関が増加していますが、内容のモニタリングや研究データ管理(RDM)プロセスへの統合といった「電子実験ノート」に関する新たな課題が惹起しています。また、使いやすさ・機能・接続性・セキュリティなどについての多様なニーズに対応するため、「電子実験ノート」市場では様々な製品が提供される状況にあります。

ZB MEDはこのような「電子実験ノート」に関わる新たな課題を背景に、既存のガイドを更新し、RDMや公正な研究実践における選定・導入・活用等を案内するための改訂更新版を作成・公開しました。改訂更新版のガイドでは、法的枠組みに関する章の新設、ベストプラクティスの更新、詳細情報のリンクの更新や新規追加などが行われています。

ZB MEDが運営する生命科学分野のオープンアクセス(OA)出版プラットフォーム“PUBLISSO”上で、同ガイドの全文が公開されています。

3Dデータの共有と利活用等に関する調査(文献紹介)

2020年10月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries News ”(C&RL News)のVol.81, No.9に、3Dデータの管理に関する記事“New dimensions in data management: Understanding sharing and reuse practices for 3-D data”が掲載されました。

同記事は、12人の研究者に対するインタビュー結果をもとにまとめられたものです。

記事によると、回答者の50%が、3Dの技術を用いた研究について持続可能性、再生産性、ドキュメンテーションが課題であると感じています。また、多くの回答者が、データの所有権や著作権に関して懸念があると回答していたこと等が挙げられています。その他、回答者は、3Dモデルやそのデータの共有は研究成果を伝えるうえで重要であり、現在の支援体制が不十分であると捉えていることが述べられています。

結論の箇所では、3Dに関するデータ共有について、知的財産や著作権に関する情報発信等の図書館による支援が有効と思われること、デジタル化、メタデータの標準化をはじめとした図書館業務と関連した分野の支援が求められていることが述べられています。

英・オックスフォード大学出版局(OUP)、ポートフォリオ内の学術誌に新しい研究データポリシーを導入

英・オックスフォード大学出版局(OUP)は、2020年9月29日付けの発表において、ポートフォリオ内の290を超える学術誌にOUPの新しい研究データポリシーを導入したことを報告しています。

発表によれば、新しい研究データポリシーは2020年初めに正式に開始され、次の2点に重点が置かれています。

・発表された研究の基礎となる研究データの透明性向上のため、データ利用可能性ステートメントを含めること
・国際組織FORCE11(The Future of Research Communications and e-Scholarship)による「データ引用原則の共同宣言」(Joint Declaration of Data Citation Principles:JDDCP)へのOUPの支持を踏まえ、引用文献リストにデータセットの完全な引用を含めること

また、新しい研究データポリシーではマルチレベルのアプローチを採用したことも紹介されています。主題分野を超えた多様なニーズや既存の学問的慣行への対応として、データ利用可能性に関するポリシーに4つのレベルを設定しており、研究データの特性は学術分野間で大きく異なることから、各ジャーナルでは分野に応じたレベルのポリシーを導入しているとしています。

北米研究図書館協会(ARL)、研究データへの取組に関する推奨事項をまとめた報告書“Implementing Effective Data Practices”を公開

2020年9月25日、北米研究図書館協会(ARL)は、研究データへの取組に関する推奨事項をまとめた報告書“Implementing Effective Data Practices: Stakeholder Recommendations for Collaborative Research Support”の公開を発表しました。

同報告書は、ARL・カリフォルニア電子図書館(CDL)・米国大学協会(AAU)・公立ランドグラント大学協会(APLU)が2019年12月に開催した招待会議で得られた情報・洞察に基づいています。同会議は米国国立科学財団(NSF)の後援のもと行われ、(1)データセットに永続的識別子(PID)を使用する、(2)機械可読のデータ管理計画(maDMPs)を作成する、というNSFが推奨する研究データへの取組のためのガイドライン設計に焦点が当てられました。

同報告書では、研究者、学術・研究図書館、リサーチオフィス、ITスタッフ、学術出版社、ツール開発者、学会、助成機関といったステークホルダーに対し、NSFが推奨するこれらの取組を実装するに当たってのインセンティブと推奨事項等を個別に示しています。

カナダ・Portage、新型コロナウイルス感染症に関する研究データの管理を支援するための5つの手引きを公開

2020年9月30日、カナダ研究図書館協会(CARL)の研究データ管理(RDM)に関するプロジェクトPortageは、新型コロナウイルス感染症に関する研究データの管理を支援するための5つの手引きの公開を発表しました。2020年3月にPortage内で立ち上げられたCOVID-19ワーキンググループによる成果です。

これらの手引きは、研究データ同盟(RDA)が公開している、新型コロナウイルス感染症拡大下におけるデータ共有に関するガイドライン“RDA COVID-19 Guidelines and Recommendations”に沿った研究データ管理(RDM)の支援を目的として作成されました。各手引きの概要は次のとおりです。

・Guide to COVID-19 Rapid Response Data Sharing and Deposit for Canadian Researchers
2020年1月に英・ウェルカム・トラストのウェブサイト上で公開された共同声明“Sharing research data and findings relevant to the novel coronavirus (COVID-19) outbreak”に沿って、研究データの登録(deposit)準備を行う研究者に向けた手引き

新型コロナウイルス感染症に関する研究データのポータルサイト「COVID-19データポータルJAPAN」が公開される

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構、国立情報学研究所(NII)、国立遺伝学研究所の連名による2020年10月5日付けのプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症に関する研究データのポータルサイト「COVID-19データポータルJAPAN」の公開が発表されました。

「COVID-19データポータルJAPAN」は、国内外に散在する新型コロナウイルス感染症に関する研究データへ研究者が迅速にアクセスできるよう、NIIのオープンサイエンス基盤研究センター(RCOS)と国立遺伝学研究所の生命情報・ DDBJセンターが実施したオープンデータの調査・収集の成果に基づいています。欧州で公開されている“COVID-19 Data Portal”の枠組みに賛同する形で開始され、RCOSが国内の様々な機関と連携して構築しています。

遺伝子配列情報・タンパク質情報・疾患情報などの生命科学系の研究データ以外に、画像・文献、データ投稿のツールも含めたリソースへのアクセスも提供しており、今後もコンテンツの強化を継続するとしています。

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