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「電子書籍」の概念はあいまいである。したがって本研究調査にあたってはその産業的実態の把握に努めることとし、インタビュー調査、アンケート調査に重点を置いた。文献を中心とした研究とは異なり、実態にもとづいた日本における電子書籍の流通・利用・保存の現状を多面的に分析・検討しようとしたのである。
今回の調査を通じて明らかにできた事項は、以下の3点である。
電子書籍については出版社、コンテンツプロバイダー、携帯電話キャリアという紙の本とは違うステークホルダーの存在、PC、PDA(携帯情報端末)、読書専用端末(Σブック、LIBRIe)、携帯電話、スマートフォン(iPhone)、携帯型ゲーム機(ニンテンドーDS、PSP)などのデバイスの多様性、文字もの、コミック、写真集といったコンテンツ分野の特性、有償か無償か、ダウンロードか非ダウンロードかといったビジネスモデルの相違など、さまざまな位相が複雑に絡み合い、その解明は容易ではない。
また本研究でも取り上げた、電子書籍の個人利用の悉皆的データの欠如や、電子書籍の長期保存に対する意識の合意など、今後の課題として残されている。また海外における電子書籍の流通・利用・保存の事例についても、今後調査および比較、検討が必要になるであろう。
以下私見であるが、今回の調査対象の周辺に存在する、今後検討が必要になると思われる事項である。
本報告書を機にさらなる調査、分析、提言が行われることを望みたい。
この研究調査を終えるにあたって、まずインタビュー調査、アンケート調査に応じていただいた出版社、コンテンツプロバイダー、携帯電話キャリア、調査報告書刊行社の方々に心から感謝申し上げたい。
また本研究調査のために有益な情報や資料を収集・提供し、研究の方向性について共に議論を交わし、報告書の作成のために多大なご尽力をいただいた国立国会図書館関西館の村上浩介氏、上山卓也氏、堤恵氏と、財団法人関西情報・産業活性化センターの山岸隆男氏、牧野尚弘氏にお礼申し上げたい。
本報告書が、読者・利用者のために出版社、コンテンツプロバイダー、携帯電話キャリアと図書館が協力しあえる関係を構築していくひとつのきっかけになればと、心から願う次第である。(湯浅俊彦)
リンク
[1] http://current.ndl.go.jp/files/report/no11/lis_rr_11_rev_20090313-6._4.6.pdf
[2] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/3
[3] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/162
[4] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/29