英国下院の教育・雇用訓練特別委員会(Educationand Skills Committee,以下,「委員会」)(1)は,2002年6月『高等教育のための図書館資源』(2)と題する報告書(以下,「委員会報告書」)を発表した。
出版物の価格高騰,出版点数の増加,電子出版物やインターネットの普及など,学術情報をめぐる環境の変化を受けて,高等教育機関の教育・研究水準を維持するために,学術情報の提供において図書館が果たすべき役割と,その実現に必要な政策課題を明らかにし,政府に勧告することが委員会報告書の目的である。
委員会報告書の勧告の骨子は,(1)情報環境が急速に変貌している中で,英国の研究者に世界最高水準の情報資源の利用を保障していくために,研究図書館と3つの国立図書館,各々の所管官庁である教育・雇用訓練省(Department for Education and Skills : DfES)と文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport : DCMS),また高等教育財政審議会(Higher Education Funding Council : HEFC)(3)が連携協力を密にし,国家戦略を策定し実行すべきであること,特に全国電子研究図書館(National Electronic Research Library : NERL)を協同構築すること,(2)学術情報の流通における英国図書館(BL)の役割は重要であり,BLは蔵書のデジタル化を一層進めるとともに,商業出版社に独占されている学術論文の頒布機能をBLの電子図書館が担えるように必要な方策を講じること,の2点である。
この報告書の内容には,研究支援図書館グループ(Research Support Libraries Group : RSLG)の議論や一連の調査活動が強い影響を与えている。
1990年代以降の英国の学術図書館に大きな影響を与えてきたのが,フォレット・レポート(1993年)(4)とアンダーソン・レポート(1996年)(5)である。
フォレット・レポートは,3つのHEFCと北アイルランド教育省により設置された調査委員会の報告書であり,学生数と学術出版物の増加,情報技術の進展に対応した学術図書館のあり方を提示している。これを受けて,学術図書館の施設整備が進められるとともに,情報システム合同委員会(Joint Information Systems Committee : JISC)の主導のもと,学術情報ネットワークSuperJANETの整備や,多彩な電子図書館プログラム(eLib;CA1333 [1]参照)が展開されている(6)。
アンダーソン・レポートは,フォレット・レポートを踏まえ,国内における学術情報資源の偏在を解消し,必要とするあらゆる学術情報に研究者がアクセスできるよう,研究図書館と国立図書館,大規模公共図書館,専門図書館による,国レベル,地域レベルでのネットワーク形成の必要性を提言した。特に,収集・廃棄方針の全国的調整とOPACの横断検索の実現,電子情報資源の収集・保存を提唱した。
フォレット・レポートとアンダーソン・レポートの提言は,学術図書館界においては,その多くが実施に移されていったが,館種を超えた全国レベルの連携がなされるには至らなかった。
そこで,これを実現するために2001年6月,BL,スコットランド,ウェールズの各国立図書館,3つのHEFC,北アイルランド教育省により設置されたのがRSLGである(7)。RSLGの委員長はフォレット・レポートをとりまとめたブライアン・フォレット(Brian Follett)が務め,アンダーソン・レポートをとりまとめたマイケル・アンダーソン(Michael Anderson)も委員に名を連ねている。
RSLGは,英国の研究者が誰でも等しく利用できる世界最高水準の学術情報資源の整備を実現する国家戦略の策定を目的としており,とりわけ,アンダーソン・レポートで提唱されている収集・廃棄方針の全国的調整に基づいた分散型ナショナルコレクションの構築,館種を超えたオンライン総合目録の作成,全国に分散した電子情報資源への一元的アクセスを実現するNERLの構築等を進めていくことを目指している。RSLGの議論は委員会報告書の随所に反映されており,その提言をBLとHEFCが受け入れ実行することを期待する,と委員会報告書は述べている。
BLの活動の半分以上は高等教育・研究の支援に向けられており,BLは英国の高等教育・研究の水準の維持に不可欠の存在であるとして,委員会報告書はBLに関する勧告に紙幅を費やしている。
BLのブリンドリー(Lynne Brindley)館長は委員会で次のように資料収集予算の不足を陳述している。紙資料,電子出版物のいずれも出版点数が増大しており,またその価格上昇は平均的な物価上昇率を大幅に上回っていることから,現在の予算では収集水準を維持していくのは困難になっている。よって,蔵書のデジタル化の重要性は認めつつも,資料の購買力の維持を優先させるため,国から措置される予算はデジタル化経費には充当していない。
これを受けて,委員会報告書は,DfESが所管の異なるBLを直接に支援することは従来なかったが,今後はDCMSと協力して,高等教育機関のための研究資源に十分な資金が供給されるようにすべきであると勧告している。また,BLの蔵書のデジタル化の重要性を指摘し,DCMSがBLのデジタル化計画を支援し,予算配分に反映させるように勧告している。
一方,BLに対しては,現在の商業出版社による学術出版市場の独占の弊害に対応するために,それに代わる学術研究成果の頒布機能をBLの電子図書館に持たせることを勧告している。
委員会報告書について,英国図書館・情報専門家協会の機関誌Library + Information Updateは,BLは2002年初めから委員会に接触し,ロビー活動を展開した結果,新たな財源の獲得に成功したと報じている(8)。
2001年に発表した戦略計画において,BLは学術界へのサービスと連携強化を最大の目標に掲げており(CA1424 [2],1425 [3]参照),委員会への働きかけやRSLGへの関与はその戦略の一環である。このほかにも,イングランド高等教育財政審議会やLSE(London School of Economics)図書館との戦略的提携を次々に発表するなど,自らの生き残りを賭けて,着実に布石を打っている。
関西館事業部図書館協力課:竹内 秀樹(たけうち ひでき)
(1) 下院の特別委員会(select committee)の一つで,教育・雇用訓練省の財政支出,管理運営,政策等を審議するとともに,当該分野における比較的短期的な政策課題について,参考人から意見聴取し,下院に報告書を提出することが任務。
(2) House of Commons Education and Skills Committee. Library resources for higher education. The Stationery Office Limited, 2002, 17p. (online), available from < http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200102/cmselect/cmeduski/804/804.pdf [4] >, (accessed 2003-01-24).
(3) 国の高等教育補助金配分機関。イングランド,ウェールズ,スコットランドにそれぞれ設置されている。
(4) Joint Funding Council's Libraries Review Group. Report (The Follett Report). 1993. (online), available from < http://www.ukoln.ac.uk/services/papers/follett/report [5] >, (accessed 2003-01-24).
(5) Joint Funding Council's Library Review. Report of the Group on a National/Regional Strategy for Library Provision for Researchers (The Anderson Report). 1996. (online), available from < http://www.ukoln.ac.uk/services/elib/papers/other/anderson/ [6] >, (accessed 2003-01-24).
(6) 呑海沙織.英国における学術情報資源提供システム.情報の科学と技術.51(9),2001,484-494
(7) RSLG. "Welcome to the RSLG site". (online), available from < http://www.rslg.ac.uk/ [7] >, (accessed 2003-01-24).
(8) Give BL more - official. Library + Information Update. 1(6), 2002, 3.
竹内秀樹. 連携強化を図る英国の国立図書館と学術界. カレントアウェアネス. 2004, (275), p.2-3.
http://current.ndl.go.jp/ca1483 [8]
ドイツのドキュメントサプライサービスsubitoが1997年のサービス開始以来,順調に業績を伸ばしている。subitoは,1994年に連邦教育学術省と州の文部大臣会議の図書館共同事業体の提案によって発足したプロジェクトであり,すでに本誌でも1997年のサービス開始段階の状況について紹介している(CA1227 [12]参照)。その後5年ほどを経て,いくつかの点において状況の変化が見られるため,前回の記事との相違点を中心にsubitoの現状について述べることにしたい。
まず,事業の担い手の組織形態に変更があり,1999年12月に,連邦と州の手を離れ,subito共同事業体が組合組織として設立されることになった。連邦教育学術省は,最高6年の財政援助を保証しているが,それ以降,subito共同事業体は,自助努力によって経営を成り立たせていかなければならない。
サービスに関する変更点は以下のとおりである。参加館が,5年前の18館から26館に増加し,サービス提供機関が数的に増加しただけでなく,オーストリアの2館が参加するなど地域的にも広がりを持つようになった。サービスの内容も拡充し,5年前は雑誌論文複写のみのサービスであったが,現在では図書の貸出サービスと図書の部分複写のサービスも行っている(1999年9月からサービス開始)。またサービスの提供対象について,グループ分けの変更が行われた。5年前は,国内の非営利目的利用者(グループ1)と営利目的利用者・国外の利用者(グループ2)という区分であったが,現在は国内・国外の区別がなくなり,学生・大学職員・公法人の職員等(グループ1),企業の図書館・自営業者等の営利目的利用者(グループ2),個人(グループ3),図書館(グループ4)という区分になった。
前回の記事では出版者側とsubitoとの間で,著作権法の解釈をめぐって意見の相違があり,出版者側は,とりあえず試行段階としてドキュメント・デリバリー・サービスを認めることにしたという状況まで紹介した。その後,複製物の送付・送信の問題に関しては,司法による判断が下され,解釈問題に一定の解決がもたらされた。1999年1月の連邦最高裁判所の判決によれば,私的使用,学術目的使用などの著作権法第53条の要件を満たしている場合には複製物の送付・送信は認められる,ただしその場合には著作者に対して相当額の補償金を支払わなければならないとされたのである。この判決を受けて,連邦・州と著作権処理団体との間で包括契約が締結され,subitoは補償金を著作権処理団体VG Wortに支払うことになった。その結果,subitoの利用料金は2000年9月から値上げされている。現在の料金体系は,利用者グループ1の通常サービスの場合,1文書あたり,電子媒体4ユーロ,郵送6ユーロ,FAX7ユーロとなっており,利用者グループ3の通常サービスの場合は,電子媒体6.5ユーロ,郵送8ユーロ,FAX9ユーロとなっている。補償金を支払わなければならないのは個人に複製物を直接配送する場合のみであり,図書館を経由するサービス,すなわち,グループ4のサービス(ライブラリー・サービス)には影響しない。ライブラリー・サービスとは,図書館が利用者に代わって文献複写を依頼し,製品を受け取り,利用者に納品を行うサービスである。このサービスは通常サービスのみであり,料金は電子媒体で3ユーロ,郵送で5ユーロ,FAXで6ユーロである。グループ2と特急サービスの料金設定については,subito参加館の裁量に任されている。
利用件数は,年々拡大し,1998年には約10万件だったものが,2001年には約73万5千件にまで増加した。2001年の数字では,複写サービスのうち,92.5%が72時間以内に提供する通常サービス(2002年2月の平均処理時間は35時間)で,7.7%が24時間以内に提供する特急サービスである。提供手段別では,77%が電子メール,22.3%が郵送,0.3%がFAXである。
先に述べたように,数年先には連邦からの財政援助を得られなくなるため,subitoは採算性を確保するための努力を払わなければならなくなった。subitoは今後の事業拡大の柱として,以下のような戦略を立てている。一つはサービスの国際化であり,その一環として国際的に広く利用されている検索システムとの連携が模索されている。すでに2000年の12月には,オランダの書誌ユーティリティ・サービス機関であるPICAと協定を締結し,PICAの利用者はsubito参加館に文献を依頼することができるようになった。さらに今後は,OCLCとの提携も検討されているとのことである。また,国外の利用者のために,日本語を含む外国語によるPR用資料も作成され,subitoのホームページで参照できるようになっている。事業拡大戦略の二つめは,提供した文書の電子的な保存を認めるサービスの導入である。現在の法的な枠組みの範囲内では,電子的に伝送された文書はプリントアウトした後に消去しなければならないことになっている。これは,前回の記事においても検討課題とされていた事項であるが,今後subitoがどのようにこの問題を解決し,サービスを拡大していくのか,注目されるところである。
調査及び立法考査局政治議会課憲法室:山岡 規雄(やまおか のりお)
Ref.
subito. (online), available from < http://subito-doc.de [13] >, (accessed 2003-01-06).
subito - Lieferdienst der Bibliotheken. medizin - bibliothek - information. 2(2), 2002, 53-56. (online), available from < http://www.akh-wien.ac.at/agmb/mbi/2002_2/53-56subito.pdf [14] >, (accessed 2003-01-06).
寺倉憲一. ドイツの図書館における著作権問題−公共貸出権を中心に. 現代の図書館. 40(4), 2002, 232-238.
山岡規雄. ドイツのドキュメントサプライサービスsubitoの現在. カレントアウェアネス. 2003, (275), p.3-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1484 [15]
2002年6月,「国際標準書誌記述(単行書)(ISBD(M))」(以下,単行書(M)もしくは(M)と表記)が改訂されIFLANET上に電子版が掲載された(1)。続いて8月には,「逐次刊行物(S)」の改訂版である「逐次刊行物およびその他の継続資料(CR)」が冊子体で刊行され,電子版も2003年1月にIFLANET上に掲載された(2)。
ISBDは,国際図書館連盟(IFLA)によって制定された書誌レコードの記述部分を作成するための標準規則で,(M),(S)のほか,「非図書資料(NBM)」,「地図資料(CM)」,「楽譜(PM)」,「古典籍(A)」など種別ごとに制定されている。各ISBDを整合させるための枠組みを用意した「一般(G)」も存在する。各ISBD は,5〜10年ごとにISBD検討グループにより改訂され維持されてきた。
電子資料については,当初は(NBM)で取扱われていたが,1988年に「コンピュータ・ファイル(CF)」として独立した。しかし1990年代に入ると,目録環境が一変する。電子資料の激増,書誌情報のグローバル化,ネットワーク化,書誌的記録の共同利用が進み, ウェブOPACが普及した。そのため1997年に,(CF)は双方向性マルチメディアの出現,光学技術の進歩,インターネットおよびウェブ情報資源,電子資料の複製への対応を理由に名称も「電子資料(ER)」として改訂された(3)。ただし,ウェブサイト,データベース,電子ジャーナル等のように継続して刊行される性質(逐次性)の取扱いについては,課題として残されていた。
一方IFLAの目録分科会は,新たな環境における目録のあり方について研究するため「書誌的記録の機能要件に関するIFLA研究グループ」を立上げ,検討を開始した。その結果を盛り込むため,ISBDの改訂はしばらく留保されてきた。同グループの報告書である『書誌的記録の機能要件(FRBR)』(4)(CA1480 [18]参照)が1998年に刊行されると,各ISBDの検討グループが一斉に活動を再開した。目録分科会が,FRBRにおける全国書誌の基礎的レベルの要件とISBDの条項との一致を要請したためである。これまでISBDで必須とされていた多くのデータ要素は,選択的とされ目録作成機関の自由な判断に任されることになった。
(M)の新版においても,示されたデータ要素がすべて記述される必要はない。そのデータ要素が基本的に不可欠の場合,もしくは出版物の同定のために必要な場合や書誌や目録の利用者にとって重要とみなされる場合に「必須」とされる。後者の場合それぞれの特別な条件によるが,その運用を容易にするため特別なデータ要素については「選択」(optional)の指示がされている。
さらに,FRBRでは資料の物的形態よりも著作(Work)と表現形(Expression)を重視するとともに,伝統的な書誌情報を個別の情報ユニットに分割する方向が示されている(共著,文と挿絵等の個別記入)こと,またOPACやウェブ上の書誌情報の要件が提示されていることなど,ISBDに深い影響を与えずにはおかなかった(5)。
(S)の改訂については,この電子資料への対応とFRBRの適用という2つの問題が契機となっている。また国際標準逐次刊行物番号(ISSN)や『英米目録規則 第2版(AACR2)』も同じ状況におかれており,三者で相互に協調しながら同時並行的に改訂が進められてきた。
まず(S)の改訂内容について述べ,次いでそのような結論に至った検討過程を述べる(6) (7)。
近年はウェブサイト,データベースや加除式資料のように絶えず追補,更新され,その際分離されず全体として統合されるような更新資料(Integrating Resources)が増えている。更新の度に新規に書誌レコードを作成する必要のないものである。従来,図書館では資料を単行書と逐次刊行物に二分してきたが,更新資料には終期を予定せず継続的に刊行されるものと,終期を予定する資料もあり従来の二分法には納まりきらない。(CR)では,これを整理し,まず終期を予定する資料(Finite Resources)と終期を予定しない資料すなわち継続資料(Continuing Resources)に二分し,前者には従来の単行書と終期を予定する更新資料,後者には従来の逐次刊行物と終期を予定せず継続的に刊行される更新資料に分類する。その上で終期を予定する更新資料も継続資料とみなし,あらゆる種類の継続資料を取り扱うこととした。また,逐次的に刊行され終期の予定されるイベントのニュースレターや,逐次刊行物の復刻等もこの規則を適用することとした。そして従来の逐次刊行物に加えてタイトルを「逐次刊行物およびその他の継続資料」に変更している。
また,近年の軽微な改題の増加に対応し,新しい書誌レコードの作成に関する指示も改訂された。ISBD(S),ISSN,AACR2で考え方が異なっており,これまでカタロガー泣かせであった改題であるが,新規作成を減らすことで標準化し,データの交換,質の維持,コスト削減に資することをねらったものである。
(S)(1988年刊)を改訂する検討グループは1997年のIFLAコペンハーゲン大会の目録分科会の申合わせに基づき,1998年に設置された。委員長にI.ペアレント(カナダ国立図書館収集・書誌サービス部長),メンバーは主に目録分科会の委員であったが,他に逐次刊行物分科会の委員,ISSNネットワークとAACRの代表が加わった。少なくとも年に一回,IFLA大会とその後に会合をもつこととした。任務は,(1) FRBRの勧告およびISBD(ER)の反映,(2) 継続して刊行される電子出版物を考慮した逐次性の定義および理論の提示とその反映,(3) 書誌記述の初号優先および逐次刊行物の主たる情報源の考え方の再考,(4) データの識別に望まれる記述のエリアの考慮,(5) メタデータ標準の出現と遠隔電子資源へのアクセスの基礎レベルと記述の検討,(6) 最新例の用意,(7) 逐次刊行物の専門家の教示を考慮,(8) ISSNマニュアルとISSNネットワークが行っている電子出版物に対する実務を考慮することであった。
1998年8月のIFLAアムステルダム大会では,キータイトル,大幅な改題と軽微な改題,電子データベースやウェブサイトについて審議した。11月にコペンハーゲンで会合を持ち,(S)制定の目的,本タイトルとキータイトルの合併,(S)の範囲が論議され,逐次刊行物に加除式資料やデータベースなどを含めることが決定された。大幅な改題と軽微な改題についての提案があったが,ISSNおよびAACR側との協議が必要とされた。2000年1月に米国のテキサス州サンアントニオで会合を持ち,あらゆる継続出版物を範囲に含めることが決定された。頭字も(CR)とし(SOCR;Serials and Other Continuing Resources)は採択されなかった。
AACRは,「AACR改訂合同運営委員会(JSC)」が12章「逐次刊行物」の改訂の任にあたり(2002年9月に改訂版が刊行された。CA1480 [18]参照。),ISSNは「ISSNマニュアル作業部会」,国際センターと各国からのISSNセンター長会議で審議された。2000年11月に米国議会図書館(LC)に三者の代表が集まり調整した。この結果を検討グループに提出し,2001年春から,ドラフトをIFLANETに搭載し,世界各国の専門家たちからコメントをもらった。最終的にISBD(M)との一貫性を検証し,FRBRとの関係付けを行い,2002年6月17日,目録分科会および逐次刊行物分科会で承認された。
他の目録規則の動きとしては,ドイツのRAK(Regeln fuer die alphabetische Katalogisierung)の維持管理を担当している「標準化委員会(Standardisierungsausschuss)」(注)が今年末までの予定で国際標準(MARC21,AACR2)との調整を進めており,また最近は常設の「オンライン資源専門家グループ」を立上げ,継続資料等のためのRAKの改訂に着手している。
一方,書誌情報の共有化,ネットワーク化が進む中,逐次刊行物のタイトルの識別に関する標準化については,別途LCを中心にサブグループが設置され検討されてきた。国際標準逐次刊行物タイトル(ISST)が提唱され推進されている。ISSTは(S)およびISSNのキータイトル,AACR2の統一タイトルに代わる国際的な基準となるもので,データの国際交換や検索の際にISSN番号と並んで識別の手段となるものである。記録の安定性,効率性が保証されるだけでなく,ISSNレコードと国内レコードの統一も図られる。今回の改訂には,時期尚早ということで盛り込まれなかった。また,出版社および出版地をどう効率的に扱うか,版および版表示の検討,ISSTを改題の基準とするための最新号主義への復帰,(CR)の実際の適用において起こる状況や未来の技術的発展がもたらす影響をどのように取り込むかなどが将来の課題とされている。
現在改訂中の各ISBDも出揃い,今後その中から資料に適切なISBDが適用されることになるが,多様なメディアやオンライン情報資源に対応するにあたっては,各ISBDの垣根を越えて相互に参照しながら適用していくことになる。さらに言えば,OPACや書誌情報ネットワーク環境の中でFRBRの考え方を追求していくと,図書館の枠組みを越えた文書館,美術館等のもつ資料の目録レコードとの相互運用性について考えざるを得なくなる。一つの国際ドキュメント記述(ISDD)というような考え方もあるが,将来ISBDはどのような方向に向かうのだろうか。
書誌部:那須 雅煕(なす まさき)
(注)ドイツの代表的な図書館,学術振興会,オーストリア,スイスの代表等で構成され,フランクフルトのドイツ国立図書館の標準化オフィスに事務局を置く。
(1) IFLA. ISBD(M): International Standard Bibliographic Description for Monographic Publications. 2002 Revision. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s13/pubs/isbd_m0602.pdf [19] >, (accessed 2003-1-10).
(2) IFLA. ISBD(CR): International Standard Bibliographic Description for Serials and Other Continuing Resources. K.G.Saur, 2002, 112p. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s13/pubs/isbdcr-final.pdf [20] >, (accessed 2003-2-17).
(3) Byrum, John D. "The birth and re-birth of the ISBDs". 66th IFLA General Conference, Jerusalem, 2000-08. (online), available from < http://www.ifla.org/IV/ifla66/papers/118-164e.htm [21] >, (accessed 2003-2-17).
(4) IFLA. Functional Requirements for Bibliographic Records : Final Report. K.G. Saur, 1998, 136p. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s13/frbr/frbr.pdf [22] >, (accessed 2003-1-14).
(5) Le Boeuf, Patrick. "The impact of the FRBR model on the future revisions of the ISBDs". 67th IFLA General Conference, Boston, 2001-08. (online), available from < http://www.ifla.org/IV/ifla67/papers/095-152ae.pdf [23] >, (accessed 2003-2-17).
(6) Bunn, Paul V. "Bibliographic Standards for Serials : recent developments". 68th IFLA General Conference, Glasgow, 2002-08. (online), available from < http://www.ifla.org/IV/ifla68/papers/151-162e.pdf [24] >, (accessed 2003-2-17).
(7) Swanson, Edward. "Editing ISBD(CR) : approach, scope, definitions". 68th IFLA General Conference, Glasgow, 2002-08. (online), available from < http://www.ifla.org/IV/ifla68/papers/148-162e.pdf [25] >, (accessed 2003-2-17).
那須雅煕. ISBDの新たな展開−ISBD(M)と(CR)−. カレントアウェアネス. 2003, (275), p.4-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1485 [26]
2002年3月,米国情報標準化機構(National Information Standards Organization:NISO)は,デジタル録音図書(Digital Talking Book:DTB)(注1)に関する基準をNISO規格として承認した(ANSI/NISO Z39.86-2002, Specifications for the Digital Talking Book)。この基準は,DTBを含む電子ファイルのフォーマットと内容を定義し,DTBの再生装置の必要条件を設定するものである。国際標準規格DAISY(注2)2.02仕様をさらに進化させ,従来の音声や静止画像だけでなく,動画やビデオデータを含めたオープンなマルチメディア仕様となっている。ANSI/NISO Z39.86-2002は,NCX.xmlファイル(DTBの階層構造を示すためのxmlファイル。これにより本文のフレキシブルアクセスが可能となる)とSMIL2.0(W3Cが推奨するXMLに準拠したマルチメディア対応言語)ファイルからなり,より検索性に優れた構成となっている。事実上のDAISY3.0仕様と目されている。
また,米国議会図書館の視覚障害者および身体障害者のための全国図書館サービス(National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLS)は,2002年5月にDTB計画に関する進捗報告書を発表した。その内容は,2004年からは最新タイトルのデジタルフォーマットでの製作を開始すること,アナログからデジタルへの変換を2008年の4月までに完了させ,約2万タイトルの録音図書をデジタル形態で利用できるようにすることであった。
このように現在の米国では,DTBに対して国をあげて取り組もうとしている。しかし,世界的なレベルでのDTBの標準化の必要が討議され,開発が行われた当初は,米国は必ずしも国際的な流れに歩調を合わせていたわけではなかった。
視覚障害者のためのDTBの標準化が最初に討議されたのは,1986年のIFLA東京大会の専門家会議であった。1990年にはスウェーデンを中心にDTBシステムDAISYの開発がはじまった。1995年,トロントで開かれたIFLAの国際会議で,(1) 2年以内にDTBの標準化を図ることをIFLAの名前で宣言して各国が独自の方式でスタートすること,(2) 目標達成のために国際共同開発組織を発足させること,を確認した。このとき米国は,国際標準化に対しては消極的であった。
1996年5月にDAISYコンソーシアムが結成されるものの,米国は参加を拒否している。そのためDAISYコンソーシアムは,日本,スウェーデン,英国,スイス,オランダ,スペインの6か国で発足した。
1997年3月,DAISYコンソーシアムはロサンゼルスで開催された「技術と障害」という国際会議においてDAISYを紹介し,米国のRecording for the Blind(RFB)(当時の名称。現在は,Recording for the Blind & Dyslexic:RFB&D)と意見交換の場を持った。これがきっかけとなり,8月には米国もDAISYコンソーシアムに加入した。(会員としてRFB&Dが,準会員としてアメリカ盲人協会(American Foundation for the Blind:AFB)等が参加している。)米国の参加決定は,折しもトロント会議で決定した標準化の期限の直前であった。この米国の参加を受けて,1997年IFLAコペンハーゲン大会においてDAISYがDTBの国際標準仕様であることが確認された。
これに先立ち1996年12月に,NLSは,NISOを通じてDTBの標準化に着手することを発表していた。NISOがDTBの標準化について定期的に討議するようになったのは1997年5月からである。NLSのムーディ(Michael M. Moodie)氏がワーキンググループの議長を務めた。ワーキンググループには,NLSのほかに,AFBやRFB&Dなど,視覚障害者に関わる21機関の代表が参加した。このワーキンググループにはDAISYコンソーシアムの方から参加を表明し,代表を派遣した。このことも米国がDAISYコンソーシアムに参加するきっかけになったと考えられる。
1998年には,NLSは,DTBに関する将来計画を発表し,研究開発の目標として,点字雑誌や録音雑誌の評価のほかに,DTBの基準に関する議論を展開すること,NLSの録音資料にデジタル録音技術を応用すること,利用者にDTBを提供する方法を調査することを挙げている。また,次世代録音図書システムを計画し,実行するために必要な20の課題を明らかにした。
この将来計画に基づいて5年間かけて,標準規格の作成,マネジメントツールの作成,デジタルコレクションの構築,再生機器の設計が行われた。その結果,ANSI/NISO Z39.86-2002が承認され,NLSはDTBの製作に対する年度目標を立てることができた。今後は,これに従い実際の業務をどのように進めていくのかが注目される。
日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科:深谷 順子(ふかや じゅんこ)
(注1)デジタル録音図書(DTB)とは,視覚障害者,身体障害者,学習障害者やその他の印刷物を読むことが困難な人々(print-disabled readers)に代替メディアによって情報を提供するために編集された電子ファイル資料のことである。
(注2)DAISYは,Digital Audio-based Information Systemの略である。2001年12月からは,Digital Accessible Information Systemとされている。日本では「アクセシブルな情報システム」と訳されている。視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためにカセットに代わるDTBの国際標準規格として,12か国(日本,スウェーデン,英国,スイス,オランダ,スペイン,ドイツ,カナダ,デンマーク,オーストラリア,ニュージーランド,米国)の正規会員団体で構成するDAISYコンソーシアム(本部スイス)により開発と維持が行なわれている情報システムである(CA1471 [30]参照)。DAISYコンソーシアムの目的は「既存の国際基準をベースとしつつ,あらゆるメーカーが参入できる,開かれた国際規格を開発すること」である。1990年に「パソコンで録音し,パソコンで再生する録音図書」として,スウェーデンで開発された初期のDAISYは,1997年5月の「次世代の録音図書のフォーマットに関する国際会議」を契機に,インターネット上のテキスト,音声,画像などの多様な形態のファイルを共存できる第二世代に進化した。それを受けて,2001年1月に公式推薦されたのがDAISY仕様2.02である。その後W3CによるSMIL標準化決議やhtmlのXMLへの移行が決定されたことにより,DAISYはさらに次の世代へと進化を始めている。その進化を体現したのがANSI/NISOZ39.86-2002といえる。このようなDAISYの進化は,視覚障害者以外の読書に障害のある人の利用にも有効であり,新仕様に対応したソフトウェアの開発が期待されている。DAISYについての詳細は次のサイトを参照。< http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/about/consortium.htm [31] >
Ref.
ANSI/NISOZ39.86-2002 Specifications for the Digital Talking Book. (online), available from < http://www.niso.org/standards/resources/Z39-86-2002.html [32] >, (accessed 2003-01-12).
Geller, Marilyn. "Digital Talking Book Standard Approved".(online), available from < http://www.cni.org/Hforums/niso-l/2002/0008.html [33] >, (accessed 2003-1-12).
LC. "Library of Congress Issues Report on Digital Talking Books". News form The Library of Congress. (online), available from < http://www.loc.gov/today/pr/2002/02-080.html [34] >, (accessed 2003-01-12).
All Ears: Library Service Seeks New Digital Player. Washington Post 2002-06-15. (online), available from < http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn?pagename=article&node=&contentId=A54630-2002Jun14¬Found=true [35] >,(accessed 2003-01-12).
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DAISY Consultings Co.,Ltd. DAISY. (online), available from < http://www.daisyc.co.jp/content.htm [37] >, (accessed 2003-02-02).
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DAISY研究センター. Welcome to DAISY. (online), available from < http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/ [40] > (accessed 2003-01-12).
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深谷順子. 米国におけるデジタル録音図書をめぐる動き−NLSを中心に−. カレントアウェアネス. 2003, (275), p.7-9.
http://current.ndl.go.jp/ca1486 [42]
日本では,学校図書館法の改正によって学校図書館への司書教諭の配置が進む中,改めて学校図書館職員制度のあり方に関心が集まっている。本稿では,米国図書館協会(American Library Association: ALA)や米国学校図書館員協会(American Association of School Librarians: AASL)の取り組みに注目し,近年の米国における学校図書館職員の養成と採用・配置の状況について紹介したい。
米国では2000年ころから,有資格の学校図書館職員の不足が深刻化している。米国の学校図書館は,1957年のスプートニク・ショックに端を発する教育改革で大きく発展した。1960年代には全米で学校図書館施設が整備され,学校図書館職員(スクール・ライブラリアン)の採用が進められた。現在,この時期に採用された多くの学校図書館職員が退職の時期を迎えている。また,いくつかの州で早期退職に関する法律が制定されたことも職員不足に拍車をかけている。このため,全米50州のうち半数以上の州で学校図書館職員が不足してきており,中には求人の半数程度しか有資格の職員を確保できない州もある。そうした州では,無資格の職員を採用しなければならなくなってきており,また,もっと悪い場合には図書館プログラムの解体ともなりかねない状況が生まれてきている。
こうした理由に加えて,図書館学教育を受けることの難しさ,資格制度がより厳しくなっていること,基準や試験の得点の重視という教育界の傾向も,職員不足に影響を与えている。そのうち,図書館学教育を受けることの難しさについては,ALA認定校(認定プログラム)のない州の存在が挙げられる。米国には56のALA認定校(58の認定プログラム)があるが,それらは32の州に集中している。従って,プログラムのない州では,有資格の学校図書館職員(学校図書館メディア・スペシャリスト)の養成は行われ得ないということになる。各州政府の定める学校図書館専門職の資格要件や学校図書館関連職員に求める要件の中に,ALA認定校(認定プログラム)での単位取得が含まれない場合も少なくないのはこのためでもあろう。この問題に関しては,近年,認定プログラムのいくつかがオンラインで提供されはじめたことに,学校図書館関係者の期待が高まっている。
ALAは,1988年に教員養成プログラム認定全国協議会(National Council for the Accreditation of Teacher Education: NCATE)に加盟し,学校図書館職員養成プログラムの認定を開始した。これはALAの認定校以外で学んだ学校図書館職員の質を高めるための一方策である。認定のためのガイドラインをALA(AASL)が作成し,NCATEがそれを承認する形をとっている。このガイドラインは1988年9月にはじめて承認され,1993年10月に一度改訂された。その再改訂を目指して,AASLは2000年に特別の作業部会を設立し,「学校図書館メディア・スペシャリスト養成のためのAASL基準最終案(Final Draft of AASL Standards for School Library Media Profession)」を作成した。そして、2002年10月に開かれたNCATEの専門分野研究委員会(Specialty Area Studies Board: SASB)に同最終案を提出した。
この最終案は,AASLと教育コミュニケーション工学協会(Association for Educational Communications and Technology: AECT)による,学校図書館メディア・プログラムのガイドライン『インフォメーション・パワー』(1989, 1998)(CA1361 [46]参照)の枠組みを用い,最新の学術研究の成果を取り入れて作成された。そして,学校図書館メディア・スペシャリスト認定の対象は修士号を授与する機関に限定した。一部の州には学士号レベルのプログラムや資格付与のためのプログラムもあり,希望により審査を受けることができるが,ALA(AASL)が出版物やウェブサイトでその認定を発表することはない,とした。
これにより,ALA認定校での専門職養成を補完する教育が,形としても修士号以上,また内容的にも『インフォメーション・パワー』の考え方を反映した一定水準以上に維持されることが期待されている。
AASLはまた,「危機に立つ国家」(1983)(注)等の提言に応えるため,1987年に設立された全国教育専門職基準委員会(National Board for Professional Teaching Standards: NBPTS)との連携も強めていこうとしてきた。NBPTSは,「図書館メディア」分野の教員を独自のガイドラインと志願者のポートフォリオで評価する優秀教員認定を2002年に開始した。そして今回,全米で435人(うち95名がAASL会員)が認定を受けた。
AASLはこの認定制度に強い関心を寄せており,今回認定された会員とまた認定を受けることに関心を持つ会員の組織を作ろうという動きも,AASL内に現れてきている。今後,学校図書館職員が達成すべきパフォーマンスの指標として,同認定制度が定着していきそうである。
以上のように,有資格の学校図書館職員の不足が問題となっている中で,ALAやAASLは学校図書館職員の質の維持・向上のために努力している。また,学校図書館職員や学校図書館メディア・プログラムの評価が教育界と社会一般に広く認められるよう,外部の機関との連携を強めている。米国では今後もこうした専門職団体の努力が,学校図書館の発展の推進力となっていくように思われる。
東京大学大学院教育学研究科:中村 百合子(なかむら ゆりこ)
(注)米国経済の国際競争力回復のための教育改革を,連邦レベルの大きな課題として衝撃的に押し出した文書。子どもの基礎学力やモラルの低下への対策を訴えた。
Ref.
AASL. ALA and AASL Assuring Quality in SchoolLibrary Media Education Programs. (online), available from < http://www.ala.org/aasl/aasl-ncate/ [47] >, (accessed 2002-12-19).
NBPTS Library Media Standards. (online), available from < http://www.nbpts.org/pdf/ecya_lm.pdf [48] >, (accessed 2002-12-19).
AASL. 93 AASL members achieve National Board Certification. (online), available from < http://www.ala.org/aasl/news/2002nbcts.html [49] >, (accessed 2002-12-19).
AASL. AASL Board to discuss possibility of NBPTS Interest Group. (online), available form < http://www.ala.org/aasl/news/nbpts_group.html [50] >,(accessed 2002-12-19).
Everhart, Nancy. School Staffing Survey 2000:Looking for a few good librarians. Sch Libr J. 46(9), 2000, 58-61.
Lord, Mary. Where have the all librarians gone? US News & World Report. June 12, 2000, 53. (online), available from < http://www.usnews.com/usnews/issue/000612/lib.htm [51] >, (accessed 2002-12-19).
中村百合子. 米国における学校図書館職員養成の動向. カレントアウェアネス. 2003, (275), p.9-10.
http://current.ndl.go.jp/ca1487 [52]
インターネットを利用したレファレンスサービスは,図書館におけるレファレンスサービスの形態として広く認知されるようになり,試行的にせよ,導入する図書館は年々増加している。米国研究図書館協会(Association of Research Libraries: ARL)に加盟する大学図書館の調査によれば,その実施率は1997年に77%であり,2000年には回答した大学図書館の全てで実施されるまでに至っている(1)。レファレンスにおけるインターネット利用には,ウェブをレファレンス質問への回答のための情報源として利用する側面と,ウェブを利用者と図書館員とのインタフェース,すなわち利用者からの質問の受付,レファレンスインタビューや回答提供の手段として利用する側面とがある。デジタルレファレンスサービス(以下, DRS)は,後者のウェブをインタフェースとして利用するレファレンスサービスの形態である。DRSは,これまでの試行的導入の時期を経て,本格導入の段階に移行する時期を迎えている。そこで,本稿では,その特性や今後のサービス展開について,米国の研究事例をもとに見ていきたい。
DRSが,レファレンスデスク上で提供される伝統的なレファレンスサービスと大きく異なる点は,第一に利用者と図書館員との相互作用が非同期的,間接的であり,第二にサービスの時間と場所が限定されないことである。これら二つの点は相互に関係しており,非同期的であるがゆえにサービス時間の制約がなく,間接的であるがゆえにサービスを利用できる場所が図書館内に限定されないことになる。こうした諸特性について,DRSと伝統的なレファレンスサービスとを比較したものが次頁の表である。以下,DRSの特性について,新たな動きや事例を取り上げながら,今後のDRSの展開を見ていく。
項目 | デジタルレファレンスサービス | 伝統的なレファレンスサービス | |
特性 | 方式・事例 | ||
相互作用 | 非同期・間接 | 電子メール, ウェブフォーム | 同期・直接 |
同期・間接 | チャット(ライブレファレンス) | ||
サービス時間・場所 | 非限定(24時間/7日間,遠隔利用) | 開館時間内・館内 | |
レファレンス質問の類型 | 調査質問,探索質問指向 | 電子メール, ウェブフォーム | 即答質問,探索質問,調査質問 |
即答質問指向 | チャット(ライブレファレンス) | ||
情報源 | 所蔵レファレンス資料 商用外部データベース | 所蔵レファレンス資料 商用外部データベース | |
ウェブ上の情報源 | MARS Best Web Reference Sites | ||
他館との協力関係 | 質問回答事例のナレッジベース化とその提供 質問回送による共同デジタルレファレンス | GRN(QuestionPoint), VRD | 他館への質問回送による協力 レファレンス |
伝統的なレファレンスサービスは,利用者がレファレンスデスクにおいて情報要求を図書館員に提示し,図書館員から回答の提供を受けるサービス方式が基本となる。この状況では,利用者と図書館員との相互作用(質問応答)は同期しており,利用者と図書館員はレファレンスデスクを挟んで直接対峙する。それに対してDRSでは,電子メールやウェブフォームからの質問の提示,電子メールによる回答の提供という方式をとり,利用者の質問提示と図書館員からの回答提供は非同期的である。一方,チャットによる質問回答サービス(ライブレファレンス)も導入されつつあり,この場合,レファレンスインタビューを含めて利用者と図書館員との相互作用は同期しているが,ネットワークを介している点でその相互作用は間接的である。非同期的あるいは間接的な相互作用において問題となるのが,レファレンスインタビューの扱いである。ウェブフォームからレファレンス質問を提示する場合には,利用者の属性や情報利用目的など,必要な情報の主題以外の入力項目を設定するなど,DRSには伝統的な対面状況下でのレファレンスインタビューに代わる機能が組み入れられているのが一般的である。しかしながら,ウェブフォームや電子メールによるサービス形態では,インタビューが同期的に行えないために利用者の情報要求を十分に確認できないことや,回答が即座(同期的)に提供されないことが問題となる。
レファレンスサービスにおける同期性(即時性)の問題については,米国の先駆的DRSプロジェクトであるAskERICの非同期的サービスを対象に実施したランクス(R.D. Lankes)らの利用調査がある(2)。それによれば,非同期的サービスは,回答提供に数日を要する場合であっても,利用者からは有用なものと評価されている。また,バーチャルレファレンスデスク(VRD)プロジェクトによるAskAサービス(CA1323 [56]参照)の利用調査では,非同期的サービスの利用は年々増加傾向にあるとの結果が示されている(3)。これらの結果から,ランクスはレファレンス質問の内容や種類によっては,利用者は非同期的サービスで十分に満足していると結論付けている。伝統的なレファレンスサービスにおいても,文書によるレファレンス質問の受理・回答方式という非同期的,間接的な相互作用をとるサービス形態があり,上記の結果はこの文書レファレンスに対応したDRSの機能が利用者から評価されたものといえる。
レファレンスインタビューの機能が十分でないDRSでは,回答可能なレファレンス質問には一定の制約が伴うものと考えられる。ジェーンズ(J. Janes)らの調査によれば,DRS実施館において即答質問や事実質問は広く受け付けられているが,探索質問や調査質問を受理するか否かは,個々の図書館におけるDRSの方針によって異なる(4)。ところで,即答質問や事実質問に限定せずにレファレンス質問を受理する場合,実際に寄せられた質問に調査質問が多いことを示す調査結果が出ている。スローン(B. Sloan)は米国イリノイの9大学図書館におけるDRSで受理した877の質問を8類型に分類しているが,それによれば既知文献に関する質問が77件(8.78%),即答質問が125件(14.25%),特定主題に関する文献探索質問が179件(20.41%),文献の引用の仕方に関する質問が36件(4.1%),調査質問が260件(29.65%),図書館利用に関する質問が71件(8.1%),テクニカルサービスに関する質問が79件(9%),その他の質問が50件(5.7%)であった(5)。このように,調査質問が全体の30%近くを占め,最も多い質問の類型となっている。調査質問は回答に多くの時間を要する複雑,高度な要求の場合が多く,レファレンスインタビューの機能が十分でないDRSでは対応できないものと考えられてきた。しかし,少なくとも利用者側にそのような認識はなく,利用者は質問類型に関わりなくDRSに質問を寄せていることがわかる。DRSで扱われるレファレンス質問については,今後さらに調査が必要であるが,調査質問が回答の探索に一定の時間を要する質問であることを考えるならば,調査質問は非同期的サービスの形態をとるDRSに適した質問類型であるといえよう。
DRSでは,回答に利用する情報源として,図書館が所蔵する印刷媒体あるいはCD-ROM媒体のレファレンス資料に加えてウェブ上の情報源が重要となる。ただし,ウェブ上の情報源については,図書館のレファレンスサービスのための情報源として一定の要件を満たす必要がある。
米国図書館協会(ALA)のレファレンス・利用者サービス部会(Reference and User Services Association: RUSA)に設置されたコンピュータによるレファレンス支援部門(Machine-Assisted Reference Section: MARS)では,1998年から毎年,ウェブ上の有用なレファレンスサイトとして20〜30件程度を調査,選定し,解題付きでRUSAの機関誌に発表している(6)。レファレンスサイトの選定にあたっては9の規準が示されている。それによれば,コンテンツについては質・詳細度・有用性,独自性,更新性が挙げられており,ウェブページの生産者については権威ある機関であることが要件となっている(6)。これらの規準は印刷媒体のレファレンス資料の選定にも当てはまるものであり,レファレンスサービスに使用される情報源が備えるべき基本要件といえる。
米国議会図書館(LC)の書誌レコード高度化諮問チーム(Bibliographic Enrichment Advisory Team: BEAT)では,上記のMARSが選定したレファレンスサイトの解題を目録レコードに付加するプロジェクトを開始している(7)。これにより,目録データベースから有用なレファレンスサイトとその内容の検索が可能となり,レファレンスサービスに適したより質の高いウェブ上の情報源の活用が期待される。
DRSではインターネットを介して複数の図書館が共同してレファレンスサービスを提供する体制が進行している。これは従来のレファレンスサービスにおける協力レファレンスに相当するものである。その例として,LCのグローバルレファレンスネットワーク(GRN)のプロジェクトにおけるQuestionPointサービス(8)(CA1476 [57]参照)と,米国教育省とシラキュース大学によるVRDプロジェクト(9)があげられる。従来の協力レファレンスは,レファレンスデスクにおいて利用者から受付けた質問が自館資料では回答不能な場合に,その質問を他館に回送し他館から得られた回答を利用者に提供するというものである。それに対してDRSでは,利用者はウェブ上でこれまでに寄せられた質問とその回答の記録が蓄積されたナレッジベースを使って回答を探すことから始める。利用者はウェブを通して質問を提示する前に,ウェブ上に用意されているこれらの質問回答のナレッジベースをまず使って自分の要求について調べ,それでも解決できない場合にウェブから質問を提示することになる。このように,質問回答のナレッジベースをもとにした協力レファレンス体制がDRSの大きな特徴である。
DRSは,利用者と図書館員との相互作用,情報源,サービス体制の面で,図書館内での実践を基本とする伝統的なレファレンスサービスとは異なる。この違いは,伝統的なレファレンスサービスを規定してきた基本的な考え方に変更をもたらすものである。DRSに関するこれまでの記事や報告は,様々な先進的事例や新たなシステムの導入成果を紹介するものが中心であったが,最近になってDRSの基本的な考え方やモデルを対象とする理論研究が発表されるようになってきた。例えば,フリッツ(J.W. Fritch)らは,伝統的なレファレンスサービスを規定してきた保守理論と自由理論(注)からDRSを考察し,DRSには保守理論と自由理論を混成した理論が必要であると指摘している(10)。
一方,ディレブコ(J. Dilevko)は,レファレンスサービスへのデジタル技術の導入が引き起こす図書館職の変化についてブルデューの社会学理論を使って考察している(11)。そこでは,レファレンスサービスへのコンピュータ技術の導入により,レファレンスライブラリアンが備えるべき重要な能力とされている多様な分野に関する主題知識や日常業務がその価値を失い,脱専門職化の道を辿る問題についてブルデューの理論を使って説明を加えている。特に興味深い論点は,図書館における技術革新は地域性を考慮に入れない支配装置として図書館を機能させることになり,図書館が果たしている地域住民の活動支援という機能を弱体化させるという点である。すなわち,レファレンスサービスへのコンピュータ技術の導入を唱導する者が価値のない業務として批判するレファレンスライブラリアンの日常業務(館内で騒ぐ子どもに注意したり,子どもに読み聞かせをしたり,施設・設備を管理するなどを含む)が実は日常生活を送る地域住民の日々の活動やニーズを支援する環境を作り出すうえで重要な役割を果たしていると指摘している。
DRSは,インタフェースの改良,情報源の拡充,質問回答記録の蓄積とそれに基づくナレッジベース化など,今後も時間と場所に拘束されない利用者への情報要求支援サービスとして発展し,利用者に計り知れない利便性をもたらすであろう。しかし,地域の子どもたちへの読書環境を用意し,読み聞かせなどの児童サービスを提供し,また成人への貸出サービスを通じて教養娯楽機能を発揮するなど,図書館員が図書館という物理的施設のもとで地域住民の日常生活を情報・資料面から支援する人的サービスの重要性は,DRSによっていささかも減じることはない。大学図書館においても,一般教育,教養教育の再認識,重視が叫ばれる今日,適切な読書相談サービスや一般教育,教養教育に有用な資料の収集・提供など,読書環境の整備は重要な責務である。公共図書館や大学図書館には,DRSが指向するような先端的な情報サービスとは別に,場としての図書館が果たす機能が依然として求められていることを忘れてはならない。
玉川大学教育学部:斎藤 泰則(さいとう やすのり)
(注)保守理論,自由理論は,レファレンスサービスにおける人的サービスの方針に関する考え方を示すものである。保守理論は利用指導を重視し,利用者の求める情報を含むような情報源を図書館員が紹介し,また情報源の利用方法を指示するという最小限の援助にとどめる考え方を指す。それに対して,自由理論は,情報提供を重視し,利用者の求める情報自体を図書館員が検索,提供するという最大限の援助を行う考え方を指す。
(1) Tenopir, C. et al. A decade of digital reference, 1991-2001. Ref User Serv Q. 41(3), 2002, 264-273.
(2) Lankes, R.D. et al. The necessity of real-time : fact and fiction in digital reference systems. Ref User Serv Q. 41(4), 2002, 350-355.
(3) Lankes, R.D. AskA's : lesson learned from K-12 digital reference services. Ref User Serv Q. 38(1), 1998, 63-71.
(4) Janes, J. et al. Finger on the pulse : librarians describe evolving reference practice in an increasingly digital world. Ref User Serv Q. 42(1), 2002, 54-65.
(5) Sloan, B. "Asking Questions in the Digital Library". (online), available from < http://www.lis.uiuc.edu/~b-sloan/ask.htm [58] >, (assessed 2003-1-14).
(6) RUSA Machine-Assisted Reference Section (MARS).Best free reference web sites : forth annual list. Ref User Serv Q. 42 (1), 2002, 34-40.
MARS Best Free Websites Committee. (online), available from < http://www.ala.org/rusa/mars/MARSBEST.html [59] >, (accessed 2003-1-14).
(7) The Library of Congress Bibliographic Enrichment Advisory Team. (online), available from < http://lcweb.loc.gov/catdir/beat/ [60] >, (accessed 2003-1-14).
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(9) The Virtual Reference Desk. (online), available from < http://vrd.org/ [63] >, (accessed 2003-1-14).
(10) Fritch, J.W. et al. The emerging reference paradigm : a vision of reference services in a complex information environment. Libr Trends. 50(2), 2001, 286-305.
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斎藤泰則. デジタルレファレンスサービスの特性と展開. カレントアウェアネス. 2003, (275), p.10-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1488 [64]
デジタル情報資源の急増に伴い,その長期保存体制の欠如が深刻な問題になってきている。デジタル情報はコピーを繰り返しても内容が劣化しないことから,一度デジタル化しさえすれば半永久的な保存が可能だという期待が大きかった。しかしながら,デジタル情報を記録する磁気ディスク,CD,DVD等の媒体の寿命は紙に及ばないとみなされており,さらにそれ以前に,急激な技術革新によって媒体の規格やデータのフォーマットがすぐに廃れてしまう。気付いた時には読み取りに必要なハードウェアあるいはソフトウェアが入手できなくなってしまっている,といったことも容易に起こり得る。
こうした状況に対して,デジタル情報の長期保存に関する研究が様々な形で行われているが,中でも盛んなのが保存のためのメタデータの枠組み作りである。ここでのメタデータは情報資源を発見したり検索したりするためのものではなく,情報資源の保存に役立つ様々な情報を記録しておくものである。以下,この保存のためのメタデータに関する動向について述べる。
デジタル情報の長期保存システム構築に関する有力な指針として,「開放型アーカイブ情報システムのための参照モデル(Reference Model for an Open Archival Information System : OAIS)(以下OAIS参照モデル)」(1)がある。これはNASA, NASDAはじめ世界各国の宇宙開発機関で組織する宇宙データシステム諮問委員会(Consultative Committee for Space Data Systems)が策定したもので,1999年5月にRed Book, Issue 1という形で原案が示され,2001年7月に改訂版(Red Book, Issue 2)が出され,2002年に国際標準規格(ISO 14721:2002)として承認された。これはデジタルデータにとどまらず,情報一般の保存に関するあらゆる側面を扱った総合的な内容を持ち,アーカイブの責任,情報パッケージの概念,機能エンティティとそれらの相互関係,保存戦略,さらにはアーカイブ間の連携に至るまで詳細に論じたものである。2000年,Red Book, Issue 1の段階で,わが国にも簡単に紹介されている(2)。
「OAIS参照モデル」では,保存対象となるデータを関連するメタデータと組み合わせた情報パッケージ(Information Package)が取扱いの単位となる。情報パッケージは,情報生産者からアーカイブへの提出,アーカイブ内部での保管,アーカイブから消費者への配布といった段階に応じて,提出用情報パッケージ(Submission Information Package: SIP),保管用情報パッケージ(Archival Information Package: AIP),配布用情報パッケージ(Dissemination Information Package: DIP)の3種類に分けられている。おのおのの情報パッケージは内容情報(Content Information)と保存記述情報(Preservation Description Information)からなり,それらを結びつけるパッケージ情報(Packaging Information)が付与される。この外側にいわば目録情報である記述情報(Descriptive Information)が作成される。内容情報はもともとのデータであるビット列(データ・オブジェクト)と,それを解釈・提示するための表現情報(Representation Information)からなる。保存記述情報には内容情報の由来を示す来歴(Provenance),他の情報との関係を示すコンテクスト(Context),内容情報を同定するためのID情報である参照(Reference),内容情報が変更されていないことを示す固定性(Fixity)の4種類があるとされる。
こうした情報モデルに基づき,いくつものデジタル情報保存プロジェクトにおいて,具体的なメタデータの項目や表記法が検討されている。
デジタル情報保存のためのメタデータを具体的に規定する先駆的な試みの例として,CEDARS(CURL Exemplars in Digital Archives)プロジェクトがある。このプロジェクトでは,2000年,「OAIS参照モデル」(当時はまだ規格案の段階)に準拠したメタデータの要素(elements)案を公表し,広く意見を求めた(3)。この案では要素を示すのみで表記法やデータの持ち方には触れていない。また,「OAIS参照モデル」で言うパッケージ情報,記述情報は扱わず,保存記述情報と内容情報に検討の範囲を限っている。著作権者にアーカイブへの登録を促すため,特に知的所有権関係の項目を充実させたとしている。さらに,メタデータは変化する可能性があり(たとえば権利関係など),その維持管理がアーカイブの主要な管理機能の一つである,という重要な指摘がある。
OCLCとRLGは,2000年3月,保存メタデータに関するワーキンググループ (OCLC/RLG Working Group on Preservation Metadata)を発足させた。このWGは翌2001年に現状レビューの白書(4),さらに2002年6月,「OAIS参照モデル」に基づいたメタデータを規定した報告書(5)を発表した。この報告書で提案されているメタデータ要素は,CEDARS,オーストラリア国立図書館(National Library of Australia : NLA),ヨーロッパ寄託図書館ネットワーク(Networked European Deposit Library: NEDLIB),OCLCといった4つの組織の先行プロジェクトにおけるメタデータを総合的に検討し,さらにWG独自の要素も加えて出来上がったものである。CEDARS同様,パッケージ情報と記述情報の検討は除外されている。その理由として,パッケージ情報は保存対象データとメタデータを結びつけるだけのものであり,記述情報は資源発見のためのメタデータで保存用メタデータの範囲外であるという説明がなされている。
下の図に要素の概略を示す(インデントで階層構造を表す。ただしすべての階層,項目を記してはいない)。
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この報告書に示されたメタデータの枠組みは,現時点では,最も総合的かつ先進的なものだと言えるが,それでも決定版というわけではない。たとえば,保存戦略としてエミュレーションを選択した場合は,ハードウェア環境などに関してここに規定された以上に詳細な情報が必要となるだろうし,適用対象情報資源の粒度(granularity)や,項目が必須か,あるいは繰り返し可能か,などについては今後の検討課題としている。
以上のようなメタデータの枠組みは,メタデータの要素を定めたものであって,実際にそれをどういう形で記録するかはまた別の問題である。もちろん個々の保存機関がそれぞれ決定することであり,たとえば特定メーカーのデータベースの形式を採用することも十分考えられる。しかし,保存機関同士が連携する上において,またメタデータ自体の長期的な保存を考えた場合,世界的に広く通用する標準的な形式を採用した方が当然有利である。あるいは,内部では独自形式で持つにしても,データ交換用に標準形式への変換を行えるシステムを採用することも考えられる。
標準的なメタデータ記録方式として最も注目されているのがXML(eXtensible Markup Language,T33 [68]参照)である。XMLはW3C(World Wide Web Consortium)が定めた文書構造記述のためのタグ付け言語だが,このXMLによるメタデータ記録方式の標準を定めたものとして,メタデータ記号化・伝送標準(Metadata Encoding & Transmission Standard: METS)がある。これはMaking of America II(MOA2)プロジェクトの経験をもとに電子図書館連合(Digital Library Federation)が策定したものである。METSは以下の5つの主要セクションから成る(6)。
さらに,それぞれのセクション内の表記法が詳しく規定されている。METSの最大の特徴は構造マップで,これにより,異なった種類のファイルで構成された複雑なデジタル資料の構造を表現することができる。
他方,XMLはメタデータに限らず,内容データ・オブジェクトを含めたデジタル情報全体を保存するためのフォーマット,あるいは保存データを新しいハードウェア,ソフトウェア環境に移行するためのデータ交換フォーマットとしても有力視され,研究が進んでいる。そうしたプロジェクトの一つがオランダのデジタル保存テストベッド(Digital Preservation Testbed)で,電子メールをXML形式に変換して保存する実験を行っている(7)。また,XMLとデジタル情報の保存に関して概観した白書(8)を発表している。
北テキサス大学図書館(The University of North Texas Libraries)では,連邦政府や州政府と共同で行政文書のデジタル化プロジェクトを行っているが,保存のためのメタデータ項目は,やはりOAIS,CEDARS,NLA,OCLC/RLG等により提案されたものを組み合わせて規定している(ただしOCLC/RLGが国家標準規格を定めるまで,としている)(9)。また,メタデータ作成・編集ツールとしてNoteTab(10)というソフトウェアの試用を行っている。
数学の分野では,ドイツのゲッチンゲン大学,米国のコーネル大学,中国の清華大学などの図書館が参加して電子数学アーカイブ・ネットワーク・イニシアチブ(Electronic Mathematics Archives Network Initiative: EMANI)という共同プロジェクトが行われている。このうち清華大学図書館が,保存のためのメタデータの枠組みを策定し,発表している(11)。項目は記述,権利,技術,ソース,デジタル化プロセスといったモジュールに分けられ,それぞれが階層構造を持つ。記録方式としてMETSを採用しており,数学に限らず全分野に適用が可能だとしている。
常磐大学人間科学部:栗山 正光(くりやま まさみつ)
(1) Consultative Committee for Space Data Systems. Reference Model for an Open Archival Information System (OAIS). Blue Book, Issue 1 (CCSDS 650.0-B-1). 2002, (online), available from < http://wwwclassic.ccsds.org/documents/pdf/CCSDS-650.0-B-1.pdf [69] >, (accessed 2003-01-06).
(2) 大島薫. 電子出版物の保存. 情報の科学と技術. 50(7), 2000, 383-388.
(3) The Cedars Project Team and UKOLN. Metadata for digital preservation : The Cedars project outline specification. 2000, 33p. (online), available from < http://www.leeds.ac.uk/cedars/MD-STR~5.pdf [70] >, (accessed 2003-01-06).
(4) OCLC/RLG Working Group on Preservation Metadata. Preservation Metadata for Digital Objects : A Review of the State of the Art. 2001, 49p. (online), available from < http://www.oclc.org/research/pmwg/presmeta_wp.pdf [71] >, (accessed 2003-01-08).
(5) OCLC/RLG Working Group on Preservation Metadata. Preservation Metadata and the OAIS Information Model : A Metadata Framework to Support the Preservation of Digital Objects. 2002, 51p. (online), available from < http://www.oclc.org/research/pmwg/pm_framework.pdf [72] >, (accessed 2003-01-08).
(6) Metadata Encoding & Transmission Standard. "METS: an Overview & Tutorial". (online), available from < http://www.loc.gov/standards/mets/METSOverview.html [73] >, (accessed 2003-01-08).
(7) Potter, Maureen. XML for Digital Preservation : XML Implementation Options for E-Mails. (online), available from < http://www.digitaleduurzaamheid.nl/bibliotheek/docs/email-xml-imp.pdf [74] >, (accessed 2003-01-08).
(8) Testbed Digitale Bewaring. "XML and digital preservation : Digital Preservation Testbed white paper". (online), available from < http://www.digitaleduurzaamheid.nl/bibliotheek/docs/white-paper_xml-en.pdf [75] >, (accessed 2003-01-08).
(9) Alemneh, Daniel Gelaw et al. A Metadata Approach to Preservation of Digital Resources : The University of North Texas Libraries' Experience. First Monday. 7(8), 2002. (online), available from < http://firstmonday.org/issues/issue7_8/alemneh/index.html [76] >, (accessed 2003-01-08).
(10) Notetab homepage. (online), available from < http://www.notetab.com/ [77] >, (accessed 2003-01-08)
(11) Niu, Jinfang. A Metadata Framework Developed at the Tsinghua University Library to Aid in the Preservation of Digital Resources. D-Lib Magazine. 8(11), 2002. (online), available from < http://www.dlib.org/dlib/november02/niu/11niu.html [78] >, (accessed 2003-01-08).
栗山正光. デジタル情報保存のためのメタデータに関する動向. カレントアウェアネス. 2003, (275), p.13-16.
http://current.ndl.go.jp/ca1489 [79]
欧州委員会(European Commission: EC)は欧州域内の情報格差および欧州と米国との情報格差の拡大への懸念から,総合的な情報基盤整備を目指し,2000年6月に電子欧州行動計画(eEurope2002)を開始した(1)。欧州のデジタルコンテンツ整備は計画の主要課題のひとつであり,電子出版物の保存もこの領域に位置付けられ,推進されてきた。背景には特に,米国との格差縮小を情報面を含むあらゆる面において最重要課題とする欧州の姿勢を見て取ることができる。また電子出版物の保存の意義は,学術研究の環境整備と文化政策の両面に見出すことができるが,欧州において,特に英語を母国語としない国々においては,国内の出版物を保存することはすなわち,母国語の出版物という独自の文化資産をいかにして次世代に遺していくか,という課題に結びつくという面で重視される。
自国出版物の保存は,多くの国では納本制度によって担保されてきた。納本法によるもの,著作権法によるもの,国立図書館法によるもの,など依拠する法に違いはあるが,それらの法を通じて,すでにいくつかの国が電子出版物を納入対象に含めている。オフラインの資料に限定するものが多数ではあるが,デンマーク,フィンランドなどオンライン出版物を対象としている国もすでに見られる。オンライン出版物については,著作権やプライバシーなどに関わる法的問題や保存範囲の問題など,解決しなければならない課題も山積している。一方で,その対応策を模索している間にも日々多くの情報が失われており,特に動きの激しいウェブ上の情報資源の保存問題は各国において極めて緊急度の高い課題となっている。
こうした危機感のもとにユネスコもまた,『法定納本制度のためのガイドライン』(2)において,あらゆる種類の電子出版物が各国の責任において法定納本されることが原則であり,技術的法的課題が解決されていないことを理由に,世界の出版文化遺産の重要な一部が保存されないということは,到底正当化できない,との厳しい見解を示し,早急の対応を呼びかけている。また,こうした取り組みに対して国の政策レベルで高い優先順位が与えられるよう,「デジタル文化遺産保存憲章」(E021 [82]参照)の準備も進められている。
欧州では北欧諸国をはじめとして多くの国が,早くからこの課題に取り組んできた。しかしながら,歴史も母国語も異なる国々の取組みは決して一様ではない。
欧州の電子出版物保存プロジェクトのうち,英国が中心となっているものに,英国図書館によるDomain.uk,電子情報保存連合(Digital Preservation Coalition:DPC)の活動,主として高等教育機関が展開するCEDARS(CURL Exemplars in Digital Archives)などがある(CA1467 [83],1489 [79]参照)。欧州大陸部では,国全体のウェブ情報を保存する試みが,Kulturarw3プロジェクトをいち早く立ち上げたスウェーデンをはじめ,フィンランド,デンマークなど北欧諸国に見られる(3)。
一方,欧州全域に及ぶものに欧州納本図書館の実現を目指すNEDLIB(Networked European Deposit Library)プロジェクトがある(CA1401 [84]参照)。これは欧州委員会の資金援助によって1998年から2000年にかけて実施されたもので,最終的にEU12か国の国立図書館の参加を得た。出版社と共同で先進的な試みを行ってきたオランダが主導的役割を果たした。国によって方針や見解,アーカイビングへのアプローチも異なりはするが,それらを共通の議論の俎上に載せることによって,情報を共有し,共通の基盤を築くことに貢献した(4)。
NEDLIBでの成果をふまえて,2001年11月,欧州委員会は2002年からの新たな3か年のプロジェクトERPANET(Electronic Resource Preservation and Access Network)を立ち上げた(5)。NEDLIBが比較的技術的な共通基盤のモデル構築に力を注いでいたのに対し,ERPANETではより総合的な政策面に重点が置かれている。電子出版物の保存に関する欧州域内での取組みの不要な重複を排し,情報交換のためのクリアリングハウスおよび研究開発,政策プラニングのための組織を目指す。
ERPANETは特に,電子資料の保存を支える関係者〜技術提供者,作成者(著者等),保存者,監視者,利用者,支援者(政策決定者等)〜の相互の連鎖に注目し,総合的な政策の必要性を訴えている(図)。すなわち,保存の問題は情報流通の最終段階のみでなく,その連鎖全体に関わる問題である,という認識を共通のものにすることを目的と考えるのである。
この目的を達成するため,ERPANETは以下の6つのサービスを展開している。
欧州のウェブ・アーカイビングは,重層化,多様化を極めており,今後これらの取組みが相互にどのようにリンクし,協力関係を築いていくのか,注目される。
次項以下では,欧州域内のオランダ,ドイツ,フランス,スウェーデンの4か国のトピックが取上げられている。これらの非英語圏の取組みは,わが国にとっても貴重な示唆を与えてくれるであろう。
(1) eEurope2002. (online), available from < http://europa.eu.int/information_society/eeurope/index_en.htm [85] >, (accessed 2003-02-06).
(2) Lariviere, Jules. "Guidelines for legal deposit legislation". UNESCO, 2000, 61p. (online), available from < http://www.unesco.org/webworld/publications/legaldeposit.rtf [86] >, (accessed 2003-02-06).
このガイドラインは欧州の法定納本制度を対象に作成された次のガイドラインを下敷きにしている。
Council of Europe. Council for Culutural Co-operation. Culture Committee. Guidelines on Library Legislation and Policy in Europe. 1999, 26p. (online),available from < http://www.coe.int/T/E/Cultural_Co-operation/Culture/Resources/Reference_texts/Guidelines/ecubook_R3.asp [87] >, (accessed 2003-02-06).
(3) 廣瀬信己. 北欧諸国におけるウェブ・アーカイビングの現状と納本制度. 国立国会図書館月報. (490), 2002, 14-22.
(4) Van der Werf-Davelaar, Titia. Long-term Preservation of Electronic Publications. D-Lib Magazine. 5(9), 1999, (online) available from < http://www.dlib.org/dlib/september99/vanderwerf/09vanderwerf.html [88] >, (accessed 2003-02-06).
(5) ERPANET - Electronic Resource Preservation and Access Network. (online), available from< http://www.erpanet.org [89] >, (accessed 2003-02-06).
ERPANET. Principles of digital preservation Draft v.4.1. ERPANET, 2002, 7p. (online), available from < http://www.erpanet.org/www/content/documents/Digitalpreservationcharterv4_1.pdf [90] >, (accessed 2003-02-06).
オランダ国立図書館(Koninklijke Bibliotheek: KB)では目下のところ,「ウェブ・アーカイビング」と名づけた事業は行っていない。しかしこれは,電子情報やウェブ情報を軽視しているためではない。むしろKBでは,電子情報の時代を意識した取り組みを積極的に推進している。その姿勢は,貴重書の電子化,JSTORの活用といった事業面に現れている。特筆すべきは,電子情報の長期的な保存と提供を図書館が担うべき役割として位置付け,それを意識した調査研究を進めてきたことである。以下ではこのことを,ウェブ・アーカイビングに関係する三つの点を通して確認する。システムの開発,出版業界との連携,そしてオンラインジャーナルのアーカイビングである。
第一にKBは,電子情報を扱えるシステムの開発に取り組んできた。ウェブ・アーカイビングに関しては,NEDLIBプロジェクトがまず目を引く。NEDLIBはヨーロッパの納本図書館による共同研究で,KBが事業の中心となった。この事業ではNEDLIB ハーベスタという,ウェブ情報の収集に特化したソフトを開発している。しかしそれ以上に重要なのは,IBM社との協力関係である。KBでは,電子情報を処理するシステムの開発をIBM社に依頼すると同時に,電子情報の長期的保存について,同社と共同研究を進めてきた。マイグレーション等の技術的課題はもちろん,ウェブ・アーカイビングもまた,ここでの研究課題の一つとなっている。アーカイビングを進める上で踏まえなければならない問題点が,ここで検討されたのである。IBM社からは2002年秋に,電子情報の収集,検索,管理のためのシステム「e-depot」が納められた。後述するオンラインジャーナルの処理に用いられるのは,このシステムである。
第二には,出版業界との連携である。KBでは1996年に,文化遺産の保存の責務を果たす観点から,パッケージ系の電子出版物の収集を始めた。しかし電子出版物を確実に納本制度の枠に含めるため,さらに踏み込んだ措置をとった。1999年に,オランダ出版協会との間で,電子出版物の納入について協定を結んだのである。この協定は,オンラインの出版物を納本制度に含める根拠になるものである。
しかし第三に,最も注目すべき事業として挙げられるのは,オンラインジャーナルのアーカイビングである。オランダには,エルゼビア・サイエンス社の本社がある。いうまでもなく同社は,オンラインジャーナル発行の最大手である。そしてKBが同社と提携し,同社発行のオンラインジャーナルを保管する公的な電子アーカイブの役割を果たすことが,2002年の国際図書館連盟(IFLA)グラスゴー大会で公表されたのである。
この提携関係は三つの点で,通常の利用契約とは異なる。第一に図書館側は,蓄積と保存のための研究開発を行う。特に重要なのは,記録内容と読み取りソフトとの両面にわたり,マイグレーションの責任を持つことである。第二に図書館側は,収められた情報を自館資料として提供する権利を持つ。このため,エルゼビア側が天災や倒産等で提供を停止しても,図書館での提供は継続される。第三に,納入対象が現在提供中のものに限られない。新規創刊誌も納入対象となり,目下電子化作業中である紙媒体時代のバックナンバーもまた,電子ファイルの形で納入される。
上記の特徴は,オンラインジャーナルの長期提供のための難点を意識し,その解決を目指したものである。つまり版元と図書館とが協力して,オンラインジャーナルが紙媒体より劣る点の解消を試みたのである。したがって,オンラインジャーナルが紙媒体に取って代わるかどうか,またその際に図書館が果たしうる機能は何かを見極める上で,この試みは重要である。
この事業はウェブ・アーカイビングと銘打ってはいない。しかしKBは,エルゼビア社という絶好の提携相手が国内に存在する利点を活かしつつ,ウェブ・アーカイビング実現に向かう第一歩を,オンラインジャーナルという比較的処理が容易な領域から踏み出したものと考えられる。KBは,ウェブ情報への着実な対処の途上にある。今後の動きが無視できない。
Ref.
Elsevier Science and Koninklijke Bibliotheek. "National Library of the Netherlands and Elsevier Science make digital preservation history". (online), available from < http://www.elsevier.com/homepage/newhpgnews/preview/KB/links/link5.htm [91] > and < http://www.kb.nl/kb/pr/pers/pers2002/elsevier-en.html [92] >, (accessed 2003-02-04).
Dutch Publishers' Association et al. "Arrangement for depositing electronic publications at the Deposit of Netherlands Publications in the Koninklijke Bibliotheek". (online), available from < http://www.kb.nl/kb/dnp/overeenkomst-nuv-kb-en.pdf [93] >, (accessed 2003-02-04).
KB. Articles. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/menu/cat-art-en.html [94] >, (accessed 2003-02-04).
KB. Deposit of dutch electronic publications. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/dnp/dnep-en.html [95] >, (accessed 2003-02-04).
KB. Digital archiving and preservation. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/menu/ken-arch-en.html [96] >,(accessed 2003-02-04).
KB. e-depot: KB accepted new system october 1. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/ict/dea/planning-en.html [97] >, (accessed 2003-02-04).
KB. Electronic journals - full-text articles. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/zoek/db/etij-en.html [98] >, (accessed 2003-02-04).
KB. Project history. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/ict/dea/ltp/jointstudy/page1.html [99] >, (accessed 2003-02-04).
鈴木敬二. 在外研究報告:オランダにおける大学図書館活動. (オンライン), 入手先 < http://www.ulis.ac.jp/library/Choken/1999/choken7_15.html [100] >, (参照 2003-02-04).
Verhoeven, Ir. Hans. Archiving Web Publications. (online), available from < http://www.kb.nl/kb/ict/dea/ltp/reports/6-webpublications.pdf [101] >, (accessed 2003-02-04).
欧州の動向については本誌(CA1467 [83]参照)で報告されたようにいくつかのプロジェクトがある。ドイツに関しては,本誌でも電子図書館関連の報告がなされており(CA1257 [102],1263 [103],1270 [104]参照),欧米諸国に遅れをとっているわけではない。本稿ではドイツ図書館(CA1144 [105]参照)を含めたプロジェクトとドイツ全体の政策として構想された「ドイツ・ネットワーク情報イニシアチブ( Deutsche Initiative fuer Netzwerkinformation: DINI)」の動向を報告する。
電子出版物の収集活動に関しては,すでに報告されている(CA1204 [106]参照)。DINIの動向を要約すると,ネットワーク情報資源の収集・保存・管理・利用という側面からのみを検討するのではなく,戦略的な視点で構成されている。つまり連邦教育学術省(BMBF)が進める電子図書館プロジェクトDigital Library Forum (DLF)の一環に組み込まれている。ウェブ・アーカイブの収集対象としてネットワーク情報源すべてを対象にするのではなく,大学が刊行する「灰色文献(graue Literatur)」(商業ベースに乗りにくい出版物である博士学位論文,教授資格論文(Habilitationsschrift)等が最初に指定された対象である。)を優先している。米国でのオープン・アーカイブ・イニシアチブ(OAI)を範とし,ドイツ版OAIと位置付け,世界的な学術情報流通ネットワークでの利用に資することを目的としている。戦略的な施策の背景には,2002年に公表された「生徒の学習到達度調査(OECD/PISA: OECD Programme for International Student Assessment)」での順位が加盟国中平均20位前後という衝撃的な結果がある。教育改革の一環としてEラーニング政策を掲げ,ネットワーク情報の普及と推進に連邦を挙げて取り組む姿勢を顕著にしている。DINIの特徴に教育の基盤として組み込まれている点を挙げることができるかもしれない。DINI発足の端緒は,1991年秋の第1回学術計算機センター所長会議とドイツ図書館協会の第4部会が共催した「新しいコミュニケーションと情報サービス:学術計算機センターと大学図書館の連携の可能性と形態」会議に遡る。関連機関や諸学会が数年おきにネットワーク情報に連関するシンポジウムやワークショップを開催しながら,現在の組織を発足させたのは2000年初頭である。以後,年次総会を開きながら戦略的な議論を煮詰めている。以下,年次総会のテーマを示す。
DINIは,会議を重ねながら参加機関と協定を取り結ぶことで事業を具体化している。主要な活動をあげておく。
さらにネットワーク情報の生産者組織「IuKイニシアチブ:ドイツにおける学術情報とコミュニケーション(IuK Initiative: Information und Kommunikation der wissenschaftlichen Fachgesellschaften in Deutschland.)」との共同作業推進を協定した。重点領域は次の4点である。1)メディア制作,2)教育におけるビデオ技術とその応用シナリオ,3)公開設置コンピュータ,4)電子出版。(協定草案2001年3月14日 トリール大学)
「DINI展望のためのブレインストーミング」の会議(2002年1月 ゲッティンゲン大学図書館)では,「重点作業領域2002」として,9つのグループに分かれて問題を検討することが取り決められた。
重点領域のひとつ「電子出版」に関して,第1回年次総会の成果物として『大学での電子出版:勧奨事項 (Elektronische Publizieren an Hochschulen: Empfehlungen)』が刊行された。その中では,電子出版の特徴を活かして,可能な限り著者が作成するデータを自動的に図書館システムの目録作業に活用する視点を用いて以下のようにまとめられている。
勧奨案では,著者の視点,利用者の視点,図書館,計算機センター,大学経営,出版の6項目に配慮することが確認されている。
現在のDINIの参加機関数は下記のとおりである。バイエルン州立図書館など主要な大図書館が参加していない。
機関種別 | 参加登録数 |
図書館 | 23 |
メディア・センター | 14 |
計算機センター | 15 |
専門学会 | 4 |
参加機関数が増えれば,ネットワーク情報資源が産み出す知的生産は著しく伸びるであろう。東西ドイツの統合が財政を逼迫させ,ドイツ図書館研究所の閉鎖などの問題を誘発しているが,統合の弊害を解決しながら学術情報政策は成果をあげている。DINIはいずれ国際的に大きく開花し,利用されるであろう。
脱稿を前にして,メーリング・リスト上でミュンヘン大学に提出した博士論文がフランスのサイトで閲覧可能と著者自ら知らせてきた。論題は「電子出版影響下でのSTM雑誌の変革」とある。ネットワーク情報資源のダイナミックな運用に直面した一瞬であった。ネットワーク情報資源は共有が容易である。共有の相乗効果が知の創造を活性化するとスタンフォード大学のレッシグは運動を推進しているが,欧州の動向はこの運動をまさに実践しているともいえよう。知をネット環境で共有する意義が,知の公共性を改めて問い質しているように思われる。
Ref.
Deutsche Initiative fuer Netzwerkinformation(DINI). (online), available from < http://www.dini.de/index.php [107] >, (accessed 2003-01-24).
digital library forum. (online), available from < http://www.dl-forum.de/ [108] >, (accessed 2003-01-24).
IuK Initiative. (online), available from < http://www.iuk-initiative.org/ [109] >, (accessed 2003-01-24).
Dissonline.de: Digitale Dissertationen im Internet. (online), available from < http://www.dissonline.de/ [110] >, (accessed 2003-01-24).
村山正司. 「著作権拡大は創造性殺す」:『コモンズ』の著者レッシグ氏に聞く. 朝日新聞. 2003-01-09. (夕刊)
Stanford Law School Lawrence Lessig. (online), available from < http://cyberlaw.stanford.edu/lessig/ [111] >, (accessed 2003-01-24).
インターネット資源は代々受けつがれていくべき遺産であり,その保存は緊急に実行されなければならない。フランス国立図書館(Bibliotheque nationale de France: BnF)はこれまでも「記憶の機関」として,納本制度により,1537年図書,1921年定期刊行物,1992年音楽,ビデオ,マルチメディア,ソフトウェアとその収集対象を拡げてきたが,ウェブ・アーカイビングという新しい使命をどのように果たしていくべきか探るために,1998年からいくつかの予備研究をスタートさせた。
技術面ではNEDLIBに参加することで,BnFは他の国立図書館と親密な交流を行い,特に収集ロボットの実験に協力した。
1999年にはドキュメントコンテンツの研究が行われた。この研究はBnFが提供しているサイト集"Signets de la BnF"の中から,大学,研究所などが提供する23のサイトをサンプルとして選び,146,000のファイルについて,そのタイプ,容量,リンク数,メタデータの分析を行ったものである。その結果,(1)サイト全体の一括収集の必要性,(2)豊富なコンテンツ,(3)メタデータ項目の小なさ,(4)リンクの多さという,ウェブの納本制度のための重要な諸点が明白になった。
2000年には,国立高等情報科学図書館学校(Ecole nationale superieure des sciences de l'information et des bibliotheques : ENSSIB)と共同でフランスの電子雑誌の予備調査が行われた。結果,その多くが不安定,不定期で出版の様式が絶えず進化する電子雑誌の調査は,その時点では困難であることが明らかになった。6月には,スウェーデン国立図書館が1997年から行っているバルク収集についての研究も行われた。
これらの研究を受けて,7月,法定納本制度学術委員会は,インターネットサイトが有益な共有財としての性格をもち,オンラインドキュメントにも納本制度を拡大する必要性があると判断を下し,文化通信省に勧告がなされた。
BnFは現在,将来の新法の枠内で大規模にウェブ・アーカイビングが行われるように,ウェブの収集選択,変換,保存に関わる運営,処理についてさらに研究を積み重ねている段階である。
BnFのウェブ・アーカイビングの特徴は,できるだけ自動収集を行い,必要なときだけ人間が介入する方法にある。BnFは2001年から協力関係にあった国立情報処理・自動化研究所(Institut national de recherche en informatique et en automatique : INRIA : 研究省および経済・財政・産業省の監督下にある科学技術機関)と協力して,包括的なウェブ・アーカイビングのための初めての実験を行った。自動収集プロジェクト「Xyleme」においてINRIAが開発したロボット技術を基礎とし,収集範囲はフランスのドメイン.frにしぼられた。スナップショットによる収集の後,職員によってデータの分析が行われた。
ロボット収集と人手による選択の比較をするために,2002年冬,BnFはサイトの重要度を推測する調査を実施している。8人の専門知識をもつ職員が参加して,ランクづけされたサイトを標本評価した。調査標本は2001年秋にXylemeによって収集された8億ページから抽出され,国のドメイン.frに限られた。標本サイトの重要度は,当該サイトにリンクしている外部ページの数に基づいたXylemeのランキングアルゴリズムを用いて10から100までの数値で表され,その数値をもとに9つのレベルに区切り,各レベルごとに100のサイトを選択した。応答がないサイトとe-コマースサイトについては,手動で664サイトが除かれた。残った236サイトについて,職員が,(1)収集されるべきではない,(2)収集されてもよい,(3)コレクションの中にある方がよい,(4)確実にコレクションの中にあるべきだ,という4レベルで評価を行った。理想の評価と考えられる職員評価の中間値が,Xylemeのランキングアルゴリズムに基づいた選択と比較された。その結果は,Xylemeのランキングアルゴリズムに基づく選択が,人の評価にかなり近かった。積極的には収集しない(1)と(2)のレベルにおいて両者の合致率は60パーセント,積極的に選択するレベル(3),(4)においては75パーセントであった。この結果をBnFは肯定的に評価しており,主題を限定すれば合致率はさらに向上すると見ている。
BnFはまた,データベースなどの深層ウェブについても実験を行った。視聴覚資料部によって選択された16サイトについてウェブ管理者より情報を得,小さなロボットによってそのコンテンツを収集する試みを行った。その結果,ほとんどのサイトがダウンロードできず,中には,巨大容量のもの,静的サイトが動的に変化するもの,キャッシュストリーミング技術を使用しているものなどが含まれ,自動アーカイビングが困難であることが判明した。
ウェブページやサイトを分析して評価することは,大規模なウェブコレクションを築くための優先課題である。現在は人によっても,またロボットによっても満足する選択はないであろう。さらなる技術と実験が必要である。
Ref.
Abiteboul, S. et al. "A First Experience in Archiving the French Web." (online), available from < http://www-rocq.inria.fr/~cobena/Publications/archivingECDL2002.pdf [112] >, (accessed 2003-1-10).
BnF. "Depot legal et numerotations." Informations pour les professionnels. (online), available from < http://www.bnf.fr/pages/zNavigat/frame/infopro.htm [113] >, (accessed 2003-1-10).
Masanes, J. "Archiving the Web : experiments at the BnF." DNER. (online), available from < http://www.dpconline.org/graphics/events/presentations/pdf/Masanes.pdf [114] >, (accessed 2003-1-11).
Masanes, J. Towards Continuous Web Archiving: First Results and an Agenda for the Future. D-Lib Magazine. 8(12), 2002. (online), available from < http://www.dlib.org/dlib/december02/masanes/12masanes.html [115] >, (accessed 2003-1-10).
スウェーデン国立図書館(Kungliga Biblioteket)は1996年から「Kulturarw3 projekt(ウェブ文化遺産計画)」(CA1214 [116]参照)と称して,ウェブ上の情報資源を収集し,保存し,利用可能にするウェブ・アーカイビング計画を実行中であるが,2002年5月に関係する政令が出たので,ここに紹介する。
政令のタイトルは「国立図書館のデジタル文化遺産計画(訳注:ウェブ文化遺産計画)における個人情報の処理に関する政令(2002年法令第287号)」である。
政令制定の背景には国立図書館がウェブ・アーカイビングを行うことに関する法的根拠の曖昧さがある。ウェブ・アーカイビングはロボットと呼ばれるプログラムを用いてウェブ上の情報を自動的に収集するため,個人情報の保護の問題が生じてくる。関係する法律として1998年の個人情報保護法(Personuppgiftslagen(1998: 204))があるが,国立図書館がウェブ・アーカイビングを行うことについて直接の規定はない。国立図書館は1996年の計画開始当初から,収集を妨げる規定は法律上存在しないという解釈をとってきたが,一方で収集した情報資源に対するアクセスの許可申請は当面すべて拒否してきた。2001年の夏,計画の合法性に疑問をもつ者が現れ,個人情報保護法の監督官庁であるデータ検査院が疑義の一部を認めたことから,問題は表面化した。国立図書館はこれに対し裁判所に異議の申立てを行い,一方で政府も政令の制定を急いだ。制定に中心となって取り組んだのは教育省である。政令は2002年5月8日に制定された。政令は国立図書館に対し,ウェブ上の情報資源を収集する権限のみならず,図書館の敷地内でこれを利用させる権限をも与えている。
政令の具体的な内容は次のとおりである。政令は全13条からなる。
第1条は政令の適用範囲である。「この政令は,デジタル文化遺産計画に係る国立図書館の業務における個人情報の自動処理に対し,完全に,又は部分的にこれを適用するものとする」(条文を全訳,以下同じ)。
第2条は定義規定である。「(第1項)この政令においてデジタル文化遺産計画(訳注:以下,計画という)とは,インターネット上にスウェーデンの資料の形態で発表される国のデジタル文化遺産を自動ロボット技術を用いて収集し,保存し,かつ利用可能にする国立図書館の計画をいう」。「(第2項)この政令においてインターネット上で発表されるスウェーデンの資料とは,アドレス,名宛人,言語,著者又は発信者を媒介として,スウェーデンに属するとされる資料をいう」。
第3条は個人情報保護法との関係を規定する。「(第1項)個人情報保護法(1998年法令第204号)は,この政令又は同法第2条にいう別段の定めがある場合を除き,計画における個人情報の処理にこれを適用する」。「(第2項)記録された個人は,この政令により認められる処理に反対する権利を有しない」。
なお個人情報保護法については専修大学名誉教授の菱木昭八朗氏による全訳,解説があるが,その概要を述べると次のようになる。同法は「個人情報」を「処理される情報の対象となっている生存者に関する直接的又は間接的なすべての個人情報」と定義する(第3条)。また「個人情報の処理」を「個人情報の収集,記録,編集,蓄積,改訂,変更,授受,利用,第三者を通じての情報の提供,拡散,その他情報の供給,編成,合成,封鎖,消去又は破壊等に関する個別的もしくは一連の作業」と定義し(第3条),個人情報の全部又はその一部が電算機によって処理される場合には同法を適用するとしている(第5条)。そして個人情報を処理する「個人情報管理者」は,処理される個人情報の対象者である「被記録者」の同意がある場合か,又は法的義務を履行するために必要な場合など特段の事由がある場合に限り,個人情報を処理することができる(第10条)。個人情報管理者は処理に先立ち監督官庁に届け出を行うか,又は個人情報が適法,適正に処理されているか否かを独立して監視する自然人である「個人情報代理人」を選任する(第36-37条)。個人情報代理人は処理の方法に瑕疵を発見した場合,そのことを個人情報管理者に指摘しなければならず,個人情報管理者が早急に改善措置を講じなかった場合,その事実を監督官庁に報告しなければならない(第38条)。監督官庁は処理が行われている場所への立ち入り検査を行い,改善を指示し,又は制裁金を付して処理の中止を命ずる等の権限を有する(第43-47条)。監督官庁はデータ検査院である(個人情報保護規則(Personuppgiftsfrorning(1998: 1191))第2条)。
話を戻して政令第4条は個人情報の責任についての規定である。「国立図書館は,計画における自己の個人情報の処理に対して,個人情報に関する責任を負う」。なお個人情報管理者は個人情報保護法により,様々な注意義務や安全対策を講じる義務を負っている(第9条,第31-32条など)。
第5条は計画の目的について規定する。「個人情報は,研究および報道の必要を満たすために,計画において処理することができる」。
第6条は「センシティブ(訳注:特に注意を要する)個人情報」の処理について規定する。「個人情報保護法第13条にいうセンシティブ個人情報は,この政令第5条にいう目的を満たすために不可欠である場合に限り,計画において処理することができる」。個人情報保護法第13条のセンシティブ個人情報とは,人種,民族,政治信条,信教,思想,労働組合への加入,健康および性生活に関する個人情報をいう。
第7-10条は計画のためのデータベースについて規定する。「(第7条)国立図書館は,第5条に定める目的のために用いられる個人情報を,計画において自動処理により収集しデータベースとして保有することができる」。「(第8条)本データベースは,インターネット上で公開されたスウェーデンの資料中の個人情報のみを,計画に基いて処理することができる」。「(第9条)本データベース内の情報は,研究に用いることを目的とする場合に限り,自動処理のための媒体(訳注:CD-ROMなどの媒体)に転送することができる。国立図書館は,原価に相当する金額について,当該媒体の代価として料金を徴収することができる」。「(第10条)本データベース内の情報について,その直接の取得は,国立図書館内の端末を通してのみ,認められる」。
第11条は,検索語に関する規定である。「個人情報保護法第13条にいうセンシティブ個人情報および同法第21条にいう個人情報は,検索語としてこれを便用することはできない」。個人情報保護法第21条にいう個人情報とは,犯罪,犯罪事件に関する判決,刑事訴訟手続きによる処分又は行政手続きによる自由拘束に関する個人情報である。
第12条は訂正および損害賠償に関する規定である。「訂正および損害賠償に関する個人情報保護法の規定は,この政令に基づく個人情報の処理にこれを適用する」。個人情報保護法は適法に処理されていない個人情報について,被記録者による個人情報管理者への訂正請求を認めている(第28条)。また同法の規定に反して他人に対し損害を与えた場合や,人権侵害によって被記録者に損害を与えた場合には,その損害を賠償しなければならないとしている(第48条)。
第13条は提訴に関する規定である。「個人情報保護法第26条に基づく情報提供申請に対する国立図書館の訂正又は拒否の決定は,行政法(1986年法令第223号)第22条に定める一般行政裁判所にこれを提訴することができる」。個人情報保護法第26条は1暦年に1回,無料での,被記録者による個人情報管理者への情報提供申請を認めている。
以上の政令制定の効果についてスウェーデン国立図書館のトマス・リドマン(Tomas Lidman)館長は,「非常に長期的な視野に立ち国際的にも高く評価されている当館の計画が最終的に公式の承認を得ることができてうれしい」と述べている。
調査及び立法考査局社会労働課:井田 敦彦(いだ あつひこ)
Ref.
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