カレントアウェアネス・ポータル
Published on カレントアウェアネス・ポータル (https://current.ndl.go.jp)

ホーム > カレントアウェアネス-E > 2007年 (通号No.98-No.120:E588-E738) > No.105 (E636-E642) 2007.04.25

No.105 (E636-E642) 2007.04.25

  • 参照(16261)

E636 - 図書館の日常の写真,続々と!

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E636

図書館の日常の写真,続々と!

 

 “ライブラリーマン”を名乗る男が,こんなことを言い出した。

 「1年間,毎日1日1枚の写真をウェブにアップするのは,かなりシンドイことかもしれない。けれども,365日で365枚の写真をアップするのであれば,できるかもしれない。もしそれをあなたの図書館がやったら,それはとても魅力的なコンテンツになるのではないか?図書館の活動を地元のみんなに紹介することもできるし,1年分の写真が集まればもしかしたら地元の新聞社もニュースとして紹介してくれるかもしれない。すばらしいアドヴォカシーだよね!」

 ライブラリーマンは,その名も“Libraryman”というウェブサイトを運営している人物であり,ポーター(Michael Porter)という実在の図書館員である。彼は,Yahoo!系列の画像共有サイト“flickr”に,“ 365 Library Days Project”というコーナーを作り,プロジェクトへの参加を呼びかけた。すると,多くの図書館員が反応し,じわじわと,世界の図書館の写真が集まりはじめた。

 ビルの谷間にそびえ立つガラス張りの公共図書館,本の読み聞かせをする図書館員とそれを聞く子どもたち,閲覧室で本に埋もれる利用者,本を積んで一心不乱に勉強する学生,フォーラムで熱弁をふるう図書館員,図書館友の会の勧誘パンフレットの展示コーナー。こういった写真は,どこかで目にしたことがあるだろう。けれども,世界中の図書館を見てきた人でも,図書館の閲覧室でハープを奏でる女性,図書館の庭と思しき場所で行われているイベントで犬にマイクを向ける図書館員, “Second Life”というオンライン上の仮想都市コミュニティサイトに作られた図書館などは,あまりお目にかかったことはないかもしれない。もちろん,奇をてらった写真ばかりではない。建物概観の写真,書棚の写真,児童室の写真,職員用の喫茶コーナーの写真,図書館員の集合写真など,ごく普通のものも数多く登録されている。被写体は様々だが,どの写真も図書館の現在を映し出している。

 “flickr”には,1日1枚,自分の写真を投稿するという“365 Days”プロジェクトがあり,なかなかの人気を誇っている。また,米国の図書館の中には,ソーシャルネットワークサイトの1つとして,その活用に熱心なところも多い(CA1624 [1]参照)。そのような中,ライブラリーマンの音頭ではじまったこの企画。1年後にどこまで成長するだろう。2007年4月8日のスタートからまだ17日。日本の図書館はまだ登録していないようだが,米国,英国,カナダなどの図書館から,4月24日時点で既に662枚の写真が登録されている。“flickr”のスライドショーで,覗いてみてはいかがだろうか。

Ref:
http://www.flickr.com/groups/365libs/ [2]
http://www.flickr.com/groups/365libs/pool/show/ [3]
http://www.libraryman.com/blog/2007/04/08/365-library-days-project-the-beginning/ [4]
CA1624 [1]

  • 参照(17715)
カレントアウェアネス-E [5]
図書館事情 [6]
米国 [7]

E637 - IFLA,2007年国際マーケティング賞発表

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E637

IFLA,2007年国際マーケティング賞発表

 

 国際図書館連盟(IFLA)は2007年4月11日,第5回の国際マーケティング賞を発表した。これは,IFLAの管理・マーケティング分科会が実施しているもので,毎年,「創造性に富み,成果指向的なマーケティングプロジェクトまたはキャンペーンを実施した組織」を募集し,表彰している。

 今回は米国,英国,シンガポール,アルゼンチンなど世界12か国から24の図書館・機関が応募した。この中から,マーケティングの戦略的アプローチ,創造性・オリジナリティ・革新性や社会的価値,人々の注目を集め図書館活動を支援する可能性などの基準に従い,受賞館が選ばれた。

 第1位に選ばれたのは「子どもがいる学生に配慮した図書館サービス」を実施したエストニアのタルトゥ大学図書館である。大学の試験期間中,安心して勉強に専念できるよう,開館時間を増やすとともに,保育園が閉まる時間以後に図書館がベビーシッティングを行うというサービスを提供したものである。多様な学生のニーズに応えるサービスであることが,授賞理由として挙げられている。

 第2位は,「ブックモービル巡回」プロジェクトを実施したクロアチアのザダール公共図書館に授与された。これは,ザダール郡内の戦争被災地域に住む児童・生徒,障害者,高齢者のために,同館がCDやDVDのコレクションを収載し,無線インターネット接続機能を備えたブックモービルを巡回させたものである。第3位は,「市場で読書」キャンペーンを実施したペルーのリマ公共図書館である。これは,図書館資料をカートに積み,市場を押して回るもので,リマの市場に子ども連れで来ている商人に読書を勧めるものである。ただ資料を提供するだけでなく,図書館の利用者登録も促したという。

 なお,第1位の図書館は,2007年IFLAダーバン大会(南アフリカ)に招待されるほか,1,000ドル(約11万9千円)のマーケティング資金も提供される。IFLAはこの表彰により,図書館のマーケティング事業を奨励するとともに,優れた事例を共有できるようにすることを目的として掲げている。

Ref:
http://www.ifla.org/III/grants/ima-award.htm [8]
http://www.ifla.org/III/grants/marketing-award.htm [9]
http://www.ifla.org/III/grants/3m-award.htm [10]

  • 参照(12227)
カレントアウェアネス-E [5]
図書館事情 [6]
図書館経営 [11]
IFLA(国際図書館連盟) [12]

E638 - CiNii収録の学術論文データ,Google Scholarから検索可能に

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E638

CiNii収録の学術論文データ,Google Scholarから検索可能に

 

 国立情報学研究所(NII)は2007年4月9日,学術論文データベースサービス“CiNii”で提供している日本の主要学術雑誌の約300万件の論文データを,Googleによるクロール(ロボットによるデータ収集)の対象としたことを発表した。

 これにより,Googleが提供している学術論文専用検索エンジン“Google Scholar”(E273 [13],CA1606 [14] 参照)から,CiNiiが提供している論文の論題,著者名,抄録等が検索できるようになった。検索結果からは,CiNiiの各論文情報の画面に遷移し,本文が電子化されているものについては直接本文データ(一部は有料)にアクセスすることができる。

 なお,Google Scholarは2006年から,科学技術振興機構(JST)の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE) で提供されている電子ジャーナルを検索対象としているほか,日本の各大学の機関リポジトリ収録文献も検索対象に続々加えている。成長著しいGoogle Scholarの動向から目が離せない。

Ref:
http://www.nii.ac.jp/news_jp/2007/04/300niigoogle.shtml [15]
http://ci.nii.ac.jp/ [16]
http://scholar.google.com/intl/ja/ [17]
http://info.jstage.jst.go.jp/society/announcement/index.html#03 [18]
E273 [13]
CA1606 [14]

  • 参照(17317)
カレントアウェアネス-E [5]
学術情報 [19]
日本 [20]

E639 - グラフィックノベル事始め

  • 参照(13827)

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E639

グラフィックノベル事始め

 

 バットマン,スパイダーマン,シン・シティ。米国では「グラフィックノベル」(graphic novel)をベースにメディアミックスで人気を博す作品が,近年数多く現れている。グラフィックノベルとは,イラストと文章で綴られ,一定の連続性のある作品のことであり,「右開き」という特有のフォーマットを持つ日本のマンガも,“manga”として,グラフィックノベルの一角で存在感を増しつつある。

 グラフィックノベルのこのような展開を受けて,米国の図書館界でも,グラフィックノベルに対する理解が深まりつつある。例えば,図書館員の選書ツールとなっているLibrary Journal誌やSchool Library Journal誌などにグラフィックノベルの多くの書評が掲載されており,また米国図書館協会(ALA)のレファレンス・利用者サービス部会(RUSA)の分科会が示した書評についての手引き(a href="http://current.ndl.go.jp/e567 [21]">E567参照)の中でも,グラフィックノベルについて独立した項目が立てられている。また,ALAのヤングアダルト図書館サービス部会(YALSA)でも,優れたグラフィックノベルの情報を集めている。

 ALA/RUSAが刊行するReference & User Service Quaterly誌2007年1月号に 掲載されたコラム「グラフィックノベル事始め」(Getting Started with Graphic Novels)では,グラフィックノベルを知るための入門書・専門書,選書担当者のためのツール,蔵書構築の核となる作品などが紹介されている。このうち選書ツールとしては,上述の雑誌のほか,ウェブサイトとして,ティーン向けの作品の書評を掲載している“No Flying, No Tights”,日本の作品にも数多く言及している“Recommended Graphic Novels for Public Libraries”,図書館員用メーリングリストも併せて運営している“Graphic Novels for Libraries”,そして日本のアニメ・マンガに特化した“A Librarians's Guide to Anime and Manga”を紹介している。選書ツールの充実ぶりとともに,マンガの影響の大きさが覗える。

 このコラムの執筆者であり,ペンシルベニア州立大学のレファレンスライブラリアンであるベーラー(Anne Behler)は,グラフィックノベルが「嫌々本を読んでいる読者(reluctant reader)を本の世界に誘う効果的なツール」であり,また「蔵書を豊かで深いものにし読書への愛をより一層育むもの」であると,その重要性に対する認識を示している。

Ref:
http://www.rusq.org/wp-content/uploads/2007/winter06/alert_collector.pdf [22]
http://www.ala.org/ala/yalsa/booklistsawards/greatgraphicnovelsforteens/gn.htm [23]
http://www.libraryjournal.com/ [24]
http://www.schoollibraryjournal.com/community/Graphic+Novels/47069.html [25]
http://www.noflyingnotights.com/lair/index.html [26]
http://my.voyager.net/~sraiteri/graphicnovels.htm [27]
http://www.angelfire.com/comics/gnlib/index.html [28]
http://www.koyagi.com/Libguide.html [29]
E567 [21]
E615 [30]

カレントアウェアネス-E [5]
読書 [31]
資料収集 [32]

E640 - FRARからFRADへ: 「典拠データの機能要件」意見公募中

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E640

FRARからFRADへ: 「典拠データの機能要件」意見公募中

 

 国際図書館連盟(IFLA)は2007年4月11日,「典拠データの機能要件(Functional Requirements for Authority Data: FRAD):概念モデル」の草案を発表し,同時に7月15日までの約3か月間の意見募集を開始した。このFRADの目的は,典拠コントロールを支えるため,また典拠データの国際共有(図書館外部との共有も含む)を行うため,典拠データの要件の分析枠組みを作ることにある。

 このFRADは,これまでは「典拠レコードの機能要件(FRAR)」と呼ばれていた(E363 [33]参照)。2005年7月に発表されたFRAR草案に対し行われた意見募集では,12個人・13機関から意見が寄せられたが,FRARの概念モデルの対象が典拠「データ」であるのか,それとも典拠「レコード」であるのか,相当の混同が見られたという。モデルを作成し概念化する対象はあくまでも典拠データであり,図書館界で用いられている典拠レコードは,典拠データをひとまとめにし具現化したものである。このような関係をより明確に表すために,タイトルを「典拠データの機能要件」に変更したのである。

 また,FRAR草案に対し「このようなデータモデル化にはなじみが無く,もっと明確に説明してもらわないとわかりづらい」という意見が続出したということで,FRAD草案では説明文を変えたり,新しい図式も用意した。特に,FRAR草案に比べ,実体-関連図(Entity-Relationship Diagram: E-R図)の説明にページ数を割いている。

 このFRAD草案は意見募集の後,寄せられた意見を検討して最終案を作成し,常任委員会に諮られた後,IFLAから正式に刊行されることになっている。

Ref:
http://www.ifla.org/VII/d4/wg-franar.htm [34]
http://www.frbr.org/2007/04/12/frad-draft-2-available-for-review [35]
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004668715/ [36]
E363 [33]

  • 参照(15883)
カレントアウェアネス-E [5]
典拠 [37]
IFLA(国際図書館連盟) [12]

E641 - 2006年から2007年へ: 図書館システム市場の動向は?

  • 参照(18785)

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E641

2006年から2007年へ: 図書館システム市場の動向は?

 

 米国のLibrary Journal誌の報じるところによると,図書館システム関連の市場は,2005年度には5億3,500万ドルであったが,2006年には5億7,000万ドルとなり,総じて順調な成長傾向にある。電子コンテンツを取り扱うためのウェブ・インターフェースやツール,RFID(Radio Frequency IDentification)関連の収益が拡大し,一方で,収集,整理,閲覧・貸出等の図書館の基本的な業務を管理する統合図書館システム(ILS)による収益は,現在も売上の大きな部分を占めているのは間違いないが,減少傾向にある。

 ILSの売上の63%は旧来のレガシーシステムからの移行である。大規模な大学図書館・公共図書館の移行が段階的に縮小しているが,現状でスタンドアロンシステムが多く残る小規模公共図書館,学校図書館での移行が活発であり,これに対して企業も製品及びサービスを良心的な価格で提供している。

 ILSの新システムの導入実績については,Innovative Interfaces社が“Millennium”を67館に導入,SirsiDynix社が“Horizon”を48館に,“Unicorn”を45館に導入している。またAuto-Graphics社,Polaris社が,サーズ(SaaS: Software as a Service)モデルにより,小規模図書館をターゲットにした良心的な価格帯でのソリューションを提供し,ともに54館に導入している。一方,オープンソースのILSの導入も,数値的にも存在感を示しはじめた。ジョージア州図書館庁が開発した“Evergreen”が,同州の公共図書館255館に導入され,またオープンソースのILSの先駆的存在である“Koha”は,“Koha Zoom”などのアップグレード版が開発され,2006年末までに世界各国311館に導入されている。(CA1529 [38],CA1605 [39]参照)

 2006年の特徴として,M&A等により企業の勢力分布が変化したことが挙げられる。これについてはOCLCの動きが見逃せない。欧州のシステムベンダーであるSisis Informationssysteme社,Fretwell-Downing社,Openly Informatics社を買収するなど,欧州への地固めを行っている。また,デジタルコンテンツ管理システム“CONTENTdm”を開発したDiMeMaを買収し,さらに,書誌ユーティリティのRLGを買収している(E486 [40]参照)。OCLCは導入実績や売上データを公開していないが,Open WorldCatの実績(E354 [41]参照)なども勘案すると,図書館のバックエンドの業務全体にわたって新たな戦略を張り巡らせていると考えられる。この他,トップメーカー同士の合併として,Endeavor Information System社がEx Libris社に吸収合併され,Sagebrush社はFollett Software社に買収されるなどの動きがあった。

 機能面の特徴としては,各社がユーザインターフェースの改善にしのぎを削った年であったことがあげられる。検索結果をファセット化して表示するファセット・ブラウジング機能(E507 [42]参照),検索結果のランキング表示機能,ソーシャルネットワークの流れに乗ったレーティング機能やタギング機能(E595 [43]参照),そしてより視覚的に分かりやすいビジュアルナビゲーション機能を追及する例が多くみられた。オランダのMedialab社が開発した“Aquabrowser Library”はタグクラウドやファセット・ブラウジングを実装し,同社と契約するThe Library Corporation(TLC)社を通じて67館に導入されている。また,図書館側の開発への関与も活発であり,Ex Libris社の“Primo”,Innovative Interfaces社の“Encore”は,大学図書館等と協同で開発が進められいる。

 Library Journal誌でブリーディング(Marshall Breeding)が結論づけているように,2006年の市場動向は,電子コンテンツへの対応,オープンソース,M&Aなど,図書館システムにおける戦略の変更を示唆する重要な要素が散見され,注目する必要があろう。より詳しくはブリーディングが運営するウェブサイト“Library Technology Guides”が参考になると思われる。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6429251.html [44]
http://www.librarytechnology.org/ [45]
http://www.iii.com/ [46]
http://www.sirsidynix.com/ [47]
http://www.auto-graphics.com/ [48]
http://www.polarislibrary.com/ [49]
http://www.exlibrisgroup.com/ [50]
http://www.fsc.follett.com/ [51]
http://www.tlcdelivers.com/ [52]
E354 [41]
E486 [40]
E507 [42]
E595 [43]
CA1529 [38]
CA1605 [39]
CA1623 [53]

 

カレントアウェアネス-E [5]
図書館システム [54]

E642 - kopal: ドイツのデジタル情報長期保存協同プロジェクト進行中

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E642

kopal: ドイツのデジタル情報長期保存協同プロジェクト進行中

 

 デジタル情報の長期保存に関する技術的な調査・研究が,世界各国で進められている(E258 [55] 参照)。ドイツでも2003年から,ドイツ国立図書館,ゲッチンゲン州立大学図書館,IBM社が協力して,デジタル情報長期保存協同プロジェクト“kopal(Kooperativer Aufbau eines Langzeitarchivs digitaler Informationen)”が推進されている。その概要がLibrary Hi Tech誌の24巻4号に掲載されるとともに,図書館情報学の主題リポジトリ“E-LIS”において,全文が公開されている。

 そもそもドイツ国立図書館は10年ほど前から,デジタル出版物の長期保存について,主導的な活動を実施している。1997年には,図書館関係者や情報学の研究者,政府機関,出版関係業界からの意見聴取により,「オンライン出版物の収集」に関する定義づけを行い,ドイツ出版協会の審議を経て,政策文書としてまとめた。そこでは,すべてのオンライン出版物について,求めに応じてネットワークもしくは物理的媒体経由で提出すること,複数のフォーマットで出版されているオンライン出版物は,図書館の求めるフォーマットで提出すること,オンライン出版物と物理的媒体による出版物が刊行されていれば,両方を提出すること,などが盛り込まれた。この政策文書に基づき数年間にわたり,出版社などの協力をうけて,オンライン出版物の収集方法や長期保存に関する調査を実施した。また1998年〜2000年には,欧州納本図書館の実現を目指すNEDLIB(CA1401 [56] 参照)が実施した調査・研究活動に参加し,デジタル出版物の長期保存・長期利用に対する課題の解決に取り組んだ。

 これらの調査・研究事業と平行して,1998年からは大学図書館を通じた学術論文のオンライン収集(CA1613 [57] 参照)を, 2000年からは電子ジャーナルの収集を開始するとともに,2001年にはオンライン出版物納本のためのインターフェイス提供を開始している。一方でデジタル情報の長期保存に必要となる諸条件について検討をおこない,NEDLIBが採用する,長期保存のためのメタデータ「OAIS参照モデル」(CA1489 [58] 参照)の導入や,永続的識別子としてURN(Uniformed Resource Name)の採用を決定するとともに,画像ファイル,アプリケーションインストールファイル,プレゼンテーションファイルなど,さまざまなファイル形式を再生可能とするシステムの構築などを実施している。

 このようにドイツ国立図書館は,オンライン出版物の長期保存戦略とインフラ整備を模索しつづけた結果,2003年から2つの取り組みを開始した。kopalはその取り組みの1つであり,デジタルデータを利用可能な状態で保存する技術的なソリューションの開発を目指している。オランダ王立図書館(KB)やIBMが開発した,OAIS準拠の電子情報保存システム“DIAS(E189 [59]参照)”をベースとして,協同事業の参加者からのリモートアクセス機能や,多種多様なフォーマットで作成されたデータや,複数のメタデータ・スキーマを利用できるようにするなど,様々なカスタマイズが行われている。また図書館ばかりではなく,大学,産業界,行政部門における利用をも想定した,ビジネスモデルの開発をも視野に入れて活動を行っており,組織的な協力関係やソリューションの提供を目指している。長期保存されているデジタル情報は,もう1つの取り組みである“nestor(Network of Expertise in long-term STOrage and long-term availability of digital Resources in Germany)”を通じて提供される。“nestor”は「ドイツの記憶(Germany’s digital memory)」構築への第一歩として位置づけられている。

 kopalウェブサイトによると,2007年4月現在,多種多様なフォーマットの資料が実際に利用可能などうかを検証するために,ドイツ国立図書館やゲッチンゲン州立大学図書館の所蔵する電子資料をkopalに投入して実際にテスト運用する段階に入っている。

Ref:
http://eprints.rclis.org/archive/00009149/ [60]
http://kopal.langzeitarchivierung.de/index.php.en [61]
http://kopal.langzeitarchivierung.de/index_projektverlauf.php.en [62]
http://kopal.langzeitarchivierung.de/index_arbeitspakete.php.en [63]
http://info-deposit.d-nb.de/eng/entwicklung/entwick_technik.htm [64]
E189 [59]
E258 [55]
CA1401 [56]
CA1489 [58]
CA1613 [57]

  • 参照(14354)
カレントアウェアネス-E [5]
電子情報保存 [65]
ドイツ [66]

Copyright © 2006- National Diet Library. All Rights Reserved.


Source URL: https://current.ndl.go.jp/node/327#comment-0

リンク
[1] http://current.ndl.go.jp/ca1624
[2] http://www.flickr.com/groups/365libs/
[3] http://www.flickr.com/groups/365libs/pool/show/
[4] http://www.libraryman.com/blog/2007/04/08/365-library-days-project-the-beginning/
[5] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/2
[6] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/66
[7] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/31
[8] http://www.ifla.org/III/grants/ima-award.htm
[9] http://www.ifla.org/III/grants/marketing-award.htm
[10] http://www.ifla.org/III/grants/3m-award.htm
[11] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/73
[12] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/140
[13] http://current.ndl.go.jp/e273
[14] http://current.ndl.go.jp/ca1606
[15] http://www.nii.ac.jp/news_jp/2007/04/300niigoogle.shtml
[16] http://ci.nii.ac.jp/
[17] http://scholar.google.com/intl/ja/
[18] http://info.jstage.jst.go.jp/society/announcement/index.html#03
[19] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/82
[20] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/29
[21] http://current.ndl.go.jp/e567
[22] http://www.rusq.org/wp-content/uploads/2007/winter06/alert_collector.pdf
[23] http://www.ala.org/ala/yalsa/booklistsawards/greatgraphicnovelsforteens/gn.htm
[24] http://www.libraryjournal.com/
[25] http://www.schoollibraryjournal.com/community/Graphic+Novels/47069.html
[26] http://www.noflyingnotights.com/lair/index.html
[27] http://my.voyager.net/~sraiteri/graphicnovels.htm
[28] http://www.angelfire.com/comics/gnlib/index.html
[29] http://www.koyagi.com/Libguide.html
[30] http://current.ndl.go.jp/e615
[31] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/120
[32] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/123
[33] http://current.ndl.go.jp/e363
[34] http://www.ifla.org/VII/d4/wg-franar.htm
[35] http://www.frbr.org/2007/04/12/frad-draft-2-available-for-review
[36] http://ci.nii.ac.jp/naid/110004668715/
[37] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/60
[38] http://current.ndl.go.jp/ca1529
[39] http://current.ndl.go.jp/ca1605
[40] http://current.ndl.go.jp/e486
[41] http://current.ndl.go.jp/e354
[42] http://current.ndl.go.jp/e507
[43] http://current.ndl.go.jp/e595
[44] http://www.libraryjournal.com/article/CA6429251.html
[45] http://www.librarytechnology.org/
[46] http://www.iii.com/
[47] http://www.sirsidynix.com/
[48] http://www.auto-graphics.com/
[49] http://www.polarislibrary.com/
[50] http://www.exlibrisgroup.com/
[51] http://www.fsc.follett.com/
[52] http://www.tlcdelivers.com/
[53] http://current.ndl.go.jp/ca1623
[54] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/65
[55] http://current.ndl.go.jp/e258
[56] http://current.ndl.go.jp/ca1401
[57] http://current.ndl.go.jp/ca1613
[58] http://current.ndl.go.jp/ca1489
[59] http://current.ndl.go.jp/e189
[60] http://eprints.rclis.org/archive/00009149/
[61] http://kopal.langzeitarchivierung.de/index.php.en
[62] http://kopal.langzeitarchivierung.de/index_projektverlauf.php.en
[63] http://kopal.langzeitarchivierung.de/index_arbeitspakete.php.en
[64] http://info-deposit.d-nb.de/eng/entwicklung/entwick_technik.htm
[65] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/131
[66] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/21