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神戸女子大学文学部:久野和子(くのかずこ)
ヘルシンキ中央図書館オーディ(Oodi)(1)は、フィンランド独立100周年を祝う国の公式メインプロジェクトの一つとして建設され、101年目の独立記念日を翌日に控えた、2018年12月5日午前8時に開館した。開館記念式典では、フィンランド大統領やヘルシンキ市長らの演説のほか、有名作家の講演会やコンサート等が盛大に行われた。オーディは、フィンランドの新しい時代の幕開けを象徴するとともに、ヘルシンキ市や国の図書館全体を代表するシンボルであり、またその名のとおり、「フィンランド文化」「読書」「言論・表現の自由」「平等」「民主主義」へのOodi(頌歌・讃歌)を体現しているということである。また、2019年8月には、国際図書館連盟(IFLA)からPublic Library of the Year 2019を受賞(2)し、世界中から注目を集めている。
筆者は4年前に、当時の計画責任者であるリパスティ(Pirjo Lipasti)氏らから聞き取り調査を行い、その経過や構想を記事にまとめた(E1749 [4] 参照)。今回は、開館後、実際にオーディがどのように機能し効果を上げているのかを現地で確認すべく、リパスティ(現在はヘルシンキ市・リクハディンカト図書館勤務)氏、オーディのサービス担当責任者であるラムサ(Kari Lämsä)氏、ヘルシンキ大学図書館司書のカルホラ(Pekka Karhula)氏らから現地取材を行ってまとめたものである(3)。
オーディは、国と市の政治、経済、文化、交通の要衝地トゥーロンラッティ地区のカンサリストリ広場に建設された。建物は市民の直接投票で選ばれた地元の建築設計事務所ALA Architectsのデザインによるもの(4)である。国産の木材をふんだんに使った建物は、延べ床面積が1万平方メートルもあり、建設費9,800万ユーロ、年間運営費800万ユーロとなっている。開館時間は、平日は8時から22時、週末は10時から20時で、2019年8月末までの訪問者はすでに219万人を数え、当初予想の年間250万人を大幅に上回ることになるだろう。大人気の館内ツアーでは、3階の外の「市民バルコニー」が、国会議事堂に対して同じ目線の高さで対峙できることを示し、ここは民主主義を象徴し体現する場だと解説している(写真1)。
市の文化・レジャー担当部長であるライティオ(Tommi Laitio)氏によると、この大きな建物と立地は、「学び」が「政治」と同じくらい国にとって重要だと考えるフィンランドの社会的認識を表している(5)。さらに、オーディが、民主主義そのものの象徴として、また文化とメディアの中核として、多様な人々や隣接する芸術・文化施設等を一つにまとめ、新しい相互作用と理解をもたらすことを、市長はじめ多くの人々が期待している(6)。
実際に見る建物は、カンサリストリ広場の緑の芝生の上に浮かぶ大型豪華客船のようで、柔らかな曲線と明るい木肌、天井を覆う真っ白な「雲(雪や氷とも表現される)」によって威圧感が消され、周囲の文化施設等と調和しながら美しく輝くシンボル的存在感を放っている(写真2)。建物は橋梁構造で、1階は橋下のため柱がなく、ロビーとホールは広い多目的な公共空間となっている。様々なイベント、講演会、ミーティング、演奏会、展示などが常時各所で行われており、市民の出会いと交流の広場となっている(7)。入口近くには、資料の自動返却口、案内カウンターがあり、レストランや市民情報サービスカウンター、映画館などもある(図1)。
2階は音楽スタジオ(写真3)、VRゲーム室、PC端末の設置された学習室、メイカースペース(写真4)、グループ室のキッチン、多感覚ルーム(8)等の設備のほか、3Dプリンターや大型レーザープリンター、レーザーカッター、刺繍ミシンなども通路の作業台やその周囲に置かれているので自由に使え、最新の技術・設備を用いた創作活動による学びの場となっている。また、研究個室や学習室もあり(9)、チェスクラブやランゲージカフェ、デジタル情報ガイダンスなども定期的に開かれており、多様な学びの場と機会も提供されている。ただ、橋梁の中にあるため窓が少なく、天井も低く、本も雑誌も全く置かれておらず、一部の利用者には不評らしい。しかし、多くの若者たちにとっては、階段式の交流スペースでの仲間とのおしゃべりや最新の機器を使ったクリエイティブな活動ができると大好評であった(図2)。
3階は「ブックヘブン」と呼ばれ、児童コーナーや本・雑誌・新聞などのある読書フロアとなっている(図3)。橋桁の上に位置するため天井は高く、柱もなく、四方全面ガラス張りである。真っ白な雲のような天井に開けられた小さな天窓から自然光が柔らかく降り注ぎ、時折外から迷い込んだ鳥が植木の上で囀り、まるで天国の広場にいるような新鮮な体験が得られる。フロア両端の小高い丘陵部分からは、書架全体とフロアを一望でき、開放感とともに、他の利用者との一体感も味わえる(写真5)。床は足音を吸収する天然木で作られており、その一部にはモダンな柄のカーペットが敷かれ、カフェやソファなどもあり、乳幼児から高齢者まで共に居心地の良い「居間」にいるかのように、思い思いの読書やくつろぎの時間を過ごしていた。
このように、市民の多様なニーズに対応した特徴ある各階フロア構成になっている。ちなみに、サウナは最終計画のとおり設置されず、広い地下トイレはユニセックス形式となっている(10)。
リパスティ氏は当計画の遂行にあたって、「ライブラリー10」(11)での先進的なサービスの試行や、2,000件以上の市民の要望・意見やミーティングをもとに立案したため、障壁や批判は少なかったと述べる。10年の準備期間の間、特に役に立った参考事例が、Public Library of the Year 2016 を取得し、当時話題となっていたデンマーク・オーフス市の図書館Dokk1(12)だったと言う。しかし、Dokk1の22万冊の蔵書冊数に対し、オーディは8万5,000冊に過ぎず、開館を報じたニューヨークタイムズ紙の記事の見出しは、「ヘルシンキの新しい図書館には、3Dプリンターと電動工具がある(そして多少の本も)」(13)と少々皮肉めいたものであった。
ラムサ氏やリパスティ氏らによると、雑誌・新聞などを含めれば10万点以上が常時3階の低書架に見やすく開架され、貸出冊数は2019年1月から8月までで40万冊(うち約3分の1は児童書)を超えており、また、ヘルシンキ市図書館を構成する市内37の図書館ネットワークに加え、AIによる資料管理システムIntelligent Material Management System(IMMS)(14)が導入されたことによって、市内156万冊と首都圏の蔵書の中から、利用者の求める本を最も身近な分館で効率よく提供できているとのことだった。
また、オーディの内部空間の98%は利用者のために充てられているため、館内の総務も、市内図書館全体の運営管理、蔵書管理などの中央図書館的業務も主にパシラ図書館で行われている。ちなみに、オーディには17か国語の多言語資料や映画、マンガ、ボードゲームなどはあるが、CD・DVDなどの音楽メディアや障がい者用資料はほとんど置かれていない(15)。
「すべての人々に開かれた居住的、機能的な出会いの場」(16)との謳い文句のとおり、オーディは、誰もが「尊重」され、「平等」に「安心安全」で「居心地よい」場であり、多様な人々や資料・情報・最新技術との創造的な「出会い」と交流をもたらしている。また、オーディの計画段階の2012年当初からの重要な理念として、①開かれた非商業的公共空間、②より機能的な社会に向けての情報とスキル、③住民自身が創造する豊かな都市体験、④本のある新しい生活(トゥーロンラッティの本の家)がある。さらに、謳い文句の背景には「機能的な都市」づくりを目指すヘルシンキ市の理念(17)や公立図書館評議会(The Council for Public Libraries)の戦略 “The Way for Public Libraries 2016-2020”が提唱する図書館の中核的価値(18)が存在する。そして、2017年改正施行の図書館法(19)によって、「読書文化」「多様なリテラシーや生涯学習能力の習得」「積極的な市民性」「民主主義」「言論の自由」の促進などが、公立図書館の重要な使命として強調されることとなった。
今回の現地取材を通して、オーディが情報社会における図書館の未来のあり方を示すとともに、フィンランドの教育、文化、民主主義のシンボル的存在としてフィンランドの多くの人々に図書館全般に対する新たな認識とさらなる興味関心を喚起していることを強く実感することができた。
(1) Oodi Helsinki Central Library.
https://www.oodihelsinki.fi/en/ [6], (accessed 2019-10-05).
(2) “And the Winner is Oodi!”. IFLA. 2019-10-04.
https://www.ifla.org/node/92578 [7], (accessed 2019-10-05).
受賞理由としては、10年間に及ぶ周到な準備計画と各段階での積極的な市民参加、利用者の多様なニーズに応えたフロア構成と学び・出会いの場の提供、最上の文化と知識の普及、未来社会に向けた新テクノロジーの導入と学び、周囲や環境・エネルギーに配慮した建物、利便性、サステナビリティなどが挙げられた。
(3) 他にオーディを取り上げた文献として以下のものがある。
竹内ひとみ. “ヘルシンキ中央図書館見学記”. みんなの図書館. 2019, (510), p. 48-52.
永田治樹. “動向レポートVol.6 Dokk1からOodiへ:公共図書館の新しい表情”. 未来の図書館研究所. 2019-10-07.
http://www.miraitosyokan.jp/future_lib/trend_report/vol6/ [8], (参照 2019-10-16).
(4) “Helsinki Central Library Oodi”. ALA Architects.
http://ala.fi/work/helsinki-central-library/ [9], (accessed 2019-10-16).
(5) Rogers, Thomas. Helsinki’s New Library Has 3-D Printers and Power Tools (And Some Books, Too.). New York Times. 2018-12-06.
https://www.nytimes.com/2018/12/06/arts/design/helsinki-library-oodi.html [10], (accessed 2019-10-05).
(6) Ministry of Education and Culture. “Oodi, the library of a new era, will open to the public on the eve of the Independence Day”. Finish Government. 2018-11-30.
https://valtioneuvosto.fi/en/article/-/asset_publisher/1410845/uuden-ajan-kirjasto-oodi-aukeaa-itsenaisyyspaivan-aattona [11] , (accessed 2019-10-05).
(7) ソイニンバアラ(Anna-Maria Soininvaara)館長によると、開館から8月末現在までで、約700のイベントが実施され、6万人が参加している。
“The 2019 Winner”. Systematic.
https://systematic.com/library-learning/awards/public-library-of-the-year/vinder-2019/ [12], (accessed 2019-10-05).
ただ課題として、利用が活発すぎてイベント情報の集約、管理運営、発信などが十分できていないように感じた。例えば、集会の内容や日程が分かりづらく、EU大統領と高校生とのディスカッションが片隅のEU情報コーナーで、目立つ掲示もなくさりげなく実施されていたりした(それこそが民主主義的なのか)。
(8) イベント、ゲームなどに使える部屋で、三方の壁がスクリーンになって映像を映すことなどができる。
(9) 静かな個室やコーナーもあるが、そのような場所を求める利用者は、徒歩圏内にあるヘルシンキ大学図書館、フィンランド国立図書館の研究スペースが誰でも自由に利用可能である。
(10) 上階はトイレの数が少なく、1階から直接階段でつながる地下トイレだけが広く、ユニセックス形式になっている。それは、ジェンダーフリーの推進だけでなく、衆人監視によってドラッグ摂取などの犯罪を防ぐことも目的としているとのことであった。
(11) リパスティ氏が館長を勤めたライブラリー10は、オーディに隣接するヘルシンキ中央駅前にあった、音楽メディアに特化した(他の図書館資料も置かれていた)小さな図書館であった。音楽スタジオやステージ・音響設備、メイカースペースなど先進的なサービスを積極的に提供した試験的図書館だったが、オーディの開館によってその役目を終えた。
(12) Dokk1は、図書館、市民サービス局、プレイグラウンド、駐車場などを含む複合施設である。オーフス中央図書館はその中核に位置づけられる未来型の大規模図書館である。市民参加の立案計画や住民の多様なニーズへの柔軟な対応、優れた図書館建築などオーディとの共通点は多いが、リパスティ氏は相違点として、子どもの運動スペースや大型ゲーム機・遊具の不設置、フィンランド国民の伝統的な読書習慣(例えば貸出冊数の多さ―住民1人当たり15.6冊)を挙げた。オーディは広大な公園の中に立っており、目の前には子どもの遊び場やバスケットボールコートがある。したがって、Dokk1のようなボール遊びのできる部屋やテーブルサッカー、アーケードゲーム機を館内に設置せず、代わりに、本物のサッカーボール、バスケットボール、スケートボード、クロケット、キックバイク、縄跳び縄などを貸し出している。
(13) Rogers. op. cit.
(14) IMMSについては、以下のウェブページが参考になる。
“INTELLIGENT MATERIAL MANAGEMENT SYSTEM™”. Lyngsoe Systems.
https://lyngsoesystems.com/intelligent-material-management-system/ [13], (accessed 2019-10-05).
AIによる管理やロボットについては以下の文献が参考になる。
永田治樹. “動向レポートVol.6 Dokk1からOodiへ:公共図書館の新しい表情”. 未来の図書館研究所. 2019-10-07.
http://www.miraitosyokan.jp/future_lib/trend_report/vol6/ [8], (参照 2019-10-16).
(15) ライブラリー10にあった音楽メディアはすべてパシラ図書館に移された。障がい者用資料は以下のウェブサイトでアクセス可能である。
CELIA.
https://www.celia.fi/eng/ [14], (accessed 2019-10-05).
障がい者用の録音資料は若干オーディにもある。なお、2019年度パシラ図書館およびオーディ近隣のリクハディンカト図書館の貸出冊数は僅かな減少しかなかったため、オーディの貸出40万冊はほぼ新たな需要の掘り起こしの可能性がある。
(16) Oodi Helsinki Central Library.
https://www.oodihelsinki.fi/en/ [6], (accessed 2019-10-05).
(17) “The Most Functional City in the World: Helsinki City Strategy 2017-2021”. City of Helsinki.
https://www.hel.fi/helsinki/en/administration/strategy/strategy/city-strategy/ [15], (accessed 2019-10-17).
(18) 公立図書館評議会は、国内各地域の公立図書館組織の代表者から構成される。州立図書館館長、ヘルシンキ中央図書館など大都市の図書館館長などは常任メンバーであるが、他地域の館長は2年ごとに選ばれる。国内の全公立図書館の調整機関であり、代表・諮問機関として、公立図書館のこれからの方向性を示す共通ガイドラインを作成している。今期は図書館法の改正を受けて、図書館の中核的価値として、「平等」「責任」「コミュニティの感覚」「勇気」「言論の自由」を掲げている。
(19) Public Libraries Act (1492/2016) Translation from Finnish Legally binding only in Finnish and Swedish Ministry of Education and Culture, Finland.
https://www.finlex.fi/fi/laki/kaannokset/2016/en20161492.pdf [16], (accessed 2019-10-05).
[受理:2019-11-11]
補記:
本稿脱稿後、吉田右子・小泉公乃・坂田ヘントネン亜希『フィンランド公共図書館:躍進の秘密』(新評論、2019年)が刊行された。オーディについてさらに詳しく紹介されているので本稿と合わせて参照されたい。
吉田右子 , 小泉公乃 , 坂田ヘントネン亜希 . フィンランド公共図書館:躍進の秘密 . 新評論 , 2019, 260p.
久野和子. ヘルシンキ中央図書館“Oodi”の機能・理念とその成果. カレントアウェアネス. 2019, (342), CA1963, p. 2-5.
https://current.ndl.go.jp/ca1963 [17]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11423545 [18]
Kuno Kazuko
The Function and Concept of Oodi Helsinki Central Library and its Fruitful Effect
PDFファイル [25]
調査及び立法考査局国会レファレンス課:中村穂佳(なかむらほのか)
2015年9月、国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(E1763 [26] 参照)が採択され、2001年のミレニアム開発目標(MDGs)の後継として17個の目標からなる持続可能な開発目標(SDGs)が立てられた(表1参照)。先進国も含めた全ての国と地域を対象とし、「誰一人として取り残さない」ことを目標としたものである(1)。17個の目標とそれに関わる169個のターゲットは多岐の分野にわたるものであり、採択から4年が経過した現在では、様々な場面でSDGsに関する活動やプログラム等が行われてきている。
図書館界でも国内外で様々な取組が行われている。特に国際図書館連盟(IFLA)では2018年、11番目の目標である「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に関するポジションペーパー(2)や、図書館がSDGsの達成にどう貢献しているかをストーリー化するためのマニュアル(3)を公開している。また、各国の図書館協会や国立図書館から提供された統計等を参照できるウェブサイト“IFLA Library Map of the World”(4)に設けられたコーナー“SDG STORIES”もある。各国の図書館がSDGs関連の取組を投稿し、共有できるコーナーであり、上述のマニュアルは同コーナーへの投稿促進を目的としたものである。
日本国内でも、SDGsと絡めて、各図書館で特集コーナーが設けられるといった動きも見受けられる(5)。その背景としては、社会におけるSDGsに対する認知度の高まり、政府・地方公共団体による推進以外にも、塩崎亮氏が指摘するように、図書館とSDGsとの親和性が高いということが挙げられるだろう(6)。また、塩崎氏は、国内の図書館ではSDGsに関する取組が総じて低調であることに触れつつ、「ただ単にSDGsと関連付けて紹介・報告されていないだけとも捉えられる」とし、国内の図書館でこれまで展開されてきたサービス・事業の多くがSDGsと関わっていると指摘する(7)。筆者が確認する限りでも、SDGsとの関わりを明記していない取組の中に、SDGsの達成に貢献しているものが多く見受けられる。本稿では、そのような取組をいくつか紹介するとともに、SDGsのさらなる推進・普及のために何が必要かを考えてみたい。
No | 持続可能な開発目標(SDGs) |
1 | あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる |
2 | 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する |
3 | あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する |
4 | すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する |
5 | ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う |
6 | すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する |
7 | すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する |
8 | 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する |
9 | 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る |
10 | 各国内及び各国間の不平等を是正する |
11 | 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する |
12 | 持続可能な生産消費形態を確保する |
13 | 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる |
14 | 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する |
15 | 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する |
16 | 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する |
17 | 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する |
新潟県の阿賀野市立図書館では、館内に「けんこう交流スペース」(9)が設けられている。これは施設内のギャラリーに脳年齢・血管年齢測定器や肌年齢測定器、血圧計、フットマッサージ器、ティーサーバーなどを設置し、くつろぎながら交流できるようにしたものである。また、同施設内の創作室と呼ばれる部屋ではフィットネス機器も利用できるようになっている。日々の健康を促進するとともに、近所の人や友人、仲間たちとのコミュニケーションや、緩やかにつながる地域コミュニティ(10)の形成にもつながるものである。まさに、SDGsが第3の目標として掲げる「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」ことに関連したものと言える。
SDGsでは、「すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」を第4の目標としている。京都府立図書館が携わる「不登校児童生徒読書活動支援事業」(11)や、鳥取市立図書館によるこども食堂実施団体への図書提供事業(12)はこの目標達成に寄与している。
京都府立図書館では、府認定のフリースクールへの図書貸出や、府内公共図書館・読書施設と連携した教育支援センター・適応指導教室への図書支援を行っている。この取組は京都府教育委員会の平成30年度アクションプラン「社会的自立に向けた不登校児童生徒支援計画」に基づくもので、京都府立図書館から府内6か所にある京都府教育委員会認定のフリースクールに図書を貸し出すとともに、府内の市町村立図書館や読書施設に図書を支援し、そこから18市町村に設置されている教育支援センター・適応指導教室に図書を貸し出すといった連携事業を行うものである。
鳥取市立図書館は、「こども食堂を利用する子どもたちが、自分の力で楽しみながら読書ができ、また、夢や希望を持って将来の自分や家庭・地域を考えることができるよう支援するため」に、2018年7月からこども食堂実施団体への図書提供事業を行っている。鳥取市人権福祉センターとの連携事業であり、図書館は20冊程度の図書が入った本箱5箱程度を人権福祉センターに届け、人権福祉センターはこども食堂の開所日に1箱から数箱を持参し、子どもたちが利用できるようにする。希望があれば、読書ボランティアによる読み聞かせの仲介も行っている。
女性支援に関する取組は各地方公共団体やNPO・NGO等でも広く行われているが、大阪市立中央図書館による「WikiGapエディタソン2019 in 大阪」(13)の開催もその一つである。女性についての記事コンテンツをWikipediaに追加するというイベントであり、2019年10月にスウェーデン大使館との共催により実施された。インターネット上のジェンダーギャップを埋めることを掲げた取組であり、SDGsの第5の目標「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」に寄与するものである。
女性支援については、大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)(14)内の情報ライブラリーが行っている専門図書館としての活動も注目に値する。同館では、女性情報と男女共同参画社会に役立つ情報を中心に、女性による地域の活動グループの広報誌や行政資料なども所蔵しており、豊富な関連資料を活かして情報相談等を活発に行っている。その件数は年間数千件にのぼるという(15)。女性向けのキャリアカウンセリングやブックサロンなどのイベントも充実しているほか、ドーンセンター内に託児所が設けられ、母親がセンター内での読書や情報収集、休憩、イベント参加等の際に子どもを預けられるよう、一時保育サービスも提供している。
SDGsの第8の目標は、「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」ことである。公共図書館では、2000年前後からビジネス支援サービスへの取組が積極的になされているが(CA1950 [27] 参照)、これらもSDGsと関わりを持つものと言える。
大阪市立淀川図書館がハローワーク淀川と共催している就職支援セミナー「図書館de ハローワーク」(16)もその一例である。仕事と子育ての両立を考えている人を対象としたセミナーであり、乳幼児向けの催しの後に、ハローワーク淀川の職員によるハローワークの使い方の説明が行われる。就業支援のみならず、女性支援という側面も有する取組である。
働く人の支援と環境整備に関しては、労働専門図書館である大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)の取組も紹介したい。同館では、労使関係、労働問題と労働運動など労働に関するもの全般のほか、経済、公害問題、環境・原発問題、市民運動などの分野の書籍、及び明治期以降の社会・労働運動や産業・経済に関する資料を所蔵しており、それらを活用して労働及び労働問題に関わる情報支援を続けている(17)。その他会員限定ではあるが、閉館後の閲覧室内をラーニング・コモンズ(CA1804 [28] 参照)として利用に供し、館内資料を利用した勉強会・研究会等もできるようになっている。
ここまで、SDGsとの関わりを前面に出していなくとも、実はSDGs達成に貢献する取組が各地の図書館で行われていることを紹介した。このように見ると、SDGs達成のために国内の図書館が果たしている役割は決して小さいものではない。一方で、SDGsとの関わりが明示されていないと実態としてなされている貢献が見えにくいという側面もある。このような取組とSDGsとの関わりを明示し、図書館が果たしている貢献を可視化していくことが出来れば、SDGsのさらなる推進・普及にもつながるのではないか。
可視化を進める上では、関連する取組事例の集約・共有も有効である。「はじめに」に述べたIFLAによる“SDG STORIES”はその実践例であり、その他にも、例えば韓国図書館協会では、韓国国内の図書館におけるSDGsに関する取組を国内外で共有するため、事例収集を行っている(18)。このように各図書館の取組をまとめ、可視化し、共有することで図書館間における連携・協力ができ、またお互いの刺激にもなるのではないだろうか。
また、エル・ライブラリーやドーンセンター情報ライブラリーのような専門図書館においては、それぞれの分野と絡めたSDGsに関する取組を継続的に実施していくことができるという強みがあると言える。専門図書館については2019年の第105回全国図書館大会分科会でも「地域とつながる専門図書館」がテーマとされているように、その図書館が扱う分野を専門とする人々への奉仕だけでなく地域とのつながりも重要視されてきている(19)が、この2つの図書館は大阪市立島之内図書館作成の「中央区まちじゅう図書館マップ」(20)に掲載されているなど、地域の一図書館としても活動し、地域の中で生きてきた図書館でもある。こうした図書館では、専門資料を求める人だけではなく地域の図書館や他の施設とも連携していくことで、地域レベルでSDGsの理念を広めていくことができるのではないだろうか。
(1) “SDGsとは?”. 外務省.
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html [29],(参照 2019-11-18).
(2) “Sustainable Cities and Communities”. IFLA, 2018-02-27.
https://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/libraries-development/documents/ifla_contribution_-_ngo_mg_sdg_11_position.pdf [30], (accessed 2019-11-18).
(3) “Libraries and the Sustainable Development Goals: a storytelling manual”. IFLA, 2018.
https://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/libraries-development/documents/sdg-storytelling-manual.pdf [31],(accessed 2019-11-18).
(4) “IFLA Library Map of the World ”. IFLA.
https://librarymap.ifla.org/ [32], (accessed 2019-11-18).
(5) 国内の図書館における取組事例は以下の文献でも紹介されている。
丸山高弘. SDGs(持続可能な開発目標)と図書館. 現代の図書館. 2019, 57(2), p. 74.
(6) 塩崎亮. 国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)と図書館. 聖学院大学総合研究所NEWSLETTER. 2018, 28(2), p. 28.
http://doi.org/10.15052/00003559 [33], (参照 2019-11-18).
(7) 前掲, p. 29-30.
(8) 各目標の日本語訳は総務省の仮訳による。
“持続可能な開発目標(SDGs)”. 総務省.
http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/kokusai/02toukatsu01_04000212.html [34], (参照 2019-11-18).
(9) 阿賀野市市長政策・市民協働課. 広報あがの. 阿賀野市. 2019, 183, p. 5.
http://www.city.agano.niigata.jp/uploaded/attachment/17591.pdf [35], (参照 2019-11-18).
“本館(阿賀野市立図書館)”. 阿賀野市立図書館.
http://city.agano.niigata.jp/lib/shisetsu/ [36], (参照 2019-11-18).
(10) 緩やかなコミュニティの形成に関しては、図書館界に限らず様々な分野で言及されている。
小谷みどり. 地域の緩やかなつながりをどう作るか. Life design report. 2018,(227), p. 65-67.
平田オリザ. 市町村長「行財政特別セミナー」・地域経営塾① 新しい広場を作る:文化による街作り. アカデミア. 2014, 110, p. 2-7.
http://www.jamp.gr.jp/academia/pdf/110/110_03.pdf [37], (参照 2019-11-18).
柏市教育委員会. “柏市図書館のあり方”. 柏市. 2019-02-22.
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/280700/p046994.html [38], (参照 2019-11-18).
(11) “不登校児童生徒が夢や希望を持って成長していけるために”. 京都府教育委員会. 2019-08-30.
http://www.kyoto-be.ne.jp/soumu/kouhou/kouhou010830.pdf [39], (参照 2019-11-18).
(12) “こども食堂(実施団体)への図書提供事業を開始します”. 鳥取市. 2018-06-29.
http://warp.da.ndl.go.jp/collections/NDL_WA_po_print/info:ndljp/pid/11346305/www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1530781122087/activesqr/common/other/NDL_WA_po_5b3de460003.pdf [40], (参照 2019-11-18).
(13) “終了報告WikiGapエディタソン2019 in 大阪”. 大阪市立図書館. 2019-10-14.
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/index.php?key=jod8qbknk-510 [41],(参照 2019-11-18).
(14) ドーンセンターは一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団によって運営されている。この財団では「明るく元気な大阪のために」「女性も男性も、子どもも高齢者も、すべての人が生きやすい男女共同参画社会づくりのために」を2大スローガンに、ドーンセンターの管理運営のほか、さまざまな事業を行っている。
“運営基本方針”. 一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団.
https://www.dawn-ogef.jp/wp-content/uploads/2019/02/dawn_002.pdf [42], (参照 2019-11-18).
“設立趣意書”.一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団.
https://www.dawn-ogef.jp/wp-content/uploads/2019/02/dawn_001.pdf [43], (参照 2019-11-18).
(15) 一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団編. ドーンと未来へ:大阪府男女共同参画推進財団20年の歩み. 一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団, 2014, p. 33-34.
(16) 大阪市立淀川図書館. “図書館de ハローワーク”. 大阪市立図書館.
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/?action=common_download_main&upload_id=23405 [44], (参照 2019-11-18).
(17) エル・ライブラリーの資料は、1978年に財団法人大阪社会運動協会(2012年より公益財団法人)が設立された時から『大阪社会労働運動史』の編纂を目的に収集され始め,当初は非公開であったが2000年大阪府労働情報総合プラザの運営を始めて以降に公開されるようになった。その後2008年の大阪府労働情報総合プラザの廃止に伴い、大阪社会運動協会が蔵書を大阪府から引き取って私立図書館としてエル・ライブラリーを設立した。
谷合佳代子. エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)のデジタルアーカイブとデータベース. コンピュータ&エデュケーション. 2018. 44, p. 22-23.
https://doi.org/10.14949/konpyutariyoukyouiku.44.22 [45],(参照 2019- 11-18).
“公益財団法人大阪社会運動協会の歴史”.公益財団法人大阪社会運動協会.
http://shaunkyo.jp/shaunkyo/history.html [46], (参照 2019-11-18).
(18) “[안내]지속가능발전목표(SDGs)에관한도서관실천사례공모안내”. 한국도서관협회 . 2019-04-03.
https://kla.kr/jsp/info/association.do?procType=view&f_board_seq=56732 [47], (参照 2019-11-18).
(19) 第105回全国図書館大会三重大会. “第5分科会 専門図書館”. 第105回全国図書館大会三重大会.
http://105th-mietaikai.info/subcommittee/section09 [48], (参照 2019-11-18).
(20) 大阪市立島之内図書館. “「中央区まちじゅう図書館マップ」を作成しました!”. 大阪市立図書館. 2017-03-26.
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/index.php?key=joop4y0ln-510 [49], (参照 2019-11-18).
Ref:
Think the Earth編. 未来を変える目標: SDGsアイデアブック. Think the Earth, 2018, 176p.
尼川洋子. 女性情報のグローバルなネットワークをめざして―女性情報によるエンパワーメント戦略の展望と提言―. 国立女性教育会館研究紀要. 2004, 8, p. 93-99.
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江口愛子, 森未知, 尼川洋子, 橋本ヒロ子, 安達一寿, 堀久美. <ヌエック公開シンポジウム>女性情報を有効に使うために―女性情報シソーラスの開発と活用. 国立女性教育会館研究紀要. 2003, 7, p. 119-136.
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中村穂佳. SDGsと図書館 ―国内の取組から―. カレントアウェアネス. 2019, (342), CA1964, p. 6-8.
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DOI:
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Nakamura Honoka
Domestic Initiatives Related to Sustainable Development Goals and Libraries
PDFファイル [67]
一般社団法人文字情報技術促進協議会:小林龍生(こばやしたつお)
2019年は、平成最後の年として始まり、令和元年として暮れようとしている。本論では、新天皇即位に伴う平成から令和への改元に係わる国際符号化文字集合UCS(ISO/IEC 10646:Universal Coded Character Set)(1)とUCSに対応する民間標準規格ユニコード(Unicode Standard)(2)を巡る2つの話題について論じる。
活版で印刷された新聞や書籍を見ると、しばしば、1字分のスペースに、複数の文字を鋳込んだ活字を目にすることがある。いわゆる合字と呼ばれるもので、リガチャーとも呼ばれる。
ただし、欧文のリガチャーは、羊皮紙本の写本などで用いられていた複数のアルファベットの簡略筆写法の残滓としての意味合いが強いが、日本語活字の合字は、どちらかというと、省スペースのため、という意味合いが強いようである。
UCSには、日本の活字に由来する合字がいくつか符号位置を得ている。アンペアやメートルなどの単位を表すものが多いが、明治、大正、昭和、平成といった明治維新以降の元号も含まれている。
これらの元号の合字は、初期の情報システムにとっても使い勝手が良かったようで、扱える文字数の限られていたディスプレーやデータベースシステムに格納するデータのうち、年月日を表示したり入力したりするために多用されていた。日本最初の漢字コードのJIS規格であるJIS X 0208には含まれていなかったにもかかわらず、いわゆるメインフレームやパーソナルコンピューターには、それぞれのメーカー独自の方式で多く実装され用いられていた。そのような市場実態を反映してか、UCSにも最初の段階から符号位置を得ている。
2016年に天皇の生前退位が話題になり始めたころから、UCSに対応する国際標準化活動を行っている情報処理学会情報規格調査会SC2専門委員会(以下「JSC2」)でも、新元号の合字をどのように扱うかについての話題が持ち上がるようになっていた。
当初は、合字のメカニズムそのものが、過去の規格や実装との後方互換性を目的としたもので、規格論的にも実装技術的にも、現時点においては必ずしも必須のものではない(合字の国際符号化を行わなくても技術的には対処可能である)という観点から、新規規格化について消極的な意見が主流だった。しかし、JSC2に委員を出しているIT企業による市場調査の結果、現在稼働している行政システム、民間システムの中には、先に触れたような明治・大正・昭和・平成の元号に対応する合字の符号位置やフォントの視覚表現に強く依存する(アーキテクチャとしては過去のものとなっている)システムがいまだに多く残っていることが明らかになってきた。新元号を国際符号化文字集合に取り込まなければ、システム全体を最新のアーキテクチャに変更しなければならず、システム更改のコストが莫大な金額に上ることも判明した。
基本OSやシステムインテグレーションに係わるJSC2メンバーからの要請を受けて、2017年11月のSC2専門委員会で、新元号に対応する合字の国際標準化を促す方向での合意が成立し、国際的な働きかけが始まった。しかし、その時点では、新元号がどのようなものになるかについては、いわば影も形もない状況だった。
一方、符号化文字集合というものは、本質的には、文字の名前とビット列(UCSでは16ビットもしくは31ビット)の排他的な対応関係の集合に尽きる。そのため、まだ決まってもいない元号を符号化文字集合の中で標準化することは原理的に不可能なことだった。
そこで、JSC2は、いわば裏技とでもいうべき戦略をとることとした。すなわち、UCSの開発を担当しているISO/IEC JTC1/SC2(以下「SC2」)とユニコード技術委員会(以下「UTC」)の議長に対して、「日本の新元号がまもなく決まるが、その符号位置だけを予約し、公表してもらえないだろうか」という依頼のメールを出すこととした。
幸いなことに、これらのメールは、非常に好意的に受け止められた。
SC2においても、UTCにおいても、まさに可及的速やかに符号位置U+32FFを日本の新元号のために予約するという決議がなされ、その決議録や議事録が、世界中に公表された。
この決議録や議事録だけを拠り所として、日本のみならず、世界中の情報通信機器やシステムの新元号対応準備が始動した。
新元号「令和」は、新天皇即位に先立つ2019年4月1日に発表された。わずか1か月の準備期間にもかかわらず、5月1日の改元に際しては、さしたる大きな混乱もなく、無事に令和の時代を迎えることができた背後には、国際的な標準化コミュニティの大きな協力があった。そして、早くも5月7日、ユニコードコンソーシアムは、「令和」の合字を含むUnicode Standard Ver.12.1を公開した(3)。
新元号発表を受け、経済産業省は、いち早く4月5日付けで、「新元号名で使用する文字コードについて(周知)」(4)(以下「周知」)と題する文書を公表している。
この文書には、「令」に対応するUCSの符号位置としてU+4EE4が、「和」に対応する符号位置としてU+548C、そして、その合字としての「令和」に対応する符号位置として、先に挙げたようにU+32FFを含むブロックが明記されている。
行政府の中でIT関連産業をつかさどる経済産業省が、いち早くこのような文書を公表したことは、情報通信分野における新元号対応の混乱を事前に抑止するという意味で、非常に意義深いことに思われる。以下、符号化文字集合における「字体」概念を軸に、この文書の意義について論じる。
U+4EE4とU+548Cに対応するUCSの規格票は、図1・図2のようになっている。
UCSの統合漢字では、それぞれの国や地域から提案された文字を、一定の規則に基づいて統合し、共通の符号位置を付与している。この符号表からは、「U+4EE4に相当するのは、「令」という漢字だが、その書き方は国や地域によりいろいろな形があり、UCSとしてはそれらを統合してU+4EE4という共通の符号位置を付与している」ということが読み取れる。「和」については、細かなデザイン差があるとはいえ、議論になりそうな問題はなさそうである。
一方、日本の文字に関する規範的文書という点では、文化審議会の議論を基に内閣が告示する常用漢字表(7)も欠かすことができない。当然ながら、「令」も「和」も、文字種としては常用漢字表に含まれているが、「令」については、特に、「(付)字体についての解説 第2 明朝体と筆写の楷書との関係について 2筆写の楷書では,いろいろな書き方があるもの (6)その他」として、図3のような記載がある。
UCSの規格票(図1)と常用漢字表の例図(図3)を見比べてみると、UCSの規格票の左の3個の字の形が、常用漢字表の筆写の楷書体(右側)と類似している。実際、一般の社会生活においては、手書きの際は、図4の形を用いることが多いだろう。
さらに、図6は、菅義偉内閣官房長官の記者発表の折の写真である。
常用漢字表の例図(図3)の二つの手書き字形と微妙に異なっている。
うがった見方ではあるが、ここに示された令の形も、存外、熟慮を重ねた上で決められたものではないかとも思われる。
この記者発表の形が、図4であったり図5であったりした場合、内閣府が発表したのだから、図4の形を用いなければならない、いや、図5の形が正しい、といった些末な議論が巻き起こることは必定だったであろう。
経産省が「周知」を出した背景には、これらの字の形を巡る混乱を未然に防ぐ、という意図があったのではないかと推測される。
さて、ここまで、あえて字の形というあいまいな表現を遣ってきたが、この議論の背景には、「字体」概念と「字形」概念の相違についての問題が横たわっている。
「字体」と「字形」の概念上の区別については、文字コードの関係者や日本語学の専門家の間では常識となっているが、一般の人々にはあまり理解されていないようである。また、この「字体」と「字形」の概念上の区別について、文化審議会国語部会の答申類や符号化文字集合標準における考え方とは異なる理解を持った人たちが散見される。
これらの概念の相違については、以前論じたことがあり(10)、また、文化庁が公表している「常用漢字表の字体・字形に関する指針」(11)にも、優れた解説があるので、ご参照いただきたい。
ここでは、
字体とは、文字の骨格を表す抽象概念
字形とは、個別具体的な文字の視覚表現といった程度のものと、理解しておいていただきたい。
先のUCSの規格票における「和」の例は、字形としては微細な差があるが、字体としては同一、ということであり、「令」の例は、字体は国や地域によって異なるが、同一の符号位置に統合されている、ということになる。
常用漢字表の例は、明朝体活字の字体と手書き楷書体の字体は、異なる場合があり、場合によっては、手書き楷書体でも、複数の字体が並立する場合がある、ということになろうか。
当然ながら、複数の字形の集まりの、どこに、字体としての異なりの線を引くかは、それこそ、十人の論者がいたら、百通りの線が引ける、という状況を呈する。先の、官房長官による記者発表の揮毫を例とすると、この形を「令」(図5)という字体の微細な字形差と捉えるか、新たな独立した字体と捉えるか、ということになる。
経済産業省の「周知」は、UCSの例示字形に示されたような字の形の差(字体差または字形差)に拘泥する必要はない、ということを、新元号の発表から時を経ずに明確に示したものと言えよう。
本論では「令和」と国際標準を巡る2つの話題を取り上げた。この2つの話題の背後には、技術の発達による地球上の情報通信環境の平準化という大きな動きの中で、個々の言語文化をどう保持継承していくかというやっかいな問題が横たわっている。現在、元号に類する年代表記が日常的な社会生活の中で用いられているのは日本だけだと仄聞したことがある。たった一つの符号位置のこととはいえ、日本からの要請に対して、SC2やUTCがとった迅速かつ好意的な対応は、筆者にはいささか意外な喜びだった。また、経済産業省の「周知」公表も、日常生活に係わる情報通信システムにとって国際標準との整合性が非常に大切だということについての理解が、行政の現場においても浸透していることの証左として、これも意外な喜びだった。
情報通信環境の新元号への対応は、日本においても国際標準との整合性が不可欠であることを思い返させてくれた。しかし、情報通信環境の平準化の中で、それぞれの言語文化を保持継承していかなければならないのは日本だけではない、ということも忘れてはならない。「令和」への一連の対応を知ることが、多様な言語文化への想像力を拡げる小さなよすがとなれば幸甚である。
(1) ISO/IEC 10646:2017. Information technology --Universal Coded Character Set (UCS).
http://standards.iso.org/ittf/PubliclyAvailableStandards/c069119_ISO_IEC_10646_2017.zip [68], (accessed 2019-11-07).
(2) “About the Unicode® Standard”. The Unicode Standard.
http://www.unicode.org/standard/standard.html [69], (accessed 2019-11-07).
(3) 以上の経緯についての詳細は、
小林龍生. 新元号の国際標準化秘話. 標準化と品質管理. 2019, 72(8), p. 24-28.
をご参照いただきたい。
(4) “新元号名で使用する文字コードについて(周知)”. 経済産業省.2019-04-05.
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaigen/20190405_kaigen_code.pdf [70], (参照 2019-10-23).
(5) “CJK Unified Ideographs”. Unicode 12.1 Character Code Charts.
http://www.unicode.org/charts/PDF/U4E00.pdf [71], (accessed 2019-11-07).
(6) Ibid.
(7) “常用漢字表(平成22年11月30日内閣告示)”. 文化庁. 2010-11-30.
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf [72], (参照 2019-10-23).
(8) 前掲.
(9) “新元号の選定について”. 首相官邸. 2019-05-23.
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/singengou/singengou_sentei.html [73], (参照 2019-11-07).
(10) 小林龍生.字体と字形の狭間で 文字情報基盤整備事業を例として.情報管理. 2015, 58(3), p. 176-184.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.176 [74], (参照 2019-10-23).
(11) “常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について”. 文化庁. 2016-02-29.
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/2016022902.pdf [75], (参照 2019-10-23).
[受理:2019-11-18]
小林龍生. 新元号と文字コードの国際標準を巡って. カレントアウェアネス. 2019, (342), CA1965, p. 9-11.
https://current.ndl.go.jp/ca1965 [76]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11423547 [77]
Kobayashi Tatsuo
New Japanese Era Name “REIWA” and International Standard
PDFファイル [81]
京都ノートルダム女子大学国際言語文化学部:鎌田均(かまだひとし)
「フェイクニュース」という言葉が2016年の米国大統領選挙の時期に注目され、社会全体の問題として意識されるようになった(1)。欧州連合(EU)は2017年秋からフェイクニュースに関するパブリックコンサルテーションを実施し、2018年の欧州委員会の高度専門家グループによるフェイクニュース、オンライン虚偽情報に関する最終報告書ではメディア、情報リテラシー教育を促進する必要性を指摘している(2)。国際図書館連盟(IFLA)は、このEUのパブリックコンサルテーションに対して、図書館の役割の重要性などを示した回答を発表した(3)。米国の図書館界でも、フェイクニュースを扱った文献が多く出され、特集が組まれたり、会議のテーマとして扱われることが増えた(4)。本稿では、このフェイクニュースという事象について、その背景を確認しつつ、図書館の視点から情報リテラシー教育との関わりを中心に最近の動向を述べる。
フェイクニュースという言葉が表している虚偽の報道、知らせ、という事象は歴史上で以前からあり、古代から存在していたと捉えることもできる(5)。フェイクニュースの一つの理解の仕方として、それは虚偽の情報(disinformation)の一種であり、また、誤った内容の情報(misinformation)の範疇にあると考えることができる。誤った情報には、間違った情報、勘違いによって流された情報などが含まれる。このような情報を受け取ることで人々は誤った理解、判断をすることとなり、それは個人、社会にとって不利益となり得る(6)。その中で、虚偽の情報とは人を欺く内容を持った情報であり、さらに人を欺く目的で作られたか、または結果として人を欺くようになったものと捉えることができる(7)。
フェイクニュースは「クリックベイト」(clickbait)と呼ばれる形で流されることもある。センセーショナルな内容で人々の関心を引き、多くの人々にそのページのリンクをクリックさせて利益を得るためにフェイクニュースが流されたりする(8)。一方で、人々を欺く目的で大規模に流されるものもある(9)。インターネットでは誰もが匿名で情報を発信することができ、ソーシャルメディアで情報が大規模に拡散される。また様々な技巧を用いて虚偽の内容を事実のように見せかけることもできる。多くの人々はニュースをオンライン、とりわけソーシャルメディアから主に得るようになってきている。そういった人々は、そこから得る情報から政治に関する判断を下し、それが実際の選挙の結果などを左右している可能性もある(10)。
フェイクニュースという言葉は実際には恣意的に用いられており、それは現在の「ポスト真実」(post-truth)と呼ばれる状況を反映している。2016年米国大統領選挙に関連して流されたフェイクニュースや、自身に批判的な報道をフェイクニュースだとしたり、また虚偽の内容を「替わりの事実」(alternative facts)とする政治家などが現れ(11)、何が事実なのか、ということ、そして事実であることの意義が大きく揺らぐことになった。この時期に雑誌『エコノミスト』が「ポスト真実」という言葉をクローズアップし(12)、オックスフォード英語辞典(OED)の2016年の“Word of the Year”にもこの言葉が選ばれた(13)。この事象は、人が自分の信条に沿った情報を信じようとする傾向から生じるものともされる(14)。そこでは「そのニュースが真実かどうかということよりも、それが自分の聞きたい内容であるかが重要」(15)となる。「ポスト真実」の世界においては、事実は人によって異なり、何がフェイクニュースで何がそうでないかも人によって捉え方が違ってくる。伝統的ニュースメディアの報道も、人によってはフェイクニュースとなる。米国では以前から伝統的ニュースメディアに対する人々の信頼が低下していることや、人々の政治に対する二極化が進んでいる(16)ことも、この状況に拍車をかけている。
インターネット上で個人は自分の好む情報を自ら選別することができ、さらに個人の目に触れる情報はアルゴリズムによって選別され、その人が好む情報を送る仕組みがある(17)。そして、それが間違った情報であったとしても、大量に繰り返し流されることによって人の記憶に残り、真実のように思えてくることもある(18)。フェイクニュースの問題も、このような現在の情報をめぐる複雑な環境を理解して捉える必要がある。元来のフェイクニュースは、偽のニュースという意味ではあるが、この「ポスト真実」の世界においては、どれが正しいニュースでどれが正しくないかという境界が曖昧となる(19)。
フェイクニュースにはセンセーショナルな内容を持ったものが多い。自身の感情に訴えかけるもの、自身の信条を補強するような情報を人々は好み、ソーシャルメディアで拡散させる傾向がある。また、そういった情報が人々にとっては事実よりも重要となっているとの指摘もある(20)。そして、そのような感情的な情報やネガティブな内容の情報、目新しい内容の情報を、それが事実であるかはともかく、人々はソーシャルメディアでシェアする傾向がある(21)。インターネット、ソーシャルメディアによって様々な虚偽の情報が大量に流され、人々はそれを信じてしまい、または信じようとし、自身の意見や信条を形成してしまう。政治に関する事柄以外にも、間違った情報によって人が疑似科学を信じるようなケースもある(22)。そして一度間違った情報に影響された個人の意見や信条は、後から真実の情報によって変えることも難しいという懸念がある(23)。このように、フェイクニュースが取りざたされる現在の状況は、「人々の信条とそれに伴う行動が、もはや現実に基づくものではなく、虚偽の情報とそれがもたらす結果による「ポスト現実」に左右される」(24)という危険性を孕んでいる。
米国大統領選挙においてフェイクニュースが流布したことが社会問題となる中で、米国の図書館にとっても重大な問題であるとの意識が生じた(25)。そして、一般のメディアでも図書館によるフェイクニュースに対する取り組みが紹介された(26)。図書館は、あらゆる人々に必要とする情報を提供するという役割によって、民主主義社会を支える重要な場所とされてきた(27)。また、人々にとっても、図書館は信頼できる情報を得ることができる場所として認知されている(28)。図書館は、信頼できる情報を幅広くコレクションとして揃え、それを利用者が適切に利用することで、人々の知識、物事についての理解を深め、それが対話を促し、人々が適切な政治への判断を行うことで民主主義社会に貢献するという理解があった。
しかし、図書館の外では、様々な種類の情報がインターネットを中心に大量に流通し、フェイクニュースのようなものも含まれる状況となってきている(29)。そのような状況において、図書館の役割は、コレクション中心ではなく、情報全般のスペシャリストとしての役割へと変化するべきという意見もある(30)。このように考えるならば、フェイクニュースを巡る問題も図書館活動の範疇外ではなく、図書館が積極的に関わるべきこととなる。また、フェイクニュースが社会で話題となったことは図書館にとって図書館の役割を人々に宣伝する機会と捉える向きもある。大学図書館ではこれを取り上げることで図書館の情報リテラシー教育に対する大学、教員の関心を引くことができ、公共図書館でもフェイクニュースに対する啓発活動を通して利用者コミュニティーと関わることができる(31)。
ソーシャルメディアを頻繁に利用する若者は、それらを通して発信されるフェイクニュースにとりわけさらされやすい状況にある。米国のスタンフォード大学歴史教育グループは、中高生、大学生を対象に調査を行い、彼らの情報の信頼性を見分ける能力が十分ではないことを2016年に報告している(32)。このような状況において、情報リテラシー、メディアリテラシー教育の役割が重要視されている。さらにフェイクニュースが話題となったことで、図書館においても、情報リテラシー教育の重要性が再認識されるようになった(33)。学校教育におけるメディアリテラシー教育は重要とされてきたが、現場では依然として十分に普及していない(34)。教員の情報、メディアリテラシーに関する知識も十分ではなく、図書館司書がより積極的に関わる必要があるとされる(35)。
図書館界ではフェイクニュースを扱った情報リテラシー教育のための様々な教材やツールキットが作られている。IFLAが「偽ニュースを見極めるには」(How to Spot Fake News)(36)という、チェックリストを作成したことはよく知られている。同様なものとして、RADAR、CRAAPといった評価項目の頭文字をとったものがニュースの評価に用いられている(37)。また、ジャーナリズム、ニュースメディアの分野で作られたウェブサイトやファクトチェックのサイトも情報リテラシー教育に援用することができる。そして、多くの図書館でフェイクニュースを扱ったLibGuides(E1410 [82]参照)でのガイドも作られている(38)。
米国のワシントン大学では、フェイクニュースを含め、疑似科学や統計データの歪曲など世の中にある様々な誤った、または誤解を与えるような情報やデータを見極めることを主眼に置いた授業がある(39)。米国のミシガン大学でも、図書館司書が批判的思考力を重視したフェイクニュースに関する授業を設けた。この図書館の取り組みがメディアに取り上げられることによって、地域のグループからもフェイクニュースに関するレクチャー、イベントへの関心を呼んでいる(40)。また、米国ニューヨーク市のコミュニティーカレッジにおける、図書館司書が、実際のニュースを教材として利用し、ディスカッションを通した能動的内容の授業を提供した報告(41)や、同じく米国のイリノイ大学におけるフェイクニュースに関するワークショップのレッスンプラン(42)など、具体的な教育内容の実践、共有が進んでいる。
授業以外の取り組みもあり、米国のオールド・ドミニオン大学の図書館は、現場のジャーナリストや政治学などの研究者などによるパネルセッションを開催した。そこでは、フェイクニュースの問題について学生の関心を高めることに加え、図書館と大学、地域との関係を深めることができたことが報告されている(43)。また、フェイクニュースを扱ったLearning Management System(LMS)のBlackboardでの授業を行っている事例もあり、そこでは図書館司書がエンベディッド・ライブラリアン(CA1751 [83]参照)として授業支援を行っている(44)。
公共図書館では、フェイクニュースに関するワークショップを開催した事例がある。米国ニューヨーク州のホワイト・プレーンズ公共図書館では、ワークショップを図書館内で開催するだけではなく、地域コミュニティーの様々なグループと共同で開催し、コミュニティーと関わりながらの取り組みとなっている。様々な意見、社会背景を持った人と関わる難しさはあったが、論争となることなく参加者との対話を促進することができ、フェイクニュースへの理解を深めることができたことが報告されている。そして、図書館にとっては普段図書館を利用しない人々との接点を得ることができた(45)。
学校図書館においても、米国学校図書館員協会(AASL)が会誌でフェイクニュースに関する特集を組み、その内にもフェイクニュースを扱った教育の事例がある。そこでは同協会の「学習者基準フレームワーク」(AASL Standards Framework for Learners;E2006 [84]参照)を援用してメディアリテラシー的要素が濃い内容へと変化させ、情報源を批判的に検討させる内容を重視したことが述べられている(46)。日本国内ではフェイクニュースに関わる具体的な取り組みの報告はまだ少ないが、京都学園中学高等学校の伊吹侑希子氏が学校図書館によるフェイクニュースを使った教育の授業への導入を実践している(47)。
フェイクニュースの問題には前述のように複雑な要素が絡み合っており、正しい情報と間違った情報と単純化してそれを見分けるという教育内容では十分ではない。単にチェックリストにある事項を当てはめるだけではない複雑な思考が要求される(48)。例えば、著者が不明であるからその情報が信頼できないとは必ずしもいえない。そして、自身の偏向を認識することも実際は簡単ではない(49)。また、その情報のみを見るのではなく、外側からも様々な要素を検討する必要がある(50)。そのためにはメタリテラシーのような、情報を取り巻く状況を理解することが重要となる(51)。米国大学研究図書館協会(ACRL)の「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」(CA1870 [85]参照)においても、情報がどのように生み出されて流通しているかを理解することが重要だとしている。そして、そのような理解のためには批判的な思考が重要となる(52)。そのような批判的思考力を養う情報リテラシー教育を行うには、1回のみの授業などでは不十分であり、教員と密接に連携した活動が不可欠である(53)。
また、フェイクニュースには政治的要素があることが多い。図書館によるフェイクニュースに対する取り組みにおいては、図書館がどの程度政治に関わるべきなのか、異なった考え、意見を持った人たちに対してフェイクニュースの問題をどのように伝え、理解させるかが課題となる。図書館の取り組みが政治的に批判を受けたり、利用者同士、利用者と図書館との間で紛糾する可能性もある。しかし、米国の図書館では、選挙に関する情報を提供するなどの人々の政治参加を支援する取り組みが以前から行われており、この動きの中でフェイクニュースの問題を、主権者教育的観点からの情報リテラシー教育として捉える向きもある。そこにおいても、政治に関わる情報を適切に理解するためには批判的な情報リテラシー能力が重要とされる(54)。
また、図書館がフェイクニュースと関わる上で、これが事実で、これが事実でないとする判断には慎重を要する。図書館の、人々の知る権利を保証し、様々な内容、立場を含んだ情報を提供してきた役割から見ると、情報をどのように判断するかは人々に委ねられるべきだとされる。そして、人々が情報を適切に判断するには図書館の情報リテラシー教育を人々に提供する役割が重要となるといえる(55)。
「ポスト真実」の状況は、フェイクニュースを巡る問題における情報リテラシー教育を難しいものとしている。例えば、前出の「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」では、「オーソリティは作られ、状況に基づいている」(CA1870 [85]参照)という情報リテラシーの要素がある。しかし現在の「ポスト真実」の世界では、この、情報の信頼性の根拠とされてきたオーソリティそのものが大きく揺らいでいる。これまでの情報リテラシー教育では自明としてきたような、学術研究コミュニティー、政府、伝統的メディアというオーソリティを人々は必ずしも信頼しなくなっている(56)。ある人々にとっては、そういったオーソリティからの情報もフェイクニュースとなりうる。このように伝統的オーソリティが揺らぐ中で、情報リテラシー教育において、どのようにして人々に情報を批判的に評価させるのかという問題が生じている。
しかし、このような教育を行ったとしても、実際に人々が日常生活で大量の情報と接する中で、時間をかけて情報を批判的に評価することはあまり期待できないという懸念もある(57)。そして、人々が必然的にフェイクニュースにさらされやすく影響を受けやすい現在の環境を考えると、フェイクニュースの問題に図書館が効果的に対処できるのかを疑問視する向きもある(58)。
公共図書館には利用者が欲する情報、あらゆる立場、意見が含まれた情報を利用者に提供する役割があり、そのことによって民主主義社会を支える役割を持つ。学校、大学図書館も以前から生徒、学生の情報リテラシーを向上させる役割を積極的に担うようになっている。その中で、フェイクニュースに見られる事象は、ただ単にメディア、報道の世界の問題ではなく、図書館にも密接に関連する。この問題に積極的に関わっている図書館が増えており、またこれを機会と捉えて利用者との関わりをより密にすることができる可能性もある。このフェイクニュースの問題は、地域コミュニティーに密着した公共図書館、より教育カリキュラムに関わった情報リテラシー教育を提供する大学、学校図書館、そして図書館を離れて利用者に近い場所で活動するエンベディッド・ライブラリアンのような動きと関連づけることもできる。
ただし、図書館がフェイクニュースという事象に積極的に関わろうとするならば、それについての深い理解が必要となる。図書館員も現在の情報を取り巻く環境において、図書館資料だけではなく、様々な情報がどのように生み出され、流通しているかをよりよく理解する必要がある。
(1) Sullivan, M. Connor. Why Librarians Can’t Fight Fake News. Journal of Librarianship and Information Science. 2019, 51(4), p. 1146-1156.
(2) “A multi-dimensional approach to disinformation” European Commission. 2018.
http://ec.europa.eu/newsroom/dae/document.cfm?doc_id=50271 [86], (accessed 2019-08-28).
(3) “EU Consultation on Fake News” IFLA. 2018-02-02.
https://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/info-society/documents/ifla_response_to_eu_consultation_on_fake_news_final.pdf [87], (accessed 2019-08-28).
(4) Buschman, John. Good News, Bad News, and Fake News: Going beyond Political Literacy to Democracy and Libraries. Journal of Documentation. 2019, 75(1), p. 213.
(5) McQueen, Sharon. “From Yellow Journalism to Tabloids to Clickbait: The Origins of Fake News in the United States”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 15.
(6) Fallis, Don. What is Disinformation?. Library Trends. 2015, 63(3), p. 402.
(7) Ibid., p. 401-426.
(8) Rochlin, Nick. Fake News: Belief in Post-truth. Library Hi Tech. 2017, 35(3), p. 389-390.
(9) Mathiesen, Kay. “Fighting Fake News: The Limits of Critical Thinking and Free Speech”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 78-79.
(10) Agosto, Denise E. “An Introduction to Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 2-3.
(11) Guarda, Rebeka F.; Ohlson, Marcia P.; Romanini, Anderson V. Disinformation, Dystopia and Post-reality in Social Media: A Semiotic-cognitive Perspective. Education for Information. 2018, 34, p. 185-186.
(12) Post-truth Politics: Art of the Lie. The Economist. 2016, 420(9006), p. 11.
(13) “Word of the Year 2016 Is...”. Oxford Dictionaries.
https://languages.oup.com/word-of-the-year/word-of-the-year-2016 [88], (accessed 2019-10-21).
(14) Guarda; Ohlson; Romanini. op. cit., p. 186.
(15) Rochlin. op. cit., p. 386.
(16) Ibid., p. 387-388.
(17) Guarda; Ohlson; Romanini. op. cit., p. 188-189.
(18) Burkhardt, Joanna M. “Truth, Post-truth, and Information Literacy: Evaluating Sources”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 99.
(19) Rochlin. op. cit., p. 388.
(20) Guarda; Ohlson; Romanini. op. cit., p. 189-190.
(21) Leeder, Chris. How College Students Evaluate and Share “Fake News” Stories. Library and Information Science Research. 2019, 41(3), 100967.
(22) Guarda; Ohlson; Romanini. op. cit., p. 193.
(23) Sullivan. op. cit.
(24) Guarda; Ohlson; Romanini. op. cit., p. 195.
(25) Mathiesen. op. cit., p. 77-78.
当時の北米の図書館がどのような反応を示したかについては、日本国内でもすでに次の文献で報告されている。
井上靖代. アメリカの図書館はいま(88):フェイクニュースと図書館. みんなの図書館. 2017, 480, p. 50-55.
(26) Buschman. op. cit., p. 217.
(27) Lor, Peter Johan. Democracy, Information, and Libraries in a Time of Post-truth Discourse. Library Management. 2018, 39(5), p. 307.
(28) Burkhardt. op. cit., p. 101.
(29) Lor. op. cit., p. 307-314.
(30) Agosto. op. cit., p. 6-9.
(31) Eva, Nicole; Shea, Erin. Marketing Libraries in an Era of “Fake News”. Reference & User Services Quarterly. 2018, 57(3), p. 168-171.
(32) Stanford History Education Group. “Evaluating Information: The Cornerstone of Civic Online Reasoning.” 2016, 27p.
https://stacks.stanford.edu/file/druid:fv751yt5934/SHEG Evaluating Information Online.pdf [89], (accessed 2019-09-10).
(33) Bluemle, Stefanie R. Post-Facts: Information Literacy and Authority after the 2016 Election. Portal: Libraries and the Academy. 2018, 18(2), p. 266.
米国においては、ソーシャルメディアによるフェイクニュースの問題については、ジャーナリズムの分野では2016年以前から言及されてきたが、図書館の分野ではそれを問題視する言及は文献では少なかったという調査がある。
Chen, Xiaotian. Calling Out Fake News on Social Media: A Comparison of Literature in Librarianship and Journalism. Internet Reference Services Quarterly. 2018, 23(1-2), p. 1-13.
(34) De Abreu, Belinha. “Information and Media Literacy Education: The Role of School Libraries”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 130.
(35) Mattson, Kristen. “School Librarians: Partners in the Fight against Fake News”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 118-121.
(36) “How to Spot Fake News”. IFLA.
https://www.ifla.org/publications/node/11174 [90], (accessed 2019-08-26).
日本語版:
https://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/info-society/images/how_to_spot_fake_news_-_japanese.pdf [91], (参照 2019-08-26).
(37) Neely-Sardon, Angeleen; Tignor, Mia. Focus on the Facts: A News and Information Literacy Instructional Program. The Reference Librarian. 2018, 59(3), p. 114-115.
RADAR、CRAAPは以下を表す:(Rationale, Authority, Date, Accuracy, Relevance) (Currency, Relevance, Authority, Accuracy, Purpose)RADARについては、
Mandalios, Jane. RADAR: An Approach for Helping Students Evaluate Internet Sources. Journal of Information Science. 2013, 39(4), p. 470-478.
CRAAPの略語の経緯については、
Blakeslee, Sarah. The CRAAP Test. LOEX Quarterly. 2004, 31(3), p. 6-7.
https://commons.emich.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1009&context=loexquarterly [92],(accessed 2019-10-21).
(38) Musgrove, Ann T.; Powers, Jillian R.; Rebar, Lauri C.; Musgrove, Glenn J. Real or Fake? Resources for Teaching College Students How to Identify Fake News. College & Undergraduate Libraries. 2018, 25(3), p. 243-260.
(39) Bergstrom, Carl T.; West, Jevin. “Calling Bullshit: Data Reasoning in a Digital World”.
https://callingbullshit.org/syllabus.html [93], (accessed 2019-08-27).
(40) Mooney, Hailey; Oehrli, Jo Angela; Desai, Shevon. “Cultivating Students as Educated Citizens: The Role of Academic Libraries”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 136-138, 146-147.
(41) Glisson, Lane. Breaking the Spin Cycle: Teaching Complexity in the Age of Fake News. Portal: Libraries and the Academy. 2019, 19(3), p. 461-484.
(42) Cooke, Nicole A. Fake News and Alternative Facts: Information Literacy in a Post-truth Era. Chicago, American Library Association, 2018, p. 25-27.
(43) Rush, Lucinda. Examining Student Perceptions of Their Knowledge, Roles, and Power in the Information Cycle. Journal of Information Literacy. 2018, 12(2), p. 121-122, 128-129.
https://doi.org/10.11645/12.2.2484 [94], (accessed 2019-08-27).
(44) Auberry, Kendra. Increasing Students’ Ability to Identify Fake News through Information Literacy Education and Content Management Systems. The Reference Librarian. 2018, 59(4), p. 183-185.
(45) Himmelfarb, Ben. “We Got This: Public Libraries as Defenders against Fake News”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 107-113.
以下でも実践している公共図書館の名前が挙がっている。
Eva; Shea. op. cit., p. 170-171.
(46) Johnson, Mica. Fighting Fake News: How We Overhauled Our Website Evaluation Lessons. Knowledge Quest. 2018, 47(1), p. 34-35.
(47) 伊吹侑希子. フェイクニュースを素材にした情報活用能力を育む指導法の考察. 学校図書館学研究. 2019, 21, p. 17-30.
また、2019年8月の日本図書館協会学校図書館部会夏季研究集会東京大会でもこのフェイクニュースに関連するテーマを扱っている。
日本図書館協会学校図書館部会. “日本図書館協会学校図書館部会第48回夏季研究集会東京大会のご案内”.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/bukai/学校図書館部会/第48回夏季研要項2019_Ver3.pdf [95], (参照 2019-09-28).
(48) Glisson. op. cit., p. 464.
Auberry. op. cit., p. 182-183.
(49) Mathiesen. op. cit., p. 82-83.
(50) Leeder. op. cit.
(51) Mackey, Thomas P. “Empowering Metaliterate Learners for the Post-truth World”. Metaliterate Learning for the Post-truth World. Mackey, Thomas P.; Jacobson,Trudi E., ed. Chicago, ALA Neal-Schuman, 2019, p. 9.
(52) Neely-Sardon; Tignor. op. cit., p. 109.
(53) Lor. op. cit., p. 315.
(54) Buschman. op. cit., p. 217.
(55) Oltmann, Shannon M. “Misinformation and Intellectual Freedom in Libraries”. Information Literacy and Libraries in the Age of Fake News. Agosto, Denise E., ed. Santa Barbara, Libraries Unlimited, 2018, p. 71-72.
(56) Bluemle. op. cit., p. 277.
(57) Mathiesen. op. cit., p. 84.
(58) Sullivan. op. cit.
[受理:2019-11-15]
鎌田均. フェイクニュースと図書館の関わり:米国における動向. カレントアウェアネス. 2019, (342), CA1966, p. 12-16.
https://current.ndl.go.jp/ca1966 [96]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11423548 [97]
Kamada Hitoshi
Fake News and Libraries: Recent Trends in the United States
PDFファイル [110]
東京大学大学院情報学環:時実象一(ときざねそういち)
国立情報学研究所コンテンツ科学研究系:高野明彦(たかのあきひこ)
電子情報部電子情報企画課:福林靖博(ふくばやしやすひろ)
筆者らは2019年3月21日から22日にかけてオランダのハーグ市にあるオランダ国立図書館(KB)で開催された会議「文化遺産オンライン:全世界的な文脈でのワールドデジタルライブラリー」(1) に参加した。ワールドデジタルライブラリー(WDL)(2)プロジェクトの事務局を担当してきた米国議会図書館(LC)が、2019年末で担当を終了する決定を受け、LCに代わって事務局を担当する研究図書館センター(CRL)が今後の方向性を議論するために開催したものである。本会議は、米国のニューヨーク・カーネギー財団及びホワイティング財団、カタール国立図書館(QNL)の支援と、図書館情報資源振興財団(CLIR)と欧州の図書館・博物館・文書館のコレクションをデジタル提供するヨーロピアーナ財団の協力を得て開催された。
この会議の参加者の一部は、カーネギー財団の資金により招待された。参加者は約70人であり、約半数がWDLに参加している国立図書館の代表であった。その他は米・スタンフォード大学図書館の技術者、ヨーロピアーナの職員などが目立った。
本稿では会議で行われた議論等を紹介するとともに、グローバルレベルでのデジタル文化資源の共有に係る今後の動向について論じることとする。
WDLとは、LCとUNESCO等が2005年から取り組んできたプロジェクトで、2009年4月21日にウェブサイトが公開された(E912 [111]参照)。
もともとこの構想は、2005年6月に、当時のLC館長のビリントン(James Billington)氏が米国UNESCO国内委員会総会の挨拶の中で提案したことに始まっている。このプロジェクトには立ち上げ当初、LCの他、エジプトのアレクサンドリア図書館、サウジアラビアの王立科学技術大学、ブラジル国立図書館、エジプト国立図書館・公文書館、ロシア国立図書館などが協力している(3)。2006年7月6日・7日に金沢工業大学で開かれた「図書館・情報科学に関する国際ラウンドテーブル会議」ではWDLがテーマとして取り上げられ(4)、LC准館長のマーカム(Deanna Marcum)氏がその構想について講演している。
WDLは「国際および異文化間の相互理解の促進、教育関係者への情報資源の提供」を目的とし、また「発展途上国における情報資源デジタル化の促進、インターネット上での非英語、非西洋世界の情報資源の拡大」に力点を置いている(5)。サービスの特徴は、(1) 世界中の重要な文化遺産をインターネットで公開し、(2) 各資料には解説が付され、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語およびアラビア語の7か国語で利用できること、である。
2019年9月現在、WDLには、60か国・地域158機関が協力しており、1万9,147点のコンテンツが収容されている(6)。WDLはコンテンツの規模に比して閲覧数が多いことが特徴で、2017年度には710万人が訪問し、ページビュー数は3,110万件に上ったと報告されている(7)。
ヨーロピアーナ(CA1785 [112]、CA1863 [113]参照), 米国デジタル公共図書館(DPLA;CA1857 [114]参照)、あるいは2019年2月に試験版が公開されたジャパンサーチ(E2176 [115]参照)などの参加機関のメタデータのみを集約したポータル型のサービスと異なり、WDLはデジタル・コンテンツそのものを収容している点で、リポジトリの性格が強い。コンテンツの内訳は図1のとおりである(8)。
日本からは国立国会図書館(NDL)が2008年に参加契約を締結し、現在、累積で235点のコンテンツを提供している。
LCが運用をやめる決定をした理由は示されていないが、年間約300万ドルとされる経費負担(システム運用と改良に加えて、メタデータの付与、7か国語への翻訳、開発途上国のデジタルセンターの技術指導、などを含む)が困難になったためと考えられる。
この会議に先立ち、米・スタンフォード大学図書館は、CRLからの委託で、WDLの現状分析を行って報告書をまとめている(9)。その要点は以下のとおりである。
まず、現行のWDLの強みとして、
等を指摘している。
一方で問題点としては、
等をあげている。
この会議で提案されたPangiaは、この会議に協力しているCLIRの会長であるヘンリー(Charles Henry)氏の構想である(10)。ヘンリー氏によれば、世界中の数十億のコンテンツをデジタルで提供することにより、市民の情報要求や教育者・研究者に役立つだけでなく、人工知能(AI)、ディープ・ラーニング、データマイニングなどのデジタル・イノベーションを促進することを期待したものである。ヘンリー氏の考えでは、Pangiaを構築するには、まず既存の選択されたプラットフォームの連携(federate)から始めることになる。その候補としては、ヨーロピアーナ、DPLA、ニュージーランド国立図書館のDigitalNZ(11)、ブラジルの学術機関が運営する Tainacan(12)、世界中に散らばる中東の文化遺産をデジタル化して統合的に活用することを目指す中東デジタルライブラリ(Digital Library of the Middle East)(開発中)(13)、インド・人材開発省が構築するインド国立デジタル図書館(National Digital Library of India)(開発中)(14)などをあげている。
会議のプログラムの詳細はウェブサイトを参照されたい(15)。会議は概ね、WDLの背景に関する関係機関や各国の報告、WDLの現状と対策に関する報告、これを踏まえたグループ討論から構成されていた。本稿では、WDLの現状と対策に関する報告と議論についてまず述べ、後段で関係機関や各国の報告についても紹介する。
スタンフォード大学図書館のクラマー(Tom Crammer)氏から、WDLについて総括的な報告があった。報告の前半は先に紹介した報告書と同一である。この現状分析をベースとして、クラマー氏は次の3つのモデルを提案した。
そのうえで、どのモデルをとるにせよ、次のような段階を踏んで進める必要があるとした。
これらの問題提起を受け、参加者は3グループに分かれ、各グループが技術問題、ガバナンス問題、財政と永続可能性問題について順番に議論した。グループは、大きく国立図書館系グループ(福林)、研究機関系グループ(高野)、その他(時実)、に分かれた(カッコ内はそのグループに参加した執筆者)。討議結果を各テーマのチューターがまとめて報告した。
WDLの今後のオプションとして、セントラル・ハブ型の中央集権的なアプローチは支持されていないことが明らかになった。コストを減らすには、ワークフローの見直しが必要であり、それに技術の導入ができないかという議論があった。一方、WDLの価値としては、開発途上国に対する技術指導が大きいという意見であった。メタデータの自動付与や自動翻訳が考えられるが、人手が残るので効果は不明である。
WDLとPangiaの関係については、前者はリポジトリ、後者は便利なプラットフォームという分け方が述べられた。
また、現在行われている7か国語への翻訳についてはコストダウンが必要である。クラウド翻訳の可能性も提案されたが、品質管理の問題もある。
Pangiaのような大きなスケールになると、技術標準の管理も容易でない。たとえばヨーロピアーナのデータモデルはメタデータの標準化に大きく役立っているが、参加者が増えるとこれをどうメンテナンスしていくか問題となる。
前述したように、WDLの運営には年300万ドルかかっているが、移行後は年350万ドル弱かかると考えられる。その内訳はAmazon Web Serviceに20万ドル、最低必要なプログラムに15万ドル、移行に10万ドル、編集、メタデータ作成、データの取込などの作業で300万ドルかかる。この費用を誰が出してくれるか。先進国の国立図書館、財団などが考えられる。
DPLAは年350万ドルの経費がかかっている。ヨーロピアーナのフェアヴァイヤン(Harry Verwayen)氏によればヨーロピアーナの予算は年500万ユーロである。しかし、アグリゲータに配分している費用を入れると合計1,000万ユーロに達する。これには各アグリゲータが得ている助成金は含まれない。また運営資金を財団に依存するのは、寄付が単年度単位であるなどのリスクがある。一方助成を新規技術の開発に使う場合は、完成した技術を皆で共有できるので、そのような資金の使い方が好ましい。
WDLの独自の任務は何かという議論があった。WDLは独自のデジタルライブラリーを持たない国にとってはその国のリポジトリとしての役割を果たす。一方で、各国独自のデジタルライブラリーと競合することはよくないとの意見があった。その他、デジタル化による、かつての植民地から略奪した文化遺産をデジタル化して公開することで旧植民地からも閲覧できるようにするヴァーチャルな返還はWDLの重要な任務であると考えられる。またWDLには個別のデジタルライブラリーのショーケースという役割がある。
現在のWDLのガバナンスでは、頻繁な会議、積極的でない会員など、いろいろ問題を抱えている。しかし、ガバナンス・ストラクチャについては、軽い方がよいとの意見であった。どのモデルを採用するかによって、ガバナンスは異なる。アグリゲータモデルではガバナンスは小さくなるが、アグリゲータとの調整が負担になる。
全体のまとめは、CRL代表(当時)のライリー(Bernard F. Reilly)氏が行った。技術・財政・ガバナンスといった大変大きな問題を議論したが、未来のシステムができるまでWDLを閉じることはできないので、移行期間は必要である。今後、会議主催者であるCRLが議論をまとめて公表するとのことであった。
議論では、特に非欧米から参加している国立図書館から、WDLは自国のコンテンツを発信し、またデジタル化やメタデータの技術を身に着ける上で重要であるとの意見があった。またヴァーチャル返還に意義を見出している様子であった。
今回の会議は、WDLからのLCの撤退による当面の措置(別機関と別システムへの移行)について参加国立図書館の理解を得ておくという意味が大きかったと思われる。
Pangiaについては、構想が漠然としていることもあり、参加した国立図書館の強い関心を集めるには至らなかった感がある。
参加者の討議の前に、国際的、または各国の実践例について報告があった。大変参考になったので、以下に簡単に紹介する。
KBでは文化遺産のオンライン提供を一貫して進めてきた。そのための仕組みとしてNetwork Digital Heritageが設立された。技術としてはLinked Open Dataを採用する考えである。
この会議はWDLの将来の形を検討するものである。デジタル文化遺産プロジェクトは商業的であってはならない。またプロジェクトは透明であり、また内容は信頼できるもので、かつキュレーションされていることが好ましい。
UNESCOでは「世界の記憶(Memory of the World)」プログラムを行っている(16)。
これは1992年に設立されたプログラムで、世界文化遺産に準じて文書遺産を登録している(2019年3月現在527件登録)。
IFLAでは2018年にGlobal Visionを取りまとめたが(E2034 [118]、E2037 [119]参照)、その中で、期待される活動の9番目に「図書館は世界の記録遺産へのアクセスを最大限に広げる必要がある」としている(17)。
フランス語圏デジタルネットワーク(Réseau francophone numérique (RFN:エレファントと発音))(18)はフランス語圏をターゲットとしたデジタルアーカイブである。27か国、その他の合計88か国でフランス語が用いられている。アフリカのフランス語圏は人口が増大しており、フランス語圏は拡大しつつある。RFNの運用はBnFがそのGallicaシステム(CA1905 [120]参照)を使って行っている。利用者の多くはフランス本国である。
世界中に散らばる中東の文化遺産をデジタル化して統合的に活用することを構想している。文化遺産のヴァーチャル返還の一環である。
ヨーロピアーナの活動はコア・サービス(Horizon 1)、コア・サービスの改善と拡張(Horizon 2)、新規なイノベーション(Horizon 3)の3方面で進めている。欧州では全コンテンツの10%しかデジタル化されておらず、そのうち36%がオンラインで提供されており、さらに7%(ヨーロピアーナのコンテンツの23%)しか再利用が認められていない。コア・サービスの改善としては、IIIFを推進している。その応用としては、Europeana Newspapersサービス(E1741 [121]参照)の改善がある。
インドは欧州より歴史が古く、さまざまな文化遺産がある。しかし多くが破壊されたり失われたりしている。これらをデジタル修復するこころみを行っている。3Dによるバーチャル・ツアーも開発している。オーストラリアの大学の技術支援がある。
イスラエル国立図書館のデジタル図書館(19)はイスラエル国内だけでなく、世界中のユダヤ人を対象としている。現在新聞記事300万ページ、歴史的文書250万件、写真25万件、手稿6万件、書籍2万件、音楽4万時間、地図1万点などをデジタル化した。
2009年にWDLプロジェクトの一環として、NLUとLCの合意により、NLUにデジタル化センターを設置した。このプロジェクトにより、ウガンダの各地、各機関に散らばっている文書などが集められ、保存が図られた。ウガンダは政情が不安定であり、これが問題である。
カタールは2012年に教育研究図書館を発展させて国立図書館とした。すでに手稿や地図をデジタル化しており、一部をWDLにも提供している。さらに英国外務省の18世紀から20世紀のアラビア湾地域に関する文書、インド省の文書や英国図書館(BL)のイスラム関係の手稿の電子化を進めている(20)。
日本でもジャパンサーチがようやく試行の段階に入り、デジタルアーカイブのコンテンツ充実と利活用のためのネットワーク構築をどのように推進すべきかの議論が始まっている。WDLの今後の行方については不確かなところも多いが、世界規模での貴重な試行例であり、今後の進め方を含めて学ぶべきことが多い。引き続き注視していきたい。
(1) Cultural Heritage Online: The World Digital Library in a Global Context. Center for Research Libraries.
https://www.crl.edu/wdl-planning [122], (accessed 2019-09-30).
(2) World Digital Library.
https://www.wdl.org/en/ [123], (accessed 2019-09-30).
(3) 田中久徳. ワールドデジタルライブラリー--文化遺産を一望する. 国立国会図書館月報. 2009, (580), p. 4-9.
https://doi.org/10.11501/1001547 [124], (参照 2019-11-14).
(4) 「情報管理」事務局. 集会報告: 図書館・情報科学に関する国際ラウンドテーブル会議: ワールド・デジタル・ライブラリー ─その挑戦と目標─. 情報管理. 2006, 49(6), p. 348.
https://doi.org/10.1241/johokanri.49.348 [125], (参照 2019-11-14 ).
(5) 田中. 前掲.
(6) “Collection Statistics”. World Digital Library.
https://www.wdl.org/en/statistics/ [116], (accessed 2019-09-30).
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[受理:2019-11-18]
時実象一, 高野明彦, 福林靖博. ワールドデジタルライブラリ-の動向. カレントアウェアネス. 2019, (342), CA1967, p. 17-21.
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DOI:
https://doi.org/10.11501/11423549 [139]
Tokizane Soichi
Takano Akihiko
Fukubayashi Yasuhiro
Where will the World Digital Library Head?
PDFファイル [167]
電子情報部電子情報サービス課:野村明日香(のむらあすか)
図書館と「コンサート」、「演奏会」という組み合わせは不思議に感じられるかもしれない。しかし、公共図書館や学校図書館、大学図書館を中心に演奏会が開催され、関連する事前広報や活動報告が各図書館のウェブサイト上で数多く確認できる。
演奏会自体は、社交、精神的充足感を提供し、表現欲を満たすといった性質があり(1)、奏者と観客が空間を共有できるという魅力を持つイベントとされる(2)。これに加え、図書館により開催される演奏会は、気軽に参加可能、施設の広報(3)等の側面があり、参加者の感想から奏者と観客の距離が物理的・心理的に近い(4)という特徴がうかがえる。ただし、上記の性質は他の施設で実施される演奏会にも共通する部分がある(5)。
それでは、何故、「静かな場所」と思われている図書館が演奏会を開催するのだろうか。本稿では、主に日本国内の公共図書館と学校図書館、大学図書館の実践を中心に、「来館・利用の機会」、「多様な対象へのアプローチ」、「コミュニティの活性化」の3点から図書館特有の理由、意義を整理したい。
演奏会の開催は、図書館自体やサービス、資料を普段と異なる切り口で提示し、興味を引くことで利用や来館の契機となると考えられる(6)。これに関して、資料やサービスの提示、図書館イメージの2点を挙げる。
1つは、音楽による資料やサービスの演出である。北村(7)はイベントによる図書館の利用促進における本の演出の重要性を指摘するが、音楽の利用は有用な手法と思われる。図書館による演奏会は、奏者や楽曲、楽器に関する資料の紹介・展示(8)、書籍や作家に関する楽曲の演奏(9)、朗読と演奏の組み合わせ(10)等の工夫が容易であると思われる。例えば、演奏と資料を組み合わせることで、音楽と資料が互いにイメージを膨らませる材料となり、作家や読書への興味喚起につなげることを意図した事例(11)や、演奏会の内容に関連した情報の探索方法を提供することで、図書館サービスの認知や利用を促そうとする事例(12)が見られる。
2つ目に、図書館のイメージ変化の嚆矢としての役割が挙げられる。図書館らしくないイベントを実施することは、新規来館者の獲得に有効であることが指摘されている(13)。また、庄司らの研究によると、図書館を利用しない理由として、主に「苦手」「不必要」「利用不便」があるが、中でも、静かすぎる、なんとなく苦手、敷居が高いといった「苦手」意識には、図書館に対する「堅苦しい」「緊張した」イメージが関係しているという(14)。演奏会を開催することは、こういったイメージを裏切り、気軽で、リラックスした雰囲気を演出できると考えられる。他に、演奏会の実現を通して、懐の深い場所として印象付けを行う可能性を示唆する意見がある(15)。加えて、図書館という機関・場所に対する親しみを喚起している事例(16)もあることから、来館に対する心理的障壁を軽減する効果が期待できるのではないだろうか。
国際図書館連盟(IFLA)の多文化サービスに関するガイドラインでは、図書館により開催される社会・文化的活動は、すべての文化的集団に向けたものであることを求めている(17)が、音楽演奏のイベントは、この要請に応えることが可能と考えられる。以下では、主にルーツと年齢層に焦点を当てる。
演奏会は民族・言語・文化的ルーツを越えた働きかけが可能と言える。時間と文化を越えて共有できるという性質(18)を持つとされる音楽を、図書館や併設の施設で演奏する催しは、他国にルーツを持つ人にとって、気軽な来館や他の来館者とのコミュニケーションの機会になるのではないか。さらに、奏者として参加し、文化において集合的アイデンティティの重要な要素である音楽(19)を通して、自国文化を紹介する例もあった(20)。この方法で開催することは、図書館にとって、「IFLA/UNESCO 多文化図書館宣言」が掲げる、文化的多様性の価値の認識促進、文化的多様性を持つ人々や集団の社会参加支援等(21)を実践する手段にもなる。
また、演奏会は、幅広い年代を対象に設定できる。図書館による演奏会は誰でも参加できるものが多く見受けられる(22)が、例えば、子どもを意識した選曲や親子で参加可能な形式とすれば、子どもや家族連れ向けのイベントとして開催することができる(23)。また、地域や学内のジュニア音楽団体、部活動等と協力して開催し、中学生や高校生といったヤングアダルト(YA)をイベント運営に巻き込むことで、奏者、観客両方の立場のYAに対する、図書館の活動、資料等のアピールにつながっている事例がある(24)。加えて、音楽は感情、意味を共有する、言葉以外のツールの 1 つという側面を持つとされ(25)、IFLAの認知症患者のためのガイドラインでは、特に、認知症を発症した高齢者にとっては、感情表現、過去の想起、リラックスの機会を提供するものであり、言語での交流が困難となっても楽しむことができるものと指摘している(26)。
以上のように、音楽が持つ性質及び曲目や出演者、開催方法の組み合わせが多様であるという演奏会の特徴により、図書館サービスの対象となる様々な集団に向けたイベントの展開が可能となっている。
演奏会の開催は、図書館自体の活性化だけではなく、周囲のコミュニティの活性化を図る手段にもなり得る。以下では、交流と文化振興の観点からまとめる。
特に、公共図書館における演奏会には、住民が演奏や運営に携わる(27)、大学(28)、企業(29)と図書館が共催する等、図書館単体ではなく、地域内の個人や組織と協力して開催される例が見受けられた。こうした連携により、それぞれが単体で開催する場合よりも企画の質が向上するだけでなく、準備の過程で交流が生まれ、図書館との関係構築につながり、企画運営の参加者は図書館を自分の場所として捉えられるようになるとの意見もある(30)。加えて、来館者同士の関わり合いも期待でき(31)、演奏会を開催する中で、準備段階での交流や当日の職員、奏者、観客間の音楽、言葉、資料を通じた交流が発生し、地域のコミュニティ形成や結びつきの強化につながると考えられる(32)。
また、ちょうどその日に来館していた人が音につられて演奏会に訪れ、音楽に興味を持つという偶然の出会い(33)や、以前からの関心に刺激を与えた事例(34)がある。特に、公共図書館は、「ユネスコ公共図書館宣言」において個人の創造的な発展のための機会提供、青少年の想像力・創造力を刺激すること、あらゆる公演芸術の文化的表現に接する機会の提供といった使命を負っている(35)。図書館による演奏会開催は、この使命を果たすための方法の 1 つとなるのではないか。さらに、奏者側への発表や表現の場の提供を通し、図書館を取り巻くコミュニティの文化や文化活動を振興することを目的として開催されている例も散見された(36)。
このように、交流を通じた人や組織間の結びつき強化、地域の文化・文化活動振興につながるものとして演奏会が開催されていると考えられる。
図書館による演奏会は、図書館サービスを資料以外の面からサービス対象者に届けるための工夫や、図書館の周囲への働きかけの手段と目されていると考えられる。もちろん、静かな場所としてのニーズとの関係をはじめとした課題は存在すると思われるが、図書館サービスのあり方を模索するうえで、参考になる実践なのではないか。
演奏会の開催をはじめとした、一見すると「図書館らしく」ない手法も含めて、今後の図書館サービスの展開を注視していきたい。
(1) ヴァルター・ザルメン著, 上尾信也, 網野公一訳. コンサートの文化史. 柏書房, 1994, p. 2, (ポテンティア叢書, 33).
(2) 日本建築学会編. 音楽空間への誘い : コンサートホールの楽しみ. 鹿島出版会, 2002, p. 57.
(3) 施設自体の広報としては、節目に開催されている例が挙げられる。
“大宮図書館でオープニング記念コンサートが開催されます!”. さいたま市図書館. 2019-05-07.
https://www.lib.city.saitama.jp/infoevent;jsessionid=B478652CE281A84F6BB2CF569EADD0AC?0&pid=2197 [168], (参照 2019-05-13).
“図書館コンサート開催”. 村山市立図書館. 2017-06-20.
http://www.shoyo-plaza.jp/library/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=306 [169], (参照 2019-04-18).
(4) 特に図書館内や図書館付近(エントランス等)で開催される演奏会に、より顕著な特徴であると思われる。例えば、以下では「家庭的」という感想が寄せられている。
“秋の図書館ロビーコンサートを開催しました。”. 世田谷区立図書館. 2016-10-15.
https://libweb.city.setagaya.tokyo.jp/main/0000000019/article.html [170], (参照 2019-04-18).
(5) 文化会館エントランスホールの音楽会でも同様の記述がある。 加藤清次. 生涯音楽学習の活動:みんなの音楽、みんなで音楽 ふだん着で気楽に参加できる音楽会“さわやか音楽会”について. 音楽文化の創造:cmc. 2002, 26, p. 70-73.
(6) 開催報告の写真から、多くの人が来館している様子を確認できる。
“小幡記念図書館で読書&音楽会を開催しました”. 中津市. 2018-11-29.
https://www.city-nakatsu.jp/infodoc/2018112900048/ [171], (参照 2019-04-16).
“図書館ライブ”. 北陸学園北陸高等学校. 2018-09-12.
http://www.hokuriku.ed.jp/diary/today/entry-2338.html [172], (参照 2019-04-22).
(7) 北村志麻. 図書館員のためのイベント実践講座. 樹村房, 2017, p. 7.
(8) 資料の紹介や展示の一例として以下の横浜市磯子図書館の事例が挙げられる。
“図書館でコンサート!?”. 磯子Magazine. 2011-04-30.
https://isomaga.com/topics/110430_toshokan_concert.htm [173], (参照 2019-04-15).
(9) 知多市立図書館(愛知県)では新美南吉に関するイベントの一環として、朗読と音楽演奏のイベントが開催された。 知多市立中央図書館. 図書館だより. 2017, (445).
https://www.lib.city.chita.aichi.jp/manage/contents/upload/598be14f30f98.pdf?idSubTop=1 [174], (参照 2019-04-18).
(10) 横浜市神奈川図書館では、宮沢賢治の作品の世界を楽しむために、朗読と演奏を組み合わせた行事が実施された。 “チェロと朗読でつづる「なめとこ山の熊」”. 横浜市.
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kyodo-manabi/library/event/03.html#kanagawa [175], (参照 2019-04-17).
(11) 新宿区立中央図書館では、音楽演奏により夏目漱石の作品や漱石が生きた時代の様子を感じるために以下が開催された。
“図書館で漱石音楽会と漱石映画会を開催”. 新宿区.
https://www.city.shinjuku.lg.jp/whatsnew/pub/2007/1208-02.html [176], (参照 2019-04-23).
(12) 大阪市立中央図書館では、楽曲や出演者に絡めて図書館サービスの案内を行い、利用を促す工夫を行っている。
“【中央】ピアノコンサートをきっかけに図書館を利用してみませんか?”. 大阪市立図書館.
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/index.php?key=joujqjdin-6714#_6714 [177], (参照 2019-04-22).
(13) 北村. 前掲, p. 8, 29.
特に、併設する会議室等ではなく、閲覧室での開催は、斬新さから反響を呼んだ以下のような例があり、大きな効果が予想される。
吉田新治. 特集, 音楽と図書館: 閲覧室がコンサートホールに. みんなの図書館. 1990, (159), p. 7-11.
(14) 庄司名奈恵, 小島隆矢. 公共図書館の評価に関する研究―その2 図書館イメージと利用経験・利用行動の関連分析―. 学術講演梗概集D-1分冊. 2011, p. 117-120.
(15) 酒見佳世. ライブラリーコンサートin日吉-図書館がコンサートホールになった日-. MediaNet. 2017, (24), p. 40-41.
http://www.lib.keio.ac.jp/publication/medianet/article/pdf/02400400.pdf [178], (参照 2019-07-10).
(16) 図書館に対する親しみについて、以下で言及されている。
“図書館自慢~南さつま市立図書館~”. 鹿児島県図書館協会.
https://www.library.pref.kagoshima.jp/kentokyo/?p=10521 [179], (参照 2019-05-09).
“図書館ミニコンサートを開催しました(島田図書館)”. 島田市立図書館.
https://www.library-shimada.jp/news/20171213miniconcertreport.html [180], (参照 2019-04-18).
(17) 国際図書館連盟多文化社会図書館サービス分科会編, 日本図書館協会多文化サービス委員会訳・解説. 多文化コミュニティ―図書館サービスのためのガイドライン―. 日本図書館協会, 2009, p. 40.
https://www.ifla.org/files/assets/library-services-to-multicultural-populations/publications/multicultural-communities-ja.pdf [181], (参照 2019-07-18).
(18) J.ブラッキング著, 徳丸吉彦訳. 人間の音楽性. 岩波書店, 1978, p. 155, (岩波現代選書, 21).
(19) デトレフ・アルテンブルク著, 加藤拓未訳. 音楽と文化的アイデンティティ. 言語文化. 2010, (27), p. 24-33.
https://www.meijigakuin.ac.jp/gengobunka/bulletins/archive/pdf/2018/27Altenburg-Kato.pdf [182], (参照 2019-07-16).
(20) 他国出身の奏者が音楽を通し文化を紹介した例に以下がある。
日本図書館協会多文化サービス研究委員会編. 多文化サービス入門. 日本図書館協会, 2004, p. 68, (JLA図書館実践シリーズ, 2).
“中央図書館 ライブラリー・コンサート 1月27日(日)”. 山口市立図書館.
https://www.lib-yama.jp/events/event190112.html [183], (参照 2019-04-16).
(21) “IFLA/UNESCO Multicultural Library Manifesto”. International Federation of Library Associations and Institutions. 2018-09-11.
https://www.ifla.org/node/8976 [184], (accessed 2019-07-16)
(22) これまで挙げたもの以外で誰でも参加可能な例に以下がある。
“ライブラリーコンサート「二胡グループ演奏会」 (2/16)”. 福井県立図書館.
https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/tosyo/category/events/10669.html [185], (参照 2019-05-10).
“附属図書館企画ミニコンサート「小さい秋のコンサート」のご案内”. 山梨大学. 2018-09-18.
https://www.yamanashi.ac.jp/19224 [186], (参照 2019-06-20).
(23) 子ども、家族連れを意識したイベントとして、以下が挙げられる。
“【イベント】絵本とコラボの演奏会”. 尾道市立図書館. 2019-04-02.
https://www.onomichi-library.jp/?p=5450 [187], (参照 2019-04-23).
次の文献にも親子連れを意識した演奏会に関する記述がある。
講演会・コンサート. TRCほんわかだより. 1998, (132), p. 52-54.
(24) YAを巻き込んだイベントの例として、以下が挙げられる。
静岡市立図書館では、YAが本の紹介、関連楽曲の演奏を行うYAコンサートが実施された。読書への興味がうかがえる感想や、若い世代に向けたアプローチとして評価する声が寄せられている。
“第1回YAコンサート「音楽が彩る本の世界」開催!!”. 静岡市立図書館.
https://www.toshokan.city.shizuoka.jp/?page_id=740 [188], ( 参照 2019-04-16).
岡山市立幸町図書館の事例では、進行等は全てオーケストラに所属する中学生、高校生が行っている。
“「幸町図書館 岡山市ジュニアオーケストラミニコンサート」の様子(平成21年8月開催)”. 岡山市.
http://www.city.okayama.jp/kyouiku/chuotoshokan/chuotoshokan_s00131.html [189], (参照 2019-04-17).
(25) レイモンド・マクドナルドほか編著, 岡本美代子, 東村知子共訳. 音楽アイデンティティ:音楽心理学の新しいアプローチ. 北大路書房, 2011, p. 1.
(26) Mortensen, Helle Arendrup; Nielsen, Gyda Skat. Guidelines for Library Services to Persons with Dementia. International Federation of Library Associations and Institutions, 2007, p. 9,(IFLA Professional Reports, 104).
https://www.ifla.org/files/assets/hq/publications/professional-report/104.pdf [190], (accessed 2019-06-18).
(27) 注(24)で挙げた演奏会の他にも次のような事例がある。
むつ市立図書館(青森県)では奏者(主に市民)と協力し、市民の文化・芸術活動の発表、交流の場として演奏会が開かれている。 “図書館ギャラリーコンサートを開催しました”. むつ市. 2018-12-10.
http://www.city.mutsu.lg.jp/index.cfm/41,72661,123,919,html [191], (参照 2019-06-14).
愛荘町立愛知川図書館(滋賀県)は、利用者が図書館の活動に参加できるような働きかけとして、発表の場を提供している。
渡部幹雄. “図書館とまちづくり―愛知川図書館の事例を中心に”. 図書館の活動と経営. 大串夏身編. 青弓社, 2008, p. 54, (図書館の最前線, 5).
(28) 東京音楽大学新キャンパス開校に合わせ、以下が開催された。
“目黒区立図書館と東京音楽大学のコラボで「音楽とおはなし会」を開催しました!”. 目黒区立図書館.
https://www.meguro-library.jp/opw/OPS/OPSMESSDETAIL.CSP?PIDNODE=OPSMESS&NODE=Data-ALL&id=100141 [192], (参照 2019-05-30).
(29) 名古屋市山田図書館はネッツトヨタ名古屋株式会社(同地域に本社がある)との共催で以下を開催した。
“山田図書館 「クラシック de 読み聞かせ音楽会」を行いました”. 名古屋市図書館. 2018-10-28.
https://www.library.city.nagoya.jp/oshirase/topics_gyouji/entries/20181028_04.html [193], (参照 2019-04-26).
(30) 相良裕. “地域の図書館 はじめの一歩―諫早市立たらみ図書館の事業実践報告”. 図書館の活動と経営. 大串夏身編. 青弓社, 2008, p. 76-77, (図書館の最前線, 5).
(31) 以下では、田原市図書館(愛知県)で開催されたイベントを通し、既存の利用者と新規の来館者が出会い、別の活動へ発展することへの期待の声がみられる。
大林正智. 図書館だって歌いたい!「うたう図書館」ライブ評.大学の図書館. 2018, 37(2), p. 28.
(32) 学校図書館や大学図書館でも、児童、生徒、学生、教職員、学内団体等と演奏会を開くことで、同様の効果が期待できると思われる。例えば、次が挙げられる。
“大阪大学附属図書館 夜のコンサートシリーズ(12/11・月, 12/22・金)”. 大阪大学.
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/seminar/2017/12/7589 [194], (参照 2019-06-20).
(33) こういったセレンディピティは、主に閲覧室で開催する場合や開館時間中に実施する場合に、より発生しやすいと予想される。以下の来場者アンケートでは、来館者が偶然演奏会に訪れた例や音楽への興味が喚起されている様子が見られる。
“ライブラリーコンサート 来場者アンケート” [2016]. 慶應義塾大学日吉メディアセンター.
http://www.hc.lib.keio.ac.jp/img/pictures/questionnaire.pdf [195], (参照 2019-04-20).
(34) “第1回YAコンサート「音楽が彩る本の世界」開催!!”. 静岡市立図書館.
https://www.toshokan.city.shizuoka.jp/?page_id=740 [188], ( 参照 2019-04-16).
(35) “ユネスコ公共図書館宣言”. 日本図書館協会, 1994.
http://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/237/Default.aspx [196], (参照 2019-06-23).
(36) 注(32)の他に、以下でも文化・活動の振興への言及がある。
和歌山県立図書館では、演奏を聴く機会や地域の音楽家の演奏機会を提供し、文化振興等を図るために以下を実施している。
“エントランスコンサート演奏者募集中”. 和歌山県立図書館文化情報センター.
https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/bunjyo/gaiyo/cat/entrance.html [197], (参照 2019-04-18).
奈良県立図書情報館では、「関西元気文化圏」に登録された、以下をはじめとした演奏会が催されている。
“ムジークフェストなら2019 in 図書情報館 大阪フィルハーモニー交響楽団団員によるクラリネットカルテットコンサート 令和元年6月4日(火)”. 奈良県立図書情報館.
http://www.library.pref.nara.jp/event/3013 [198], (参照 2019-06-15).
“関西元気文化圏 参加事業者募集”. 文化庁.
https://kansai.bunkaryoku.bunka.go.jp/#pages/application [199], (参照 2019-06-15).
[受理:2019-08-14]
野村明日香. 図書館による演奏会. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1957, p. 2-4.
https://current.ndl.go.jp/ca1957 [200]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11359090 [201]
Nomura Asuka
Concerts by Libraries
PDFファイル [205]
日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム:石橋映里(いしばしえり)
「脚本アーカイブズ活動」とは、主にテレビ・ラジオの放送番組制作に使用した脚本・台本(以下「脚本等」)を収集、保存、管理、公開する活動である。2011年5月18日、文化庁と国立国会図書館(NDL)の間で「我が国の貴重な資料の次世代への確実な継承に関する協定」が締結され、「テレビ・ラジオ番組の脚本・台本」の所在情報の把握や目録の作成、収集・保存、活用等について一層緊密な連携・協力を行っていくことになった(1)。この協定を受け、2012年には一般社団法人日本放送作家協会から活動を継承し、一般社団法人日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム(2)(代表理事(当時)・山田太一;以下「コンソーシアム」)が設立された。現在までに収集された脚本等は9万点以上(映画、演劇、アニメ等の他分野の脚本を含む)。そのうち1980年以前の脚本等約2万7,000冊をNDLに寄贈し、東京本館の音楽・映像資料室で公開中である。また、1981年以降の脚本等約2万4,000冊が2016年より川崎市市民ミュージアム(3)のライブラリーで公開されている。川崎市市民ミュージアムでの公開開始を受け、コンソーシアムによる第1 次文化庁委託調査研究事業「文化関係資料のアーカイブ構築に関する調査研究~放送脚本・台本のアーカイブ構築に向けて」(2012年度から2016年度)は一区切りとされた。1年間のインターバルの後、活動は「発展期」として新たなフェーズへと進んだ。本稿では、第1次委託調査研究事業(以下「第1次調査研究」)の成果報告と共に、2018年度から開始された第2次委託調査研究事業(以下「第2次調査研究」)の展望を紹介したい。
活動の発端は2003年、テレビ放送開始50年を機に衆議院総務委員会が脚本家3人を有識者として招致したことによる。日本放送作家協会理事長だった脚本家・市川森一氏による脚本等を保存する資料館設立の訴えは超党派の議員の賛成を得たが、選挙など諸々の事情により、活動が具体的に動き始めるのは2年後となった。
2005年、足立区立中央図書館(東京都)内に日本放送作家協会の日本脚本アーカイブズ特別委員会が設置された。2011年の協定が締結されるまでの間、文化庁人材育成助成事業、放送文化基金等の様々な支援を受けながら、脚本等約4万点が収集された。韓国、米国、英国、フランス、中国の放送関係アーカイブ施設を視察する機会も得られた。これらの成果が、協定締結へとつながったと考えている。
2011年5月、協定に明記された「次世代へ継承すべきテレビ・ラジオ番組の脚本・台本の保存」の検討を目的として、有識者会議「脚本アーカイブズ検討委員会」(以下「検討委員会」)が設置された(座長:東京大学大学院情報学環教授・吉見俊哉氏)。メンバーは文化庁を中心に、NDL、日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、東京国立近代美術館フィルムセンター(現:国立映画アーカイブ)、NHKアーカイブス、公益財団法人放送番組センターなどである。さらに著作権のアドバイザーとして福井健策弁護士が加わった(4)。
検討委員会では、「何を」「どのように(どこに)残し」「どう活用するか」という大きな3つのテーマが設定され、検討を重ねると共に調査研究事業が進められた。
一般に図書館は「図書」以外の資料を所蔵するのは難しい。脚本等については、放送法第167条に基づいて設置された「放送番組センター」(5)が扱うべき資料ではないか、排架スペースがあるのか、利用提供の体制はどうなるか等の議論を経て、最終的には協定を根拠として、NDLでの受入れが承認された。
収集した資料は年代により3つに分類された。第一期は1980年以前である。この時期はテレビ・ラジオとも放送初期で映像や音声の残存率が非常に低い。特にテレビ番組について、ビデオテープが高価だったため何度も上書き利用され、脚本等のみが当時の放送番組を知る手がかりとなっている。第二期は、1981年から1999年である。放送局にアーカイブ施設ができ始めた時期であるが、脚本を体系的に残す意識は少なかった。第三期は2000年以降である。番組販売が本格的に行われると共に、データ入稿などが主流になり、脚本等が保存されている可能性が高い。第一期を主眼に、NDLへの寄贈が決定した。分散保存の理由は、排架スペースの問題の他、第二期以降は個人情報の記載が増加する点、表紙に「貸与する」と記載される等、権利関係が複雑になる点である。複写を前提とした図書館ではなく博物館や文書館を想定し受入れ先の検討が行われた。
候補として「地方の時代」映像祭などを開催し、漫画、映画、ビデオを所蔵する川崎市市民ミュージアムが挙がった。コンソーシアムの当時の代表理事・山田太一氏が川崎市名誉文化大使という縁から、寄贈の交渉が進められた。
寄贈先選定と並行し、コンソーシアムでは分散寄贈への準備が進められた。年代やジャンルによる資料の分別が最大の課題である。放送番組の脚本等は、放送年が記載されていないことが多い。多年度にわたって使用することを想定しないため、月日のみの記載で放送年はあまり記載されない。さらに、刊行物と異なり、第一稿、準備稿、決定稿等、制作過程で様々なバージョンが作られ、撮影時に記入されたカメラ割りなどの「書き込み」も多い。これらを複本と扱い除外するのか、すべてを残すのか、についても検討委員会で大きく意見が分かれたが、書き込みや脚本等の変遷の重要性に鑑み、すべてが保存の対象とされた。この時保存対象とすると判断したことが、NDL館内での「あの人の直筆」展(6)や「開館70周年記念展示」(7)に書き込み等のある脚本等が紹介展示される結果につながった。
寄贈・公開に向けた現物整理と共に、必須となったのが書誌データの再整理である。脚本等は独自の分類方法により、1冊ずつユニーク番号が付され、中性紙やOPP袋に入れて管理してきた。ナンバリングは寄贈先で再整理されることを想定しており、入力ルールなどが完備されないまま作業が進められていた。結果、入力者ごとにエクセルシートが分散保存され、その結合と整理は困難を極めた。
さらに寄贈した後、脚本等をどう検索するのか議論された。特別資料であることから、寄贈先のOPACに入れることは難しい。そこでコンソーシアムが「脚本データベース」(8)を作成し公開を進めることになった。資料が年代ごとに分散することから、データベースの機能として所蔵先を記載し、閲覧時にも使える管理番号を振りなおした(9)。
脚本データベースでは、表紙画像をサムネイルとして掲載している。撮影はNDLに寄贈後に行うことになったため、文化庁の委託研究の一環として、NDL館内にスキャナを持ち込んで業者に依頼し撮影した。川崎市市民ミュージアムの資料も同様に館内で撮影を行っている。さらに詳細画面の番組や出演者の情報にWikipediaへのリンクが自動表示される機能を付けている点も一つの特徴である。
脚本の活用事例としては、以前『カレントアウェアネス-E』にデジタル脚本アーカイブズ試行として「市川森一の世界」「藤本義一アーカイブ」を紹介した(E1766 [206]参照)。その第三弾が、「永六輔バーチャル記念館」(10)である。永六輔氏の一周忌にあわせて2017年7月に公開した。テレビ草創期の名作バラエティ『夢であいましょう』の台本をご遺族から借り受けデジタル化し、244回放送のうち203回分が公開されている。
永氏のインタビューを残すことはかなわなかったが、永氏と親しかった関係者からの証言を搭載することにより、人物像を描くことに成功した。「写真館」のコーナーでは、永氏の仕事部屋を撮影し、生前使われていた机や蔵書、愛用品を観ることができる。藤本義一アーカイブに続き、ウェブサイトの構築およびインタビュー撮影は、「文化遺産オンライン」(11)や「 日本アニメーション映画クラシックス」(E1895 [207]参照)(12)等を手がける国立情報学研究所(NII)・高野明彦教授の研究チームに依頼した。
脚本アーカイブズシンポジウムは2010年から開催されてきた。シンポジウムのテーマとして、毎年様々な活用事例を掲げている。著作権問題、データベースのトライアルのほか、映像を引用しながら、脚本等と対比して紹介する試みも行われている。映像アーカイブと脚本アーカイブとの連携は今後の課題であり、シンポジウムで実践していきたいと考えている。
第1次事業との大きな違いは、法政大学の藤田真文教授を研究代表とする大学連携による研究チームが生まれたことである。研究は国際発信を視野に入れており、チームのアドバイスを基に書誌の充実やオーラルヒストリーが実践的に行われている。
発足当時の検討委員会では、収集済の脚本等の寄贈公開が完了するまで、積極的な収集を中断すべきとされた。しかし、NDLへの寄贈および公開という報道により、寄贈希望者が増え、受け入れを中断している段階では、貴重な脚本等が散逸の危機にさらされた。2012年に行った脚本所蔵アンケートの結果では、在野に眠る収集可能な脚本等は13万冊と予想された。そこで2016年から作家を中心に大規模な収集の呼びかけを行っている。2019年度寄贈された貴重な脚本等としては、故・筒井敬介(1918年東京生まれの脚本家、児童文学作家)の『バス通り裏』の脚本等である。本番組は1958年4月から、1963年3月まで5年にわたって放送され、日本の帯ドラマの基礎を固める作品である。生放送のため映像はほとんど残っていないという。このような1980年以前(第一期)の貴重な脚本等は、2万冊を超え倉庫に眠っており、一般公開が望まれる。
2018年度から新たに実施している活動として、オーラルヒストリーが挙げられる。放送の脚本家のみならず、アニメの脚本家たちへのインタビューも実施している。放送の現場とは違う一面もあり、コンソーシアムが手掛ける「アニメ脚本と脚本家のデータベース」(13)にて公開していく予定である。
2018年度から、日本のコンテンツを海外発信することを目的に映像産業振興機構(VIPO)が管理する「JACC®サーチ(Japan Content Catalog)」(14)と連携し、アニメ・放送・音楽・映画と共に脚本が一括検索できるようになっている。2019年2月から、脚本データベースの英語版サイトも公開している。
脚本データベースの書誌入力事項としては、プロデューサーや美術担当、音楽担当、放送時間等を追加するなど、充実をはかっている。また、特に海外からの関心が高いアニメ脚本のあらすじを約100本作成し、その半数を英語に翻訳した。2019年中に脚本データベースにて公開予定である。
前述のJACC®サーチを通じ、「脚本データベース」はジャパンサーチ(15)の連携データベースとして掲載されている。今後は表紙画像の提供など積極的に取り組んでいきたい。
第2次調査研究は2018年度から2022年度(2023年3月末)の5年を予定し計画的に進められている。事業の「発展期」としての大きな課題を3つ掲げたい。
まず、代表的なドラマ作品をインターネット上で多言語発信していく「日本の脚本100選」企画である。これは国語教育での活用、海外における日本文化研究での活用の他、NHKアーカイブスなどが実践する「回想法」(16)の一助にも成り得ると考えている。
2つ目は、脚本等の収集を完了させ、特に倉庫で眠っている1980年以前(第一期)の貴重な脚本の一般公開を目指すことである。
最後に、「脚本データベース」や「デジタル脚本アーカイブズ」などの成果物の受け皿として、ポストコンソーシアム組織に引き継いでいくことである。
この3つの課題解決を、第2次調査研究の目標として、テレビ放送70周年を記念する2023年に実践したいと願っている。
(1) “国立国会図書館と文化庁との協定について ~我が国の貴重な資料の次世代への確実な継承~”. 文化庁. 2011-05-18.
http://warp.ndl.go.jp/collections/NDL_WA_po_print/info:ndljp/pid/9287048/www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/NDL_WA_po_archive_kyotei.pdf [208], (参照 2019-07-31).
“国立国会図書館と文化庁との協定について~我が国の貴重な資料の次世代への確実な継承~”. 国立国会図書館. 2011-05-18.
http://warp.ndl.go.jp/collections/NDL_WA_po_print/info:ndljp/pid/9961196/www.ndl.go.jp/jp/news/fy2011/__icsFiles/afieldfile/2011/05/17/NDL_WA_po_pr20110518.pdf [209], (参照 2019-07-31).
(2) 一般社団法人日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム.
https://www.nkac.jp/ [210], (参照 2019-07-22).
(3) “ミュージアムライブラリー”. 川崎市市民ミュージアム.
https://www.kawasaki-museum.jp/library/ [211], (参照 2019-07-22).
(4) “収集・保存・公開に関する課題の検討”. 文化関係資料のアーカイブ構築に関する調査研究:放送脚本・台本のアーカイブ構築に向けた調査研究. 日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム, 2013, p. 31-37.
https://www.nkac.jp/app/download/10923841074/H24%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf?t=1517186081 [212], (参照 2019-07-31).
(5) 放送ライブラリー.
http://www.bpcj.or.jp/ [213], (参照 2019-07-22).
(6) “企画展示 「あの人の直筆」”. 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11254371/www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/1207039_1376.html [214], (参照 2019-07-22).
(7) “開館70周年記念展示「本の玉手箱-国立国会図書館70年の歴史と蔵書-」”. 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11254371/www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/exhibition2018.html [215], (参照 2019-07-22).
(8) “脚本データベース”. 日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム.
http://db.nkac.or.jp/ [216], (参照 2019-07-22).
(9) 国立国会図書館所蔵資料は「N01-〇〇」、川崎市市民ミュージアムは「K01-〇〇」、映画はフィルムセンターを示す「F」、演劇は早稲田大学坪内博士記念演劇博物館を示す「W」、アニメは動画を示す「D」がそれぞれ付されている。
(10) “永六輔バーチャル記念館”. 日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム.
http://eirokusuke.nkac.or.jp/ [217], (参照 2019-07-22).
(11) 文化遺産オンライン.
https://bunka.nii.ac.jp/ [218], (参照 2019-07-22).
(12) 日本アニメーション映画クラシックス.
http://animation.filmarchives.jp/index.html [219], (参照 2019-7-22).
(13) “アニメ脚本と脚本家のデータベース”. 日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム.
http://animedb.nkac.or.jp/top.htm [220], (参照 2019-07-22).
(14) “JACC®サーチ(Japan Content Catalog)”. 映像産業振興機構.
https://japancontentcatalog.jp/ [221], (参照 2019-07-22).
(15) “連携機関 特定非営利活動法人映像産業振興機構”. ジャパンサーチ(BETA).
https://jpsearch.go.jp/organization/vipo [222], (参照 2019-07-22).
(16) 「回想法」とは、高齢者を対象として、懐かしいドラマなどに触れ語り合うことで、認知症の予防や改善につなげる試みである。NHKアーカイブスでも実践されている。
“回想法ライブラリー”. 日本放送協会.
https://www.nhk.or.jp/archives/kaisou/ [223], (参照 2019-07-22).
[受理:2019-08-02]
石橋映里. 脚本アーカイブズ活動の成果と今後の展望. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1958, p. 5-7.
https://current.ndl.go.jp/ca1958 [224]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11359091 [225]
Ishibashi Eri
Achievements and Future Prospects of “The Script Archive Movement”
PDFファイル [230]
東京学芸大学附属図書館(前 千葉大学附属図書館):高橋菜奈子(たかはしななこ)
千葉大学附属図書館:千葉明子(ちばあきこ)
千葉大学は、2016年3月に「千葉大学オープンアクセス方針」を策定した(1)。この方針では、学術雑誌等によって公表された教員の研究成果を機関リポジトリにより公開することを定めたが、一方で、査読済み学術論文の捕捉率は日本全体でみると6%に過ぎず、研究者自身に機関リポジトリにセルフアーカイブしてもらうことの難しさも指摘されていた(2)。このため、策定・承認の過程において、研究者に作業負担をかけない形でオープンアクセス(OA)を実現することが課題となっていた。
本稿では、CHORUS機関ダッシュボード・サービス(3)を利用し、著者に作業負担があるグリーンOAでも、論文処理費用(APC)の費用負担があるゴールドOAでもない、第三のOAの道を探る取り組みを紹介する。
CHORUS(Clearinghouse for the Open Research of the United States)は、研究資金を得てなされた研究の成果を、容易かつ永続的に、発見可能、アクセス可能、検証可能とすることを目指して、資金助成機関、出版社、研究者、及び研究機関が研究論文のパブリックアクセスを実現することを支援するイニシアティブである(4)。運営は、米国に拠点を置く非営利団体CHOR, Inc.が行っている。
CHORUSには、Elsevier、Wiley、Springer Nature等主要な学術出版社60社(5)(6)が加盟し、出版社ウェブサイトで“Publicly accessible versions”(出版社が受理した著者最終版、または出版社版のいずれかのバージョン)の本文ファイルを公開している。公開する本文ファイルのバージョンやエンバーゴの選択は出版社に委ねられている(7)。出版社が公開した著者最終版は出版社ウェブサイトで誰でも閲覧できるが、購読している電子ジャーナルを閲覧できる環境からアクセスした場合には、出版社版の本文ファイルが自動的に表示される。出版社による本文ファイル公開は、資金助成機関による研究成果のOA義務化への対応としてなされている。
「CHORUSダッシュボード・サービス」(8)とは、CHORUS に加盟する資金助成機関10機関(9)(10)から助成を受けた研究で、CHORUS加盟出版社が出版した全ての論文の情報とOAの状況を、CHORUSがモニターしデータ提供するサービスである。日本の資金助成機関では、科学技術振興機構(JST)が加盟している。CHORUSダッシュボードで提供されるデータは、Crossref、Funder Registry(旧FundRef)、Scopus、ORCID、Scholix、Portico及びCLOCKSS、並びにAtypon等の電子出版インフラを用いて収集されている(11)(12)(13)。学術情報流通に関わる既存のインフラを連携させ活用し、情報提供していることが特長である(14) 。
このダッシュボードには、研究機関向けと資金助成機関向けの2 種類がある。千葉大学が契約した研究機関向けの「CHORUS機関ダッシュボード・サービス」では、所属研究者の論文についてデータが提供され、(1)統計グラフの表示(CHORUS捕捉論文数の推移の線グラフ、出版社ウェブサイトでのOAが確認された比率等項目別の円グラフ、資金助成機関ごとの論文数の棒グラフ)(図1)、(2)データの抽出(DOIを含む論文単位のデータ、DOIとORCID iD(CA1740 [231]参照)を含む著者単位のデータ等)(図2)、(3)CHORUS捕捉論文の検索、といった機能を備えている。
なお、JSTが契約した「CHORUSジャパン・ダッシュボード・サービス」(15)は、資金助成機関向けのもので、研究者の所属機関に関わらずJSTの助成を受けた論文についてデータが提供されており、ウェブ公開されている(16)。
千葉大学は、2016年8月から2017年5月の間、CHOR, Inc.と日本の資金助成機関であるJSTとの間で行われた「CHOR-JST試行プロジェクト」(E1844 [232]参照)(17)に参加し、そこでの検証を経て、2017年12月にCHORUS機関ダッシュボード・サービスを有償契約した(18)。実験的な取り組みとして、ダッシュボードにある論文情報を機関リポジトリに一括登録し、DOIを介して出版社ウェブサイトの本文へリンクするモデルと業務の流れを検討した。
具体的な作業手順は以下の通りである。
2019年6月までに計167件(2016年11月 14件、2017年1月 2件、2018年3月 63件、2019年6月 88件)の論文情報を機関リポジトリに登録し、CHOR, Inc.へダッシュボードの改善点をフィードバックした。
CHORUSのサービスは、出版社ウェブサイトで雑誌に掲載された論文がOAになるという点においてはゴールドOAと似ているが、APCを支払うことなくオープンになるという点ではグリーンOAに近い。APCの費用増大が懸念される中、また、著者によるセルフアーカイビングの拡大にも限界が見える中、今回の実験を通じて、少なくとも短期的にはOA推進の手法として意義があることが確認できた。さらに、バージョン管理・エンバーゴ管理は出版社サイトで行われ、図書館での管理負担がない新たなデータフローと業務の流れを検討できたことにも大きな意義があった。加えて、CHORUSダッシュボードが日本の資金助成機関と研究機関にとって利用しやすいものになるよう実験を通じて様々な提言を行い、所属機関情報を含む著者情報が抽出データに追加される等、実際に改善がなされたことも評価している。
CHORUS機関ダッシュボード・サービスによって、各機関の研究成果を容易に把握でき、機関リポジトリを介してメタデータを流通させることでビジビリティを上げることに更なる期待をかけているが、現時点での課題としては、以下の3点が挙げられる。
第一に、機関の研究成果に対するカバー率である。試行段階でのカバー率は低かったが、現在ではCHORUSに加盟する出版社が増加し、カバー率も上昇している。対象となる資金助成機関もFunder Registryに登録されている資金助成機関へと段階的に拡大されている。日本の資金助成機関としては、日本学術振興会(JSPS)、日本医療研究開発機構(AMED)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も2019年1月に追加された(19)。ただし、CHOR, Inc.によるOAの状況の確認作業は、CHORUSに加盟する資金助成機関(現在10機関)に限られる点に留意が必要である。
CHORUSダッシュボードの網羅性・即時性・情報の正確性・OA化率については、JSTが検証を続けているが(20)、捕捉漏れを防ぐため、論文投稿時にFunder IDやGrant Number、ORCID iDを入力するよう研究者へ周知することも必要である。
第二に、CHORUSダッシュボードは書誌情報自体の提供を目的とはしていない。それゆえ、詳細な書誌情報を機関リポジトリに入力しようとすると、メタデータを補完しなければならない。提供されたDOIやORCIDの識別子を基にメタデータは他から取得することが今後の検討課題となる(21)。この点は、JPCOARスキーマ(22)の適用によって簡便になることを期待している。
第三に、試行プロジェクトの初期段階においては、本文ファイルとして“Publicly accessible versions”を出版社から入手し、機関リポジトリに登録するべく千葉大学と出版社との間で交渉を行ったが、出版社の賛同は得られなかった。なお、フランスの学術機関コンソーシアムCouperinとElsevierとの新しい契約では、出版社からリポジトリへ本文ファイルの提供がなされるようであり(23)、今後、出版社の態度が変わることも期待したい。
研究機関として、資金助成を受けた研究成果のOAの状況を簡単にモニターできることがCHORUS機関ダッシュボードの利点である。学内のリサーチ・アドミニストレーター(URA)へも情報提供し、研究成果のOA推進への協力を求めている。
また、CHORUSダッシュボードの新機能として、2018年8月に論文に関連付くデータセットのDOIが追加され、この項目も抽出できるようになった。データセットの情報の活用も検討しているところである。
本プロジェクトは、大学および大学図書館の立場からOAを実現する手法として戦略的に検討する必要がある。CHORUSが基礎とする、出版社ウェブサイトでの無料での論文ファイルの公開というOAの手法が、長期的に研究者と大学にとって持続可能な枠組みとなるのかを今後も注視していきたい。
(1) 千葉大学. 千葉大学オープンアクセス方針. 千葉大学学術成果リポジトリ CURATOR. 2016-03-10.
https://www.LL.chiba-u.jp/curator/about/doc/Chiba_Univ_OA_policy.pdf [233], (参照 2019-06-21).
(2) 尾城孝一. オープンアクセス推進と研究支援: 大学図書館の新たなチャレンジ. 第4回SPARC Japan セミナー2015, 2016-03-09.
https://www.nii.ac.jp/sparc/event/2015/pdf/20160309_doc2.pdf [234], (参照 2019-07-23).
(3) CHOR, Inc. “CHORUS Institution Dashboard Service”. CHORUS: Advancing Public Access to Research.
https://www.chorusaccess.org/resources/chorus-for-institutions/chorus-institution-dashboard-service/ [235], (accessed 2019-07-23).
(4) CHOR, Inc. CHORUS: Advancing Public Access to Research.
https://www.chorusaccess.org/ [236], (accessed 2019-06-21).
(5) CHOR, Inc. “Our Members”. CHORUS: Advancing Public Access to Research.
https://www.chorusaccess.org/about/our-members/ [237], (accessed 2019-08-02).
(6) CHORUS加盟出版社数は、2019年5月26日付でCHOR, Inc.よりメールで回答を得た。
(7) CHOR, Inc. “Publisher Implementation Guide v2.2.1”. CHORUS: Advancing Public Access to Research. 2019-06.
https://www.chorusaccess.org/publisher-implementation-guide-v2-2-1/ [238], (accessed 2019-07-23).
(8) CHOR, Inc. “Dashboard Service”. CHORUS: Advancing Public Access to Research.
https://www.chorusaccess.org/services/dashboard-service/ [239], (accessed 2019-07-23).
(9) CHOR, Inc. “CHORUS Funder Participants”. CHORUS: Advancing Public Access to Research.
https://www.chorusaccess.org/resources/chorus-funder-participants/ [240], (accessed 2019-08-02).
(10) CHORUS加盟資金助成機関数は、2019年5月26日付でCHOR, Inc.よりメールで回答を得た。
(11) CHOR, Inc. “How It Works”. CHORUS: Advancing Public Access to Research.
https://www.chorusaccess.org/about/how-it-works/ [241], (accessed 2019-07-23).
(12) CHOR, Inc. “CHORUS Selects Scopus Data to Strengthen Its Services for Institutions and Funders”. CHORUS: Advancing Public Access to Research. 2017-11-07.
https://www.chorusaccess.org/chorus-selects-scopus-data-strengthen-services-institutions-funders/ [242], (accessed 2019-08-02).
(13) CHOR, Inc. “New Framework for Linking Data”. CHORUS: Advancing Public Access to Research. 2016-06-24.
https://www.chorusaccess.org/new-framework-for-linking-data/ [243], (accessed 2019-08-02).
(14) 時実象一. オープンアクセスの動向(1): オープンアクセスの義務化とその影響. 情報の科学と技術. 2014, 64(10), p. 426-434.
https://doi.org/10.18919/jkg.64.10_426 [244], (参照2019-06-21).
(15) 科学技術振興機構. “論文のオープンアクセスに関して「CHORUSジャパンダッシュボードサービス」利用を開始”. 科学技術振興機構. 2017-10-11.
https://www.jst.go.jp/report/2017/171011.html [245], (参照 2019-06-21).
(16) CHOR, Inc. CHORUS Dashboard: Japan Science and Technology Agency.
https://dashboard.chorusaccess.org/jst#/summary [246], (accessed 2019-06-21).
(17) CHOR-JST試行プロジェクトの期間は、当初2017年2月までの予定であったが3か月延長された。
(18) 千葉大学附属図書館. “「CHORUS機関ダッシュボード・サービス」を契約しました”. 千葉大学学術成果リポジトリ CURATOR. 2017-12-01.
https://www.LL.chiba-u.jp/curator/news/index.html#n16 [247] (参照 2019-07-23).
(19) 2019年5月26日付でCHOR, Inc.よりメールで回答を得た。
(20) 小賀坂康志. JSTにおけるオープンサイエンス・オープンアクセスの実践. Wiley Research Seminar Japan 2018. 2018-08-05.
https://impactforum.wileyresearch.com/wp-content/uploads/2018/08/Yasushi-Ogasaka201808.pdf [248], (参照 2019-06-21).
(21) 竹内比呂也 . CHORUS から機関リポジトリへ : 千葉大学CURATORにおけるDOIの活用. Japan Open Science Summit 2019. 2019-05-28.
https://opac.LL.chiba-u.jp/da/curator/106097/JOSS20190528_CHOR_CURATOR.pdf [249], (参照 2019-06-21).
(22) オープンアクセスリポジトリ推進協会. JPCOARスキーマガイドライン. 2017-10-27.
https://schema.irdb.nii.ac.jp/ [250], (参照 2019-07-23).
(23) Clavey, Martin. Un accord de 4 ans entre Elsevier et la recherche francaise. The Sound Of Science, 2019-04-16.
https://www.soundofscience.fr/1754 [251], (accessed 2019-06-21).
[受理:2019-08-07]
高橋菜奈子, 千葉明子. CHORUSダッシュボード・サービスと千葉大学附属図書館での取り組み. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1959, p. 8-11.
https://current.ndl.go.jp/ca1959 [252]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11359092 [253]
Takahashi Nanako
Chiba Akiko
Evaluation of the CHORUS Dashboard Service through Initiatives in Chiba University Library
PDFファイル [258]
北海道大学北キャンパス図書室:千葉浩之(ちばひろゆき)
金儲けのみを目的とした粗悪学術誌、いわゆるハゲタカジャーナル(1)の問題は、国際的にはpredatory publishingとして以前より認知され、様々な議論や対応がなされてきた。国内でも既に栗山が主題的に論じている(2)が、2018年の一連の毎日新聞の報道によって広く知られるようになった(3)。とりわけ、過去15年弱の間に日本から5,000本超の論文がハゲタカジャーナルに掲載されたとの調査結果(4)は重く受け止められ、研究者に対して注意を呼びかける動きが見受けられる(5)。
筆者も2018年10月に研究者向けに注意喚起のレクチャーを行った(6)。本稿では、大学図書館員の立場から、この問題の整理を試みる。
ハゲタカジャーナルを論じるうえでオープンアクセス(OA)運動との関係は切り離せない。学術情報、とりわけ学術論文をインターネット上で誰もが無償で利用できるようにするOAには大きく分けてふたつの方法がある。ひとつはグリーンOAで、出版社が定めた期間の経過後に出版社が認めた原稿を著者自身が機関リポジトリなどで公開する。もうひとつがゴールドOAで、論文処理費用(APC)を著者が支払うことで、原稿ではなく出版された論文そのものを公開する。
ゴールドOAのビジネスモデルは究極的には読者を必要としない。これを悪用して、APCによる収益のみを目的とし、査読が不適切ないしは全く行われていないと疑われる学術誌が現れた。研究者を食い物にする様を想起して、これらをハゲタカジャーナルと呼ぶ。実際に米国連邦取引委員会から研究者を欺いたかどで告訴され、裁判所により制裁金の支払いを命じられた出版社もある(7)。
とはいえ、多くの場合、ハゲタカジャーナルの実態は不透明である。毎日新聞の調査に協力した和田が「内通者がいない限り「無査読」を証明することはできない」(8)と指摘するように、根本的には疑惑の域を出ない。また、疑わしいと名指しすることは、当該出版社から苦情や訴訟を受けるリスクを伴うため、明らかにしがたい。
不透明さが残る一方で、ハゲタカジャーナルと疑われる特徴が数多く報告されており(9)、そこから実態を窺い知ることができる。例えば、大量の電子メールによる投稿の呼び掛け、迅速な査読や短期間での掲載の保証、APCや出版プロセスの不明示、作りが雑なウェブサイト、影響力のある学術誌であるかのような誤解を抱かせる指標(10)の表示などである。
なお、ハゲタカジャーナルと単純に低レベルの学術誌との違いは、前者が「虚偽あるいは過剰な宣伝」を行う点にあると和田は指摘している(11)。
不注意でそれとは知らずにハゲタカジャーナルへ投稿し、そこに論文が掲載された場合、以下の問題が懸念される。
まずは、不当に高額なAPCの請求といった金銭的なトラブルが起こりうる。また、適切な査読の中で行われうる修正や改善がない状態で論文が出版されてしまう。さらに、こうした出版社がOAを維持するコストを担うとは考えにくく、いつのまにか論文が消える恐れがある。一度論文が消えると、冊子版がないため、消えた論文業績を証明する術がない。
次に、掲載後にハゲタカジャーナルと公になった場合、OAなのでウェブ検索によって掲載論文や著者の特定は容易であり、査読の不備による研究成果への信用低下は避けられない。また、撤回したくてもジャーナル側が応じない恐れがある。その場合、別の健全な学術誌への再投稿は二重投稿という研究不正になりうる。また、騙し取られたAPCの原資が公的資金であれば、著者やその所属組織への社会的な批判も考えられる。
論文の流通面に目を向けると、査読によるチェックが不十分な論文をもとに別の研究が展開される事態は、学術研究全体に悪影響を及ぼす。有料の学術論文データベースはハゲタカジャーナルを収録しないようにしているため、それらを用いた論文検索でアクセスされる可能性は極めて低いが、OAによる伝播は侮れない。既に有名学術誌掲載論文の中にもハゲタカジャーナル掲載論文を引用したものがあると報告されている(12)。
一方で、研究者がハゲタカジャーナルへ投稿する要因は無知や不注意だけとは言い切れない。健全な学術誌への投稿が何度もリジェクトされてきた場合や、論文業績ノルマとして国際誌掲載本数が課される場合においては、研究者はハゲタカジャーナルからの誘いに応じてしまう恐れがある(13)。
ハゲタカジャーナルと疑われる学術誌やその出版社については、これまでジェフリー・ビール(Jefrey Beall)によるリスト(いわゆるBeall's List)が公開されており、見分ける手がかりになっていた。このリストは2017年1月に削除された(14)が、現在は匿名の有志が更新している(15)。また、機関向けの有料サービスだが、Cabell's International社もハゲタカジャーナルと疑われる学術誌のリストを提供している(16)。
逆に、健全な学術誌ないしは出版社を把握する方法もある。Directory of Open Access Journals(DOAJ:OA学術誌要覧)(17)には厳しい審査基準を通ったOA学術誌が収録されている。また、出版社がCommittee on Publication Ethics(COPE:出版規範委員会)(18)やOpen Access Scholarly Publishers Association(OASPA:OA学術出版社協会)(19)に所属しているか否かも判断材料となる。さらに、Quality Open Access Market(QOAM)(20)のように著者による評価を集め、数値化する試みもある。
また、有料の学術論文データベース、例えば、Web of ScienceやScopusはその品質を保つために収録学術誌の選定基準があり、これらへの収録有無も拠り所となる(21)。ただし、これらのデータベース提供元でさえハゲタカジャーナルを完全に除外することは難しく、収録学術誌の見直しが定期的になされている(22)。例 えば、Oncotarget誌は2015年7月からBeall's Listに掲載(23)されつつもWeb of Scienceに収録されていた。同誌は2016年版(2017年6月更新)までJournal Impact Factor(JIF)が腫瘍学分野で上位25%に入る有力誌だった(24)が、2018年の9巻4号を最後にWeb of Scienceでの収録が中止され(25)、2017年版以降のJIFの対象外になった(26)。同様に、Scopusも問題のある学術誌の収録を中止することがあり、それらのリストを公開している(27)。
実際にはこれらの方法だけでなく、先述のハゲタカジャーナルの特徴から、研究者自身の目で、ないしは同僚や、場合によっては大学図書館員とともに、判断する必要があるだろう。学術出版業界の有志によるキャンペーンサイト“Think. Check. Submit.”(28)も参考になる。
研究成果の発表先の選択は「学問の自由」に関わるため、ハゲタカジャーナル問題は第一義的には研究者が対処するものと見なされる。
とはいえ、研究者支援の観点から大学図書館による情報提供や注意喚起は可能である。さらに、ハゲタカジャーナル掲載論文の流通までを視野に入れたとき、学術情報流通に関わる立場から大学図書館は無関心ではいられまい。実態が不透明で容易に見分けられない問題であるからこそ、高次元の情報リテラシー教育として大学図書館から研究者へ働きかける必要があると考える。
(1) この文脈での「predatory」の邦訳としては「粗悪」「捕食」「悪徳」などが挙げられる。本稿では一般に定着し、報道などでも広く使われている「ハゲタカ」を採用した。
(2) 栗山正光. ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒. 情報管理. 2015, 58(2), p. 92-99.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.92 [259], (参照 2019-08-20).
(3) 一連の報道を担当した鳥井真平記者は2019年度の科学ジャーナリスト賞を受賞した。
日本科学技術ジャーナリスト会議. “科学ジャーナリスト賞の2019年度の贈呈作品決まる”. 2019-04-25.
https://jastj.jp/info/190425/ [260], (参照 2019-08-20).
(4) 鳥井真平. 粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿 業績水増しか. 毎日新聞. 2018-09-03, 朝刊[東京], p.26.
(5) 具体的な事例としては以下が挙げられる。
柴山昌彦文部科学大臣による記者会見での言及
文部科学省. “柴山昌彦文部科学大臣記者会見録(平成30年12月25日)”. 2018-12-25.
http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1412183.htm [261], (参照 2019-08-20).
大学による注意喚起(京都大学の事例)
京都大学図書館機構. “論文投稿の際は粗悪学術誌ハゲタカジャーナルにご注意ください!”. 2019-02-04.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/uploads/20190117_predatoryjournals_warning.pdf [262], (参照 2019-08-20).
学協会による注意喚起(日本医学会の事例)
日本医学会. “悪徳雑誌への注意喚起について”. 2019-03-08.
http://jams.med.or.jp/jamje/attention_vicejournal.pdf [263], (参照 2019-08-20).
(6) 当該レクチャーの資料は以下で公開している。
北海道大学北キャンパス図書室. “午後の講座 : オープンアクセスとハゲタカジャーナル”. 北海道大学学術成果コレクションHUSCAP.
http://hdl.handle.net/2115/71762 [264], (参照 2019-08-20).
(7) Federal Trade Commission. “Court Rules in FTC's Favor Against Predatory Academic Publisher OMICS Group; Imposes $50.1 Million Judgment against Defendants That Made False Claims and Hid Publishing Fees”. 2019-04-03.
https://www.ftc.gov/news-events/press-releases/2019/04/court-rules-ftcs-favor-against-predatory-academic-publisher-omics [265], (accessed 2019-08-20).
(8) 和田俊和. 粗悪学術誌/国際会議について -傍らの濁流-. 情報処理. 2019, 60(2), p. 104-108.
(9) 例えば、以下の文献群において、ハゲタカジャーナルと疑わる特徴が表ないしは箇条書きで示されている。
Eriksson, Stefan; Helgesson, Gert. The false academy: predatory publishing in science and bioethics. Medicine, Health Care and Philosophy. 2017, 20(2), p. 163-170.
https://doi.org/10.1007/s11019-016-9740-3 [266], (accessed 2019-08-20).
Berger, Monica. “Everything You Ever Wanted to Know About Predatory Publishing but Were Afraid to Ask”. ACRL 2017, Baltimore, Maryland, 2017-03-22/25.
https://academicworks.cuny.edu/ny_pubs/141/ [267], (accessed 2019-08-20).
Richtig, G. et al. Problems and challenges of predatory journals. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2018, 32(9), p. 1441-1449.
https://doi.org/10.1111/jdv.15039 [268], (accessed 2019-08-20).
Shamseer, Larissa et al. Potential predatory and legitimate biomedical journals: can you tell the difference? A cross-sectional comparison. BMC Medicine. 2017, 15, 28.
https://doi.org/10.1186/s12916-017-0785-9 [269], (accessed 2019-08-20).
最後に挙げた文献において示された特徴を邦訳し、加筆したものとして以下の記事が挙げられる。
粥川準二. “「捕食ジャーナル」で誰が論文を発表しているのか?(後編)”. エナゴ学術英語アカデミー. 2018-08-30.
https://www.enago.jp/academy/predatory-journal-2_201710/ [270], (参照 2019-08-20).
(10) 影響力のある学術誌に付与される評価指標としては、Clarivate Analytics社のJournal Impact Factorが有名だが、OMICS International社は名称が同じで、算出元が異なる指標を掲げている。
Open Access Journals Impact Factor. OMICS International.
https://www.omicsonline.org/open-access-journals-impact-factors.php [271], (accessed 2019-08-20).
また、名称が紛らわしいものとして、Scientific Journal Impact FactorやGlobal Impact Factorなどが挙げられる。
Gutierrez, Fredy R.S. et al. Spurious alternative impact factors: The scale of the problem from an academic perspective. Bioessays. 2015, 37(5), p. 474-476.
https://doi.org/10.1002/bies.201500011 [272], (accessed 2019-08-20). 上記記事について、以下のブログで日本語で紹介されている。
Wiley-JAPAN. “<記事紹介> ニセモノの「インパクトファクター」にご注意 / 怪しい業者の手口と見分け方”. ワイリー・サイエンスカフェ. 2015-04-10.
http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=31921 [273], (参照 2019-08-20).
(11)和田. 前掲.
(12) Ross-White, Amanda et al. Predatory publications in evidence syntheses. Journal of the Medical Library Association. 2019, 107(1), p. 57-61.
http://jmla.mlanet.org/ojs/jmla/article/view/491 [274], (accessed 2019-08-20). この文献で用いられたデータをもとにした分析として以下がある
佐藤翔. 連載, オープンサイエンスのいま:ハゲタカOA論文の4割は一度は引用されている. 情報の科学と技術. 2019, 69(4), p. 171-172.
https://doi.org/10.18919/jkg.69.4_171 [275], (参照 2019-08-20).
(13) 研究者がハゲタカジャーナルに投稿する要因を分析したものとして以下の記事が挙げられる。
Clark, Alexander M. et al. Five (bad) reasons to publish your research in predatory journals. Journal of Advanced Nursing. 2017, 73(11). p. 2499-2501.
https://doi.org/10.1111/jan.13090 [276], (accessed 2019-08-20).
上記記事について、以下のブログで日本語で紹介されている。
Wiley-JAPAN. “<記事紹介> なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか”. ワイリー・サイエンスカフェ. 2016-08-24.
http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=34736 [277], (参照 2019-08-20).
(14) Chawla, Dalmeet Singh. “Mystery as controversial list of predatory publishers disappears”. Science. 2017-01-17.
https://doi.org/10.1126/science.aal0625 [278], (accessed 2019-08-20).
(15) BEALL'S LIST OF PREDATORY JOURNALS AND PUBLISHERS. 2019-08-18.
https://beallslist.weebly.com [279], (accessed 2019-08-20).
(16) 同社では疑わしい学術誌のリスト(The Journal Blacklist)に加え、健全な学術誌のリスト(The Journal Whitelist)も提供している。
Cabell's International.
https://www2.cabells.com [280], (accessed 2019-08-20).
(17) Directory of Open Access Journals.
https://doaj.org [281], (accessed 2019-08-20).
(18) “Promoting integrity in research and its publication”. Committee on Publication Ethics.
https://publicationethics.org [282], (accessed 2019-08-20).
(19) Open Access Scholarly Publishers Association.
https://oaspa.org [283], (accessed 2019-08-20).
(20) Quality Open Access Market.
https://www.qoam.eu [284], (accessed 2019-08-20).
(21) 両データベースの収録学術誌は、以下のURLにて公開されている。
Web of Science. “Master Journal List”. Clarivate Analytics.
http://mjl.clarivate.com [285], (accessed 2019-08-20).
Scopus. “収録誌”. Elsevier.
https://www.scopus.com/sources [286], (accessed 2019-08-20).
(22) 中止理由は様々あり、収録中止の事実だけでは当該学術誌をハゲタカジャーナルと断定することはできない。
(23) “Oncotarget's Peer Review is Highly Questionable”. Scholarly Open Access.
https://web.archive.org/web/20160420033752/https://scholarlyoa.com/2016/04/19/oncotargets-peer-review-is-highly-questionable/ [287], (accessed 2019-08-20).
(24) Journal Citation Reports.
https://jcr.clarivate.com/ [288], (accessed 2019-08-20).
(25) Web of Science.
https://webofknowledge.com/WOS [289], (accessed 2019-08-20).
(26) “Indexing company praises cancer journal, then kicks it out”. Retraction Watch. 2018-01-19.
https://retractionwatch.com/2018/01/19/indexing-company-praises-cancer-journal-kicks/ [290], (accessed 2019-08-20).
また、注(24)で示したJournal Citation ReportsのOncotarget誌のJournal Profileから、2017年版以降はJIFが付与されていないことを確認できる。
(27) 下記ウェブページ下部にある“Discontinued sources from Scopus ...”からエクセルファイルでダウンロードできる。
Scopus. Content-Looking for something else?. Elsevier.
https://www.elsevier.com/solutions/scopus/how-scopus-works/content [291], (accessed 2019-08-20).
(28) このサイトでは、学術誌が急増している現状を踏まえて信頼できる学術誌へ論文を投稿するためのチェックリストを提供している。
“Think. Check. Submit”.
https://thinkchecksubmit.org [292], (accessed 2019-08-20).
Ref:
佐藤翔. かたつむりは電子図書館の夢を見るか LRG編(第9回)粗悪学術誌「ハゲタカ」は、なぜ生まれたのか?その原因と対策について考えてみた。. LRG. 2019, (26), p. 136-147.
佐藤翔. 連載, オープンサイエンスのいま: 日本の医学博士論文に潜む7.5%のハゲタカOA. 情報の科学と技術. 2018, 68(10), p. 511-512.
https://doi.org/10.18919/jkg.68.10_511 [293], (参照 2019-08-20).
佐藤翔. 動向レビュー 査読をめぐる新たな問題. カレントアウェアネス. 2014, (321), p. 9-13.
https://current.ndl.go.jp/ca1829 [294], (参照 2019-08-20).
[受理:2019-08-20]
千葉浩之. ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1960, p. 12-14.
https://current.ndl.go.jp/ca1960 [295]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11359093 [296]
Chiba Hiroyuki
Problems of Predatory Journals : from the Perspective of University Librarians
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筑波大学学術情報部:松野 渉(まつのわたる)
学術論文の出版とそれを巡る一連の学術コミュニケーションにおいて、投稿論文を審査するプロセスである査読は無くてはならないものである(1)。しかし近年、査読制度に起因する研究不正や、査読の実施を詐称する「ハゲタカ出版社」(2)の出現、論文数に対する査読者の不足など、査読を取り巻く状況には多くの問題が生じている。学術コミュニケーションの世界では現行の査読を取り巻く状況を改善するべく様々な取り組みが行われているが、本稿では「査読登録サービス」として近年大きく注目を集めるPublons(3)に焦点を当て、サービスやステークホルダーとの連携、その他の様々な取り組みについて概観する。
査読とは、学術雑誌に投稿された論文を、外部の研究者が査読者となって掲載可否の判断や疑問点に関する著者へのコメントなどを行い審査するものであり、今日の学術コミュニケーションにとって不可欠なものとされている(4)。これについて山崎は「科学情報の生産と伝達プロセスに欠くことのできないものであり、研究論文の評価を行い、信頼性の高い情報を社会へ配付していく質のフィルターとして機能している」(5)と述べている。
一方で、今日の査読制度には多くの課題があることも指摘されている。学術コミュニケーションにおける査読の歴史は古く、1600年代には既に学術研究の成果に対する審査が行われていたとする記録もある(6)。だが、長年にわたってその実態はいわばブラックボックス化されてきた。多くの学術誌において、シングル・ブラインド制と呼ばれる方式が採用されていることがその一因である。シングル・ブラインド制は、査読の際、査読者には著者名が開示されるが著者には査読者名が開示されない、という査読方式であり、査読者が圧力や異議を受けずに査読が出来るという点を大きなメリットとしている。一方でシングル・ブラインド制を採用することによる査読者の匿名性が、学術コミュニケーションの世界での近年の特に大きな問題の一つである「ハゲタカジャーナル」をはじめとした詐称査読の問題につながっているとの指摘もある(7)。
この問題への対応にあたって試みられている施策の一つにオープン査読が挙げられる。これは査読者名やその査読コメントを公開するもので、査読を透明化することで不正を防ぐことが期待されている。
また、今日の査読に関する他の問題として査読者の不足が挙げられる。ある特定のトピックに関する論文が投稿された際、編集者がそのトピックについての適切な査読者を確保しにくい状況が発生している。査読者が不足する原因の一つとして、研究者にとっての査読に対するインセンティブの不足が挙げられる(8)。これへの対応策として近年、査読そのものを一種の研究業績として捉えようとするアプローチが注目を集めつつある。
例えば、オープンアクセスジャーナルPeerJ(9)は2014年より査読コメントにDOIを付与している。PeerJはこれを査読者による査読の実施に報いるものであるとの立場を取っており、明確に査読に対するインセンティブとして捉えていることが分かる(10)。またDOI登録を担う国際機関であるCrossref(11)も2017年には査読へのDOI付与のためのインフラ拡張を実施している(12)。
このように、査読の透明化・可視化は学術コミュニケーションの世界において、決して無視できない一つの潮流となりつつある。
そうした査読に対する潮流の中で、査読に特化したサービスとして近年大きな注目を集めているのがPublonsである。
Publonsは2012年にニュージーランドでスタートした「査読登録サービス」である。そのミッションは「査読をより迅速で,効率的かつ効果的にすることで科学を加速化する」(13)(14)こととされている。研究者はPublonsを利用して、自身のこれまでの査読歴を管理・可視化することが可能になる。
Publonsのアカウントを取得した研究者は、Publonsに自分が担当した論文の査読歴を登録・管理することが出来る。研究者は、自らの査読投稿に対して出版元から送られる御礼のメールをPublonsに転送する。 するとPublonsがこのメールの内容を確認し、研究者のアカウントに対して査読歴を登録する。この「御礼のメール」は通常、査読の中身についての情報は持たないため、Publonsはあくまで研究者が担当した査読の雑誌名・原稿名を登録するのみで査読コメントの中身が自動登録される訳ではない。登録された査読歴に対して査読者が任意で査読コメントを追加することも可能である。また査読歴やそのコメントの公開については査読者本人がその公開範囲を任意で設定することが出来る(非公開を選択することも可能)。ただし一般的に査読コメントは当該論文の出版前には公開出来ないため、査読コメントを公開する際には論文のDOIをセットで登録する必要がある。査読コメントの公開についてはジャーナル毎にポリシーが定められている場合もあるが、その場合でもPublonsでは査読コメントの公開範囲をジャーナル毎のポリシーに合わせて設定することも可能である。また、「御礼のメール」の転送や、後述のORCIDとの連携を用いることによって、研究者自身がPublonsにアカウントを登録する以前に行った査読歴の登録や、既発表論文に対するコメント(出版後レビュー)、査読コメントに対するDOIの付与も可能である。
一方でPublonsは論文誌の編集者側にもサービスを提供している。編集者は、研究者が登録した査読歴やコメントを基に、自誌の査読者探しを効率的に実施することが可能となる。加えてPublonsでは編集者向けに、論文の抄録を基に適切な査読者を検索する機能等も提供している。研究者は査読歴を登録することによって、論文誌のエディターに対して自らの専門分野についての知見をアピールすることが可能になり、編集者は学術出版のスムーズな進行に欠かせない適切な査読者探しをより円滑に進めることが可能になる。
研究者の研究活動を支援する(かつ、それにより収益を得るビジネスモデルを持つ)サービスはいくつかある。そのようなサービスの中でPublonsのユニークさは学術情報流通における諸活動の中で欠かすことの出来ない「査読」というプロセスに焦点を当てている点にある。このことに種々のステークホルダーも注目していると考えられ、Publonsの提供するサービスはその他の様々なサービスや諸活動との連携が図られている。そして、この様々なステークホルダーとの連携が、まさに現在のPublonsの肝となっていると言える。
まず最も重要なPublonsの連携先として学術出版社が挙げられる。前述の通り、研究者がPublonsに自らの査読業績を登録する際、研究者個々人に要求される作業はメールの転送のみと非常に簡便なものである。だが、当該論文の掲載誌がPublonsのパートナーとなっている学術出版社から出版されたものであればその作業はより多くの部分で自動化され、研究者個々人の負担はさらに軽減される。Publonsはパートナーである学術出版社から発行された論文誌に関して、論文査読歴と編集委員歴を自動で取得する。これによって、査読者がPublonsのアカウントを取得していれば、査読の履歴がアカウントと自動的に紐付けられることになり、査読者はその記録を自らPublonsに登録する必要がなくなる。加えて、いくつかの出版社についてはメールを転送する方式では自動的に取得されなかった査読コメントについてもPublonsに登録される(出版社のポリシーに応じて、査読コメントの取得は行われない場合もある)。公開範囲は予め研究者による設定や、各誌のポリシーに従って決定され、公開のタイミングも論文誌の出版と自動的に連動する。査読歴の公開は基本的にオプトイン方式が採用されているため、研究者が望まなければ査読歴やコメントが公開されることはないとされている。このPublonsのパートナー出版社にはSpringer Nature、Wiley、Taylor & Francisなどの大手出版社が名を連ねている(15)ほか、EDP Sciencesなどの非営利出版社もパートナーに加わっている。出版社はPublonsのパートナーに加わることにより、自社誌に掲載された論文への査読歴が自動的にPublonsに登録されることをアピールすることが可能になっており、これが査読者の不足という事態を起きにくくする可能性がある。ところで、Publonsの主要なサービスは主に査読を担当する(または担当した経験のある)研究者向けに提供されることは既に述べたが、このサービスの利用に当たって研究者個々人には費用が発生しない。Publonsはここまでに挙げた各パートナー企業・機関から支払われる対価を収益とするビジネスモデルを採用している。
またPublonsは、ScholarOne(16)やEditorial Manager(17)、eJournalPress(18)などの主要な査読投稿プラットフォームとも連携している。査読者とエディターがこうしたプラットフォームで査読をやり取りしている場合、査読者は査読の送信フォームに表示されるPublonsへの査読の登録に関するチェックボックスをオンにすることで、Publonsに自動的に査読歴や査読コメントを登録することが可能である。これによって、査読者は自らが査読を行った論文誌の出版社が上述のPublonsのパートナー出版社でなかった場合でも、特定の査読投稿プラットフォームが用いられていれば査読に関する情報をPublonsに自動で取り込むことが可能となる。
Publonsの非常に重要な提携先の一つとしてORCID(CA1740 [231]参照)(19)が挙げられる。ORCIDは研究者に識別子(ID)を付与することで研究者個々人の研究業績を可視化するサービスであり、そのサービスは各種の学術論文データベースや研究者支援サービスとの統合・接続が進められている。その一環としてORCIDは査読情報とORCIDで付与されたIDを接続するサービスを2015年より開始しており(20)、Publonsは米国地球物理学連合(AGU)、F1000などと共にこのサービスの接続先の一つとなっている(21)。Publonsを利用する研究者は自分のPublonsのアカウントにORCIDのIDを登録することで、ORCID上で確認出来る研究者としての業績にPublonsに登録された査読歴を加えることが出来る。また、ORCIDは前述のScholarOneをはじめとした査読投稿プラットフォームとも連携を進めているため、査読者は予めORCIDのIDと連携させておけば査読歴がPublonsにもORCIDにも登録・掲載されることになる。2018年9月のORCIDによる発表によれば、ORCIDのIDのうち、査読が登録されたものは約2万5,000件、登録された査読歴は約53万件、そのうちPublonsに登録された査読歴は約51万件で、ORCID上の査読歴全体のうち、実に95%以上がPublonsに登録されたものとなっている(22)。
出版社や研究支援サービスとの提携と同様に、Publonsは研究機関との連携も模索している。その最たる例が大学との連携で、その最初の例はオーストラリア・クィーンズランド大学との連携である(23)。今 日の多くの研究機関がそうであるように同大学も自機関に所属する研究者に対して研究成果の評価を独自のシステムを用いて実施している。同大学は2015年に自機関に所属する研究者の業績評価の一つに査読を含めると決定し、研究成果管理システムとPublonsを連携させると発表した。Publonsによれば大学が自機関での研究者評価の要素に査読への貢献を含めるのは世界初の試みだという。またこの試みは、機関による研究者評価の一助となるだけでなく、機関の意思決定者達が、自機関の研究者による査読活動の全体像を把握することにも役に立つとも述べている(24)。2019年6月現在、Publonsのパートナーとなっている研究機関として、Publonsのウェブサイトではクィーンズランド大学、オーストラリア・カーティン大学、ニュージーランド・ヴィクトリア大学ウェリントン校の三つの機関が挙げられている(25)。
こうした各ステークホルダーとの連携を強める他にも、Publonsは自らのミッションに沿った活動を試みている。Publonsが2016年から継続的に実施しているPeer Review Awards(26)はその一つである。これはPublonsに登録された査読歴を用いて、各領域の中で、年間で最も多くの査読を実施した研究者などを表彰するものである。Publonsは「査読を論文出版と同じくらいのやりがいを持つ活動とすること」(27)を目標として、査読への貢献が著しい研究者を表彰するとしている。またPublonsは査読に関する世界的な現状調査を独自に実施しており、その成果を2018年に“2018 Global State of peer review”として公開した(28)。この調査結果の報告には「全世界で査読に約6,850万時間が費やされている」など、興味深い事実が多く掲載されており、現在の研究者コミュニティにおける査読活動の実態を捉え、課題を示唆するものとなっている。
Publonsは2017年、Clarivate Analytics(29)による買収を受けた(30)。Clarivate Analyticsは学術情報流通に関係する一大企業であり、Publonsが同社の構築する(構築しようとしている)学術コミュニケーションに関わるエコシステムに組み込まれるのは望ましいことのようにも見える。例えばこの買収により前述のScholarOneとPublonsは同じエコシステムの中で機能するサービスとなった。ごく最近もClarivate Analyticsが運用してきた研究者識別子サービスであるResearcherIDのプラットフォームがPublonsに置き換わる予定であることがClarivate Analytics Japanにより発表されている(31)。Publonsがこれまでに提供してきた様々なサービスや取り組んできた諸活動は、査読に光を当てることで独自の立ち位置を得てきた。しかし学術コミュニケーションは査読というプロセスのみで成り立つものでは無いことは論をまたない。従ってPublonsのサービスの肝は査読以外のプロセスを担う各サービス・各機関との連携にこそある。Publonsはサービス開始以来、非営利を含む主要な学術出版社や関連企業と次々にパートナーシップを結び、「査読」というプロセスに関する一大プラットフォームへと成長を遂げつつある。そのPublonsが「買収」というこれまでの「連携」とは些か趣を異にする形で巨大なエコシステムに組み込まれたことが、今後のサービスやビジネスモデルにどのような影響を与えることになるのかについては、今後も注視していくべきであると考えられる。
ここまでで紹介してきた通り、Publonsはこれまでの学術コミュニケーションの歴史の中で、ある意味でブラックボックスとなっていた「査読」というプロセスに光を当てようとしている。その活動は主要なものだけを見ても査読歴の透明化とインセンティブの付与、各ステークホルダーとの連携、査読という活動に関する研究者コミュニティ全体への実態調査など幅広い。Clarivate Analyticsによる買収が及ぼす影響は未知数であるものの、Publonsの使命とその活動は世界の研究者コミュニティの中で認知が進みつつある。一方、日本国内においてPublonsに関する話題は必ずしも頻繁に耳にするものではない。それでも最近ではSTEM分野などにおいて、国内論文誌がPublonsと連携する例が出始めている。例えばそのうちの一つであるNeuropsychopharmacology Reports誌(32)の母体である日本神経精神薬理学会(33)では、昨年の執行委員会・理事会において「「①Publonsの査読歴情報へのURLをResearchmapに掲載すること,②研究費や人事の審査の際の『研究実績』や『研究力』のひとつの参考情報として査読歴を考慮すること,の2点を学会として学会員に推奨する」という案が編集委員会から提案され,これらが承認・決定された」という(34)。
また、佐藤(35)はハゲタカオープンアクセス(OA)対策の文脈から査読登録サービスへのJ-STAGEの対応について言及している。仮にJ-STAGEがPublonsに対応することになれば、国内の研究者コミュニティにおける査読の透明化やその貢献の可視化などについて大きな進展の契機となることは間違いないだろう。
いずれにせよ、学術コミュニケーションにおける査読は、方向がどうであれ今後変わっていかざるを得ず、その大きな潮流の一翼を担っているのがPublonsであることは現段階では疑いようがない。査読における本質的な問題点は日本と他国との間に大きな違いが無い以上、国内の研究者や研究支援者の間でも、今後より一層Publonsに対する大きな関心が向けられることに期待したい。
(1) Mark, Ware. Peer review in scholarly journals: Perspective of the scholarly community - Results from an international study. Information Services & Use. 2008, (28), p. 109-112.
https://doi.org/10.3233/ISU-2008-0568 [301], (accessed 2019-06-30).
(2) 栗山正光. ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒. 情報管理. 2015, 58(2), p. 92-99.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.92 [259], (参照 2019-06-30).
(3) Publons.
https://publons.com [302], (accessed 2019-06-30).
(4) Mark, Ware. op. cit.
(5) 山崎茂明. 科学者の不正行為:捏造・偽造・盗用. 丸善株式会社, 2002, p. [105].
(6) Alex Csiszar. Peer review: Troubled from the start. Nature. 2016, 532(7599), p. 306-308.
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(7) 佐藤翔. 特集, 研究倫理:査読の抱える問題とその対応策. 情報の科学と技術. 2016, 66(3), p. 115-121.
https://doi.org/10.18919/jkg.66.3_115 [304], (参照 2019-06-30).
(8) Lajtha, K.; Baveye, P. C. How should we deal with the growing peer-review problem?. Biogeochemistry. 2010, 101(1-3), p. 1-3.
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(9) PeerJ.
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(10) “PeerJ Peer-Reviews Now Have DOIs”. PeerJ. 2018-05-23.
https://peerj.com/blog/post/84907052088/peerj-peer-re-views-now-have-dois [307], (accessed 2019-07-22).
(11) Crossref.
https://www.crossref.org [308], (accessed 2019-06-30).
(12) “Making peer reviews citable, discoverable, and creditable”. Crossref. 2017-09-11.
https://www.crossref.org/blog/making-peer-reviews-citable-discoverable-and-creditable [309], (accessed 2019-06-30).
(13) “About The Company”. Publons.
https://publons.com/about/company [310], (accessed 2019-07-22).
(14) “査読の認知度を高めるPublons”. ユサコニュース. 2016, (277). 2016-09-30.
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=170&dispmid=605 [311], (参照 2019-06-30).
(15) “Our Partners”. Publons.
https://publons.com/community/our-partners [312], (accessed 2019-06-30).
(16) “ScholarOne”. Clarivate Analytics.
https://clarivate.com/products/scholarone [313], (accessed 2019-06-30).
(17) “Editorial Manager”. Aries Systems.
https://www.ariessys.com/software/editorial-manager [314], (accessed 2019-06-30).
(18) eJournalPress.
https://www.ejournalpress.com [315], (accessed 2019-06-30).
(19) ORCID.
https://orcid.org [316], (accessed 2019-06-30).
(20) Alainna, Therese. “Peer review in the ORCID community”. ORCID. 2017-09-15.
https://orcid.org/blog/2019/04/17/peer-review-orcid-community [317], (accessed 2019-06-30).
(21) Alice, Meadows. “Peer Review at ORCID - An Update”. ORCID. 2017-09-14.
https://orcid.org/blog/2017/09/14/peer-review-orcid-update [318], (accessed 2019-06-30).
(22) Alainna, Therese. “What’s new with peer review on ORCID”. ORCID. 2018-09-11.
https://orcid.org/blog/2018/09/11/whats-new-in-review [319], (accessed 2019-06-30).
(23) “Publons to launch pilot with The University of Queensland Library”. Publons. 2015-10-02.
https://publons.com/blog/publons-to-launch-pilot-with-the-university-of-queensland-library/ [320], (accessed 2019-06-30).
(24) Ibid.
(25) “Academy”. Publons.
https://publons.com/community/academy [321], (accessed 2019-06-30).
(26) “Awards”. Publons.
https://publons.com/community/awards [322], (accessed 2019-06-30).
(27) Ibid.
(28) “GSPR”. Publons.
https://publons.com/community/gspr [323], (accessed 2019-07-22).
(29) Clarivate Analytics.
https://clarivate.com [324], (accessed 2019-06-30).
(30) “Clarivate Analytics acquires market leader Publons, creating the definitive publisher-independent platform for accelerating research through peer review”. Clarivate Analytics.
https://web.archive.org/web/20170606163827/http://news.clarivate.com/2017-06-01-Clarivate-Analytics-acquires-market-leader-Publons-creating-the-definitive-publisher-independent-platform-for-accelerating-research-through-peer-review [325], (accessed 2019-07-22).
(31) “ResearcherIDプラットフォーム移行のお知らせ”. Clarivate Analytics Japan. 2019-03-26.
https://www.clarivate.jp/blog/researcherid-to-publons [326], (参照 2019-07-22).
(32) “Neuropsychopharmacology Reports”. Wiley Online Library.
https://onlinelibrary.wiley.com/journal/2574173x [327], (accessed 2019-06-30).
(33) 一般社団法人日本神経精神薬理学会.
http://www.asas.or.jp/jsnp [328], (参照 2019-06-30).
(34) 宮川剛, 小清水久嗣. 査読歴も研究者評価の対象に. 週刊医学界新聞. 2019, (3308). 2019-02-04.
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03308_02 [329], (参照 2019-06-30).
(35) オープンアクセスの進展と査読のこれから:佐藤翔氏に聞く. 週刊医学界新聞. 2019, (3312). 2019-03-04.
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03312_02 [330], (参照 2019-06-30).
[受理:2019-08-06]
松野渉. 岐路に立つ査読と、その変化に踏み込むPublons. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1961, p. 15-19.
https://current.ndl.go.jp/ca1961 [331]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11359094 [332]
Matsuno Wataru
Changing Peer Review with Publons
PDFファイル [335]
関西館図書館協力課:藤田千紘(ふじたちひろ)
図書館のレファレンスサービスは、利用者からの求めに応じて情報提供や利用案内を行う直接レファレンスと、レファレンス情報源の整備や管理等を行う間接レファレンスに大別される(1)。ICT(情報通信技術)を用いたレファレンスサービス(=デジタルレファレンスサービス)が進展した今日、間接レファレンスもまたその例外ではない。過去に本誌に掲載された、デジタルレファレンスサービスの動向を扱う記事(CA1437 [336]、CA1895 [337]参照)においても、情報源の整備は重要な領域として言及されてきた。
本稿では図書館が間接レファレンスのために整備する情報源のうち、特にウェブ上で提供される「調べ方案内」を取り上げ、この分野における実践が進んでいる米国の事例を中心に、近年の特徴的な動向を概観する。
なお「調べ方案内」と類似した内容を指すものとして、日本語では「調査ガイド」「パスファインダー」等、英語では“research guide” “subject guide” “pathfinder”等、複数の語が用いられる。各々の語はそれぞれ異なる内容を指して使い分けられる場合もあるが、その定義は使用者によって異なり、一意に定めがたい。そのため本稿では便宜的に「調べ方案内」を用いる(文脈上、特定の呼称を用いるのがふさわしいと判断される場合を除く)。また定義としては、『図書館情報学用語辞典』(第4版)における「パスファインダー」の項の記述に従い、「利用者に対して,特定の主題に関する各種情報資源や探索方法を紹介・提供する初歩的なツール」(2)及びそれに類するものとする。
ウェブ上における調べ方案内の展開は多岐にわたるが、それらの共通点として、調べ方案内がさまざまな意味合いにおいて「つながる」ツールとしての性格を強めている、ということがあるように思われる。そのような観点を軸に事例の紹介を試みたい。なお、本稿の分析・意見にあたる部分はすべて筆者の個人的見解である。
まずは、調べ方案内がたどってきた道のりを簡単に振り返る。特定の主題に関する資料のリストや書誌を紙にまとめたものは19世紀後半にはすでに使用されていたが、それらは調査を行うプロセスを案内するものではなかった(3)。1960年代後半から1970年代初頭にかけて図書館にコンピュータが導入されるようになると、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)でシステムを用いた情報移送の実験プログラムであるINTREX(Information Transfer Experiments)が実施され、同プロジェクトのメンバーであるキャンフィールド(Marie Canfield)らによって「パスファインダー」のアイデアが提示された(4)。パスファインダーは「研究図書館で利用可能なさまざまな情報資源へと図書館利用者を導く、段階的な教育ツール」として機能するものとされ、その役割を果たすために必要な内容と形式が定義された(5)。
1980年代後半から1990年代初頭にかけて図書館がウェブサイトを構築するようになり、調べ方案内もさまざまな形で(紙の調べ方案内のPDF化、HTMLでの調べ方案内の構築、双方向的なチュートリアルやマルチメディア表示等)オンライン化されていった(6)。同時に、「パスファインダー」という用語が古風なものとみなされ、“research guide” “subject guide” “online tutorial”といった用語がより一般的なものとして用いられるようになった(7)。その後、調べ方案内のウェブ化が普及するにつれ、調べ方案内作成に利用できる商用またはオープンソースのソフトウェアも複数提供される状況となった(8)。
一般にウェブ上の調べ方案内は紙のそれに比べ、インターネット情報や音声・映像等のより幅広い情報を提供でき、場所や時間の制限なくアクセス可能である。また、ウェブページは紙よりも更新が容易で、適宜更新が必要な調べ方案内に適している。一方で、ウェブページの作成・更新のためには、専門的な知識や技術を持った人員が必要となり、作業には一定の時間と労力がかかる。
これに対して、専門知識を持たない者でも「ガイド」と呼ばれる調べ方案内を作成できるCMS(Content Management System=コンテンツ管理システム)として2007年にリリースされたのが、米国Springshare社のLibGuides(E1410 [82]参照)(9)であった。LibGuidesは、操作の容易さ、既存のガイドを再利用できること、関連するさまざまなツールをガイドへ付加できること等を特徴として、大学図書館をはじめ各機関で飛躍的に利用を増やし、現在、世界で大きなシェアを占めている(10)。LibGuidesで作成されたガイドでは、作成者である図書館員のプロフィールや顔写真が添えられ、「顔が見える」作りになっていることも特徴である。
それでは、ウェブへ移行した調べ方案内はその後どのような展開を遂げたのか。いくつかの側面から事例を紹介する。
展開の一つは、調べ方案内への図書館外部からのアクセスが容易になったことを活かし、図書館外の人々とつながろうとする試みである。例えば米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校及びジョージアサウスウエスタン州立大学の図書館では、ウェブ上の調べ方案内を「自館の資源やコレクションを売り込み、大学内の他機関や地域コミュニティとの結びつきを強めるアウトリーチのツール」として利用することを意図した試みを報告している(11)。
この報告によれば、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のミュージック・アンド・パフォーミングアーツ図書館(MPAL)は、学内のクラナートパフォーミングアーツセンター(KCPA)と協働して調べ方案内を構築し、KCPAで行われるパフォーマンスの演者やレパートリーについて知ることができる自館の所蔵資料を紹介した。一方、ジョージアサウスウエスタン州立大学図書館は、地域のパフォーミングアーツ団体とパートナーシップを組み、地域のアートセンターのイベントやサービス、地元の劇場でのイベント等を図書館資料とともに紹介する調べ方案内を作成した。
その他、大学図書館がキャンパスの所在する地域について情報を提供する「ローカルガイド」を作成する取り組みも複数行われている(12)。
また、大学図書館を中心に、自館の特別コレクションをウェブ上の調べ方案内へ掲載する例も多くなっている(13)(14)。これは、学外の人々には存在が知られにくく「隠れた」状態に陥りがちな特別コレクションを見つけやすくすることを意図した取り組みであり、その意味でアウトリーチの試みの一つといえるかもしれない。
ウェブへ移行した調べ方案内が、その内容としてインターネット情報を含むようになることは自然な流れであった。そのことはすなわち、調べ方案内においてインターネット情報の選別や利用方法の案内がなされることを意味する。情報化社会の進展とともに教育課程における情報リテラシーの養成が求められるようになったことと軌を一にして、ウェブ上の調べ方案内も、情報リテラシー教育のためのツールという新たな役割を帯びることになった(15)。2001年の記事では、インターネット情報源を選別しその適切な利用法を示したパスファインダーを作成することによって、生徒を「間接的に教育する」ことが提案されている(16)。
そして、2000年代からLMS(Learning Management System=学習管理システム。講義資料や講義に関する情報の配信、テストの実施、成績管理等をオンラインで行うことができる、eラーニング実施のためのシステム)が高等教育課程で普及し始めると、LMSと図書館との連携が模索され、その一手段として、LMSと調べ方案内の連携が行われることになる。2000年代初頭以降、Blackboard Vista(及び後継のBlackboard Learn(17))がLMSの主流となり、LibGuidesが調べ方案内において有力な位置を占めたことから、両者の連携が関係者にとって大きな関心事となった(18)。現在、LibGuidesはBlackboardをはじめ、さまざまなLMSとの連携を実現している(19)。
ボウエン(Bowen)(20)は、「図書館の情報資源を学生に案内すること」及び「学生に情報リテラシーを身に付けさせること」を意図したLMSと図書館の連携の一環として、専用のリンクやボタン、アイコンからアクセスできる調べ方案内をLMS shell(21)へ埋め込むという手法が実施されていることを紹介している。
利用の実例として、LibGuidesで作成されたガイドへのボタンをLMS shell上に搭載している米国のカリフォルニア州立大学チコ校で2011年に学生を対象として行われた調査によれば、ガイドへのアクセスの容易さには好意的な意見が多く、有用性については約62%が「非常に役に立つ」、約24%が「まあまあ役に立つ」、約10%が「役に立たない」と答えている。また、調査課題を行うのに「図書館のガイドだけを使った」との回答が約63%となっている(22)。
1.で触れたキャンフィールドらによる1973年の論文では、パスファインダーに関する協働プログラムの試みが説明されている(23)。これは、パスファインダーの作成後に図書館名・請求記号・資料の所蔵場所を消去することで、特定の館に限定されないパスファインダーが出来上がり、そこに各館が自館の情報を書き加えることで自館用のパスファインダーを再生産できる、というものであった。しかし、各館がパスファインダーの主題選択における自律性や、自館の蔵書に合ったパスファインダーを作成することを優先したために、この試みは1975年には頓挫した(24)。
これに一種通じるアイデアとしてLibGuidesが打ち出したのが、ガイドの再利用等にあたって図書館員が協働することによる省力化及びノウハウの共有、それによって実現される所属機関を超えた図書館員のコミュニティ形成である。
ガイドの再利用機能は、LibGuides立ち上げと同年の2007年に追加された(25)。翌年にはSpringshare Lounge(26)が公開されている。LibGuides参加機関はこのページにログインすることで、他の参加機関と意見や質問等を交わすことができる。また2011年に追加されたグループ機能では、館種や主題ごとのグループを作ることができ、そこに所属すると、グループ宛てのメッセージ送信や掲示板の利用、グループのメンバーとの一対一でのチャット等が可能になった(27)。
調べ方案内がウェブ上にあることで、過去とは比較にならないほど広い範囲での協働が可能になったことは言うまでもない。2008年に開設されたLibGuides Community(28)では、館種や国を超えて、全世界でLibGuidesを利用している機関が作成したガイドをまとめて検索することが可能になっている。テーマだけではなく機関や作成者からもガイドが検索できる他、登録されたガイドの中でSpringshare社がピックアップしたものの紹介も行われている。
新たな展開が進んだ一方、ウェブ上の調べ方案内がそこにかかる費用・労力・時間に見合うほど利用されているかという点についても繰り返し調査がなされている(29)(30)(31)。その結果はさまざまだが、総じてあまり芳しいとはいえない。
調べ方案内への外部からのアクセスに関してはどうだろうか。OCLCが米国・英国・カナダの14歳以上の人を対象に実施した2010年の調査で、米国に関しては、情報探索の際に図書館のウェブサイトから始めると回答した人は0%、また、情報探索の過程で図書館のウェブサイトを用いると回答した人は33%だったと報告されている(32)。もし図書館のウェブサイトまでたどり着いたとしても、調べ方案内が掲載されている箇所は機関によりまちまちであり、深い階層にある等、見つけにくい状況にあることも多い。これは各機関における調べ方案内の位置づけが異なっている(そもそも位置づけが確立されていない場合もある)ことと関連しているが、利用者を遠ざける原因となっている。
ウェブ上にあればそれだけ多くの目に触れ利用が多くなる、と単純に考えることは楽観的に過ぎるだろう。むしろウェブ上の大量の情報に埋もれ、調べ方案内の存在が見えづらくなっている状況も想像される。
本稿では米国の事例を紹介してきたが、現在は国内でも、多くの機関が調べ方案内をウェブ上で提供するようになってきている。国立国会図書館では調べもの支援サイト「リサーチ・ナビ」で調べ方案内を公開している(33)。また大学図書館については、複数の機関がLibGuidesを用いてガイドを作成しており、九州大学(34)や慶應義塾大学(35)等で特に利用が進んでいる。九州大学では、さまざまなコンテンツが作成され、図書館で活動している人がイメージでき、結果として図書館のイメージアップにつながっているとの感触があるという(36)。また慶應義塾大学では、学内の資料利用に関する情報や情報の探し方をLibGuidesに一本化していき、学内でのガイドの共有化を図っているほか、早稲田大学図書館と共同したガイド構築の可能性も検討しているという(37)。国内における取り組みは、今後も発展の余地があるといえよう。
調べ方案内はウェブへ移行することにより新たな展開を遂げ、「つながる」ツールとしての役割を強化した。より動的な情報発信型ツールとなった、と言い換えてもよい。そこには、単なる形態の移行に留まらない根本的な変化がある。
こうしたウェブ上の調べ方案内の可能性を十分に活かすためには、上述の根本的な変化を明確に認識したうえで、他機関と協働しながら、対象とする利用者を明確にし、発信の在り方を工夫することが必要になる。情報が溢れる現代において、図書館が提供する調べ方案内が今後、より柔軟な広がりを見せて人々の情報探索活動に貢献することを期待したい。
(1) 間部豊. “レファレンスサービスの構造”. 情報サービス論. 小田光宏編著. 日本図書館協会, 2012, p. 26-33, (JLA図書館情報学テキストシリーズ, 3-5).
(2) “パスファインダー”. 図書館情報学用語辞典. 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編. 第4版, 丸善出版, 2013, p. 199.
(3) Emanuel, Jennifer. “A Short History of Library Guides and Their Usefulness to Librarians and Patrons”. Using libguides to enhance library services : a LITA guide. Dobbs, Aaron W.; Sittler, Ryan L.; Cook, Douglas eds. ALA Tech-Source, An imprint of the American Library Association, 2013, p. 3-20.
(4) Ibid.
(5) Canfield, Marie P. Library pathfinders. Drexel Library Quarterly. 1972, vol. 8, issue 3, p. 287-300.
(6) Emanuel. op. cit.
(7) Ibid.
(8) Ibid.
(9) Springshare. “LibGuides - Content Management and Curation Platform for Libraries”.
https://www.springshare.com/libguides/ [338], (accessed 2019-07-17).
(10) 以下のページによれば、92か国5,398機関で44万1,875人の図書館員が参加し、69万4,042のガイドが作成されている。
Springshare. “LibGuides Community”.
https://community.libguides.com/ [339], (accessed 2019-07-22).
また、国立図書館では米国議会図書館(LC)がLibGuidesを採用している。経緯は以下のページに記述されている。
Springshare. “The Library of Congress Now Helps You Navigate Its Immensity with LibGuides”. Springshare Buzz.
https://buzz.springshare.com/stories/library-of-congress [340], (accessed 2019-05-30).
(11) Goodsett, Mandi; Dougan, Kirstin. “Community outreach through LibGuides”. Reimagining reference in the 21st century. Tyckoson, David A.; Dove, John G.; Lafayette, West eds. Purdue University Press, [2015], p. 215-222, (Charleston insights in library, archival, and information sciences).
(12) Lyons, Charles. Are We Covering Our Own Backyards?: An Analysis of Local Research Guides Created by Academic Business Librarians. Journal of Academic Librarianship. 2009, vol. 35, issue 5, p. 421-430.
(13) Reese, Jacquelyn Slater; McCain, Chery. Special Collections LibGuides: An Analysis of Uses and Accessibility. Practical Academic Librarianship: The International Journal of the SLA. 2017, vol. 7, issue 1, p. 1-12.
(14) Farnel, Sharon et al. “Where there's a will there's a way : using LibGuides to rescue paper ephemera from the bibliographic underbrush”. Description : innovative practices for archives and special collections. Theimer, Kate ed. Rowman & Littlefield, [2014], p. 115-129, (Innovative practices for archives and special collections , no. 1).
(15) O'Sullivan, Michael K.; Scott, Thomas J. Pathfinders Go Online. Library Journal. 2000, vol. 125, issue 10, p. 40-42.
(16) Block, Marylaine. Teaching Kids Indirectly. Library Journal. 2001, vol. 126, issue 11, p. 33-34.
(17) Blackboard Inc. “Blackboard Learn”.
https://www.blackboard.com/blackboard-learn/index.html [341], (accessed 2019-06-12).
(18) Bowen, Aaron. A LibGuides presence in a Blackboard environment. Reference Services Review. 2012, vol. 40, issue 3, p. 449-468.
(19) Springshare. “LibGuides Courseware Integration with Desire2Learn, Blackboard, Canvas, Moodle and more!”. Springshare Blog. 2018-08-02.
https://blog.springshare.com/2018/08/02/libguides-courseware-integration-with-desire2learn-blackboard-canvas-moodle-and-more/ [342], (accessed 2019-06-12).
(20) Bowen. op. cit.
(21) LMS shellは、特定のコース(科目)に対応したLMS内のページ領域を指す。
“What is Learning Management System (LMS) Shell”. IGI Global.
https://www.igi-global.com/dictionary/learning-management-system-lms-shell/58409 [343], (accessed 2019-08-05).
(22) Bowen. op. cit.
(23) Stevens, Charles H.; Canfield, Marie P.; Gardner, Jeffery J. Library pathfinders: a new possibility for cooperative reference service. College & Research Libraries. 1973, vol. 34, issue 1, p. 40-46.
http://crl.acrl.org/index.php/crl/article/download/12490/13936 [344], (accessed 2019-08-21).
(24) Gardner, Jeffrey J. “Pathfinders, library”, Encyclopedia of library and information science, vol.21. Marcel Dekker, Inc., 1977, p. 468-473.
(25) Springshare. “Reusing Content in LibGuides”. Springshare Blog. 2007-07-08.
https://blog.springshare.com/2007/07/08/reusing-content-in-libguides/ [345], (accessed 2019-06-05).
(26) Springshare. “User Forums, Events, Videos, And a Whole Lot More ? The Springshare Lounge”. Springshare Blog. 2008-08-26.
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(27) Springshare. “Springshare Lounge: Groups Galore!”. Springshare Blog. 2011-08-29.
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(28) Springshare. “LibGuides Community”.
https://community.libguides.com/ [339], (accessed 2019-06-05).
(29) Courtois, Martin P.; Higgins, Martha E.; Kapur, Aditya. Was this guide helpful? Users' perceptions of subject guides. Reference Services Review. 2005, vol. 33, issue 2, p. 188-196.
(30) Rafferty, Ryan S. The impact of library instruction: do first-year medical students use library resources specifically highlighted during instructional sessions?. Journal of the Medical Library Association. 2013, vol. 101, issue 3, p. 213-217.
(31) Chiware, Maureen. The efficacy of course-specific library guides to support essay writing at the University of Cape Town. South African Journal of Libraries & Information Science. 2014, vol. 80, issue 2, p. 27-35.
(32) Gauder, Brad. Perceptions of Libraries, 2010: Context and Community. OCLC. 2010, p. 32.
http://www.oclc.org/content/dam/oclc/reports/2010perceptions/2010perceptions_all_singlepage.pdf [348], (accessed 2019-07-05).
(33) 国立国会図書館. “調べ方案内”. リサーチ・ナビ.
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/index.php [349], (参照 2019-07-03).
(34) 九州大学附属図書館. “Cute.Guides”.
https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/ [350], (参照 2019-07-03).
九州大学がインターネット上で公開している調べ方案内(Cute.Guides)は、国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベースの「調べ方マニュアル」としても登録されている。
九州大学附属図書館. “Cute.Guidesの学習ガイドをレファレンス協同データベースに登録しました”. 2019-07-19.
https://www.lib.kyushu-u.ac.jp/ja/news/cute_crd [351], (参照 2019-07-31).
(35) 慶應義塾大学メディアセンター. “Keio University LibGuides”.
https://libguides.lib.keio.ac.jp/?b=g&d=a [352], (参照 2019-07-03).
慶應義塾大学におけるLibGuides導入の経緯については、以下のような文献がある。
佐藤康之, 岡本聖, 三谷三恵子, 関恭子. LibGuidesの導入と活用 : 全塾レファレンス担当者会議の取り組み. Medianet. 2015, (22), p. 38-44.
http://www.lib.keio.ac.jp/publication/medianet/article/pdf/02200380.pdf [353], (参照 2019-08-21).
(36) 2018年3月に同大学図書館の担当者から対面でのヒアリングを行った結果に基づく。
(37) 2019年7月に同大学図書館の担当者からメールでのヒアリングを行った結果に基づく。
Ref:
Puckett, Jason. Modern pathfinders : creating better research guides. Association of College and Research Libraries, a division of the American Library Association, 2015, 145 p.
[受理:2019-08-21]
藤田千紘. ウェブ上で提供される調べ方案内の展開 ―米国での実践を中心に―. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1962, p. 20-23.
https://current.ndl.go.jp/ca1962 [354]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11359095 [355]
Fujita Chihiro
Evolution of Online Subject Guide: Focusing on the Practices in the United States
PDFファイル [360]
国立国会図書館長 羽入 佐和子
『カレントアウェアネス』は今年8月に創刊40周年を迎えます。
皆様のこれまでのご支援に心から感謝申し上げます。
30周年記念号を2009年に刊行してから10年にすぎませんが、その間に社会状況は大きく変化しました。
忘れられないのは2011年の東日本大震災です。当館も被災地のために何かできないか模索し、この年の12月の「カレントアウェアネス・ポータル」に東日本大震災関連の掲載記事が一覧できるページ「東日本大震災関連記事」を作成いたしました。東日本大震災に関して、現在は、震災記録等のポータルサイト「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)」を公開しております。
自然災害はその後も各地で多発し、それに伴って、アーカイブは被害の記録を収集し保存し整えるだけでなく、災害の教訓をいかに役立てるかが重要な課題になっています。
40年前(1979年8月)に職員向けに刊行された『カレントアウェアネス』でしたが、刊行の10年後には館外向けに頒布を開始し、そのおよそ10年後にはメールマガジン『カレントアウェアネス-E』を創刊いたしました。さらに2006年には新たなウェブサイト「カレントアウェアネス・ポータル」を開設し、カレントアウェアネス・サービスの体系化を進めてまいりました。
図書館情報の発信の役割を担うサービスとして冊子を刊行してから40年を経て、現在では年4回の季刊誌刊行に加え、「カレントアウェアネス・ポータル」で多くの情報を発信しています。このポータルには、原則月2回発行の『カレントアウェアネス-E』、毎営業日更新のニュースブログ「カレントアウェアネス-R」、そして、上記季刊誌の他、図書館界や図書館情報学に関する調査・研究報告も掲載し、このポータル全体へのアクセス件数は月平均60万件にも上ります。
図書館関係者をはじめとする多くの方々のご支援をいただきながら、『カレントアウェアネス』はこうして40年間着実に成長を遂げてまいりました。最近発行の『カレントアウェアネス』の記事からは、今や図書館活動が多様化しつつあり、図書館が社会の変化に先駆的な役割を果たしてきていることが見て取れます。そして、被災記録のアーカイブに象徴されるように、図書館はこれまで以上に社会状況と密接に関わる活動体であることが求められているように思います。
社会の著しい変化の中で、図書館が扱う情報の在り様は明らかに変容し、図書館には、単に情報基盤の一端を担うだけでなく、信頼性の高い情報を迅速に発信する役割が期待されています。『カレントアウェアネス』もこの役割を十分認識し、一層の充実に努めてまいりますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
羽入佐和子. 『カレントアウェアネス』40周年に寄せて. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 2.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_hanyu [361]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299448 [362]
PDFファイル [363]
『カレントアウェアネス』(CA)は1979年8月、「図書館に関する最新情報の速報による提供」(創刊号「発刊にあたって」)のための月刊の情報誌として創刊されました。この2019年8月で創刊40周年の節目を迎えます。
2009年6月に刊行されたCA第300号・30周年記念号では、当時のCA事務局による記事「『カレントアウェアネス』30年の歩み」(http://current.ndl.go.jp/ca_no300_history [364])を掲載しました。創刊から30周年までの歩みはこちらの記事をご覧いただくこととし、本号では、CA、メールマガジン『カレントアウェアネス-E』(CA-E)、ブログ記事「カレントアウェアネス-R」(CA-R)、「図書館及び図書館情報学に関する調査研究」の4つを主要コンテンツとするポータルサイト「カレントアウェアネス・ポータル」(CAポータル)の、ここ10年の歩みをご紹介します。
はじめに触れておきたいのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災に関する情報発信です。CAポータルでも、発災直後から災害関連記事の発信を重点的に行い、2011年12月には、掲載した関連記事を一覧できるページ「東日本大震災関連記事」(http://current.ndl.go.jp/sinsai [365])を作成しました。また、同じく2011年に東日本大震災と図書館に関する調査研究を開始し、2012年4月、その成果を図書館調査研究リポートNo.13『東日本大震災と図書館』として公開しました。
CA、CA-Eでも東日本大震災関連の記事を多く掲載してきました。2016年3月に刊行したCA第327号における「小特集 東日本大震災から5年」の掲載、CA-Eにおける記事「東日本大震災後の図書館等をめぐる状況」の定期的な発信はその一例です。また、2016年4月の熊本地震や2018年7月の豪雨災害のような大災害の発生時には、CA-RやCA-Eで図書館等の被害状況をまとめた速報記事を配信し、最新情報の集約・共有に努めてきました。
災害関連情報の発信強化に続く大きな取り組みとして、CAポータルのTwitterアカウント(@ca_tweet [366])開設と英語版ページ(http://current.ndl.go.jp/en [367])の公開が挙げられます。2010年1月にTwitterアカウントを開設し、掲載記事のツイートを開始しました。2019年5月現在では、ツイート数は約2万2,200件を数え、フォロワー数は約1万1,700人に上ります。英語版ページは2013年11月に公開し、災害関連のCA-E記事を英訳したものを中心に掲載しています。2019年5月時点の掲載記事数は、CA-Eが46記事、CAが1記事です。
その他には、2012年度から、それまでは無署名としていたCA事務局執筆分のCA-E記事に、執筆者名を明記するようにしました。このことにより、CA-Eの全記事が署名記事となりました。また、2012年10月には、CAポータルのモバイル端末対応も行いました。
10年後の創刊50周年に向けて、これからもCAをはじめとした各コンテンツのいっそうの充実を図ってまいりますので、ご愛読いただきますよう、よろしくお願いいたします。
関西館図書館協力課
関西館図書館協力課. 『カレントアウェアネス』40年の歩み. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 3.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_history [368]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299449 [369]
PDFファイル [370]
年 | 月 | 『カレントアウェアネス』関連 | NDL関連 |
---|---|---|---|
1979(昭和54) | 6 | 総務部企画教養課内に図書館情報室を設置 | |
8 | 『カレントアウェアネス』(月刊)創刊 図書館情報室が編集を担当 |
||
1984(昭和59) | 4 | 参考書誌部一般参考課が編集を担当 | |
1986(昭和61) | 6 | 図書館協力部図書館研究所が編集を担当 | 組織改正(図書館研究所の設置など) |
9 | 新館開館 | ||
1987(昭和62) | 11 | 第100号を刊行 | |
1989(平成元) | 6 | 日本図書館協会を通じNDL外への頒布を開始 (第118号から) |
|
1996(平成8) | 4 | 第200号を刊行 | |
2000(平成12) | 5 | 国際子ども図書館開館(第一期) | |
2002(平成14) | 4 | 関西館事業部図書館協力課が編集を担当 | 組織改正(関西館設置など) |
5 | 国際子ども図書館全面開館 | ||
6 | 『カレントアウェアネス』季刊化(第272号から) 判型をB5判からA4判に変更 |
||
10 | メールマガジン『カレントアウェアネス-E』創刊 | 関西館開館 | |
2006(平成18) | 3 | 「カレントアウェアネス・ポータル」の試験公開開始 ブログ形式のニュース速報「カレントアウェアネス-R」開始 |
|
6 | 「カレントアウェアネス・ポータル」の本格運用開始 | ||
2007(平成19) | 4 | (関西館図書館協力課となる) | 組織改正(関西館の部を廃止) |
2009(平成21) | 6 | 第300号を刊行 | |
2010(平成22) | 1 | 「カレントアウェアネス・ポータル」のTwitterアカウント(@ca_tweet [366])開設 | |
2013(平成25) | 11 | 「カレントアウェアネス・ポータル」の英語版ページ公開 | |
2019(令和元) | 6 | 第340号(創刊40周年記念特別号)を刊行 |
『カレントアウェアネス』関連年表. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 4.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_chronology [371]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299450 [372]
PDFファイル [373]
※印は2019年6月現在、当該の職を委嘱している方々。( )内は2019年6月時点のご所属。
『カレントアウェアネス』編集にご協力いただいた図書館情報学有識者の方々. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 5.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_contributors [374]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299451 [375]
『カレントアウェアネス』創刊40周年にあたり、編集企画員経験者2名から、本誌の歩みを振り返る記事をご寄稿いただきました。過去に本誌の編集を担当した当館職員1名による記事も掲載しております。
小特集, カレントアウェアネス40周年. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 6-11.
PDFファイル [379]
中部大学人文学部:松林正己(まつばやしまさき)
『カレントアウェアネス』(CA)が40周年を迎えるとのご連絡を頂き、時の経つのは早いと感慨深い。
本誌を最初に手にしたのは、1982年の夏、創設されて間もない図書館情報大学の図書館のカレント雑誌書架でのことであったと思う。当時筆者は現職者向けの司書講習会を受講していた。
サイズはB5判、4頁から8頁仕様で、記事は米国図書館協会(ALA)や国際図書館連盟(IFLA)の機関誌に掲載されている、近い将来に日本の図書館業界にも影響を与えそうな海外動向を要約・解説し、末尾に原著の書誌情報を記載していた。当時ALAの諸学会の機関誌を網羅的に購読している図書館は限られており、国立国会図書館(NDL)の購読タイトル数が最大ではなかったかと思われる。日本の図書館業界に必要とされる情報を適宜取捨選別し、要約・解説するメディアは貴重であった。
創刊直後にCAに掲載された記事の最大の情報源は、米国議会図書館(LC)の“Library of Congress Information Bulletin”ではなかったろうか。当時でも世界最先端のITを駆使した活動を展開していたのは、LCであった。日本でこの週刊誌を閲覧できる機関は限られていて、アメリカンセンターの図書室でも閲覧できたが、毎週閲覧に出向くには無理があったので、名古屋の同センターから複写して送って頂いた時期もあった。
その後、“Library of Congress Information Bulletin” の記事を要約している本誌を見つけて、これは便利だと感心した。当時、南山大学(名古屋市)の図書館に勤務し、洋書目録作業が主務であった筆者は、LCやドイツ図書館研究所(DBI ; CA1336 [380]参照)の情報に注目していたので、CAの記事選択は、ありがたかった。
この前後に、南山大学創設時の図書館員で当時NDLに勤務していた丸山昭二郎さんに講演をお願いしたのを機に、CAを定期的に購読する僥倖を得た。
1990年から中部大学に勤務し、1994年6月に当時は姉妹校だった米・オハイオ大学のVernon R. Alden Libraryに、キャタロガーとして3か月赴任した。キャタロガーの地位が社会的に確立している米国では同職に対する認知が日本とは全く異なっていた。大学書店で本を求めて、支払い時に“Are you faculty?”と訊ねられて、“No, cataloger,”と応えたら、“Great job!”と返されたときの感激を忘れられない。ALA認定の図書館情報学修士(MLS)の学位がない小職に、OJTなしで、すぐに目録作業端末の操作が認められたのは、当時のオハイオ大学図書館長の李華偉博士 (Dr. Hwa-Wei Lee)が、筆者が学術情報センター目録所在情報サービス(NACSIS-CAT)の目録小委員会委員を歴任したキャリアを読み替えてくれたからである。米国の東アジア図書館界では博士の名前を知らないものはいなかった。
オハイオ滞在中に、休暇をもらってワシントン D.C.のLCを訪ねたい、と博士に相談したら、森田一子さん(当時LC Japan Documentation Center、元オハイオ州立大学図書館整理部長)を紹介するから、旅行代理店で手続きをして来るように、と指示されて、念願のLCを見学した。ワシントンD.C.のモール南部はまだ今ほど官庁街にはなっておらず、葦の茂った原っぱで、地下鉄の駅を降りて、ホテルまでホームレスのおじさんに、“Lend me money!”、と追いかけられ、小走りにホテルに逃げ帰ったこともあった。
帰国後、2000年から大学院に進学して、米国の研究図書館の発達史に関心を抱いて修士論文をまとめた背景には、このような米国での体験がある。大学院修了後、2004年9月から10月に米国国務省のプログラム “International Visitor Program”(IVP)で、3週間にわたり米国の図書館事情を渡邊由紀子さん(九州大学附属図書館)らと視察した。このとき、LCアジア部では李博士に再会した。博士は5年任期で部長を引き受けたよ、と話して下さった。
修士課程を修了した頃に、大阪市立大学の北克一教授(当時)から電子メールがあり、CAの編集所管が東京本館から関西館に移され、編集が始まるので、ドイツの図書館動向をもウォッチしている(DBIの機関誌“Bibliotheksdienst”と学術図書館協会の機関誌“Zeitschrift für Bibliothekswesen und Bibliographie”を定期購読していた)筆者に編集委員会への参加を要請された。これで、一読者から編集に関わる立場になった。
本誌の編集企画員は多士済々で、国内外の図書館業界の情報についてじかに解釈が聞けて、実に刺激的な場である。筆者が編集上心がけたのは、図書館運営での日米ギャップを反映できる視点を維持することであった。例えば、日米ともに存在する図書館でのボランティア活動にも、大きな違いがある。NDL職員でCA編集事務局のスタッフであった依田紀久さんが、米・ピッツバーグ大学大学院に留学されていた時に、ピッツバーグ・カーネギー図書館をご案内いただいたことがある。その際、ピッツバーグでは、ボランティアには市営駐車場の代金を2割負担で利用できるという大きなメリットが与えられ、一方図書館側でも人件費負担を大きく減らせる運営になっているといった当時の運用手法を聞くことができた。
このように日米共通の概念であれ、その運用実態の違いが大きいものが、実は多数ある。図書館文化の差異は、図書館が運営される文化のギャップそのものであり、その差異をCA編集上反映できないかを、テーマや執筆者の選考時に意識的に行っていた。(1)
これらの経験から、当時情報科学技術協会(INFOSTA)の『情報の科学と技術』編集委員も兼任していた関係で、NDL職員でCA編集事務局経験者の竹内秀樹さんに「米国公共図書館の資金調達動向について」(2)をご寄稿いただき、図書館の経済学を特集した。
適切な執筆者が見つけられなければ、編集企画員は自ら執筆する義務を負う。この不文律のような方針で、情報の哲学を紹介する記事(CA1554 [381]参照)を認めたのは、実に大きな思い出である。のちに、この記事で紹介した英・オックスフォード大学のフロリディ教授(Luciano Floridi)が、2007年10月に来日した折、佐藤義則編集企画員(当時三重大学、のちに東北学院大学)と土屋俊先生(当時大学評価・学位授与機構教授)のご高配で、彼の講演会を国立情報学研究所(NII)で開催していただいた。知を支える学術ディシプリン<哲学>の議論は、確実に人智のネットワークそのものなのである。それを日々具象的に実現する図書館のネットワークも、本稿でご紹介する通り、専門職たちのネットワークで伝播されている。
李博士とオハイオ大学図書館に招請いただかなかったら、筆者の図書館への見方は、偏ったものであったろうし、CA編集企画員となることもなかったであろう。オハイオ大学での図書館業務経験や現在も LC を中心に進めているアーカイヴズ調査で米国の様々な図書館を体験しながら、編集企画員に参加した経験をまとめると、図書館を支える最大の力は、知を生み出す人のメンタルな<連帯>(3)なのだ、としみじみと感じている。その具体的な経験として、米・イェール大学のアーカイヴズで、小職の資料請求用紙を見た他の利用者から、ギルマン(Daniel Coit Gilman)(4)を調査しているのか、旧居が学内に残っている、是非見ておくように、とアドヴァイスされたこともあった。
CA編集刊行の意義は、上述の拙い経験を超えて人々が知に集う場、アーカイヴズ、図書館、博物館の情報を相互に交流させながら、新たな知を育む空間を作り上げたことにある。人類の記憶をさらに充実させるCAの役割は、「カレントアウェアネス・ポータル」というバーチャル空間として、40年近く前の体験を超越した存在に成長した。改めて、“Librarianship is based upon friendship”を確認してペンを擱く次第である。
(1) 図書館文化の差異に関する知見を日本の同僚諸賢と共有する重要性に気付かされたのは、NDL からカナダ・モントリオール大学図書館に派遣されていた山地康志さんと情報科学技術協会(INFOSTA)の『情報の科学と技術』編集委員会で同席した関係が大きく影響している。
(2) 竹内秀樹. 特集, 図書館の経営経済分析と資金調達:米国公共図書館の資金調達動向について. 情報の科学と技術. 2008, 58(10), p. 499-504.
https://doi.org/10.18919/jkg.58.10_499 [382],(参照 2019-05-21).
(3) 連帯の意義を自らの哲学で実践したのはリチャード・ローティである。彼が1980年代に南山大学に滞在していたのは今思うと奇遇である。下記の主著は、書誌コントロール論の Patrick Wilson に決定的な影響を与えている。
Wilson, Patrick. Second-hand knowledge: an inquiry into cognitive authority. Greenwood Press, 1983, 210p.
ローティ, リチャード. 偶然性・アイロニー・連帯 : リベラル・ユートピアの可能性. 齋藤純一, 山岡龍一, 大川正彦訳. 岩波書店, 2000, 438p.
ローティ, リチャード. 哲学と自然の鏡. 野家啓一監訳, 伊藤春樹 [ほか] 訳. 産業図書, 1993, 503p.
(4) Daniel Coit Gilman は、世界初の図書館長会議(Librarians’ Convention 1853)主宰メンバーで、全米初の研究大学Johns Hopkins University 初代学長。
[受理:2019-05-21]
松林正己. 友愛が図書館の連帯を強化する:LCとNDLでの交流から. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 6-7.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_matsubayashi [376]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299452 [383]
Matsubayashi Masaki
Librarianship Is Based upon Friendship
PDFファイル [384]
日本図書館協会認定司書1029号:森山光良(もりやまみつよし)
筆者が『カレントアウェアネス』(CA)の編集企画員に就いたのは2002年5月である。当時、編集企画会議の場である国立国会図書館(NDL)の関西館では、開館準備が佳境に入り、10月7日の開館日に向けて人や物が目まぐるしく動いていた。独特の熱気と緊張感が伝わってきたのを昨日のように思い出す。さまざまな事業が新規に立ち上がったり再構築されたりした中に、筆者が関わったCAの事業もあった。1期2年間の任期という依頼に応じたが、気がつけば 2014年4月まで務めていた。ここではその12年間を振り返る。
筆者は2019年3月まで地域の公共図書館(岡山県立図書館)に勤務してきた。地域開催の図書館員向け研修会の講師を探す際に、カレントアウェアネス・ポータル(CAポータル)でテーマ検索すると、実務者や研究者の情報を取得することができ重宝したものである。そうした活用法やメールマガジン『カレントアウェアネス-E』の受信も含め、地域の公共図書館員にとってCAポータルは、ウェブ環境で気軽に国内外の図書館の動向を知る主要な情報源として定着している。類似の機能を持つ代表例に、日本図書館協会の「WEB 図書館雑誌」およびメールマガジンがあり、CAポータルと補完し合う。ただし、CAポータルは日本図書館協会の取り組みに比べ、会員制でなく不特定多数に無料で公開されたものであるとともに、個別情報に対する検索機能がある(検索エンジンの検索対象にもなっている)等の特性が際立つ。
以上の情報発信機能には、地域の公共図書館が行う広報活動の一部を、補完あるいは再編集して発信する機能も含む。事務局は日々、多種多様な方法で内外の動向情報を入手し、付加価値を付けて発信する作業を行っている。
ところで、在任期間 12 年間という予想外の長さの原因は、自分の後任をなかなか見つけることができなかったからである。CA の役割のうち、海外事情の紹介は相当の比重を占めることから、編集企画員にも必然的にその最新動向を海外誌等で入手することが求められる。日常業務で外国語文献との接点の多い大学図書館員に比べ、公共図書館員は相対的に少ない。後任として期待した公共図書館員候補に、後述する編集企画員業務を説明すると尻込みされたものである。英語の壁を実感する12 年間であった。
この事情はさらに、編集企画員の人員構成にも影響している。つまり、大学教員や大学図書館を出身母体とする者が圧倒的に多く、公共図書館を出身母体とする者はごく限られ、いつもほぼ1名といった状況であった。ちなみに、「ほぼ」という表現については、公共図書館からNDLに出向で来ている職員が加わることが時々あったからであり、最終的に私の後任は出向経験のある公共図書館の職員の方となった。こうした人員構成の影響として、編集企画会議で公共図書館の立場から推奨テーマ案を力説しても、関心を持たれず廃案になったということも少なくなかった。コミュニティが異なれば意識も異なるので致し方ないが、いずれにしても、今後に残された課題として、編集企画員に占める公共図書館関係者の割合を高めることが挙げられる。以上の取り組みによって、公共図書館関係者にとっての利便性、満足度も高まるのではないかと期待する。直近のアンケート調査によれば(1)、CA ポータルの読者層に占める公共図書館関係者の割合は8.3%に過ぎなかった。アンケート回答での自己申告の割合に過ぎないが、公共図書館関係者の絶対数から考えると伸びる余地のある数値であろう。
以上のような経緯を経て後任への業務引継を行ったが、以下では当時作成した引継文書を基に、編集企画員業務を紹介する。主な業務として、①編集企画会議への出席、②それに先立つ記事候補の洗い出しがある。
編集企画会議は四半期ごとに開催される。基本的にCA(年4回刊行)の刊行に向けた会議である。具体的には、6月、9月、12月、3月のそれぞれの月のうち、会議構成メンバーの都合の合う日の14時半から17時までの2時間半である。会議では、①事務局からの進捗状況の報告、②最新刊行号の編集企画員による講評、③今後刊行号の記事候補の協議等がある。②については、事前に読んでおき、掲載文献の良かった点や問題点、編集全般における問題点等を指摘する。
会議の主要議題となるのは③である。編集企画員は次節で具体的に挙げる要領で、事前に記事候補の洗い出しをしておき、事務局に提出する。編集企画会議の究極の目的は、とにかく執筆候補者を探し、承諾を得る道筋を付けることにある。ただし、会議の流れによっては、編集企画員にもブーメランが返ってきて、執筆候補者としての水が向けられることもある。緊張感あふれる攻防の12年間でもあった。
記事候補の洗い出しについては、日頃から外国語文献に慣れ親しんでいれば容易なのであるが、そうでない筆者は意識的に編集企画会議向けに探し出す必要があった。記事候補選定用の電子ジャーナルのリンク集(30誌程度)を、自分なりに作成するとともに、随時入れ替え更新しておき、会議前に一通りチェックおよびピックアップした。これによって、最近の動向を把握した。次に、記事としてまとまる見込みのあるテーマについて、EBSCOhostのデータベースでさらに調べ、参考文献の量的拡充を図った。以上の調査成果を記事候補案の様式にまとめて、事務局に事前送付するという流れであった。様式の項目は、①仮の記事タイトル、②記事種別(一般記事、動向レビュー、研究文献レビューの3種)、③内容説明、④参考文献、⑤執筆候補者、⑥備考、⑦提案者である。以上の作業のために、筆者の場合、会議開催日の2週間前から3週間前の休日の1日を当てていた。
海外の文献で記事候補の洗い出しをする際にいつも残念に感じていたのは、日本の図書館の動向を紹介したものや、日本人著者の文献にほとんど出合わないことであった。筆者はこの状況を、日本の図書館関係者、研究者等が、日本語以外の言語(主に英語)で、海外の雑誌、学術雑誌等への投稿をあまり行っていないことを示すものと解釈していた。すなわち、ここでも英語の壁を実感した次第である。
その点で、CAポータル英語版が2013年11月から公開されたのは画期的であった(2)。現在は対象となる範囲が限定されるものの、日本の図書館の動向を紹介する取り組みが、今後進展することを期待する。
ただし、同取り組みだけに終わってはならない。上述したようにあくまで筆者の印象に過ぎないが、他の分野に比べて図書館情報学分野では、日本の図書館関係者、研究者等が、電子ジャーナル、紙媒体を問わず、海外の雑誌、学術誌への日本語以外の言語(主に英語)で論文や記事を投稿、寄稿することは相対的に少ないように感じる。我々関係者は、意識して一層の奮起を図る必要がある。
(1) “2018年度カレントアウェアネス・ポータル利用者アンケートの結果を公開しました”. 国立国会図書館. 2019-05-13.
http://current.ndl.go.jp/node/38143 [385],(参照 2019-05-13).
(2) “カレントアウェアネス・ポータルの英語版を公開しました”. 国立国会図書館. 2013-11-19.
http://current.ndl.go.jp/node/24878 [386],(参照 2019-05-13).
[受理:2019-05-13]
森山光良. 編集企画員を務めた12年間を振り返って. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 8-9.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_moriyama [377]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299453 [387]
Moriyama Mitsuyoshi
Looking Back on the 12 Years That I Worked as an Editorial Planner
PDFファイル [388]
調査及び立法考査局議会官庁資料課:村上浩介(むらかみこうすけ)
筆者は2005年7月から4年間、係長として本誌の編集業務を担当した。また編集業務の傍ら、オンラインでの情報提供に係る業務、システムの整備にも取り組み、2006年6月にウェブサイト「カレントアウェアネス・ポータル」(CAポータル)の本格運用を開始した。これが本誌40周年のエポックの1つであるとして、当時を振り返る記事の寄稿を仰せつかったが、筆者にとっては既定路線、敷かれていたレールの上を進んだだけである。CAポータルの立ち上げについては、当時、いくつか記事を執筆したが(1)、担当を離れて10年以上が経過し、少しは客観的に見られるようになった今、筆者が当時抱いていた感想を基に、本誌の占める特徴的な位置付けを再考してみたい。
大変ありがたいことに、CAポータルに対しては、図書館関係者から多くの感想やご意見をいただいた。その中には、「国立国会図書館(NDL)らしくないサービス」と評価していただいたものが少なからず含まれていた。NDLの名前、「国立」や「国会」が想起させるイメージとは異なる「意外さ」を感じた、というのである。これには2つのタイプがあった。1つには、軽めの記事が紹介されていることを「意外」と捉え、好ましいと評価いただいたものである。例えば、筆者が担当していた時期では、利用者にも愛されていた米国の図書館ネコ・デューイの死(E574 [389]参照)、図書館目録に関する論考のイグ・ノーベル賞受賞(E734 [390]参照)、オバマ前米国大統領の図書館へのメッセージ(E855 [391]参照)といった記事に対し、NDLがこうしたトピックを取り上げるのは意外だという感想をいただいた。これらの評価は、さらなる努力が必要という意味で、筆者にとって励みとなった。国立国会図書館法には、「あらゆる適切な方法により、図書館の組織及び図書館奉仕の改善につき、都道府県の議会その他の地方議会、公務員又は図書館人を援助する」ことが、国立国会図書館長の権能として認められている(第21条第1項第2号)(2)。全国の図書館関係者が興味・関心を持つような情報を提供することは、NDLの役割の一つであると言える。「CAポータルを見ると、NDLがこういうことに注目している、ということが分かる。自分たちに関わりの深い記事を見ると、自分たちのことも忘れられていない、見てくれているんだ、という気がする」といった感想をお寄せくださった図書館関係者もいるが、「NDLらしくない」という好評価はいったんありがたく受け取った上で、いずれは「NDLらしい」と感じられるようになりたいと思ったものである。
もう1つの「意外さ」のタイプは、公開されたばかりの海外の情報やニュースが、間を置かず、日本語で紹介されているというフットワークの軽さに関するものである。これには正負両面の評価があった。正の評価としては、迅速な情報発信が役に立つ、というものである。収集した国内外の情報やニュースを、まずウェブサイトで短く速報した後に、印刷版で詳しく紹介する。このような情報発信のスタイルは、雑誌や新聞、通信社などでは当たり前になっているが、当時、「国立」「国会」の機関が行っていたことが、珍しかったのかもしれない。負の評価としては、「NDLらしからぬ軽率さ」などとして、紹介した記事の誤りや不適切な訳語を指摘するご意見や、賛否両論あり得るトピックの取り上げ方へのご懸念をいただいたことがある。軽さ、迅速さと両立させることは大変だが、NDLが発信するということが有する意味や影響を勘案し、慎重に、丁寧に執筆する必要があることを実感した。
しかしながら、これらのご意見よりも強く、筆者の心を捉えたのは、匿名のNDL職員から寄せられた「カレントアウェアネスだからこそ成功したサービス」という意見であった。本誌の伝統こそが、上述のような「NDLらしくなさ」「意外さ」の源にあるのだという指摘は、まさに正鵠を射るものであった。本誌は元々、「図書館に関する内外の情報を的確に把握し、当館職員に提供して館運営の参考に資する」(3)ことを目的として創刊された。現在よりも情報の流通量が圧倒的に少なかった時代、本誌の担当者や記事執筆者は、NDL職員の目となり耳となって、NDL職員が知っておくべき情報、関心を持ちそうな情報を紹介してきた。例えば、「インターネット」をタイトルに冠する記事を初めて掲載したのは1994年であり(CA936 [392]参照)、HTMLの基盤となる情報表現法「ハイパーテキスト」に関する記事は1989年にまで遡る(CA635 [393]参照)。他方で、1994年の「SF小説に見る未来の図書館」(CA970 [394]参照)、1999年の「図書館の怪談」(CA1265 [395]参照)といった柔らかいトピックのものもある。これらから分かるように、本誌は伝統的に、先見性、柔軟性、多様性を備えていた。また、若い職員に積極的に記事執筆を促し、視野を広げ経験を積ませるという慣習もあった。筆者も採用直後に執筆を依頼されたし、できるだけ多く、若い職員に執筆を依頼するよう努めた。本誌は1989年 6月から、一般にも販売されるようになったが、以後も依然としてNDL内での知の共有や継承、人材の育成、さらにはコミュニケーションを生み出すツールとしての役割を果たしてきた。そうした伝統の流れで、発刊の辞にある「さしあたり月刊をもってスタートしますが、能力と経費が許せばその刊行頻度をさらに多くしたい」(4)という思いを実現する、CAポータルが誕生したと言える。
実際のところ、筆者が担当に着任した時点で、本誌バックナンバーのテキストデータ化はほぼ済んでおり、その4分の3程度はウェブサイトで公開されていた。メールマガジンの配信も始まっていた。オンライン提供のイメージ、業務フローの概要まででき上がっており、後はそれを形にするだけで良かった。こうした前任者の作業はもちろんのこと、当時の副館長を始めとするかつての担当者や執筆者のバックアップも大きかった。予算の手当もなく、見切り発車の部分が大きかったが、「カレントアウェアネスだから」ということで、かなり自由にやらせてもらった。NDLの内側をよくご存知の図書館関係者から「重厚長大なNDLの中では異質なサービスであり、よく実現できたものだ」という皮肉交じりの感想をお寄せいただいたこともあったが、その異質さは、本誌の存在それ自体に内包されていたと言えよう。
筆者が2009年に担当を離れてからも、後任の担当者諸氏の尽力により、本誌の伝統は継承され、着実に歩みを進めているように見受けられる。知名度が上がったことで、担当者が受けるプレッシャーも増しているのではないかと推察する。NDL内外に数多くの読者がいることを考えると、トピックの網羅性、国・地域の多様性、情報の迅速さ、正確さなど、求められるハードルは高いだろうが、幸いにも「カレントアウェアネスだから」で許容される部分もある。非常勤の調査員、また本誌編集企画員として、支えてくださる有識者の方々もいる。今後、50周年、さらにその先も、国の機関に求められる「のり(法・則・範・規…)」を踏まえつつ、硬軟自在、「ノリ(乗り)」良くタイムリーに、最新情報(カレント)を慎み深く紹介する(アウェアネス)媒体であり続けることを期待したい。
(1) 上田貴雪, 村上浩介, 筑木一郎.図書館の「いま」をどのように伝えるか:国立国会図書館の「Current Awareness Portal」の試み. 情報管理. 2006, 49(5), p. 236-244.
https://doi.org/10.1241/johokanri.49.236 [396],(参照 2019-05-14).
図書館に関する調査・研究をお手伝いします:“Current Awareness Portal”提供開始. 国立国会図書館月報. 2006, (543), p. 40.
https://doi.org/10.11501/1001564 [397],(参照 2019-05-14).など。
(2) “国立国会図書館法”. e-Gov.
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC1000000005 [398],(参照 2019-05-14).
(3) 宮坂逸郎. 発刊にあたって. カレントアウェアネス. 1979, (1), p. 1. ちなみに本誌の創刊以前は、NDLの広報誌『国立国会図書館月報』に、図書館に関するニュース記事や、用語解説が掲載されていた。
(4) 前掲.
[受理:2019-05-14]
村上浩介. 『カレントアウェアネス』50年に向けての期待. カレントアウェアネス. 2019, (340), p. 10-11.
http://current.ndl.go.jp/ca_no340_murakami [378]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299454 [399]
Murakami Kosuke
Toward the Next Decade of “Current Awareness”
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帝塚山学院大学人間科学部/日本図書館協会目録委員長:渡邊隆弘(わたなべたかひろ)
2018年12月、日本図書館協会(JLA)目録委員会は『日本目録規則2018年版』(NCR2018)の冊子体を刊行し(1)、2019年1月にはPDF版を公開した(2)。『日本目録規則1987年版改訂3版』(3)を刊行した2006年前後から検討を重ね、2013年からはJLA目録委員会と国立国会図書館(NDL)収集書誌部との連携作業として策定を進めてきたものである(E1496 [401]参照)。
NCR2018は、NCRの歴史の中で最も長期にわたって適用されてきた「1987年版」に代わるものである。さらに、FRBR等の概念モデルに準拠し、RDA(Resource Description and Access;CA1766 [402]、CA1767 [403]、CA1837 [404]参照)との相互運用性の担保をめざしたことで、これまでのどの版よりも抜本的な見直しとなった。
その構成・内容や策定経緯については、与えられた紙幅には収められないため別稿(4)及び規則自体(5)に譲り、本稿では今後の実装に向けての課題等について述べることとしたい。規則の実装には様々な選択肢があり、データ作成機関によって判断されるべきものである。なお、本稿の記述の多くは私見であり、目録委員会の公式見解ではないことをお断りしておく。
抜本的な見直しを行っているため、実装に一定の時間を要するのはやむを得ない。現時点で、NCR2018年版の実装スケジュールを明示しているのは、NDLのみである。NDLは2018年3月に発表した「書誌データ作成・提供計画2018-2020」(6)において、2021年1月からのNCR2018適用を目指すとした。これに向けてNDLでは適用細則の作成を開始しており、この細則は「国の中央図書館として書誌データ作成の標準化を推進する役割を担うNDLの使命」との認識のもとに公開される予定である(7)。2019年2月に開催された「平成30年度書誌調整連絡会議」で適用細則作成の概要に関する報告があり、2019年10月以降に順次公開していくとの予定も示された(8)。
同会議では、他機関からもNCR2018適用の見通しに関する言及があった(9)。国立情報学研究所(NII)のNACSIS-CATについては、軽量化・合理化を目指す大きな見直し(「CAT2020」)が予定されているが(CA1862 [405]、E2107 [406]参照)、この段階では適用する目録規則の変更は行われない。次の更新タイミングは2022年で、そのための検討は2020年以降になるとの説明であった。また、民間のMARC作成機関(TRC、トーハン)でも検討は開始されているが、スケジュール等を公表できる段階にはないとのことである。なお、慶應義塾大学図書館は2017年から洋書にRDAを適用しているが(10)、2019年4月から和書の適用規則もRDAに切り替え、この際そのまま適用しがたい部分はNCR2018を参考にするとの説明があった。同館のRDA適用は体現形の記述部分を中心とするやや限定的な形であるため、和書への適用にあたってもNCR2018の全体が参照されるわけではないと思われるが、実際の目録作成にNCR2018の規定が考慮される最初の例といえるかもしれない。
RDAにも言えることだが、NCR2018は従来のNCRと比べ自由度がかなり高く、適用すると決めただけではデータ作成作業を行えない。大幅に増強されたエレメント(総数は369個)の多くは入力が任意であり、また記録の方法にも別法や任意規定が多いため、各データ作成機関では適用細則の作成など、入力方針の検討が欠かせない。さらに、NCR2018は規定対象をエレメントの記録の範囲と方法(メタデータの意味的側面)に特化し、ISBD区切り記号法のようなエンコーディング方式(メタデータの構文的側面)は全く規定していないため、用いる書誌フレームワークを各機関で選定する必要がある。
以下、実装を検討していく際に留意すべきと思われる視点をいくつか(網羅的ではない)、私見として述べる。
FRBR等の概念モデルへの準拠およびRDAとの相互運用性の担保に伴って、NCR2018の特徴はいくつか挙げられるが、それらの多くに通底する志向として、データの機械可読性の確保がある。図書館の目録サービスにおいても、Linked Open Data(LOD)の提供による外部活用(CA1825 [407]参照)においても、システムが容易に理解・操作できるデータであることは最重要の条件であり、この視点をもった実装が求められる。
一例を挙げると、記述対象が源氏物語を原作とする漫画作品(著作)の場合に、原作情報は「著作間の関連」エレメントに記録するが、その際NCR2018は、①「漫画化の原作(著作):国立国会図書館典拠ID:00633493」(識別子による記録。1つ目のコロンの前は関連の詳細な種類を表す「関連指示子」)、②「漫画化の原作(著作):紫式部.源氏物語」(典拠形アクセス・ポイント(AAP)による記録)、③「『源氏物語』(紫式部)の漫画化」(非構造記述による記録)など、いくつかの方式を提示している(11)。どの方式も規定上正しいが、③の非構造記述ではリンク機能の提供につながらず、機械可読性の観点からは望ましくない。非定型の表現でしか実相を伝えがたい複雑な関係性もあり、そうした場合に③の方式が役立つが、通常の場合にも③を用いていては、従来の規則で注記に記録していたのと変わらない。NCR2018の「新しさ」を十分発揮できる選択肢がとられることが望ましい。
NCR2018ではRDAと同じく、体現形と著作を結びつける関連の記録をコア・エレメントとしており(12)、全ての著作の典拠コントロールを求めている。著作(および、必要に応じて表現形)の典拠コントロールを行うことにより、FRBRモデルに基づいた構造的な資料把握・提示が可能となる。
しかしながら、全著作に独立した典拠データを作成することは、RDAを適用する海外の図書館においても行われていない。RDAにおいてもNCR2018においても、創作者が明らかな著作に対する典拠形アクセス・ポイントは、「野坂, 昭如, 1930-.火垂るの墓」(NCR2018の例)のように、創作者のAAPと当該著作の優先タイトル(従来の統一タイトル)とを結合した形を通常用いるが(13)、このうち創作者のAAPは資料と個人・家族・団体との関連(従来の著者標目)として別に管理されている(14)。また優先タイトルも、別途必ず記録されている体現形のタイトル(本タイトル)と一致する場合も多い。こうしたことから、複雑な場合にのみ典拠データを作成し、それ以外は書誌データ内で完結させる運用が多く見られる。
NCR2018の実装においても、著作の典拠データ作成は限定的に行うこととするのが現実的であろう。どこまでを作成範囲とするかは、各データ作成機関で決定する必要がある。なお、書誌データ内で完結させる場合も、著作の情報が不要なわけではなく、データ内の他の情報の組み合わせで当該体現形が属する著作のAAPが認識できなくてはならない。そしてその認識は、機械可読性をもって行える必要がある。
NDLは、NCR2018に基づくデータを格納する書誌フレームワークとして、一定の見直しを前提に、現行のMARC21を引き続き用いるとしている (15)。管見の限り、北米等におけるRDAの適用において、MARC21以外の書誌フレームワークを用いた実装は把握できない。米国議会図書館(LC)により2011年から、MARCに替わる書誌フレームワークBIBFRAME(CA1837 [404]参照)の開発が進められているが、RDAに密着した仕様ではなく、入力・格納用のフレームワークとしては疑問がある(16)。NDLでは比較的早くからBIBFRAMEに注目していたが、「書誌データ作成・提供計画2018-2020」では「将来的には、書誌データの流通において、MARCに替わる新しい書誌フレームワークが主流となる可能性は高い」との認識を示しつつ、当面はMARC21を採用するとした。合理的な判断と思われる。
とはいえ、MARC21を用いたNCR2018データの作成には、問題点もある。一例を挙げると、先に例示した著作『火垂るの墓』に対する典拠レコードを作成する際、そのAAPはタグ100(個人名標目)を用いて「$a 野坂, 昭如$d1930-$t火垂るの墓」のように表現されるのが一般的である。すなわち、著作に対するAAPではあるが、創作者である個人に対するAAPに付随する形で優先タイトルを扱う。問題は、複数の創作者による著作の場合である。RDAでは基本記入方式の伝統に則って(例えば最初に表示された)一人の創作者のAAPを用いる形を本則とするが、NCR2018では「園部, 三郎, 1906-1980; 山住, 正己, 1931-2003. 日本の子どもの歌」のように各創作者を列挙する形を本則とした(17)。タグ100に複数の個人名を入れることは想定されておらず、またタグ100自体の繰り返しも許されないため、何らかの拡張なしに本則に従った形を入力することは不可能である。書誌フレームワークに制約を受けて意味的側面が十分に表現できないことは望ましくないが、外部のデータとの相互運用性の問題もあり、難しい判断を迫られることもあると思われる。
本稿のタイトルに「はじまり」と入れてみた。10年以上の作業を重ねて完成したわけであるが、規則は実際に使われてはじめて意味がある。すなわち、策定は「助走」であって、完成がスタート地点、実装こそが「本番」である。本稿ではNCR2018の実装について、現段階の動向と筆者が考える課題をまとめてみた。
スムーズな実装には、規則がアクセスしやすいものであることも重要である。内容の適切性や分かりやすさに関する評価とは別に、大部の規則を冊子体とPDFという線型的なテキストでの提供としていることへの批判もあるかもしれない。RDAのようなウェブ・サービスの提供を求める声もあったが、今回は提供コストを圧縮して誰でも自由に参照できる(PDF版は無料公開)形を優先した。一方で、規則を多少とも使いやすいものとする材料も提供したいと考えており、2019年3月に「エレメント・語彙等データ提供」として、NCR2018で規定している実体、エレメント、語彙のリストの用語、関連指示子について簡易な機械可読データ(1,356件)の提供を開始したところである(18) 。
2019年度以降も当然ながら目録委員会の活動は続いていく。NCR2018の維持・普及活動等にあたりつつ、実装に向けた動きにも注意を払っていきたいと考えている。
(1) 日本図書館協会目録委員会編. 日本目録規則. 2018年版. 日本図書館協会, 2018, 761p.
(2) 日本図書館協会目録委員会. “日本目録規則2018年版”. 日本図書館協会.
http://www.jla.or.jp/mokuroku/ncr2018 [408],(参照 2019-03-28).
(3) 日本図書館協会目録委員会編. 日本目録規則. 1987年版改訂3版. 日本図書館協会, 2006, 445p.
(4) 渡邊隆弘. 新しい『日本目録規則』のすがた:何が新しくなるのか. 現代の図書館. 55(4), 2017, p. 167-176.
https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/mokuroku/gendai_no_toshokan_55-4watanabe.pdf [409],(参照 2019-03-28).
日本図書館協会目録委員会.『日本目録規則2018年版』:完成までの道程. 図書館雑誌. 113(1), 2019, p. 32-33.
https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/mokuroku/article201901.pdf [410],(参照 2019-03-28).
その他、関係文書・記事等を以下のウェブページに掲載している。日本図書館協会目録委員会. “日本目録規則(NCR)2018年版関連情報”. 日本図書館協会.
http://www.jla.or.jp/mokuroku/ncr2018 [408],(参照 2019-03-28).
(5) 「序説」で本規則の背景や特徴について、「第0章 総説」で本規則が依拠する概念モデルや基本概念について説明している。また、「目録委員会報告」で策定経緯を説明している。
(6) “国立国会図書館書誌データ作成・提供計画2018-2020”. 国立国会図書館. 2018-03-23.
https://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bibplan2020.pdf [411],(参照 2019-03-28).
(7) 前掲.
(8) “平成30年度書誌調整連絡会議報告”. 国立国会図書館.
https://www.ndl.go.jp/jp/data/basic_policy/conference/2018_report.html [412],(参照 2019-04-20).
(9) 前掲.
(10) 河野江津子. 新目録規則RDAの導入について. MediaNet. 2017,(24), p. 52-55.
http://www.lib.keio.ac.jp/publication/medianet/article/pdf/02400520.pdf [413],(参照 2019-04-21).
(11) 第43章(資料に関するその他の関連)中の、#43.1(著作間の関連)に規定されている。また、関連指示子「漫画化の原作(著作)」は、付録C.1(関連指示子:資料に関するその他の関連)中の#C.1.1.1(著作の派生の関連)に挙げられている。
(12) 第42章(資料に関する基本的関連)中の、#42.0.2.1(エレメント)に規定されている。エレメント「体現形から表現形への関連」「表現形から著作への関連」を共に記録するか、「体現形から著作への関連」を記録するか、どちらかを行うことを求めている。
(13) NCR2018では、セクション5(アクセス・ポイント)に位置する第22章(著作)中の、#22.1A(典拠形アクセス・ポイントの形)等に規定されている。なお、読みは省略した。
(14) NCR2018では、第44章(資料と個人・家族・団体との関連)中の、#44.1.1(創作者)に規定されている。
(15) “国立国会図書館書誌データ作成・提供計画2018-2020”. 国立国会図書館. 2018-03-23.
https://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bibplan2020.pdf [411],(参照 2019-03-28).
(16) 谷口祥一. BIBFRAMEとその問題点:RDAメタデータの観点から. 情報管理. 58(1), 2015, p. 20-27.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.20 [414],(参照 2019-03-28).
(17) #22.1.2(複数の創作者による共著作)に規定されている。
(18) 日本図書館協会目録委員会. “NCR2018年版エレメント・語彙等データ提供”. 日本図書館協会.
https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/mokuroku/ncr2018/tabid/795/Default.aspx [415],(参照 2019-03-28).
[受理:2019-05-08]
渡邊隆弘. 『日本目録規則2018年版』のはじまり:実装に向けて. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1951, p. 12-14.
http://current.ndl.go.jp/ca1951 [416]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299455 [417]
Watanabe Takahiro
A Starting Point to Implementation of Nippon Cataloging Rules(NCR) 2018 edition
PDFファイル [420]
キハラ株式会社:池田貴儀(いけだきよし)
灰色文献国際会議(International Conference on Grey Literature;以下「GL会議」。会議毎にGL+開催回数で表記)(1)の最近の話題は、磯本のGL17(E1787 [421]参照)や熊崎のGL20(E2108 [422]参照)等の報告(E1382 [423]、E1612 [424]参照)(2)にもあるように、オープンサイエンス、オープンアクセス、研究データである。これは、GL20(3)と2019年10月に開催されるGL21(4)の全体テーマや、「灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言(以下「ピサ宣言」)」(5)で謳われるオープンサイエンスやオープンアクセス推進の文言からもうかがい知ることができる。本稿ではGL会議および主催のGreyNetの動向(6)を中心に、もう少し俯瞰的な視点から、ここ10年の大きな流れを踏まえつつ、灰色文献の最新の状況を紹介していく。なお、誌面の都合上、個々の会議での発表内容の詳述まではできないため、なるべく出典元を明示したので参照いただければ幸いである。
GL会議の全体テーマ、口頭発表等セッションテーマ、会議トピックス(7)を分析(8)すると、概ね次の9つが2010年代の灰色文献の主な話題として挙げられる。
(1)や(2)のように、ほぼ毎年継続的なテーマとなるもの、(3)のように2011年から2013年の前半までが主流なものもある。一方で(4)から(6)は、プラハ定義(9)が提案された2010年から2013年にかけて話題となり、一度間が空いて2018年頃から再び登場する。なお、プラハ定義は継続して議論中のままである(10)。
1990年代は電子化された情報への関心が見られ(11)、2000年代はインターネット上の情報資源、情報の蓄積や発信に関心が高まってくる。この流れから2010年頃まではリポジトリ(12)が、2010年以降はオープンアクセスに話題が移行していく。
また、2010年代は、既存及び新しいステークホルダーの議論など、広く一般公衆への働きかけに関心が向けられ始める時期でもあった(13)。また(8)についての関心や可能性、影響そしてその情報自体の信頼性という形でテーマも変化していく。さらに2014年のピサ宣言の公表直前から(9)に関連する話題も継続的に取り上げられていくようになる。
GL会議とは異なるが、チェコ共和国では2008年より毎年、灰色文献・リポジトリ会議(Conference on Grey Literature and Repositories)が開催されている(14)。この会議の2016年までの9年間のプレゼンテーションや会議録からキーワードを抽出した傾向分析の結果がGL18で報告された(15)。デジタル図書館、リポジトリ、学術コミュニケーション、ユーザーインターフェイス、著作権、研究データ、電子リソース、情報検索、オープンアクセスなどが主要な項目であった。これは2010年代半ばまでの傾向ではあるが、GL会議のテーマと類似しており、収集よりも保存と公開、データや質的側面へ関心が向いていることが見てとれる。
GL会議のテーマとは別にもう一つ注目すべきは、GreyNetが2003年から行っている、毎年特定の研究テーマを設定して調査等を実施し、進捗や成果をその年のGL会議で報告するという灰色文献の研究プロジェクトである(16)。2010年は商業出版と灰色文献の査読の比較研究、2011年から2012年は会議論文と付随する研究データをリンクさせるEnhanced Publications Project(EPP)(17)、2013年から2014年はGreyGuide(18)、2015年は累積した事例研究、2016年はピサ宣言、2017年にはデータペーパー(19)を調査し、単にデータのファイルがある状態から、抄録やメタデータを付与し、論文とデータが共有され、データの引用および研究データの潜在的な再利用を促進することが目指された。2018年はオープンデータの引用と再利用、2019年は社会や科学のためのオープンアクセスが主なテーマであった。
GreyNetの研究プロジェクトのもと、ピサ宣言の影響を評価する調査が実施され、GL18で結果が報告された(20)。ピサ宣言の15項目について、署名者自身の組織の関心を尋ねる質問では、技術的な面の15.の「灰色文献共有の相互運用可能な基準、灰色文献の出版物にデータや非テキストコンテンツをリンクさせる仕組み」が最も高い結果であった(約84%)。次いで、8.の「法定納本制度や著作権法の改定」(約75%)、2.の「組織間のより一層の連携・協力」(約67%)の順である。他方、ピサ宣言の一般公衆への普及促進に関する状況については、会議など限定された機会や組織のウェブサイトの発信に留まり、ソーシャルメディアを通じた宣伝の必要性も示された。この結果が反映されてか、翌年のGL19の各テーマが関連する内容となっている(21)。そしてピサ宣言でも謳われる研究データ、オープンサイエンス、オープンアクセスがGL20以降のテーマとして続いていく。なお、ピサ宣言は、2019年4月1日現在、 23の言語に翻訳され146人が署名している(22)。
主要な灰色文献の一つに学位論文がある。10年以上にわたり学位論文に焦点をあててきたシェプフェル(Joachim Schöpfel)によれば(23)、当該分野の研究は学位論文自体の特性や探索から始まり、電子学位論文(ETD)、オープンアクセスや機関リポジトリにおけるアクセシビリティへ研究は移っていくという。その後、論文の補完的資料としての研究データ(位置付け、保存、共有、公開、再利用)、研究データ(生データ、画像など)をデジタル技術(データマイニング、マッピング、視覚化など)を使い伝達する技術や、研究データ管理プロジェクトへと変わりつつある。また、論文執筆やデータ利用における個人情報や許諾が必要なコンテンツの法的課題、データの不完全さおよび説明不足、組織化や構造化がされず他の再利用不可能な研究データとの混在表示、不適切なフォーマットによるオープンデータの障害も示されている(24)。このように一つの形態の灰色文献を見ても、関心が大きく変化していることがわかる。
さらにシェプフェルは、デジタル時代の学位論文は、未だに灰色文献なのかについて、議論の余地があると指摘する(25)。従来は商業出版ルートに乗らない入手困難な資料をいかに探し出すかに重きが置かれてきた。しかし、デジタル化やインターネットの普及は、灰色文献のアクセシビリティを大きく変化させた(26)。岡村も灰色文献の問題の所在が変化してきていると指摘している(27)。インターネットを通じて灰色文献が流通することで、灰色文献そのものの概念が変わり、灰色ではなくなるという指摘は1993年のGL1から予見されていたが、それが現実のものとなりつつある(28)。
過去の定義の議論の中で、灰色文献の範囲が拡大し、またインターネット上で刊行された灰色文献の区別の不十分さが大きな課題と拙稿で指摘した(29)(30)。しかし膨大な知識や情報が生み出される今日、出版物以外のデータや資源など、あらゆるものを対象とせざるを得ない状況にきている(31)。
GL19では、動画(Video)が新たな灰色文献と指摘された(32)。図書館はテキストの会議報告の収集については長年の蓄積があるが、動画の会議記録についてはまだ十分ではない(33)。メタデータが欠如し、永続的なアクセスの保証がなされないほか、引用や検索や再利用も難しく、貴重な情報が隠されたままや、または失われている状態にあるという(34)(35)。
一方GL20では、グレーデータ(Grey data)としての研究データを記録、価値、帰属、持続性、利用、公開、査読の観点からWhite(open)/Grey/Dark dataに区分する提案があった(36)。灰色文献の色(37)や濃度(38)(39)による区分けは昔から存在するが、データに対する試みや新たに質の観点も含めたことが特徴で、今後データとどう向き合うべきかの一つの問題提起と言える。
拙稿で「灰色文献を探しアクセスできるように努力を続けているのは図書館員」という2006年のナタラージャン(Natarajan. M)の言葉を紹介した(40)(41)。
2010年代に入り、探すこと以上に整理、保存、提供し、灰色文献と利用者を結び付けることが重要な役割となってきた。そして、ピサ宣言にもあるように標準化や保存、質の向上を目指し、作成元の意識を変えるための働きかけも一つの役割と言える。また、オルトメトリクスなどの新しいツールを活用し、灰色文献の社会への影響に関心を持つことも、オープンサイエンス時代における図書館員の役割と言えるかもしれない(42)。そして、研究データ管理である(43)(44)(45)。これからは、従来の灰色文献から新たな灰色文献へ、図書館員の意識が変わっていくことが求められる。
(1) 灰色文献を主題とする人たちが一同に集まる国際会議。毎年全体テーマが決められ、基調講演、口頭発表、ポスター発表、企業展示、見学と会議前夜のGreyNet Award Dinnerで構成される。定義の議論、灰色文献流通のためのデータベースに関する議論、灰色文献分野貢献者へのAnnual Awardの授与なども行われ、世界の灰色文献の動向がわかる場といえる。
(2) 磯本(E1787 [421]参照)・熊崎(E2108 [422]参照)以外での、過去の日本からの参加者の報告は以下のとおり。最新動向と会議の雰囲気を知れる貴重な記録である。一方、継続しての参加者がいないため、報告が無い回もある。また、1回から2回のみの参加者も多く、断片的な内容になってしまう面もある。
坂本現意ほか. 第一回灰色文献国際会議の報告. 情報管理. 1994. 37(4), p. 311-318.
https://doi.org/10.1241/johokanri.37.311 [425],(参照 2019-04-12).
小原満穂. 第1回灰色文献国際会議に参加して. 科学技術文献サービス. 1995,(105), p. 11-16.
米村隆二. 第1回灰色文献国際会議に参加して. 国立国会図書館月報. 1994,(399), p. 12-16.
愛宕隆治. 集会報告:第5回灰色文献国際会議. 情報管理. 2004, 46(11), p. 770-771.
https://doi.org/10.1241/johokanri.46.770 [426],(参照 2019-04-12).
第6回灰色文献国際会議. 国立国会図書館月報. 2005,(526), p. 33-34.
池田貴儀. 第9回灰色文献国際会議に参加して. 大学図書館問題研究会京都. 2008,(264), p. 6-8.
池田貴儀. 第11回灰色文献国際会議に参加して. 大学図書館問題研究会京都. 2010,(275), p. 9-12.
池田貴儀. 灰色文献をめぐる動向:灰色文献国際会議の議論を中心に. 情報管理. 2010, 53(8), p. 428-440.(第11回)
https://doi.org/10.1241/johokanri.53.428 [427],(参照 2019-04-12).
大濱隆司. 集会報告:第13回灰色文献国際会議. 情報管理. 2012, 55(2), p. 136-138.
https://doi.org/10.1241/johokanri.55.136 [428],(参照 2019-04-12).
池田貴儀. インターネット時代の灰色文献:灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に. 情報管理. 2015, 58(3), p. 193-203. (第16回)
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.193 [429],(参照 2019-04-12).
池田貴儀. GreyNet Award Dinner 2014. 大学の図書館. 2015, 34(10), p. 207.( 第16回)
磯本善男. 多様化する灰色文献とその取組みからオープンサイエンスを考える:GL17,GreyForum4.1参加報告. 大学図書館研究. 2017,(106), p.82-89.
https://doi.org/10.20722/jcul.1473 [430],( 参照 2019-04-12).
(3) GL20の全体テーマは「研究データは灰色文献を刺激し支える(Research Data Fuels and Sustains Grey Literature)」であった(E2108 [422]参照)。
GL20 Program Book. New Orleans, USA, 2018-12-3/4, GreyNet. TextRelease, 136p.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/31/GL20_ProgramBook.pdf [431],(accessed 2019-04-25).
(4) GL21の全体テーマは「オープンサイエンスは新しい灰色文献の形を包含する(Open Science Encompasses New Forms of Grey Literature)」である。そして、口頭発表等セッションテーマには、オープンサイエンス、オープンアクセス、オープンリソースが設定されている。科学の原理と情報技術の進歩が灰色文献にどのような影響を与え、オープンサイエンスにどのような貢献をしたかの検証がGL21の目的として挙がっている。
GL21 Conference Announcement, GreyNet Newsletter. 2019, 11(1).
http://www.greynet.org/images/Newsletter_Vol11N1,_2019.pdf [432],(accessed 2019-04-01).
“Conference Program”. Twenty-First International Conference on Grey Literature.
http://www.textrelease.com/images/GL21_Conference_ [433] Program.pdf,(accessed 2019-04-24).
(5) “灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言”. 池田貴儀訳. GreyGuide. 2014-05-16.
http://greyguiderep.isti.cnr.it/Pisadeclapdf/Japanese-PisaDeclaration.pdf [434],(参照 2019-04-01).
(6) 主催であるGreyNetは2017年に25周年を迎えた。
TextRelease/Grey Literature Network Service. GreyNet International Business Report 2019. 2019.
http://www.greynet.org/images/GreyNet_Business_Report_2019.pdf [435],(accessed 2019-04-01).
(7) 口頭発表の演題募集の際、GreyNetは4から8の会議トピックスを提示し、発表者はエントリー時に一つを選択する。会議トピックスと口頭発表セッションテーマはイコールでない場合もある。セッションテーマは集まった原稿も考慮しながら決まると予想され、会議トピックスはGreyNet側が元々想定しているその年のテーマを知る手がかりとなる。
(8) 分析には、口頭発表等セッションテーマ(GL12からGL17は各4件、GL18とGL19は各3件+パネルセッション1件、GL20は3件+特別パネルセッション1件)、会議トピックス(GL12:6件、GL13:4件、GL14:8件、GL15:6件、GL17:5件、GL18:4件、GL19:5件、GL20:6件、GL21:6件。なお、GL17、GL18、GL20、GL21で設定された「その他の関連トピック」などは含めていない)を使用した。
〇全体テーマ、口頭発表セッション等
“GL Program Books”. GreyNet.
http://greyguide.isti.cnr.it/index.php/greyguideportal/document-share/gl-program-books-2003 [436],(accessed 2019-04-01).
〇会議トピックス
“Call for Papers”. Twenty-First International Conference on Grey Literature.
http://www.textrelease.com/gl21callforpapers.html [437], (accessed 2019-04-01).
URL内の「gl21」をgl12からgl20に変更することでGL12からGL20も参照可(accessed 2019-04-01)。
(9) GL12にてシェプフェルにより提案される。GL6のニューヨーク・ルクセンブルク定義に、灰色文献の形態の側面など4点を追加した。GL13で議論が行われたが、法制度が異なる等の理由で共通認識を得られないまま継続審議となっている。定義は灰色文献を考える上で重要な観点で、長きにわたり様々な議論がなされてきた。拙稿の「3. 灰色文献の定義とその変容」にプラハ定義までの灰色文献の定義の変遷を詳述している。
池田貴儀. インターネット時代の灰色文献.灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に. 情報管理. 2015, 58(3), p.193-203.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.193 [429],(参照 2019-04-12).
Schöpfel, Joachim. “Towards a Prague Definition of Grey Literature”. GL12 Conference Proceedings. Prague, Czech Republic, 2010-12-6/7, GreyNet. TextRelease, 2011, p.11-26.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL12_Conference_Proceedings.pdf [438],(accessed 2019-04-24).
(10) 池田貴儀. インターネット時代の灰色文献.灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に. 情報管理. 2015, 58(3), p.193-203.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.193 [429],(参照 2019-04-12).
(11) 米村. 前掲.
1993年のGL1の時から既に、デジタル情報ネットワークの進展とともに灰色文献の価値が拡大し電子出版の中で重要な位置を占めつつあること、電子出版が入手困難の解決につながる可能性などが議論されている。
(12) リポジトリ自体の関心が薄れたわけではなく、利用が広がり、他のテーマの中でリポジトリの事例が報告されるようになった。2004年から2010年まで(GL6からGL8、GL10、GL11)、口頭発表等セッションテーマとして「リポジトリ」が設定された。2000年代中盤から後半が、標準化と絡めたテーマでリポジトリが灰色文献の話題の中心の一つであったことがうかがえる。
“GL Program Books”. GreyNet.
http://greyguide.isti.cnr.it/index.php/greyguideportal/document-share/gl-program-books-2003 [436],(accessed 2019-04-01).
(13) GL17でステークホルダーと灰色資源の利用に関する調査報告がなされた。両者を効果的に結びつける目的でGreyNetもソーシャルメディアの活用に積極的に取り組み始め、LinkedIn(2011年開始)、Twitter(2013年開始)に加え、Facebook(2013年開始)のアカウントが追加された。利用者はLinkedInメンバー(2015年:600、2019年4月1日:682)、Twitterフォロワー(2015年:865、2019年4月1日:1,245)、Facebookフォロー(2015年:65、2019年4月1日:135)。2011年のGL11から口頭発表等セッションテーマ、会議トピックスでソーシャル・ネットワーキングは挙がっているが、同じ頃からステークホルダーや一般コミュニティとの関わりに関心を持ち始め、そこへアプローチする手段としてGL16、GL17頃からソーシャルメディアの活用に重きを置き始めたことがうかがえる。
GreyNet’s Stakeholder Study: Leveraging Grey Literature. GreyNet Newsletter. 2016, 8(1), p. 3.
http://www.textrelease.com/images/Newsletter_V8N1,_2016.pdf [439],(accessed 2019-04-01).
Farace, Dominic. “Leveraging Grey Resources: A Training Module for Intelligent Resource Assessment”.
Amsterdam, Netherlands, 2016-09-21.(GreyWorks – Summer Workshop Series on Grey Literature, 2016).
http://www.greynet.org/images/Leveraging_Grey_Resources_Slides_.pdf [440],(accessed 2019-04-01).
Farace, Dominic et al. “Leveraging Grey Literature – Capitalizing on Value and the Return on Investment: A Cumulative Case Study”. GL17 Proceedings. Amsterdam, Netherland, 2015-12-1/2, GreyNet. TextRelease, 2016, p. 165-173.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL17-Conference-Proceedings.pdf [441],(accessed 2019-04-21).
“GreyNet’s Social Media”. GreyNet.
http://www.greynet.org/home/socialmedia.html [442],(accessed 2019-04-01).
(14) “Conference”. National repository of grey literature.
https://nrgl.techlib.cz/en/conference [443],(accessed 2019-04-01).
(15) Pejšová, Petra. “New trends in information both influence and challenge grey literature: an analysis of the evolution and development of a conference series”. GL18 Conference. NY, USA, 2016-11-28/29.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/35/Pejsova.pdf [444],(accessed 2019-04-01).
(16) TextRelease/Grey Literature Network Service. GreyNet International Business Report 2019. 2019.
http://www.greynet.org/images/GreyNet_Business_Report_2019.pdf [435],(accessed 2019-04-01).
(17) GL会議のメタデータやフルテキストは、OpenGreyに収録されている既存のメタデータとフルテキストを、オランダのData Archiving Networked Services(DANS)リポジトリでアーカイブする研究データにリンクさせることで、コレクションの充実を図ることを目的としたプロジェクト。後に、注(19)で示すように、両方のデータベースに研究データのメタデータ(データペーパー)も収録されるようになる。
DANS.
https://easy.dans.knaw.nl/ui/home [445],(accessed 2019-04-01).
Farace, Dominic et al. “Linking full-text grey literature to underlying research and post-publication data: An Enhanced Publications Project 2011-2012”. GL13 Conference Proceedings, 2011-12-5/6, Washington D.C., USA, GreyNet, TextRelease, 2012, p. 143-150.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL13_Conference_Proceedings.pdf [446],(accessed 2019-04-01).
また、2011年6月30日から9月5日にかけて、GL会議の会議録や雑誌The Grey Journalのファーストオーサーに対し、“GL Author Survey 2011”というオンライン調査が行われた。結果は2011年のGL13で報告された。
“Grey Literature Author Survey 2011 Enhanced Publications Project(EPP)”. GreyNet Newsletter. 2011, 3(4), p. 3.
http://www.greynet.org/images/GreyNet_Newsletter_V3N4,_2011.pdf [447],(accessed 2019-04-01).
(18) 灰色文献のポータル兼リポジトリ。GreyNetおよびイタリアの国立研究議会情報科学技術研究所(ISTI-CNR)により運営される。2013年12月から運用を開始した。ポータルではピサ宣言や、過去のGL会議のプログラム等への様々な情報源へのアクセス、リポジトリでは優良実践事例のアクセスができるようになっている。
GreyGuide.
http://greyguide.isti.cnr.it [448],( accessed 2019-04-01).
Biagioni, Stefania et al. “GreyGuide - Guide to Good Practice in Grey Literature: A Community Driven Open Resource Project”. GL15 Conference Proceedings. Bratislava, Slovak Republic, 2013-12-2/3, GreyNet. TextRelease, 2014, p. 58-62.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL15_Conference_Proceedings.pdf [449],(accessed 2019-04-01).
Farace, Dominic et al. “GreyGuide, GreyNet’s Web Access Portal and Lobby for Change in Grey Literature”. GL16 Conference Proceedings, Washington D.C., 2014-12-8/9, GretNet. TextRelease, 2014, p.147-153.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL16_Conference_Proceedings.pdf [450],(accessed 2019-04-01).
(19) データペーパーは、研究データの活用促進のために、データの概要(Overview)、手法(Methods)、データセットの説明(Dataset Description)、再利用の可能性(Potential Reuse)、レファレンス(References)の5項目のメタデータを記述したものである。OpenGreyには著者がテンプレートに基づいて作成したPDFが、DANSには5項目がテキスト形式で掲載される。
“DATA PAPER TEMPLATE”.GreyNet.
http://www.greynet.org/images/Data_Paper_Template,_Version_1.1.pdf [451],(accessed 2019-04-01).
Farace, Dominic et al. “Data Papers are Witness to Trusted Resources in Grey Literature”. GL19 Conference proceedings. Rome, Italy, GreyNet. TextRelease, 2017-10-23/24, 2018, p. 27-32.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL19_Conference_Proceedings.pdf [452],(accessed 2019-04-01).
Farace, Dominic et al. “Data Papers are Witness to Trusted Resources in Grey Literature: Driving Access to Data thru Public Awareness”. Nineteenth International Conference on Grey Literature. Rome, Italy, 2017-10-23/24.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/34/Farace_Frantzen_Smith.pdf [453],(accessed 2019-04-01).
Dominic Farace et al. “Open Data engages Citation and Reuse: A Follow-up Study on Enhanced Publication”. GL20 Conference Proceedings. LA, USA, GreyNet. TextRelease, 2018-12-3/4, 2019, p. 117-122.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL20_Conference_Proceedings.pdf [454],(accessed 2019-04-21).
(20) オンライン調査は2016年4月から7月にかけて実施された。署名した133人に調査依頼が届き、回答率は45%(60人)。15.(84%)、8.(約75%)、2.(約67%)の順で、また、1.「オープンアクセス推進」や、7.「優良実践事例集の作成」も60%を超えている。
Savić, Dobrica. “Policy Development for Grey Literature Resources: An Assessment of the Pisa Declaration”. GL18 Conference proceedings. NY, USA, GreyNet. TextRelease, 2016-11-28/29, 2017, p. 97-108.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL18_Conference_Proceedings.pdf [455],(accessed 2019-04-21).
(21) 全体テーマ「公衆の意識と灰色文献へのアクセス(Publica Awareness and Access to Grey Literature)」、口頭発表等セッションテーマ「幅広い聴衆へ灰色文献を顕在化させていく(Exposing Grey Literature to Wider Audiences)」や「灰色文献の新たな技術とソーシャルメディアの影響(Impact of Emerging Technologies & Social Media on Grey Literature)」「研究データを活用した灰色文献の革新(Innovations in Grey Literature Powered by Research Data)」と関連し、「灰色文献のアクセス障害(Overcoming Obstacles in Accessing Grey Literature)」も14.の「リンク切れや恒久的なアクセスの保証」と関連しており、ピサ宣言の調査結果が大きく影響していることがうかがえる。
“GL Program Books”. GreyNet.
http://greyguide.isti.cnr.it/index.php/greyguideportal/document-share/gl-program-books-2003 [436],(accessed 2019-04-01).
(22) 灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言”. 池田貴儀訳. GreyGuide. 2014-05-16.
http://greyguiderep.isti.cnr.it/Pisadeclapdf/Japanese-Pisa-Declaration.pdf [456],(参照 2019-04-01)
“Pisa Declaration”. GreyGide.
http://greyguide.isti.cnr.it/index.php/greyguideportal/pisadeclaration/pisa-declaration-22-language [457],(accessed 2019-04-25)
“List of Endorsements”. GreyGuide.
http://greyguiderep.isti.cnr.it/pisadecla/listaiscritti.php?order=name [458],(accessed 2019-04-25).
(23) Schöpfel, Joachim et al. “D4Humanities: Deposit of Dissertation Data in Social Sciences & Humanities – A Project in Digital Humanities”. GL19 Conference proceedings. Rome, Italy, GreyNet. TextRelease, 2017-10-23/24, 2018, p. 121-126.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL19_Conference_Proceedings.pdf [452],(accessed 2019-04-22).
(24) 特にテキストとデータが統合された状態のPDFは不適切なフォーマットで、データは適切なフォーマット(テキスト、音声、画像等)ごとに保存、公開される必要がある。
Schöpfel, Joachim et al. “keynote address: Dissertations and Data”. GL17 Conference Proceedings. Amsterdam, Netherlands, 2015-12-1/2, GreyNet. TextRelease, 2016, p. 15-38.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL17_Conference_Proceedings.pdf [459],(accessed 2019-04-21).
(25) Schöpfel, Joachim et al. Are electronic theses and dissertations(still) grey literature in the digital age? a FAIR debate. The Electronic Library. 2018, 36(2), p. 208-219.
(26) 池田貴儀. インターネット時代の灰色文献:灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に. 情報管理. 2015. 58(3), p.193-203.
https://doi.org/10.1241/johokanri.58.193 [429],(参照 2019-04-12).
(27) 岡村光章. インターネット普及下における灰色文献の再定義と今後の課題. 立正大学図書館司書課程年報. 2017.(3),p. 28-38.
岡村は、インターネット普及下における灰色文献の定義を比較・分析する中で「灰色文献とは、紙の出版物の流通経路からの発想であり、情報の生成・流通の過程において、デジタルコンテンツが紙の出版物を凌駕する状況が通常化した世界では、歴史用語あるいは死語と化すかもしれない」(p.35)と指摘し、灰色文献の問題の所在が変化してきていること、デジテルコンテンツへのアクセシビリティと保存が課題であることを述べている。
(28) 小原. 前掲.
(29) 池田貴儀. 特集, 灰色文献:問題提起:灰色文献定義の再考. 情報の科学と技術. 2012, 62(2), p. 50-54.
https://doi.org/10.18919/jkg.62.2_50 [460],(参照 2019-04-12).
(30) 池田貴儀. 灰色文献をめぐる動向:灰色文献国際会議の議論を中心に. 情報管理. 2010, 53(8), p. 428-440.
https://doi.org/10.1241/johokanri.53.428 [427],(参照 2019-04-12).
(31) ピサ宣言前文に「膨大な知識と情報は,幅広い主題領域と専門分野の組織,政府および産業界において生み出されるが,商業出版のような流通ルートには乗らない。これらの出版物,データおよび資料は灰色文献と呼ばれ」と明記されている。
“灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言”. 池田貴儀訳. GreyGuide. 2014-05-16.
http://greyguiderep.isti.cnr.it/Pisadeclapdf/Japanese-Pisa-Declaration.pdf [456],(参照2019-04-01).
(32) Drees B. et al. “Video is the new Grey”. GL19 Conference Proceedings. Rome, Italy, 2017-10-23/24. GreyNet. TextRelease, 2018, p. 127-131.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL19_Conference_Proceedings.pdf [452],(accessed 2019-04-22).
(33) Ibid.
会議報告は研究の現状を記録した、重要な情報源で、会議の講演を記録して公開することは一般的になりつつある。動画制作と公開で最も重要な側面は、迅速さ、費用対効果の高さ、手順の簡単さである。
(34) Ibid.
動画の公開には、独自の会議ウェブサイトやYouTubeが使用されることが多いが、メタデータやDOIなどの永続的な識別子はほとんど使用されていない。
(35) 報告を行ったドイツ国立科学技術図書館(TIB)は、GL17から自機関が提供する視聴覚資料や3Dオブジェクト、ソフトウェアコードを保存・公開するポータルサイト“TIB AV-Portal”を例に、メタデータの欠如や長期保存の問題、Linked Open Data(LOD)の活用について取り組んでいる。“TIB AVPortal”は、ビデオのデジタル保存を保証し、永続的な識別子を使用しており、GL20の発表も記録として保存、公開されている。なおGL19のパロマ(Paloma)による報告はベストポスターに選ばれている。
Plank, Margret et al. Move beyond text: How TIB manages the digital assets researchers generate. GL17 Conference Proceedings. Amsterdam, etherlands, 2015-12-1/2, GreyNet. TextRelease, 2016, p. 39-43.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL17_Conference_Proceedings.pdf [459],(accessed 2019-04-21).
Paloma, Marín Arraiza. Scientific Audiovisual Materials And Linked Open Data: The TIB Perspective. Seventeenth International Conference on Grey Literature. The Grey Journal. 2016, 12(1), p. 10-14.
(36) Savić, Dobrica. When is ‘grey’ too ‘grey’? A case of grey data. GL 20 Conference Proceedings. LA, USA, GreyNet. TextRelease, 2018-12-3/4, 2019, p. 19-24.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL20_Conference_Proceedings.pdf [454],(accessed 2019-04-21)
(37) “灰色文献”. 図書館用語辞典編集委員会編. 最新図書館用語大辞典. 柏書房,2004,p. 456-457.
(38) DI CESARE, Rosa. “The use of grey literature in the agricultural economics field : a quantitative analysis”. GL'95 Conference Proceedings. Washington D.C., USA, 1995-11-2/3, 1996, p. 157-168.
http://hdl.handle.net/10068/698018 [461],(accessed 2019-04-24).
(39) 池田貴儀. 特集, 灰色文献:問題提起:灰色文献定義の再考. 情報の科学と技術. 2012, 62(2), p.50-54.
https://doi.org/10.18919/jkg.62.2_50 [460],(参照 2019-04-12).
(40) 前掲.
(41) NATARAJAN M. Grey literature: problems and prospects for collection development in e-environment. The Grey Journal. 2006, 2(2), p. 100-105.
(42) Schöpfel, Joachim et al. “Altmetrics and Grey Literature: Perspectives and Challenges”. GL18 Conference proceedings. NY, USA, GreyNet. TextRelease, 2016-11-28/29, 2017, p. 131-149.
http://greyguide.isti.cnr.it/attachments/category/30/GL18_Conference_Proceedings.pdf [455],(accessed 2019-04-21).
(43) Giannini, Silvia et al. “The data librarian: myth, reality or utopia?”. GL20 Proceedings. LA, USA, GreyNet. TextRelease, 2018-12-3/4, 2019, p. 51-66.
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(44) Li, Yuan et al. “Research Data Management: What can librarians really help?”. GL20 Proceedings. LA, USA, GreyNet. TextRelease, 2018-12-3/4, 2019, p. 67-74.
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(45) Schmidt, Birgit et al. Librarians' Competencies Profile for Research Data Management. Joint Task Force on Librarians’ Competencies in Support of E-Research and Scholarly Communication. 2016-06.
https://www.coar-repositories.org/files/Competencies-forRDM_June-2016.pdf [462],(accessed 2019-04-01).
[受理:2019-05-15]
池田貴儀. 灰色文献のいま~2010年代の動向を中心に~. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1952, p. 15-19.
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DOI:
https://doi.org/10.11501/11299456 [464]
Ikeda Kiyoshi
Current Situation of Grey Literature in the 2010s:Focusing on the International Conference on Grey Literature and GreyNet
PDFファイル [467]
札幌市図書・情報館:淺野隆夫(あさのたかお)
札幌市図書・情報館(1)は、札幌の中心市街地に建てられた「札幌市民交流プラザ」の一角にあり、オペラも開かれる札幌文化芸術劇場(hitaru)、文化活動を支える札幌文化芸術交流センター(SCARTS)と併せ、2018年10月7日にオープンした。
札幌には既に蔵書83万冊の中央図書館があるが、市の中心部からは交通機関を使っても30分はかかる。ゆえに、気軽に立ち寄れるまちなかの図書館は待望の施設ではあったが、再開発ビルゆえの制限が多く、選択と工夫が連続する準備期間だった(2)。
特に延べ面積は、全体でも1,500㎡程度、通常の図書館では重要視される閉架などのバックヤードは用意する余裕がないところからの苦しいスタートだった。
この立地は、商業施設やオフィスが密集し、時計台にも近く、働く人々やビジネス・観光で札幌を訪れる人たちが特に多いエリアである。その地域性や、働いている人がさほどアクティブな図書館利用者ではない状況の中でのユーザー層の拡大方策も併せ考えていく中で、「都心に集う主に大人を対象に「札幌の魅力や街の情報」「ビジネスや様々な課題解決に役立つ情報」を提供」する課題解決型図書館というコンセプトが生まれた(3)。
さらに資料のテーマと規模をWork(仕事に役立つ)目標2.5万冊、Life(暮らしを助ける)目標1万冊、そして、劇場との連携の中でArt(芸術に触れる)目標5,000冊に絞り、文学や児童書、絵本のコーナーを置かないなど、サービスの内容を厳選する代わりに質を高めていくこととした。
準備期間に、多くのマスコミの取材を受けたが、番組パーソナリティの取り上げ方は章題と「おしゃべりOK図書館」、「図書館でコーヒーが飲めます」というものが多かった。
図書の館外貸出サービスは利用者にはなじみ深いものである。しかし、筆者のカウンター業務の経験から、人気の最新刊にはすでに予約がたまっていて、開架に戻るのは数か月後であり、待ちわびる多くの利用者に最新の情報を伝える状況にはなっていないと感じていた。貸出期間が2週間だとすると年間26人程度の貸出しとなる。当館ではアンテナが仕込まれた返却台を使用しており、返却された本に貼られたICタグで閲覧数を計測しているが、3か月で80回以上読まれた本も多数あり、どちらがより効果的な情報提供につながっているのかは一度検討の価値はあると考える。
ビジネスや健康情報を扱うため、常に最新の情報を多くの人たちに伝える必要があると判断し、館内閲覧のみとした。平日の開館時間を中央図書館より1時間延長し、夜21時までとしたほか、家具の快適性にも気を配り、上質な閲覧環境を心掛けた。さらに、座席の半分近くを予約席としたのは忙しいビジネスパーソンが座席を確保してから、安心して来館してもらうためのものであるが、利用時間を90分(空席時は再度申し込み可能)としたのは、長時間の占有を防ぎ、多くの利用者に使ってほしいためのものであった。
また、会話や飲み物の持ち込みを可能にしたのも、グループでの調べものや打ち合わせ、そしてレファレンスサービスを快適にするためである。よくマスコミに取り上げられる特徴はすべて、この図書館の利用を快適にし、目的を果たせるようにするためのもの、いわば結果論である。
ピアノジャズの名盤など心地よい音楽が流れる館内は、1階がサロン空間と北海道・札幌の魅力を伝えるエリア(約30席)、2階はWork、Life、Artのエリア(約170席)に分かれている。1階の隣にはカフェがあり、コーヒーを図書・情報館に持ち込むことはもちろん、こちらの本を持ち込むこともできる。
従前の図書館建築は、書架、カウンター、閲覧席の3つのゾーンに分けることが多かったが、2階では大胆に入口から奥までを貫く斜めの動線を取り入れた。このことによって、入口から奥までを見渡すことができ、さらに、札幌の中央図書館では奥側に配置されたレファレンスカウンター(当館ではリサーチカウンターと命名)を2階の真ん中の一番目立つところに配置することができた。
また、多くのコーナーを作るために三角形で各コーナーを構成し、視認性を高めるため、コーナーの天井もそれにあわせて下げた。遠くから見ても、そこが何かのコーナーであることがすぐにわかる。あわせて、天井からのぶら下がりサインや壁に掲示するサインは廃し、主役である本が目立つよう、シンプルな空間を作った。席は用途に合わせ、ワーキング席(1人用)、グループ席(2人から4人)、ミーティングルーム(5人から12人)を用意したほか、集中したい利用者のためにリーディングルーム(1人用、会話・パソコン不可)も用意した。これらはすべて座席予約システムで予約が可能である。残りの半分は自由に気軽な雰囲気で本を読んでもらえるよう、自由席として、色とりどりのデザイン性の高い椅子を配置したり、本棚と本棚の間にベンチをつくったり、奥の本棚が見えるように手前の棚をくりぬいたり、「ひとが本と一体となって楽しんでいる」シーンが外からも見え、あそこで本を読んでみたいと思ってもらえるような演出も考えた。
当館は課題解決型図書館を標ぼうしているが、実際の利用者の課題とは、もっとはっきりとしない、もやもやとしたものではないだろうか。
司書には、自分も含めて、友達や家族や自分とかかわってきた人たちがどのような悩みや課題を持っていたか、一度、回想してみてほしいとお願いをした。ひとの悩みに寄り添い、課題をまずは明確にすること、つまり「こういうことで悩んでいたんだ」と思えるような小テーマを定めて、それにより選書をしている。ひとたび、その課題を明確化できれば、あとは当館での専門家による相談窓口やセミナーによって解決に導いていく、というのが当館の考える課題解決である。
当館の入り口に大きなタペストリー風のサインで当館サービスのコンセプトをわかりやすく表現した「はたらくをらくにする」を掲示してもらった。人々にとって働くことは、本来楽しいことだが時には苦しいことがある、そんなときに一冊の本や一つの言葉を知ることで心が楽になることがある。こうした本や言葉に出会って、また楽な気持ちで働けるように、という想いを込めて選書を行っている。
また、ビジネスパーソン支援に本当に求められているものは何か、今一度、調べる必要があると考え、当館から半径1.5km以内の企業に、必要な図書・資料の情報を調査した。「ビジネス実務の分野で、特に充実させてほしい図書・資料は何か」の設問に対して、首位が予想されていた「各職業の専門書」が2位にとどまり、1位が「ビジネスマナー・仕事術」、3位が「人間関係・コミュニケーション」となった。大きな驚きとともに興味深く結果をとらえ、専門書や統計資料ばかりではビジネスパーソン支援としては、ニーズを把握しきれないことが心に染みてわかった。
さらに、この図書館の真価を支えている最大の要素は16人の司書である。もし、この司書の存在を抜きにして、亜流のものを作ったとしても、同じような成果は得られないことを確信している。書籍のバイヤーであれば初期の棚を作ることはできると思うが、長年の司書スキルがなければ除廃棄も含めて棚の世話ができないことに加え、札幌・北海道で長く利用者と接し、あるいは自分もここに生まれ、友人、家族と生活してきたことから得たセンスもまた必須である。
当館の特徴のひとつとして「日本十進分類法(NDC)による配架をしない」ことがあるが、これもひとに寄り添う選書、配架を推し進めた結果である。16人の司書が、それぞれひとつひとつの棚を担当し、作り上げている。例えれば、企画展示を考え、それを棚に入れてしまった、と言えばわかりやすいだろうか。
とはいえ、今までやったことのない挑戦である。進むにつれ、いくつかの課題を抱え、手が止まることもあった。その時、初対面のブックディレクターの幅允孝(はば・よしたか)氏に助言をお願いし、窮地を救ってもらったこともあった。
Workのエリアでは自分の業界の棚に行けば必要な情報がすべてそろうようにまとめられている。またLifeのエリアでは働く人たちの生活に必要な情報とは何かをイチから考え、それらを項目立てしてふさわしい本を並べている。このようなテーマを決めてから本を選び、手に取りやすいように並べる。これも従来の公共図書館ではやってこなかったチャレンジだと司書は話している。
そして、テーマも面白そう、読んでもらいたいと思ってもらえるよう言葉を和らげたり、問いかける表現にするなど工夫している。例えば、「文章上手になりたい!」「上司の苦悩」「出会いもあれば…(離婚の棚)」「誰か教えて!(恋愛の棚)」などである。
加えて、本棚の一部に磁石で着脱可能な赤い枠で囲んだコーナーを設け、ハコニワと呼んでいる。ここには旬のトピックや好奇心をかき立てるテーマを決めて期間限定で並べている。
これらの工夫によって、これまで関わりのなかった本や分野にも興味を持ってもらったり、知識の広がりを感じたりしてもらいたい、これが司書の一番の願いである。
開館前の予想利用者数は年間30万人であったが、開館日に1万人の入場があって以降、開館から約半年、途切れず日に3,000人程度の利用者を数えており、このままでいくと予想の3倍、年間100万人に届きそうな勢いを、このたった1,500㎡の図書館は持っている。
実際、利用者からは「ここができたおかげで本の世界に戻ってきました」という声をよく聞く。そして実際に夜間の時間帯はビジネスパーソンを中心に予約席が満席になるが、予想外に午後の時間帯も一般の利用者で満席になることも多い。
出版不況が叫ばれる現在ではあるが、司書のキュレーション力を効かせ、手に取りやすいように並べ、快適な空間を保つことで、まだまだ日本の出版物がこれほどのファンを集めることがわかった。
先日、市内の大手書店の店長さんが、当館で行った公開フォーラム(4)で「札幌市図書・情報館さんができると知って当社の最寄り店は『売上が減るんだろうか?』と身構えていましたが、結果は真逆。売上は伸び、新たなビジネスマン層も獲得できました」と発言されたのを聞き、職員一同本当にうれしく感じた。出版社も書店も図書館も、本にまつわる関係者である。ともに本の世界を広げていきたいと考えている。
多くの視察を受けているが、最近は、都市計画、エリアマネジメントの関係者からのものが多くなってきている。これだけしかない面積でも、「図書館が街の中で人の流れを作り、交流を生むことがわかった」との声が寄せられている。図書館の新設計画はいくつか聞くが、現在の財政状況の中、単独館での建て替えは難しく、民間施設も視野に入れての複合館が多くなると思う。しかし、それとて一段落していく中で、もっと人々の暮らしの中に図書館サービスを組み込んでいく中では、とても小規模なライブラリーでも併設してもらえるよう、新たなビル、施設を建設する地権者に対して図書館サービスのノウハウや人材を提供していきたいと考えている。これが筆者の考えるエンベデッド・ライブラリー(組込み型図書館)である。
また、次の図書館界のビジョンとしては「インプットに加え、アウトプットも」だと感じている。毎日、図書館資料を片手に多くのグループがここで話し、考え、アイディアをまとめている。そして、1階のサロンではビジネストークライブなど、その発表の機会を当館が設けることも始まっている。
極言すれば、なんでもスマートフォンからの一方的な情報発信で解決できるようになった(と思っている)時代に図書館の存在感、プレゼンスを上げていくために自身がすべきことは、人々の交流や(例えば六次産業化のセミナーの後、試食をするなど)五感から生まれる「ダウンロードできない価値」も提供するような場としての役割であると考えている。当館ではそれに向けた試みもスタートしているが、紙面が尽きた。この話はまた別の機会に改めてまとめたいと思う。
(1) “札幌市図書・情報館”. 札幌市民交流プラザ.
https://www.sapporo-community-plaza.jp/library.html [468], (参照 2019-04-18).
“札幌市図書・情報館”. 札幌市の図書館.
https://www.city.sapporo.jp/toshokan/infolibrary/index.html [469], (参照 2019-04-18).
(2) “札幌市図書・情報館開設にむけての取り組み”. 札幌市の図書館.
https://www.city.sapporo.jp/toshokan/infolibrary/torikumi.html [470], (参照 2019-04-18).
(3) 札幌市, (仮称)市民交流複合施設整備基本計画. 札幌市, 2013, 78p.
http://www.city.sapporo.jp/kikaku/downtown/project/documents/kihonkeikaku_honpen.pdf [471], (参照 2019-04-18).
(4) 札幌市図書・情報館. “進化する図書館 ~本の話をしよう”. 札幌市民交流プラザ.
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=444 [472], (参照 2019-04-18).
一般社団法人北海道デジタル出版推進協会. “セミナー「進化する図書館~本の話をしよう」が開催されました。”. 一般社団法人北海道デジタル出版推進協会. 2019-02-18.
http://www.hoppa.or.jp/archives/2117 [473], (参照 2019-04-18).
[受理:2019-05-15]
淺野隆夫. 「常識のカバーをはずそう」~札幌市図書・情報館が変えたこと、変えなかったこと~. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1953, p. 20-23.
http://current.ndl.go.jp/ca1953 [474]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299457 [475]
Asano Takao
"Let's Take Of the Cover of Common Sense"... What the Sapporo Municipal Library and Information Center Changed and Did Not Changed
PDFファイル [479]
杉戸町立図書館:小暮雅顕(こぐれまさあき)
杉戸町立図書館(埼玉県)(1)は、市町村立図書館としては、中小規模の部類に入る。
主な特徴は、生涯学習センターとの複合施設という点であり、多目的ホール、集会室、創作室等の諸室がある。館内は木を基調とした広々とした空間があり、周囲は田に囲まれ自然豊かな環境にある。2006年3月の開館から13年が経っているが、比較的きれいな施設である。
しかしながら、立地は、駅や市街地からも離れている。徒歩圏内に学校等の教育施設がなく、多くの人が徒歩や自転車で気軽に行ける場所ではないので、自家用車や町内巡回バス等が主な来館手段である。
また、県内同規模館と比較して、資料購入費、蔵書数、貸出冊数が少なく、来館者数、貸出冊数も減少傾向が続いている。
上記の現状を勘案する限り、手をこまねいているだけでは、衰退する一方であることから、筆者は何らかの仕掛けが必要であると常に危機感を持っていた。
そのような中、大阪市にあるテーマパークUNIVERSAL STUDIO JAPAN(USJ)が効果的なアイデア発想法等によりV字回復した経緯を記した2冊の本(2)に出会った。この本との出会いにより、図書館運営にも応用できるのではないかと考えた。
参考にしたのが「イノベーション・フレームワーク」という概念である。これは、(1)フレームワーク、(2)リアプライ、(3)ストック、(4)コミットメントの4種類に分かれる。
具体的には「①目的」、「②戦略」、「③戦術」の3段階の順番に考える必要がある(5)。
全国では図書館を核としたまちづくりをしている自治体も多く見受けられた。また、当館は、筆者が異動してきた時点では開館7年を経過したばかりであり、これから発展の可能性を大いに秘めた状態であった。ならば、当館を、住民が親しみやすく誇りに思える図書館にすること、そのために、個性を打ち出すべきではないかと考えた。
元愛荘町立愛知川図書館長(滋賀県)の渡部幹雄氏によると、「年間の貸出冊数の多さより、図書館から発する情報量や活動量が図書館の評価を高めた」(8)という。また、元浦安市立図書館長(千葉県)の竹内紀吉氏は「図書館の行事・集会は、その内容が地域社会にあっては図書館の<顔>としての意味を持つであろうから、参加者を何名得られたかなど量的問題以上に何が展開できたかに館としての関心はそそがれるべきであろう」(9)と述べている。
このことを基とし、当館のような地の利が悪く、予算も少ない中小規模図書館では、限られた経営資源で利用者ニーズを満たすには、「企画・イベント事業」に集中するべきと考えた。なぜなら、企画・イベント事業に関して図書館界では、未だ突出した事業が少ない。費用を掛けずともアイデアや行動次第で、図書館利用者のニーズを満たす事業が実施できるのではないかと推測したからである。
仕掛けをするにあたり、的を外さないようにするためには、まず、図書館関係の本を通読することや、多数の他の図書館を視察する等、図書館界の相場観を養うことを心掛けた。
しかし、教科書通りの図書館運営では目的が達成出来ないと予想されたので、相場観を押さえつつ、思考を変える必要があった。そこで、図書館を「教育施設」としてはもちろん、民間の「商業施設」を強く意識したものとする必要があると考えた。なぜなら、厳しい競争の中で世に出る民間のサービス・商品は、図書館の企画・イベントに相通じると考えたからである。
また、渡部幹雄氏は「子ども向けや老人向けなどの年齢を意識しておこなわれる図書館行事や諸活動は住民が図書館を認知する動機づけとしては極めて有効だと考えている。そうした行事や活動がメディアに取り上げられれば、さらに一層の効果が期待できるのである」(11)と述べている。
このことから、対象年齢を絞った複数の事業を展開しつつ、メディア活用については、2点に重きを置いた。1点目はメディアに取り上げられやすくするため、また、利用者の目にとまりやすいようにネーミングに力を入れる。2点目は、参加者が少なくとも、より広く効果的なPRができると考え、SNS等を活用する点である。
完全コピーするのではなく、必ずオリジナリティを付加することを心掛けた。
日頃から、『日経MJ』、『日経産業新聞』、『日本経済新聞』の日経紙を中心に、テレビでの「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」(14)、ネット上の「はてなブックマーク」(15)、「みんなの経済新聞」(16)、メールマガジンの「平成進化論」(17)、本はビジネス書を中心に目を通した。
また、アイデアは、仕事中や机上以外にもあると考え、電車や車での移動中や、朝のランニング中、喫茶店、旅先などで、思案及び周囲の観察をすることで情報がどんどん貯まっていく。それをスマートフォンにメモをとったり、写真を撮ったりするなど記録を心掛けることで、よりよいアイデアに昇華する材料をストックした。
これは仕事に対して個人がどう向き合ってきたかに掛かってくる。筆者は、本に助けられ、育ててもらったとも感じている。本や図書館、利用者に対しての恩返しの気持ち、自身の人生の目標に照らし合わせることで気力を維持してきた。
上記過程を経て、下記の企画イベントを全て予算0円で実施した。
町内の小学6年生を対象とし、図書館に宿泊し、新たな本や人と出会い、また図書館への理解を深め、読書をより身近に感じてもらう事業である。19時に集合とするが、事前に夕飯や入浴は済ませる。就寝場所は男女別で生涯学習センターの会議室や和室を利用し、寝具は各自持ち込みとしている。朝食は実費負担として400円徴収し、職員が事前にコンビニで予約した分を当日の朝に購入している。
企画の経緯としては、「はてなブックマーク」に掲載されていた、「丸善ジュンク堂に住んでみる」という企画(19)を参考にした。それは成人を対象としていたので、当館は児童を対象とし、図書館案内をするなど、差異を出した。
また、回を重ねるごとに次年度に繋げるための改善を行った。例えば、参加者はほとんどが初対面なので、緊張感をほぐすために開会式中にアイスブレイクとして「他己紹介」を行ったり、長時間の読書タイムは集中力が続きにくいので、夜の映画会を開催したりした。
参加者からは、新たな本と人との出会いが楽しかったという感想が多く寄せられた。これは、「同級生と図書館で泊まる」という、まるで林間学校のような高揚感を図書館で感じることができたのではないか。図書館を身近に感じることができる、ひと夏の思い出として貴重な体験となっていると考える。
年度 | 開始日 | 申込人数 | 参加人数 |
2016 | 7月24日(日) | 12 | 12 |
2017 | 7月23日(日) | 19 | 12 |
2018 | 7月22日(日) | 32 | 12 |
地域の事業者から協賛を募り、日帰り温泉施設の割引き(通常950円を500円に減額)、挽きたてのコーヒー、焼き菓子、日本酒(試飲程度)等の物資やサービスの提供を受け、読書週間に合わせて秋の夜長を図書館で泊まって過ごす事業である。
企画の経緯としては、(1)の実施後、「大人向けをやって欲しい」との声が多数寄せられたため実施した。物資やサービスの提供については、職員が各店を回り、店主と交渉の末、実現した。
(1)との差異は、近くにある日帰り温泉施設(20)と連携した点と、参加の様子を自身のブログにアップすることを条件とした「ブロガー枠」を設けて参加者による情報発信をし、周知を強化した点である(21)。
参加者からは、アンケートにて「一度泊まってみたかった」、「夢のような体験だ」など、ほぼ全員が満足している。しかし、課題として2点ある。1点目は、協賛業者との関係性に関する課題であるが、地域貢献の一貫として協力を得ている部分が大きい。そのため、継続的な協賛を得るためには、協賛業者のPRが効果的になるよう、情報発信力を強化しなければならないと考えている。2点目として、職員の勤務体系である。出勤を時差出勤としたり、途中で仮眠をとったりするなど工夫をしているが、長時間勤務の負担は大きいと考えている。
年度 | 開始日 | 申込人数 | 参加人数 |
2017 | 10月28日(日) | 15 | 11 |
2018 | 10月27日(日) | 29 | 15 |
町内中学校で年3回行われる期末試験の直近の土曜日に、閉館後の19時から21時45分まで館内を開放し、試験勉強のラストスパートをサポートする。また、入口付近には学生向けの特集展示を設け、休憩時間等で本との出会いも創出する。定員は設けていない。
企画の経緯としては、上記(1)が小学生向けだったこともあり、中高生向けの企画を模索していた。夜の図書館(CA1884 [480]参照)の有用性が認識されたので、「夜」及び学生の本分は「勉強」であることから、受験勉強の場の提供を思いついた。ネーミングは県内東松山市にある国営武蔵丘陵森林公園のイベントの「紅葉見NIGHT」を参考にした。
初回の2016年は、受験を控える中高3年生を対象として実施した。新聞にも3紙に掲載され反響は良かったが、参加人数は芳しくなかった。受験生だと対象学年が限られるため、広げる必要があると考えたところ、次回の2017年は受験ではなく期末試験を対象とし、実施した。その結果、約3倍の参加があった。ニーズがあることが分かったので、2018年は町内の中学校で行われる期末試験の全ての回の直近の土曜日を対象として実施した。参加人数が非常に多い回もあったが、期末試験は3年生が他の学年とずれて実施する場合もあることから少ない回もあった。
図書館を利用したことのない生徒にとって、図書館の有用性についても改めて感じることが出来る企画・イベントであると考えられる。ただし、グループの生徒は私語が多く、周囲の生徒の迷惑になるケースが散見され、見回りを強化する必要がある。
年度 | 開始日 | 参加人数 |
2016 | 12月17日(土) | 17 |
2017 | 11月26日(日) | 54 |
2018 | 6月16日(土) | 72 |
11月24日(土) | 26 | |
2月23日(土) | 23 |
夏休みに入った直後の週の平日を、学校に行くために起きる時間帯である7時に開館とする。開館10分前にはラジオ体操を行って眠気を覚ます。7時からは人気が少ない爽やかな早朝の図書館で、ワークやドリルなどの宿題を早めに済ませてしまうことで、残りの夏休みを有意義に過ごしてもらう。
企画の経緯としては、夜の企画が続いたので、対極軸の朝の企画を検討していたところ、ロート製薬で朝活を実施している記事(22)を目にした。当館の利用者ニーズを考えたところ、ビジネスマンではなく、小学生以上の夏休みの宿題をする「場の提供」が最適と判断した。また、当初は、「夏休み中の乱れがちな生活リズムを整えるために早起きをして新学期を迎える」という趣旨で8月の最終週に実施した。しかし、参加人数が芳しくなかったため、翌年度は、上記の「宿題を早く済ませる」という趣旨で夏休み開始直後の週を対象としたところ、約3 倍の参加があった。
何かと誘惑の多い自宅より図書館の方が集中力を維持しやすい。7時開館は児童・生徒・学生の通学期間の起床のリズムであり、また、ラジオ体操もあるので保護者の理解も得られやすかった。なお、(1)、(3)、(4)については、2018年より、町内の小中学校の校長会にて事業説明することで実施の理解を得た。その結果、学校と保護者間のメール配信システムにて、町立小中学校のほぼ全世帯に周知することが可能となった。
年度 | 開始日 | 参加人数 |
2017 | 8月29日(水)~8月31日(金) | 43 |
2018 | 7月24日(火)~7月27日(金) | 144 |
これらの企画・イベントは、募集から当日までの様子を町からのプレスリリース、一般住民向けメール配信システム「すぎめー」、Twitter、当館ウェブサイトを駆使し、発信した。特に注力したのが写真撮影である。臨場感を伝えるため、常にウェブサイトに掲載することを念頭に、写真に付けるコメントを意識しながら撮影をした。
知らせていないのは行っていないのと同じであり、熱量を持った情報発信は誰かの目に留まりやすく、新たな出会いのきっかけにもなると考えたからである。
そのため、実施した企画・イベントは、閲覧期間は設けず、年度ごとの括りでウェブサイトに継続して掲載している(23)。その甲斐もあり、2016年度から2018年度の間で新聞・テレビ等に23回取り上げられ効果的な事業であったと自負している。
企画・イベントの初回は参加者の見込みに確証が持てないので不安である。結果、少ない場合もあったが、行って初めて見えてくるものも多々あり、次回に繋げることで、より良いものになっていく。まずは実施することが重要である。
USJも図書館も、テーマパークか社会教育施設かの違いがあるが、お客様・利用者のニーズを満たすことを目指す点では共通している。上記で紹介した著書にあった、その目的を達成するための著者の言動の熱量には非常に感銘を受けた次第である。
企画・イベントはあくまでも利用者サービスの一つであり、図書館運営は貸出・返却・レファレンス等の堅実な運営の上に成り立っていることを忘れてはならないだろう。また、どんな良い企画・イベントであっても、関係者の協力や職員スタッフが一丸となって取り組む姿勢があってこそ、継続的な実施が可能となる。
事業展開をして3年が経過したが、来館者数・貸出冊数には大きな変化は未だ見られない。しかし、旧来の図書館のイメージにとらわれず自由な発想で実施してきたことから、他館からの視察や問い合わせも増え、多くの場で評価の声を得ることができた。このことを起点として、更に利用者に望まれる図書館となるように引き続き行動していきたい。
(1) “カルスタすぎと(生涯学習センター・町立図書館)”. 杉戸町.
http://www.town.sugito.lg.jp/cms/index887.html [481], (参照 2019-04-09).
(2) 森岡毅. USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?:V字回復をもたらしたヒットの法則. KADOKAWA, 2014, 253p.
森岡毅. USJを劇的に変えた、たった1つの考え方:成功を引き寄せるマーケティング入門. KADOKAWA, 2016, 261p.
(3) 森岡毅. USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?:V字回復をもたらしたヒットの法則. KADOKAWA, 2014, p. 152.
(4) 前掲. p. 153.
(5) 前掲. p. 154.
(6) 森岡毅. USJを劇的に変えた、たった1つの考え方:成功を引き寄せるマーケティング入門. KADOKAWA, 2014, p. 182.
(7) 前掲. p. 97.
(8) 渡部幹雄. “図書館とまちづくり-愛知川図書館の事例を中心に”. 図書館の活動と経営. 大串夏身編著. 青弓社, 2008, p. 36-63., (図書館の最前線, 5).
(9) 竹内紀吉. “L 図書館行事・集会活動 1 歴史と意義 a 意義”. 図書館ハンドブック. 第5版, 日本図書館協会, 1990, p. 127.
(10) 森岡毅. USJを劇的に変えた、たった1つの考え方:成功を引き寄せるマーケティング入門, KADOKAWA, 2016, p. 110.
(11) 渡部. 前掲. p. 61.
(12) 森岡毅. USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?:V字回復をもたらしたヒットの法則. KADOKAWA, 2014, p. 126.
(13) 前掲. p. 174.
(14) “プロフェッショナル 仕事の流儀”. NHK.
https://www4.nhk.or.jp/professional/ [482], (参照 2019-05-07).
(15) はてなブックマーク. はてな.
http://b.hatena.ne.jp/ [483], (参照 2019-04-08).
(16) みんなの経済新聞.
https://minkei.net/ [484], (参照 2019-05-07).
(17) 平成進化論.
http://www.2nd-stage.jp/ [485], (参照 2019-05-07).
(18) 森岡毅. USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走った28のか?:V字回復をもたらしたヒットの法則. KADOKAWA, 2014, p. 178.
(19) 宮澤諒. 読書の秋は本屋に住む 倍率1000倍ジュンク堂宿泊ツアーに潜入. ITmedia eBook USER. 2014-11-04.
https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1411/04/news047.html [486], (参照 2019-04-24).
(20) 杉戸天然温泉 雅楽の湯.
http://www.utanoyu.com/ [487], (参照 2019-04-24).
(21) “埼玉県杉戸町立図書館で、一晩中本が読める「温泉&宿泊図書館」に参加してきました。”. ソファに寝ながら. 2017-11-10.
http://sofane.net/archives/6286 [488], (参照 2019-05-07).
(22) ロート「朝活」全社に、朝食提供、7割が「業務効率良く」。. 日経産業新聞. 2016-09-16. p. 19.
(23) 杉戸町立図書館. “企画・イベント事業”. 杉戸町.
http://www.town.sugito.lg.jp/cms/index3100.html [489], (参照 2019-04-24).
[受理:2019-05-20]
小暮雅顕. 企業のアイディア発想法を参考にした企画・イベント展開~杉戸町立図書館の取り組み~. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1954, p. 24-28.
http://current.ndl.go.jp/ca1954 [490]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299458 [491]
Kogure Masaaki
The Development of Original Planned Events Based in Part on Corporate Idea-Generating Methods-The Organizational Eforts of Sugito Municipal Library
PDFファイル [494]
元神戸市行財政局文書館/現NPO神戸の絆2005:杉本和夫(すぎもとかずお)
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の関連文書(以下「震災文書」)の整理保存等の作業は、神戸市からの委託契約により、2010年度から8年間にわたり、神戸市の外郭団体でシンクタンクである公益財団法人神戸都市問題研究所(以下「研究所」)の手により行われた。2018年3月、研究所は当該業務を完了した(1)。同年3月研究所の解散に伴い、当該業務は同年4月、神戸市文書館(以下「文書館」)(2)が引き継いだ。なお筆者は2010年3月末、神戸市役所を定年退職し、同年4月から研究所の嘱託職員として、震災文書の整理保存等の業務開始時期からその完了時期までを責任者として関わった。
文書の整理保存は、情報発信の円滑化を目的として行うのであって、整理それ自体が最終目的ではないと考える。情報発信が不十分であれば文書が死蔵されることになる。
この点に留意して、以下の基本方針に基づき震災文書の整理保存を行った。
神戸市長は、2010年1月、阪神・淡路大震災の経験と教訓を現在及び後世の世代に情報発信するため、震災文書を永年保存することとし、その整理保存を2010年4月から本格的に行うことを表明した(3)。
この市長表明を受け、震災文書担当課は、2010年2月、震災文書の誤廃棄、拡散等を防ぐため各部局が管理する震災文書を市の施設1か所に移送するよう依頼を行い、当該地で震災文書の整理保存等の業務を行うこととした。
2010年4月、ダンボール箱で6,400箱(4万1,000ファイル)の震災文書が保管場所に搬入された。一部を例示すれば、義援金申請書(ダンボール箱1,100箱)、仮設住宅契約書等(同280箱)、仮設住宅統廃合等に関する資料(同240箱)、道路・港湾施設・下水道等の復旧工事図面(同170箱)、避難所等運営資料(同110箱)等である。
研究所は神戸大学大学院人文学研究科奥村弘研究室(以下「研究室」)の専門的助言と協力を得て、また研究所が考案した整理保存方法も交えながら作業を実施した。
特定の一機関が整理保存を担当することで震災文書の統一的な処理が確保できた。このことは利活用しやすい震災文書の整理保存等を実現するための必要な条件の1つと考える。
研究室の重要な助言の1つは、一次文書の重視である。市役所入庁以来、行政事務を担当してきた筆者にとっては、「ファックス文書等劣化が激しく判読できない文書」、「決裁の形跡がない文書」等は行政の意思決定の存否が不明確であるため、保存価値がない文書と考えていた。研究室の助言は、原資料(一次文書)は震災の状況を客観的かつ強く伝える「生き証人」、という指摘であった。震災文書を改めて見ると、後述する「小野柄小学校
避難所新聞」のように、一次文書には強い発信力を持つものが多いと確信した。この研究室の助言が以降の研究所の保存整理の主要な柱となった。一次文書の典型はファックス文書で、当時ファックスは重要で確実な通信手段であった。ファックスで使われた感熱紙は、ほぼ真っ白な状態に劣化、判読困難となっていた。ファックス文書は当時の緊迫した状況を的確に伝える宝庫であるとの認識のもと、研究所は感熱紙の復元手法を多数回に及ぶ試行錯誤を重ねて完成し、約1万5,000件の感熱紙を復元した。
研究所の複写機には「シャープネス」「濃淡」等の他、「カラーバランス」「彩度」の調整機能がある。白黒複写で感熱紙を復元するため初めは後者2項目の調整機能は使用しなかったが、偶然これらの機能も使って復元した時、文字が判読可能となった。
復元事例を挙げると、2011年の東日本大震災により甚大な津波被害を受けた田老地区(岩手県宮古市)からの支援を伝える「神戸市(大倉山住宅)・田老町交流事業日程」と題する感熱紙があった(図)。これを機に、神戸で支援を行った東北の地区を探した。そして、多くの地区からの支援を記録した文書を探し出した。
これらの文書は2019年1月に開催した第8回阪神・淡路大震災関連文書企画展(以下「企画展」)(4)のテーマ設定に結びついた。企画展では「神戸がいただいた支援、そして交流」というテーマのもと、神戸と田老地区の交流、神戸と大槌町(岩手県)の交流などを展示した。来場者から「日頃から他地域と交流を行い、このことが顔の見える支援に繋がれば良いですね」といった感想が多く寄せられた。
一次文書のうち、ネガフィルム、ビデオテープ、カセットテープ、フロッピーディスク等の記録媒体は時の経過により劣化する。研究室の助言により、当初の整理保存作業はこれら記録媒体の復旧保存に力点を置いた。ネガフィルムを例にとると、ネガフィルム1本ごとにスキャナーでデジタル化しDVDに保管、そしてDVDごとに写真のサムネイル画像(写真の一覧表示)を紙に打ち出してファイルに格納、検索の容易化を図った。変色したカラーフィルムがあれば、カラー復元調整を行った。
復元した記録媒体の貴重な写真等は、企画展や講演会等で大いに活用することができた。
震災文書の保管施設(保管面積1,000㎡)の建替えが予定され、移転先の建物での保管面積は半減、結果震災文書2,500箱以上は廃棄せざるを得なくなった。廃棄の対象としたのが、義援金申請書(ダンボール箱1,100箱・80万件)、仮設住宅契約書等(同280箱・3万件)等、同一種類の文書が大量に存在する文書である。
義援金申請書のうち第1次義援金申請書(同250箱、24万件)を例にとれば、これには申請者の現住所、氏名を記載するだけであるが、全件チェックするなかで、申請書の住所欄には、家屋の滅失・焼失を反映して、「〇区 〇小学校1年1組教室」等、平常時ではあり得ない記載が多く見られた。このような文書はピックアップして保存した。震災の経験や記憶がうかがわれる文書のピックアップ基準は震災事業ごとに設定した。仮設住宅はこれも同様に全件チェックして、神戸市郊外に建設した仮設住宅の契約書・位置図をピックアップして保存した。
受入文書はファイルの背表紙にタイトルの記載が全くないか、単に「打ち合わせ記録」等の抽象的記載だけのファイルも多く存在した。文書検索ができなければ震災文書が死蔵されることになるため、全てのファイルを読み込み、検索が容易になるようキーワードを可能な限り多く入力した。例示すれば、「平成7年2月 第1次義援金申請受付 受付時のチェックポイントQ&A」などと入力した。
さらに閲覧等の需要が多いと予想される文書内容につき、議事録は1、避難所等運営マニュアル・Q&Aは2、国・地方公共団体・公共機関と交わされた文書は3、これ以外の文書は4、を文書内容欄に入力した。文書内容欄に2を入力して検索すれば、全てのマニュアル文書がリストアップされるなど、震災文書が利用しやすくなるような工夫を行った。
ダンボールを開くと「小野柄小学校 避難所新聞」と題する文書を見つけた。当該小学校の子どもは高校生の編集者のもとで、避難所に今何が必要なのかを考えて記事を書き、印刷をし、翌朝に配布した。新聞には子どもが避難所のトイレ掃除をし、大変だったこと、マナーの悪い大人を注意したこと等の記事もあった。震災の状況を的確に伝え、共感を以て受け入れられるような情報発信力を持つ文書は常に発信できるよう備えた。
「小野柄小学校 避難所新聞」など、情報発信力を持つ震災文書は、適宜全国紙、テレビ等に提供し、幾度も取り上げられた。
基本方針4に基づき、ダンボール箱2,700箱(1万5,000ファイル)の震災文書を廃棄した。
整理保存した震災文書は、ダンボール箱3,700箱(2万6,000ファイル)であり、内容は多岐に及ぶが、例示すると以下のとおりである(6)。
震災文書は市内の小学校の空き教室で保管している。震災文書の閲覧等については、文書がプライバシー情報等を含むことがあるため、神戸市情報公開条例に基づく開示請求をお願いしている。
これまで、震災文書の情報発信を企画展や市内の小中学校での講演会等で行ってきたが、2019年1月に企画展または講演会で次の3方式による新たな情報発信を行った。
文書館では、毎年阪神・淡路大震災の発生日である1月17日に合わせて、展示のテーマを設定し、約3週間の企画展を開催している。2019年1月で8回目の開催となった。
2019年の企画展では、全部の展示パネル(26枚)を縮小した資料を作成し(A4判・8ページ)、来場者に配布した。「家に帰ってからも、ゆっくりと読めますね」といった声が多く寄せられた。
震災事象を正確に伝え理解が進む情報発信の方法は、1つには映像による発信と考える。
筆者は、他の地方公共団体の職員等が阪神・淡路大震災で神戸を支援したことを示す文書を基に、それらの人へのビデオインタビューを行い、この映像を企画展の会場で放映した。
筆者に小学校の震災記念行事での講演会の講師の依頼があった。講演会は全校児童約1,000人が対象、講演時間は20分であった。
2018年1月、市広報課が倉庫の整理を行った時、神戸の被災に対して我が身のように気遣いをする手紙5,000点が入ったダンボール箱を発見した。講演会では、発見された手紙の中から、国内外の子どもから神戸の子どもに宛てた励ましの手紙をピックアップし、同年代の子どもに読み上げてもらった。この目的は、手紙を読み上げることで子どもに講演会により深く関わってもらうことであった。また同年代の子どもが読み上げれば、子どもは一層しっかりと聞くだろうと考えたからでもあった。
後日子どもの感想文を見ると「こどもでもできることがあるということがわかりました。ぼくもがんばります(小学校2年生 男)」といった感想が多かった。筆者の手紙への思いが子どもに伝わったと感じた瞬間であった。
最後に、情報発信の活性化の前提条件として、以下2点を挙げておきたい。
一般職の公務員の氏名・顔写真、さらに市長、県知事のそれまでも非公開としている地方公共団体のアーカイブがあるが、公務員の職務上の情報は、情報公開条例等が公開を禁じる情報ではない。このことを是正するだけでも情報発信の活性化に繋がると考える。
上記の激励の手紙のような震災での温かい出来事について、多くの情報ニーズがあるように思える。震災について、いかなる情報ニーズがあるのかを常に念頭に置き、これを分かりやすく情報発信することは必要である。このことも認識して情報発信することで、その活性化に大いに繋がっていくものと考える。
(1) “阪神・淡路大震災関連文書整理作業の終了”. 神戸市.
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/03/20180330040102.html [495], (参照 2019-05-15).
(2) 神戸市文書館.
http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/document/ [496], (参照 2019-05-15).
(3) 「震災資料を永年保存」 神戸市長表明 長さ4.2キロ分. 読売新聞. 2010-01-09, 朝刊, p. 1.
(4) “阪神・淡路大震災 関連文書企画展 神戸がいただいた支援、そして交流 阪神・淡路大震災の経験と記憶”. 神戸市.
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/12/20181225110101.html [497], (参照 2019-05-15).
(5) “阪神・淡路大震災関連文書の文書目録のご案内”. 神戸市.
http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/finances/shinsai20/kanrenbunsyomokuroku.html [498], (参照 2019-05-15).
(6) “阪神・淡路大震災関連文書整理作業の終了”. 神戸市.
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2018/03/20180330040102.html [495], (参照 2019-05-15).
[受理:2019-05-15]
杉本和夫. 阪神・淡路大震災関連文書に関する神戸市の取り組み:情報発信の活性化に向けて. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1955, p. 29-31.
http://current.ndl.go.jp/ca1955 [499]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299459 [500]
Sugimoto Kazuo
Kobe City's Struggle with Documents Related to the Great Hanshin-Awaji Earthquake: Revitalizing Information Dissemination.
PDFファイル [505]
国際子ども図書館児童サービス課:小熊有希(おぐまあき)
国立国会図書館国際子ども図書館(以下「当館」)には、中高生の調べものに役立つ資料を開架した「調べものの部屋」(1)がある。そこでは、一般的な閲覧サービスだけでなく、図書館の利用方法や図書館資料を用いた調べ方を体験して学ぶことができる「調べもの体験プログラム」(2) (3)を中高生向けに提供している。2016年2月に調べものの部屋を開室し、同年4月に調べもの体験プログラムの提供を開始してから、3年余りが経過した。本稿では、これらについて経緯などにも触れながら紹介する。
当館では2000年の開館以来、子どもへの直接サービスを行ってきたが、親子連れで来館する未就学児や小学生向けが中心だった。中高生については、修学旅行や校外学習での見学を多数受け入れてきたものの、所蔵資料を活用して、中高生を読書や図書館利用に導く手立てを講ずるまでには至っていなかった。
中高生向けのサービスについては、この年代の読書離れが問題になっている昨今(E1682 [506] 参照)、一層の充実が課題となっている。当館でも、国立の児童図書館として、全国の図書館関係者や学校関係者の参考になるモデルを示す必要がある。そこで、2015年度に当館の増築棟が竣工することに伴うリニューアル事業の一つとして、中高生向けの資料室である調べものの部屋の開室に取り組むこととした。
開室準備(4)に当たって参考にしたのは、国内の学校図書館である。中高生に特化した資料室作りのノウハウを得るため、学校図書館の視察や有識者へのヒアリングを重ねた。2012年から2013年にかけては「中高生向け調べものの部屋の準備調査プロジェクト」(5)として、充実した活動を行っている学校図書館の蔵書データの統計的な分析等を行い、その結果を蔵書構築の考え方に反映させた。
調べものの部屋は図書約1万冊と新聞5タイトル、雑誌6タイトルを開架し、閲覧席15席、蔵書検索用端末2台等を用意している。
調べものの部屋のコンセプトは、本を通して中高生に知の世界の奥深さの一端を感じてもらうことである。調べるための資料に特化しつつ、体系的な調べものには不向きでも、中高生の知的好奇心を喚起し、探究するきっかけになるようなノンフィクションやルポルタージュも備えたバラエティ豊かな書架になっている。読解力や前提知識、関心分野が様々な中高生に対応するため、この年代向けに書かれた資料のほか、小学校高学年向けから一般書、大学教養レベルまで織り交ぜて、あえて資料の難易度に幅を持たせている。開室に際しての集中的な蔵書構築作業が落ち着いたことから、2018年度には改めて選書方針を定め、より魅力的な資料室にすべく、日々選書を行っている。
調べものの部屋は、後述する調べもの体験プログラムでも活用(6)されている。
当館が位置する上野公園(東京都台東区)には、博物館等の文化施設が集中しており、修学旅行や校外学習で多くの中高生が訪れる。調べもの体験プログラムは、そのような中高生を主な対象とし、1時間から2時間程度で気軽に調べものを楽しんでもらうことを前提に検討した(7)。学校での活動の一環としての参加を想定しているため、原則的に学校からの事前申し込み制である。サービスを開始した2016年4月から2019年3月までの3年間で延べ85校、約1,200人の参加があった。中学校と高校の比率はおよそ2対1で中学校が多く、数は少ないが中高一貫校で中学生と高校生が一緒に参加する例も見られた。参加校の所在地は、都内と関東圏内が大部分を占めるが、東北、中国、九州といった遠方の学校からも主に修学旅行で利用されている。
職業学習や図書委員活動での参加もあり、人数も5人又は6人のグループからクラス単位までと幅がある。多様なニーズに対応するため、6つのコース(8)を用意している。
6つのコースは調べものに重点を置いた4コースと創作性の強い2コースに大きく分けられる。前者には「調べもの対戦コース」「調べものクイズコース」「館内探索スタンプラリーコース」「クイズ出題対決コース」があり、いずれもクイズ形式の問題を調べて解くことをベースとしつつ、参加可能な人数や形式等が少しずつ異なっている。後者には「ストーリー創作コース」と「POP広告作成コース」の2つがある。本から情報を読み取るという点では調べものと共通する要素も含まれるが、ストーリーやPOP広告を作るといった、よりクリエイティブな課題に取り組む。それぞれのコースの3年間の実施件数は次のとおりである。
コース名 | 件数 |
調べもの対戦コース | 14件 |
調べものクイズコース | 24件 |
館内探索スタンプラリーコース | 19件 |
クイズ出題対決コース | 9件 |
ストーリー創作コース | 10件 |
POP広告作成コース | 9件 |
調べもの体験プログラムの流れを調べもの対戦コースを例に紹介する。調べもの体験プログラムは、見学と合わせて90分ほどで実施することが多い。表2は、タイムスケジュールの一例である。
内容 | 時間 |
当館の概要説明・見学 | 40分 |
ルールと「調べ方のコツ」の説明 | 10分 |
【第1問】出題→回答→解説 (出題・回答8分+解説4分) 【第2問】出題→回答→解説(同上) 【第3問】出題→回答→解説(同上) |
36分 |
アンケート | 4分 |
問題に取り組んでもらう前には、ルールとともに、OPACの使い方、NDCの仕組み(10)、OPACでの検索キーワードの考え方、目次・索引の使い方という図書館で調べる際の4つのポイントを「調べ方のコツ」としてパワーポイントのスライドで説明を行う。調べもの対戦コースでは、数人のチームに分かれて1問ごとに調べる速さを競う。1問ずつ出題し、1チームでも正解が出るか、制限時間が過ぎたら回答時間が終了となる。その後、当館職員が検索キーワードの例や参考となる本など具体的な調べ方の解説をする。このコースでは各チーム不正解が続いた末に制限時間終了間近に正解が出るなど、白熱した勝負になることもある。ゲーム要素が強く、チーム内での連携が必要となるため、にぎやかに楽しみたい場合におすすめしている。
調べものに重点を置いた4コースは、本を使った調べものを体験してもらうことを主眼に置いているが、あえて本だけでなくインターネットの検索エンジンも利用できることにしている。中高生の多くは日常的にスマートフォンやPCを用いて「ググる」調べものに慣れており、調べもの体験プログラムの場でも慣れた手段に手が伸びがちである。インターネットで気軽に情報を検索できる環境に身を置きながら、本の有用性や面白さを実感できる体験を目指している。
出題する問題にはインターネット検索では調べにくい要素を織り込み、少しだけ「いじわる」している。例えば、ある問題は、インターネットで検索しても結果にノイズが多くなかなか必要な情報にたどり着けないが、前述の「調べ方のコツ」を踏まえて調べものの部屋の本を使えば正解できるようになっている。
回答時間終了後の答え合わせの際には、本を用いた場合だけでなくインターネットを用いた場合の調べ方についても解説する。あえて「いじわる」をした点についても、検索エンジンの機能や検索演算子を使うなどの工夫によって解決できる場合には、その手法も紹介する。本とインターネットという2つの調べものの手段の間で試行錯誤しながら情報を探索する体験が、参加者の調べものの幅を広げるきっかけになればと考えている。
課題もある。参加者はSNSやブログの記事など出典が不確かな情報源を参照していても、結果的にクイズに正解すれば満足してしまうことがある。単に情報を探す調べものから一歩踏み込み、「信頼できる情報源を選ぶ」「情報の正確性を確認する」といったプロセスも含めて調べることの面白さを体験してもらうためには、さらなる工夫が必要だと感じている。
新たな中高生向けサービスを開始してから3年が経過し、運営は軌道に乗ってきた。2018年度には、国立国会図書館が図書館関係者向けに提供する講師派遣型研修(11)のメニューに「国際子ども図書館の中高生向けサービス」を追加した他、司書に調べもの体験プログラムを体験してもらう試みを始めるなど、図書館関係者や学校関係者に向けて当館の取組について説明する機会も徐々に増えつつある。学校司書からは、「短時間で実施できる調べもの体験プログラムは学校図書館でのオリエンテーションの参考になる」といった感想も寄せられている。現在のサービスのブラッシュアップを続けながら、そこで得たノウハウの発信にも今後は力を入れていきたい。
(1) “調べものの部屋”. 国立国会図書館国際子ども図書館.
http://www.kodomo.go.jp/use/room/teens/index.html [507], (参照 2019-03-22).
(2) “見学・体験(中高生向け)”. 国立国会図書館国際子ども図書館.
http://www.kodomo.go.jp/use/tour/youth.html [508], (参照 2019-03-22).
(3) 永野祐子. 特集, これからのYAサービスに向けて: 国際子ども図書館の中高生向けサービス : 調べものの部屋と調べもの体験プログラム. 図書館雑誌. 2018, 112(5), p. 310-311.
(4) 開室までの経緯の詳細については以下もご参照いただきたい。 堤真紀. 調べものの部屋の開室. 国際子ども図書館の窓. 2016, (16), p. 33-39.
https://doi.org/10.11501/10198325 [509], (参照 2019-03-22).
(5) 国立国会図書館国際子ども図書館. 学校図書館におけるコレクション形成 : 国際子ども図書館の中高生向け「調べものの部屋」開設に向けて. 2014, 104p., (国際子ども図書館調査研究シリーズ, no.3).
https://doi.org/10.11501/8484023 [510], (参照 2019-03-22).
(6) 図2のとおり、調べもの体験プログラムは、閲覧スペースに隣接する専用のスペースで実施している。参加者は調べもの体験プログラムスペースと書架を行き来して、課題に取り組む。
(7) 検討段階からの経緯については以下もご参照いただきたい。ただし、同文献の公表時以降にコースの改廃を行ったため、現状とは異なる部分も含まれている。
舟串宙. スマホ世代は非デジタルな情報探索を楽しめるのか : 調べもの体験プログラムが試みたこと. 国際子ども図書館の窓. 2016, (16), p. 40-45.
https://doi.org/10.11501/10198325 [509], (参照 2019-03-22).
(8) 目的によってどのコースがおすすめかを整理した表を国際子ども図書館ウェブサイトに公開している。
“調べもの体験プログラム 各コースかんたん比較表”. 国立国会図書館国際子ども図書館.
http://www.kodomo.go.jp/use/tour/pdf/comparison_program.pdf [511], (参照 2019-03-22).
(9) 年度ごとに多少のコース名・内容の変更があるが、ほぼ同内容のコースをまとめて集計した。
(10) 中高生が日常的に利用する図書館と同じ使い勝手で調べものの部屋を利用できるようにするため、蔵書の分類には、学校図書館や公共図書館で一般的なNDCを採用している。
(11) “図書館員の研修”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/training/index.html [512], (参照2019-03-22).
[受理:2019-05-14]
小熊有希. 国際子ども図書館の中高生向けサービス:調べものの部屋と調べもの体験プログラム. カレントアウェアネス. 2019, (340), CA1956, p. 32-34.
http://current.ndl.go.jp/ca1956 [513]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11299460 [514]
Oguma Aki
Services of the International Library of Children’s Literature for Junior High and High School Students- Teen’s Research Room and Research Practice Programs
PDFファイル [518]
白百合女子大学基礎教育センター:今井福司(いまいふくじ)
図書館総合展は年1回10月または11月に開催される、日本の図書館業界では最も大規模な入場無料のトレードショーである(1)。公共図書館・自治体、大学・研究組織、企業・専門機関といった各種図書館関係者だけでなく、学生や一般の来場者も訪れるこのイベントは1999年に始まり、2018年で20周年(第20回)を迎えた。本稿では、図書館総合展の20年について、各種の記録(2)を踏まえながら論じていく(3)。
雄松堂書店(現丸善雄松堂株式会社)の代表取締役の新田満夫氏(故人)は、古書・稀覯本を取り扱う業務の傍ら、世界各地のブックフェアを視察するなどしていた(4)。その一環として米国図書館協会(ALA)の年次大会(E2054 [519]ほか参照)、国際図書館連盟(IFLA)年次大会(E2078 [520]ほか参照)などを訪れていた。そこに、様々な図書館関連企業や関連団体が出展している様子を見て、日本でもこのような催しができないかと構想したという(5)。
雄松堂書店のグループ企業で、新田氏が社長を兼ねていた株式会社カルチャー・ジャパンの企画・運営により、1999年10月13日から15日まで「Library Fair'99 第1 回図書館総合展」が東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれた。図書館総合展のはじまりである。
第1回は「21世紀の図書館:ネットワークと図書館」をテーマに掲げ、書籍、出版、印刷、製本、映像、データベース、情報、流通、設備、建築、設計、コンピューターなどの業種から62社が出展した(6)。会場では5つのテーマゾーンによる展示が行われるとともに、14のセミナーと講演会が開かれた(のちに、これらをフォーラムと呼ぶようになる)。「国際古書展」も併催された(7)。会期中の総入場者数は1万4,535人で、当時の日本図書館協会(JLA)の関係者によれば、この種の展示会の来場者動員数としては大成功の人数だったようだ(8)。
その後、来場者数は毎年増加を続け、第5回には2万人を超えた。第6回からは、会場使用時期の都合から横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜へと移転している。現在では来場者数3万人を超えるイベントに成長している(表を参照)。
回 | 開催期間 | 開催場所 | 来場者数 |
1 | 1999年10月13日~15日 | 東京国際フォーラム | 14,535 |
2 | 2000年11月16日~18日 | 東京国際フォーラム | 17,761 |
3 | 2001年11月15日~17日 | 東京国際フォーラム | 18,023 |
4 | 2002年11月20日~22日 | 東京国際フォーラム | 18,205 |
5 | 2003年11月4日~6日 | 東京国際フォーラム | 20,182 |
6 | 2004年11月24日~26日 | パシフィコ横浜 | 17,635 |
7 | 2005年11月30日~12月2日 | パシフィコ横浜 | 19,978 |
8 | 2006年11月20日~22日 | パシフィコ横浜 | 22,087 |
9 | 2007年11月7日~9日 | パシフィコ横浜 | 23,090 |
10 | 2008年11月26日~28日 | パシフィコ横浜 | 23,036 |
11 | 2009年11月10日~12日 | パシフィコ横浜 | 24,493 |
12 | 2010年11月24日~26日 | パシフィコ横浜 | 24,505 |
13 | 2011年11月9日~11日 | パシフィコ横浜 | 25,631 |
14 | 2012年11月20日~22日 | パシフィコ横浜 | 27,357 |
15 | 2013年10月29日~31日 | パシフィコ横浜 | 29,963 |
16 | 2014年11月5日~7日 | パシフィコ横浜 | 31,632 |
17 | 2015年11月10日~12日 | パシフィコ横浜 | 34,359 |
18 | 2016年11月8日~10日 | パシフィコ横浜 | 31,355 |
19 | 2017年11月7日~9日 | パシフィコ横浜 | 30,701 |
20 | 2018年10月30日~11月1日 | パシフィコ横浜 | 31,774 |
第6回からは開催地である横浜市との連携関係も始まり、第14回からは横浜市中央図書館を会場としたフォーラムも開催されるようになった(現在は行われていない)。
第10回からは「一層のスキルアップ・スケールアップ」のため「学術研究機関・学会・大学研究室・専門分科会等及び文書館・美術館・博物館などの参加も不可欠である」との認識のもと(9)、「学術情報オープンサミット」を併催、第17回からはこれをさらに「教育・学術情報オープンサミット」と改称、第20回では、美術館関係者のための総合展「Art Museum Annuale2018」を併催する、というように、周辺領域への拡張を続けている。
海外諸機関との連携にも積極的である。中国国家図書館(NLC)、ALA、台湾大学等々からの講師を招聘するのみならず、ALAとは広報・交流についての提携を文書で取り交わしている。また図書館総合展運営委員会(以下「運営委員会」)は丸善雄松堂との共催で、ALA年次大会への見学研修ツアーを毎年行っている。
図書館総合展の運営は、出展企業・団体、大学教員、出版社からそれぞれ数人が参加する運営委員会を主催者とし、前掲の株式会社カルチャー・ジャパンが運営事務局をつとめている。運営委員会は月1回の定例会議を開催しその主催企画や開催の枠組み等を合議制によって決定している。この体制は第1回から大きな変更はない。また、現役図書館員を中心に50人程度の運営協力委員がいて、議事録を共有しまたイベント実務にも参加している。
本展は、多彩な出展者が各々に趣向を凝らした展示やフォーラムを行う多様性に特徴があるが、ここでは運営委員会による企画を中心に動向を見ていく。
ごく初期から行われている企画としては「図書館へのおすすめ本」展示がある。第1回は34社、125点の出展に留まっていたが、第14回から展示のみではなく発注システムとも連動した企画となり、第20回では、283社、約1,600点の出展であった(10)。
運営委員会主催のフォーラムも特徴的である。運営委員会主催フォーラムが設定されたことにより、出展企業フォーラムの扱いにくい話題、カバーしきれない話題についても取り扱えるようになっており、それが本展のもつバラエティ感の演出となっている。初期には「図書館と図書館員のサバイバルプラン」と銘打った図書館に関わる法律問題を扱うフォーラムや、顧客満足を図るためのPR方法、図書館関連企業の概要を扱う運営委員会主催フォーラムが人気を博していた。第20回の現在では17の運営委員会フォーラムが開かれている。「全国学生協働サミット」、「学術情報のこの1年」、「グレートブックス」、「コラーニング」など定例企画となっているものもある。第1回では2つの会場で14のフォーラムが行われたが、現在では9つの会場で91のフォーラムが開かれており、フォーラムだけで1万3,242人もの参加がある。
なかでも、図書館界の流れを定点観測的に追える企画としてLibrary of the Year(CA1669 [521],E2102 [522]参照)は特筆すべき企画であろう。第8回から開始した同企画は現在まで図書館総合展のフォーラム枠で最終審査会が行われてきた(現在の主催は知的資源イニシアティブ(IRI))。詳細は関係者の回顧(11)に譲るとして、第17回から開始された地方創生レファレンス大賞(CA1918 [523]参照)とともに、毎年新しい図書館の取り組みを目撃できる貴重な場面といえよう。
またこの種のトレードショーとしてはユニークな取り組みとして、学生来場者への対応が挙げられる。ビジネスショー本来の目的から考えれば、「学生」は現今、直接の取引相手ではない。しかし、本展運営委員会またおそらく出展者にとっても、彼らは将来、業界仲間・同僚になるかもしれない層、将来の顧客になるかもしれない層であるとの共通認識のもと、第14回から入場者のカテゴリとして「学生」を設定している(12)。また第16回からは学生がより展示を理解しやすくするための「図書館に関心をもつ学生のための展示ブースツアー」が開催されている(E1893 [524]参照)。
そして、これらの定型枠には収まらない企画を受け入れる枠として、第16回からは小規模なプレゼンテーションを行うための「スピーカーズ・コーナー」、第17回からは製作体験・ワークショップを中心とした参加型コーナーとして「メーカーズ・ラボ」(13)を設定している。さらに「来場者がPRする側にまわる企画」として、図書館の公式マスコットを全国にお披露目する「図書館キャラクターグランプリ」(E1760 [525]参照)や、展示企画「こんなにあります!あなたも使える専門図書館」、「全国の災害アーカイブ実施図書館」、「新館さん いらっしゃい!」を開始、第19回からは図書館総合展の広報番組として「総合展ラジオ」というポッドキャスト番組を開始している。これらが重なり、単なるトレードショーの枠を超えたイベントという印象を与えるようになりつつある(14)。
そして年1回のパシフィコ横浜での展示会だけに留まらず、2011年の京都を皮切りに各地での地域フォーラムも開かれるようになり、関東での一イベントから全国的なイベントへと発展してきている(E2035 [526]ほか参照)。
以上、図書館総合展の20年の概要を振り返った。このように年1回のお祭りのような雰囲気を持ちながら、図書館業界の先端・トレンドを提示していく場所が図書館総合展であると筆者は考えている。今後、このイベントがどこまで継続するかは未知数である。ただ、毎月の運営委員会で交わされている最新動向の情報や、新しい取り組みに柔軟な組織であること、そしてある年に来場者であった図書館員や学生が数年後には出展側に回っていたり、運営協力委員に加わったりといった関係者の入れ替わり循環が絶えず起こっていることを踏まえると、少なくともしばらくは現在の規模を維持できると考えている。第21回の開催に向けてすでに準備も開始している。
会期中の事務局となっている展示ホールD11室には初日に50人以上のスタッフ証が置かれ、20人以上のボランティアやアルバイトスタッフが常に動いている。そして来場者のために各出展ブースの担当者は、前日から設営にかかりきりになる。言うまでもなく、フォーラム、ポスターセッションの登壇者は、会期前から準備に取り組んでいる。数多くの方の尽力によって、3万人の来場者を迎えるイベントが支えられている。本稿で1人1人の方の名前を挙げることはできないが、図書館総合展運営委員としてこの場を借りて深く御礼申しあげたい。
本来であれば、小さなエピソードも拾い上げて紹介したい(15)ところであるが、紙幅の都合上叶わなかった。この記事を契機に各所で「私と図書館総合展」と題した話題がやりとりされることを願っている。
(1) 毎年のように、来場者からは参加しやすい土日の開催をとの要望が寄せられている。仮に土日の開催が可能であるかとのシミュレーションも行っているが、出展企業にとっては休日出勤になることから負担増になる、また会場使用コストが増大することにより、現在無料としている入場料を有料にしなければいけないとの見通しから実現には至っていない。
(2) 本稿の執筆にあたり、図書館総合展事務局より過去のパンフレットおよび開催記録の提供を受けた。
(3) なお、図書館総合展は印刷媒体での記事化が希である。その代わり、インターネット上での記録はかなり多く、代表的なものとしてはTwitterの投稿アーカイブサイトであるTogetterが挙げられる。Togetterでは第14回(2012年開催)から図書館総合展の投稿まとめが行われており、参加者による当時の反応も含め、詳細に開催の様子を知ることができる。また、カレントアウェアネス・ポータルでも図書館総合展に言及した記事を多く見つけることができる。
(4) 新田満夫の業界通信. Vol.4 BOOK FAIR をご存じですか. 丸善雄松堂. 1999-05.
https://myrp.maruzen.co.jp/timewithbook/industryreports_4/ [527], (参照 2019-01-04).
(5) 図書館総合展運営委員会. “総合展ラジオ第7回”. YouTube.
https://www.youtube.com/watch?v=rvxWd0xCk_I [528], (参照 2019-01-04).
運営委員会委員長の飯川昭弘氏の発言より。また、図書館総合展に初期から関わっていた高山正也氏の回顧によれば、1986年8月にIFLA東京大会が日本で開かれた際に、栗原均氏、高橋徳太郎氏の尽力により展示会が併催され、好評を博したことも大きかったという(第20回図書館総合展フォーラム「図書館これまでの20年とこれからの20年」での高山氏の講演より)。
(6) 第1回図書館総合展開催:図書館に関する初めてのイベント. Pinus. 1999,(48), p. 24-25.
(7) 新田満夫の業界通信. Vol.8 1000年代、人類の発明は. 丸善雄松堂. 1999-11.
https://myrp.maruzen.co.jp/timewithbook/industryreports_8/ [529], (参照 2019-01-04).
(8) 合庭惇. 電子出版の周辺No. 33:第1回図書館総合展. 出版ニュース. 1999, (1853), p. 38.
(9) 第10回図書館総合展ガイドブックより。
(10) 第1回の数字は図書館総合展ガイドブックより、最新のデータは以下のウェブページから確認した。
“図書館へのおすすめ本”. 図書館総合展.
https://www.libraryfair.jp/recommendation [530], (参照 2019-01-04).
(11) 福林靖博. 総特集, Library of the Year の軌跡とこれからの図書館:Library of the Year とは何か : 10年間の経緯を振り返って. LRG=ライブラリー・リソース・ガイド. 2015, (13), p. 6-14.
岡野裕行. 総特集, Library of the Year の軌跡とこれからの図書館:「良い図書館」を「良い」と言い続ける未来のこと. LRG=ライブラリー・リソース・ガイド. 2015, (13), p. 15-54.
ふじたまさえ. 総特集, Library of the Year の軌跡とこれからの図書館:Library of the Year10年の記録. LRG=ライブラリー・リソース・ガイド. 2015, (13), p. 55-89. (12) 第14回ガイドブックより。
(13) “会場内イベントのご案内(スピーカーズ・コーナー、メーカーズ・ラボ)”. 図書館総合展.
https://www.libraryfair.jp/news/7705 [531], (参照 2019-01-04).
(14) “総合展ラジオYouTube プレイリスト”. YouTube.
https://www.youtube.com/playlist?list=PLy-3j04ZbzMCWyVME9ttJkj-pqZq5efkR [532], (参照 2019-01-04).
(15) 例えば、第15回図書館総合展の出展者インタビューや、各種出展団体の個別の動きなどは割愛した。
“主催者・出展者・参加者インタビュー”. 第15回図書館総合展.
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8830598/2013.libraryfair.jp/node/1282 [533], (参照 2019-02-05).
[受理:2019-02-05]
今井福司. 図書館総合展の20 年. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1944, p. 2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1944 [534]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253590 [535]
PDFファイル [536]
関西館図書館協力課:武田和也(たけだかずや)
清須市立図書館(愛知県)が地元出身の漫画家のインタビュー記事を広報誌に掲載して話題となったのは記憶に新しい(1)。公立図書館(以下「図書館」)では、図書館だよりといった広報誌や、年報等の事業報告書に加え、古くから、地域の古文書・古記録の翻刻刊行や(2)、地域資料に関する索引の作成(3)、戦争体験の記録化(4)、叢書の出版(5)等の多様な出版活動を行ってきた。そのことは、地域の記憶の発掘・記録化や、郷土資料の活用促進等において重要な役割を果たしてきたといえるだろう。その他、実施事業や職員による調査研究の成果、所蔵資料の紹介・翻刻等を掲載する『紀要』を出版する事例も見受けられる(6)。近年では、「地域情報の発信」「新たな蔵書の創出」「メディアとしての図書館」「地域住民との連携」等の観点から、奈良県立図書情報館『ナラヲヨム』(2005年-)(7)・伊丹市立図書館ことば蔵(兵庫県)『伊丹公論』(2013年-)(8)・東近江市立図書館(滋賀県)『そこら』(2014年-)(9)・大多喜町立大多喜図書館天賞文庫(千葉県)『あてら』(2016年-)(10)(括弧内の西暦は創刊年。記載は創刊年順。以下同じ。以下の事例で、継続前誌がある場合はその創刊年。タイトルは継続後誌を採用。廃刊したものは廃刊年も記載)といった小冊子・フリーペーパーを発行する図書館が注目されてきている(11)。
このように様々な出版物が図書館から刊行されているわけだが、一方で、今現在、日本国内において、図書館によるどのような種類の、如何なる性格の出版物が存在しているか、その現状を概観できる文献には乏しいように思われる。本稿は、そのような認識のもと、紙幅の関係から、原則、同一タイトルのもと継続的に刊行されている出版物(12)に限定した上で、特徴的なものの紹介を試みたい。
調査は、日本図書館協会編『図書館年鑑』(2009年から2018年までの10年分)掲載「各地各図書館の動き」内の「図書館等による発行資料」の項目等での文献調査及び、都道府県立図書館等が作成しているリンク集から各都道府県内の図書館のウェブサイトを閲覧することで行った。さらに、オンラインで公開されていない出版物の遺漏を防ぐため、本文中で整理した区分に従って、日本図書館協会資料室及び都道府県立図書館に対して、各館が所蔵する資料の範囲内でのレファレンスを依頼した(13)。また、レファレンスの回答で紹介があったツールや助言に基づく再調査もあわせて行い、書誌事項については国立国会図書館所蔵資料の確認に加え、CiNii Booksや当該出版物を刊行している館のOPACでの検索を実施した。直接当該館に尋ねた場合もある。
住民が文芸作品を投稿したり、文学コンテストの入賞作品を掲載したりする文芸誌の図書館による出版は古くから存在が確認でき、現在まで刊行が続いているものも散見される。例えば、小松市立図書館(石川県)『小松文芸』(1955年-)(14)・指宿市立図書館(鹿児島県)『文芸いぶすき』(1955年-)(15)・函館市中央図書館(北海道)『函館市民文芸』(1961年-)(16)・薩摩川内市立図書館(鹿児島県)『文化薩摩川内』(1987年-)(17)・鹿屋市立図書館(鹿児島県)『かのや文芸』(1998年-)(18)といった事例である。この他、児童文学作品に限定した、亀山市立図書館(三重県)『くりの木』(1986年-)(19)・江田島市立能美図書館(広島県)『小鳥』(2005年-)(20)といった出版物も存在する。亀山市立図書館の『くりの木』では、公募した創作童話を電話で聞ける「テレホン童話サービス」の実施や、YouTubeでの音声公開といったサービスを展開している(21)。米子市立図書館(鳥取県)『つつじ読書会文集』(1980年-)(22)といった住民の読書会の文集を出版する事例や、後述の3章とも関連するが、中学生から大学生を対象に短編小説・詩の募集及び選考を行って入賞作品を掲載する浦添市立図書館(沖縄県)『うらそえYA文芸賞受賞作品集』(2009年-)(23)といった事例もある。
郷土史家・地方史研究者等がその研究成果を投稿する地方史研究雑誌を図書館が編集・出版する事例も古くからある。例えば、藤沢市図書館(神奈川県)『わが住む里』(1949年-)(24)・南九州市立図書館(鹿児島県)『南九州市薩南文化』(1964年-)(25)・神奈川県立図書館『郷土神奈川』(1974年-)(26)・光市立図書館(山口県)『光地方史研究』(1975年-)(27)等である。その他、市内の小・中学校教員の研究成果や郷土研究発表会での児童・生徒の発表内容を掲載する佐世保市立図書館(長崎県)『郷土研究』(1971年-)(28)や、研究論文を募集し、審査を経て掲載する御殿場市立図書館(静岡県)『地方史研究御殿場』(1985年-)(29)といった取組も行われている。また、図書館が編集・出版の主体ではないものの郷土史研究団体の事務局が図書館内に設置されている事例も古くからあり、愛媛県立図書館『伊予史談』(1915年-)(30)・オーテピア高知図書館『土佐史談』(1917年-)(31)・桐生市立図書館(群馬県)『桐生史苑』(1950年-)(32)・鹿沼市立図書館(栃木県)『鹿沼史林』(1954年-)(33)・徳島県立図書館『阿波学会紀要』(1954年-)(34)・田川市立図書館(福岡県)『郷土田川』(1954年-)(35)・茨城県立図書館『郷土文化』(1960年-)(36)等の事例を確認できる。福井県立図書館に事務局を置く福井県郷土誌懇談会の『若越郷土研究』(1956年-)(37)には、同館郷土資料班が「福井県における郷土史研究の動向」という記事を例年寄せており、地域資料を収集する図書館の役割としても興味深い。その他、上述の神奈川県立図書館『郷土神奈川』では、県内の郷土史研究団体の活動状況を例年掲載している。
上記以外でも、例えば、戦前から終戦直後にかけて、地域研究団体に図書館長が加わっている事例、その創設にあたって図書館長や図書館員が重要な役割を果した事例、文芸誌の主宰者が「通読図書館」の創設・運営に関わる事例、地域の名望家が設立した図書館に郷土誌を編む編纂部が設置される事例等が見られる(38)。地域の文芸誌・地方史研究雑誌の出版活動と図書館は古くから深い関わりを持っていたことは押さえておく必要があるだろう(39)。一方で、富山県立図書館に事務局を置く富山県郷土史会の『郷土の文化』(1970年-2017年)では、石川・福井の両県立図書館員が各県の郷土史研究の動向を1978年から2016年まで寄稿し、富山県立図書館編集の郷土研究文献目録も掲載していたが、役員・会員の高齢化により廃刊となってしまっている(40)。役員・会員の高齢化による郷土史研究団体の休会・解散は全国的な流れでもあり(41)、今後の図書館による関連活動への影響も考えられる。
所蔵する特別コレクション類を紹介することを目的とした出版物もある。近年では、所蔵する会社史・経済団体史・労働組合史の特別コレクションを紹介する神奈川県立川崎図書館『社楽』(2012年-)(42)や、公益財団法人読売日本交響楽団から寄託を受けた「南葵音楽文庫」(E1970 [537]参照)に含まれる資料の研究成果を発表する和歌山県立図書館『南葵音楽文庫紀要』(2018年-)(43)といった取組が注目されている。その他、図書館が受け入れた地元縁の作家の旧蔵書を紹介するものとして、作家・野口冨士男氏の旧蔵書「野口冨士男文庫」がある越谷市立図書館(埼玉県)の小冊子『野口冨士男文庫』(1999年-)(44)や、作家・井上ひさし氏からの蔵書の寄贈を受け川西町立図書館(山形県)等との複合施設内に設置された「遅筆堂文庫」の『たまげた』(2017年-)(45)といった事例がある。
また、収集した地域資料を紹介する事例も散見され、堺市立中央図書館(大阪府)『堺研究』(1966年-)(46)・福島県立図書館『福島県郷土資料情報』(1986年-)(47)・神奈川県立図書館『かながわ資料ニュースレター』(2007年-)(48)・小田原市立図書館(神奈川県)『地域資料室通信』(2010年-)(49)・鎌倉市中央図書館(神奈川県)『近代史資料室だより』(2013年-)(50)といったものを見ることができる。
「はじめに」で述べ、4章でも後述するように、住民が単に投稿するだけではなく、編集段階から参加し、あるいは主体となって図書館を拠点に出版活動を行う事例が近年注目されている。しかし、そのような利用者が参加しての出版活動は、例えば、中学生の記者が作成・編集する調布市立図書館(東京都)『ぶちねこ便~中学生へのお届けもの~』(1984年-)(51)や目黒区立図書館(東京都)『OMAKE no いっぽ』(1984年-。編集参加は1998年から)(52)が既に20年・30年以上前から行っているように、中学生・高校生といったヤングアダルト(YA)を対象とした、読書活動推進が目的の取組が先行・普及しているようにも思われる。
近年では、倉吉市立図書館(鳥取県)『としょかんNews(中高生版) 雨のち晴れ』(2003年-)(53)・豊中市立千里図書館(大阪府)『YA!BOOKS』(2008年-)(54)・宇都宮市立図書館『高校生のための読書情報誌 MIYATEEN』(2010年-)(55)・調布市立図書館(東京都)『Prime~高校生の今~』(2016年-)(56)等、全国的に数多くの事例を確認することができる(57)。
その他、表紙を地元の高校のイラスト同好会が担当する幕別町図書館(北海道)『はざま通信』(2016年-)(58)や、小学生が作成に参加する萩市立明木図書館(山口県)『明木図書館通信』(2010年-)(59)といった事例もある。また、先述の東近江市立図書館『そこら』では、2018年に高校生ライターの募集を行っている(60)。
また、連携・共同の対象がYAではないが、愛知県公立図書館長協議会ヤングアダルトサービス連絡会による『A・L・C あるく』(2014年-)(61)や、杉並区立成田図書館(東京都)が杉並区立東田中学校図書館と共同で出版した『At Lib』([2012]年-[2015]年)(62)、図書館と市内の高校との情報交換・読書推進の場として出版している恵那市中央図書館(岐阜県)『びぶりお定期便』(2009年-。同取組は2012年から)(63)等といった事例もある。
今回の調査では、「はじめに」で紹介した出版物以外にも、地域情報を収集・発信する小冊子を作成する取組をいくつか確認することができた。
例えば、コミュニティ参加型のものでは、市内の4つの書店と図書館が「オススメする本」を紹介する塩尻市立図書館(長野県)『Book Fan Newsletter』(2012年-)(64)、山形県の置賜地域の図書館利用者やミニコミ誌作成団体のメンバー(E1823 [538]参照)が創刊した『nda nda!』(2017年-)(65)、図書館での新たな企画や行事を実施していくために結成された「図書館創発会議」が取材・編集を行う山陽小野田市立図書館(山口県)『とっとこ山陽小野田』(2017年-)等がある(66)。また、定期刊行物とは異なるが、宝塚市立図書館(兵庫県)が、まちの魅力・歴史や、まちへの思い等を1冊の本・冊子にまとめて図書館の蔵書とする「マチ文庫」という取組を行っており、注目される(67)。その他、一関市立一関図書館(岩手県)による小学生を対象とした辞書作成事業の成果物、一関版国語辞典『小言海』は第3版まで版を重ねている(68)。
図書館員が主体のものでも、図書館員が図書館内外の新しいことや再発見を求めて取材にも出かけるさいたま市図書館『さいたま来ぶらり通信』(2006年-)(69)や、出版物とはやや異なるものの市内で行われたイベントの図書館員による体験記事を掲載する市立小諸図書館(長野県)『図書館員が行く!』(2015年-2016年)(70)といった事例が見られる。また、広報誌内でも、区内の街並みや地域の活動を紹介するコーナーがある品川区立図書館(東京都)『LiLiLi』(2016年-)(71)や、単発ではあるが、滋賀県立図書館の広報誌『図書館しが web版』(2006年-)の217号(2018年8月)が、自転車の活用推進による地域活性化に向けた県のビジョン「ビワイチ推進総合ビジョン」に因んで職員が自転車での図書館めぐりに挑戦した記事を掲載している(72)。この他、シニア向け情報を発信する鎌ヶ谷市立図書館(千葉県)の『アクティブ・ライフ』(2016年-)(73)は、超高齢社会を迎えた日本において注目される取組であろう。
地域の歴史に関しての出版物による情報発信は、2章で述べた館蔵の地域資料を紹介する取組とも関わって行われている。古いものでは、中央区立京橋図書館(東京都)『郷土室だより』(1973年-)(74)や、館主催の文化講座の内容を収録する宮崎県立図書館『宮崎県文化講座研究紀要』(1974年-)(75)があり、近年でも、台東区立中央図書館(東京都)『郷土・資料調査室報』(2010年-)(76)・青森市民図書館『あおもり歴史トリビア』(2012年-)(77)・流山市立森の図書館(千葉県)『郷土かわらばん』(2017年-)(78)といった事例を確認できる。また、最近では、情報の発信にとどまらず、オーラルヒストリーの手法により、記録化されていない地域の歴史情報を収集し出版することで新たな蔵書を構築する事例も見られるようになってきた。例えば、加賀市立図書館(石川県)『オーラルヒストリー文庫』(2009年-2012年)(79)・今治市立図書館(愛媛県)『タオルびと』(2012年-)(80)・東久留米市立図書館(東京都)『語ろう!東久留米』(2015年-)(81)等の事例がある。また、矢掛町立図書館(岡山県)の聞き書きボランティア養成講座の受講者が町内の高齢者から町内の自然・文化・行事・特産物・街並み等の情報を聞き取ってまとめた『聞き書き集やかげ』(2015年-)(82)といった住民との連携により作成されたものもある。
以上、図書館による近年の特徴的な出版物を概観した。最後に、図書館が出版活動を行う意義について、主として他館種の活動を参考に少し考えてみたい。
既に古くから指摘されているように出版物として固定化されていない地域情報の記録化や発信等を指摘することは可能であろう。特に出版社があまり存在しない地域ではその意義は大きいと思われる(83)。
また、短期大学図書館での学生との協働による広報誌作成に関する事例では、学生の文書編集能力の涵養や他者との共同・他者へのサービスを学ぶという実施意義が(84)、大学図書館員が出版したフリーペーパーに関する事例では、学生・教職員への取材や執筆依頼による誌面を舞台にしたより積極的なコミュニケーションの可能性が(85)指摘されている。住民が参画しての出版物や、図書館員が地域を取材する出版物においても、地域住民のリテラシー向上や、図書館と地域のコミュニケーションの促進といったような、同種の実施意義が存在すると考えられる。近年注目される図書館の役割としての「第三の場」、新しいコミュニティ形成にも資する取組ともいえよう(86)。実際の実施効果については、今後の各取組に関する事例報告の積み重ねや、それらの詳細な分析が求められる。
ところで、今回の調査の過程で、国立国会図書館や日本図書館協会資料室、都道府県立図書館では所蔵が確認できない出版物もあった。当該出版物を刊行する図書館のOPACでヒットしない場合もあり、ウェブサイト上でのみの掲載や、エフェメラ扱いで蔵書としては管理されていないことも考えられる。しかし、その図書館の地域との関わりを示すものとして、また、その時代の住民の活動・考えを表すものとして、関連資料とあわせ、各館で確実に保存されることが望まれよう(87)。
なお、「はじめに」でも述べたように、本調査にあたっては、日本図書館協会資料室及び都道府県立図書館のレファレンス担当者から多大なる支援を受けた。末筆ながらお礼申し上げる。
(1)鳥山さん掲載 広報紙人気 清須市立図書館 インタビューでうわさに迫る! . 中日新聞. 2018-12-16, 朝刊[尾張], p. 8.
(2)以下の事例等を確認できた。
“加能史料”. 石川県立図書館.
http://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/kankou/sub02.html [539], (参照 2018-12-18).
“刊行物”. 佐賀県立図書館.
https://www.tosyo-saga.jp/?page_id=210 [540], (参照2019-01-09).
“鹿児島県史資料集”. 鹿児島県立図書館(本館).
http://www.library.pref.kagoshima.jp/honkan/?p=25283 [541], (参照2019-01-15).
大垣市立図書館歴史研究グループ. “歴史研究グループからのご案内”. 大垣市.
http://www.city.ogaki.lg.jp/0000034750.html [542], (参照 2019-02-01).
(3)庄司明由. 地域史研究と図書館との連携:三多摩地域(郷土)資料研究会の実践を通して. 地方史研究. 2010, (345), p. 94-95.
(4)田無市立図書館(東京都。現・西東京市)が、1979年から公民館と連携し「戦争を伝える」集いの小冊子や中島飛行機武蔵製作所に関する座談会の記録を作成していたことについては以下の文献を参照。
今井清一. 特集, 民衆史発掘・記録の運動と図書館 : 空襲・戦災を記録する運動と図書館・資料館. 図書館雑誌. 1981, 75(8), p. 444-447.
近年でも、大阪市立福島図書館が、1995年から2010年にかけ、福島区歴史研究会の講演と語る会の記録『戦争を語りつぐ:21世紀の平和を守るために』を出版している。
“「戦争を語りつぐ」講演と語る会の記録 (既刊分) ”. 大阪市立図書館. 2013-12-08.
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/index.php?key=jovq8iw1y-510#_510 [543], (参照 2018-12-18).
(5)東村山市立図書館(東京都)が市民叢書数点を出版したことについては以下の文献を参照。
関根善二. 特集, 民衆史発掘・記録の運動と図書館 : 民衆の歴史と図書館の出版活動. 図書館雑誌. 1981, 75(8), p. 454-455.
(6)現在出版されているものとして以下の事例を確認できた。
“神奈川県立図書館紀要”. 神奈川県立の図書館.
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/information/kiyou.htm [544], (参照 2018-12-18).
“大阪府立図書館紀要”. 大阪府立図書館.
https://www.library.pref.osaka.jp/site/kiyo/lib-kiyo.html [545], (参照 2018-12-18).
福岡市総合図書館研究紀要. 福岡市総合図書館.
http://toshokan.city.fukuoka.lg.jp/publications/backnumber/type:6 [546], (参照 2019-02-01).
(7)“ナラヲヨム”. 奈良県立図書情報館.
http://www.library.pref.nara.jp/publications/readnara [547], (参照 2018-12-28).
(8)“郷土紙「伊丹公論」”. 伊丹市立図書館ことば蔵.
http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/EDSHOGAI/EDLIB/itami_kouron/ [548], (参照 2018-12-28).
(9)“東近江市の魅力的なもの・こと・ひとを紹介する小冊子 『そこら』”. 東近江市立図書館.
http://www.library-higashiomi-shiga.jp/?page_id=52/ [549], (参照 2018-12-28).
“リトルプレス「そこら」”. 地域活性化志向の公共図書館における経営に関する調査研究. 国立国会図書館関西館図書館協力課, 2014, p. 135-168., (図書館調査研究リポート, 15).
https://doi.org/10.11501/8649952 [550], (参照 2018-12-11).
松浦純子. 特集, 地域とつながる:東近江の魅力を伝える小冊子『そこら』の出版を通じてみえてきたもの:地域とつながる図書館活動の実践. みんなの図書館. 2014, (448), p. 9-16.
田村俊作. “ 多様化する図書館:歴史的視点から”. 第27回京都図書館大会. 京都, 2018-08-20. 京都府立図書館.
https://www.library.pref.kyoto.jp/wp/wp-content/uploads/2018/11/27_file1.pdf [551], (参照 2018-12-11).
(10)あてら.
http://www.atera-web.com/ [552], (参照 2018-12-28).
(11)「メディアとしての図書館」を分析視角に、上記4誌が生み出される過程や地域との関わり方を取材しまとめたものとして以下の文献がある。
野原海明. 特集 メディアとしての図書館:図書館に編集と発信の力を!. LRG. 2017,(21), p. 6-39.
(12)別タイトルであっても同一の出版趣旨のもと継続的に刊行されているものも含む。
(13)2018年12月15日に移転・開館した沖縄県立図書館(E2114 [553]参照)には依頼していない。
(14)“文芸誌『小松文芸』”. 小松市立図書館.
https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/toshokan/toshokannoomonajigyou/750.html [554], (参照 2018-12-18).
(15)“『文芸いぶすき第63号』への作品投稿の募集しています。”. 指宿・山川図書館.
http://www.minc.ne.jp/ibusukilib/osirase.html [555], (参照 2018-12-18).
(16)“市民文芸”. 函館市中央図書館.
https://hakodate-lib.jp/literature [556],(参照 2018-12-18).
(17)「文化薩摩川内」編集委員編. 文化薩摩川内. 薩摩川内市立中央図書館.
(18)かのや文芸編集委員会編. かのや文芸. 鹿屋市立図書館.
(19)亀山絵本と童話の会. くりの木 : 童話集. 亀山絵本と童話の会, 亀山市立図書館.
(20)小鳥. 江田島市立能美図書館.
(21)“テレホン童話サービスのご案内”. 亀山市立図書館.
https://www.city.kameyama.mie.jp/library/article/2016120800046/ [557], (参照 2018-12-18).
ehondouwa. YouTube.
https://www.youtube.com/user/ehondouwa [558], (参照 2018-12-18).
(22)米子市立図書館つつじ読書会編. つつじ読書会文集.
(23)“文化部・図書館刊行物「うらそえYA 文芸賞受賞作品集」”. 浦添市立図書館. 2016-11-29.
http://library.city.urasoe.lg.jp/docs/2016112900167/ [559], (参照 2018-12-18).
(24)“図書館刊行物案内”. 藤沢市図書館.
https://www.lib.city.fujisawa.kanagawa.jp/publish.html [560], (参照2018-12-18).
(25)“オリジナル書籍のご案内”. 南九州市立図書館.
http://lib-minamikyushu.jp/original_book.html [561],(参照2018-12-18).
(26)“郷土神奈川”. 神奈川デジタルアーカイブ.
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/digital_archives/kyoudo_kanagawa.htm [562], (参照 2019-01-10).
(27)光地方史研究会, 光市立図書館編. 光地方史研究. 光地方史研究会.
(28)“佐世保市立図書館 郷土資料室”. 佐世保市立図書館.
https://www.library.city.sasebo.nagasaki.jp/kyodo/index.html [563], (参照 2018-12-18).
(29)御殿場市の歴史に関する研究論文募集要項. 地方史研究御殿場. 2018,(14), p. 58-59.
(30)“伊予史談会について”. 愛媛県立図書館.
http://www01.ufinity.jp/ehime/?page_id=89 [564], (参照 2018-12-18).
柳原多美雄. 伊予史談会六十年の思い出. 伊予史談. 1973, (210/211), p. 63-64.
(31)土佐史談会.
http://tosashidankai.com/ [565],(参照 2018-12-18).
平尾道雄. 特集, 図書館と地方史研究 : 地方史研究者は図書館に何を望むか. 図書館雑誌. 1971, 65(12), p. 627-628.
“土佐史談会の歩み”. 高知県立図書館100年の歩み. 高知県立図書館, 1981, p. 167-179.
(32)桐生文化史談会.
http://www.sunfield.ne.jp/~noma/shidankai/ [566], (参照 2018-12-18).
桐生市立図書館と桐生文化史談会の関係については『桐生史苑』第30号(1991年)の特集「史談会の回顧と展望」を参照。
(33)柳田芳男. 鹿沼史談会発足より昭和三六年までの歩み. 鹿沼史林. 2000,(40), p. 112-136.
(34)“阿波学会研究紀要”. 徳島県立図書館.
http://www.library.tokushima-ec.ed.jp/digital/webkiyou/k_list.htm [567], (参照 2018-12-18).
新孝一. 阿波学会設立前後に関するメモ. 阿波学会紀要. 2008, (54), p. 231-236.
(35)田川郷土研究会. facebook.
https://www.facebook.com/kyoudotagawa/ [568], (参照 2019-01-15).
佐々木哲哉. 末永十四生と田川郷土研究会. 図書館学. 2001, (79), p. 8-14.
(36)“茨城県郷土文化研究会へようこそ”. 茨城県立図書館.
https://www.lib.pref.ibaraki.jp/kyoudobunnka/index.html [569], (参照 2018-12-18).
(37)“福井県郷土誌懇談会について”. 福井県立図書館.
http://www.library-archives.pref.fukui.jp/?page_id=357 [570], (参照 2018-12-18).
同館ウェブサイトで、既刊号掲載記事が公開されている。
“郷土史研究の動向”. 福井県立図書館.
http://www.library-archives.pref.fukui.jp/?page_id=356 [571], (参照 2018-12-18).
(38)明治の図書館 : 里内文庫と里内勝治郎. 栗東歴史民俗博物館, [1991], 31p.
柳田. 前掲.
瀬戸美秋. 舞鶴地方史研究会 永遠の進展を祈る. 舞鶴地方史研究. 2004, (36), p. 6-8.
黒岩康博. “高田十郎『なら』に見る近代大和の「地域研究」ネットワーク”. 好古の瘴気:近代奈良の蒐集家と郷土研究. 慶應義塾大学出版会, 2017, p. 91-122.
長尾宗典. 「誌友交際」と地方雑誌:小木曽旭晃『地方文芸史』の史料批判を通じて. 近代史料研究. 2018,(18), p. 24-42.
(39)下記埜上氏の文献を引用する根本氏の文献の注(27)の記述に、大会当日埜上氏が配布した「郷土研究団体」一覧表に、図書館に事務局を置く団体として、全国で171の団体がリスト化されていたとある。
埜上衛. 公立図書館と郷土研究団体. 日本図書館情報学会研究大会発表要項. 1983,(31), p. 5-12 .
根本彰. “戦後公共図書館と地域資料:その歴史的素描”. 情報公開制度と図書館の自由. 日本図書館協会, 1987, p. 62-93., (図書館と自由, 8).
また、根本氏は以下の文献では、1960年代、公立図書館運営の近代化論が導入されるなかで郷土資料に関するサービスが批判され、以後縮小したことを指摘するが、1968年に『会津史談』(福島県・会津史談会)の事務局が公民館に、1979年に奄美郷土研究会の事務局が鹿児島県立図書館奄美分館から会員宅に移動している事実は興味深い。
根本彰. “はじめに”. 地域資料に関する調査研究. 国立国会図書館関西館図書館協力課, 2009, p. 3-13., (図書館調査研究リポート, 9).
https://doi.org/10.11501/999315 [572],(参照2019-01-10).
工藤邦彦. 奄美分館長・島尾敏雄における郷土資料収集のあゆみ. 図書館学. 2018,(113), p. 54-62.
(40)太田久夫. 富山県郷土史会六十六年の軌跡. 郷土の文化. 2017, (42), p. 1-3.
(41)坂江渉ほか. 第11回歴史文化をめぐる地域連携協議会 : 「地域史を調べること学ぶこと : 目的と支援を問い直す」. 歴史文化に基礎をおいた地域社会形成のための自治体等との連携事業. 2013, (11), p. 1-24.
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81005269 [573], (参照 2019-01-08).
(42)“社楽(社史情報紙)”. 神奈川県立川崎図書館.
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/materials/sharaku.htm [574], (参照 2018-12-19).
高田高史. “「社楽」社史室からの発信・提案”. 社史の図書館と司書の物語:神奈川県立川崎図書館社史室の5年史. 柏書房, 2017, p. 109-135.
(43)“南葵音楽文庫紀要”. 和歌山県立図書館.
https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/nanki/publications/index.html [575], (参照 2018-12-19).
(44)“野口冨士男文庫”. 越谷市立図書館.
http://lib.city.koshigaya.saitama.jp/noguti/ [576], (参照 2018-12-19).
横山みどり. うちの図書館お宝紹介! 第123回越谷市立図書館野口冨士男文庫. 図書館雑誌. 2012, 106(10), p. 730-731.
(45)たまげた. 遅筆堂文庫.
https://www.kirikiriki.inouehisashi.jp/images/kirikiriki/2016/tamageta001.pdf [577], (参照 2018-12-19).
https://www.kirikiriki.inouehisashi.jp/images/kirikiriki/2017/tamageta002.pdf [578], (参照2018-12-19).
(46)“『堺研究』総目次”. 堺市立図書館.
https://www.lib-sakai.jp/kyoudo/kyo_sakaiken/kyo_sakaikensou.htm [579], (参照 2018-12-19).
(47)“郷土資料情報”. 福島県立図書館.
https://www.library.fks.ed.jp/ippan/tosyokanannai/kankobutsu/kyodo/kj000000.htm [580], (参照 2018-12-19).
(48)“かながわ資料ニュースレター”. 神奈川県立図書館.
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/yokohama/materials/news_letter.htm [581], (参照 2018-12-19).
(49)小田原市立図書館. “地域資料室通信”. 小田原市.
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/public-i/facilities/library/liblaryinfo/chiiki-tsushin.html [582], (参照 2018-12-19).
(50)“近代史資料室だより”. 鎌倉市図書館.
https://lib.city.kamakura.kanagawa.jp/kindai2015/kindaikankoubutu.html#kintayori [583], (参照 2018-12-19).
(51)“ぶちねこ便~中学生へのお届けもの~”. 調布市立図書館.
https://www.lib.city.chofu.tokyo.jp/contents;jsessionid=32C0D3D55272161EA3EA010DEABA9B6D?0&pid=143 [584], (参照 2018-12-19).
(52)“YA 広報誌「Omake no いっぽ」”. 目黒区立図書館.
https://www.meguro-library.jp/kids/youngadult/yaomakeno-ippo/ [585], (参照 2018-12-19).
(53)“としょかんNews(中高生版)雨のち晴れ”. 倉吉市立図書館.
https://www.lib.city.kurayoshi.lg.jp/content/libdocument/ya/ [586], (参照 2018-12-20).
(54)“YA!BOOKS(ヤングアダルト)”. 豊中市立図書館.
http://www.lib.toyonaka.osaka.jp/YABOOKS/yabooks_2.html [587], (参照 2018-12-20).
(55)“高校生のための読書情報誌 MIYATEEN”. 宇都宮市立図書館.
https://www.lib-utsunomiya.jp/viewer/info.html?id=128 [588], (参照 2019-01-23).
(56)“Prime ~高校生の今~”. 調布市立図書館.
https://www.lib.city.chofu.tokyo.jp/contents?1&pid=1769 [589], (参照 2018-12-20).
(57)その他、以下のような出版物を確認することができた。 岡崎市立中央図書館(愛知県)『図書缶』(2006年-)・稲城市立図書館(東京都)『POLTADA』(2006年-。編集参加は2007年から)・広島県立図書館『ヤングアダルト通信号外』(2007年-2010年)・福生市立図書館(東京都)『いろは新聞』(2005年-)・広島市こども図書館『リブサポ通信』(2009年-)・西東京市図書館(東京都)『CATCH』([1988]年-。編集参加は2011年から)・仙台市榴岡図書館『SUKIYAKI~古今東西粋本集~』(2013年-)・岐阜市立中央図書館『別冊ほんまるけ』(2014年-)・吉川市立図書館(埼玉県)『読書情報誌YA’’’!ハピネス!』(2012年-。2015年から編集部員の募集を開始)・仙台市広瀬図書館『福読軒』(2017年-)・名古屋市徳重図書館『ティーンズの本棚』(2014年-。編集参加は2018年から)・吹田市立図書館(大阪府)『てくてく』(1985年-。編集参加は2019年から)
(58)“はざま通信”. 幕別町図書館.
http://mcl.makubetsu.jp/index.php/main-hazama [590], (参照 2018-12-19).
(59)“明木図書館通信”. 萩市立明木図書館.
https://hagilib.city.hagi.lg.jp/akiragi/akitosyotuusinn.html [591], (参照 2018-12-19).
(60)地域情報誌「そこら」=高校生ライター募集=. 滋賀報知新聞. 2018-11-23.
http://www.shigahochi.co.jp/info.php?type=article&id=A0027823 [592], (参照 2018-12-27).
(61)愛知県公立図書館長協議会ヤングアダルトサービス連絡会. “A・L・C あるく”. 愛知県図書館.
https://websv.aichi-pref-library.jp/ya/alc.html [593], (参照 2018-12-19).
(62)“At Lib”. 杉並区立東田中学校.
https://www.suginami-school.ed.jp/higashitachu/content_disp.php?c=4cb57af49a420 [594], (参照 2018-12-19).
(63)“びぶりお定期便”. 恵那市中央図書館.
http://library.city.ena.lg.jp/introduction/biburio/ [595], (参照 2018-12-19).
(64)“Book Fan Newsletter”. 塩尻市立図書館.
https://www.library-shiojiri.jp/toshokan-dayori/bookfannewsletter/ [596], (参照 2018-12-20).
(65)“山形県置賜発 地域カルチャー誌『nda nda!』創刊します”. Book!Book!Okitama.
https://bookbookokitama.com/post/153586495137/nda-nda [597], (参照 2018-12-20).
(66)“市民がつくる地域情報誌「とっとこ山陽小野田」”. 山陽小野田市立図書館.
http://library.city.sanyo-onoda.lg.jp/magazine/ [598], (参照 2018-12-20).
市民目線の情報誌「とっとこ山陽小野田」創刊. 山口新聞. 2018-01-03.
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2018/0103/2p.html [599], (参照 2018-12-27).
(67)宝塚市立中央図書館. “みんなのたからづかマチ文庫”. 宝塚市.
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/kyoiku/library/1026582.html [600], (参照 2018-12-20).
(68)“Pick_Up ことばの海をゆく”. 広報いちのせき I-style. 2017, (279), p. 16-17.
https://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/18,91399,c,html/91399/20170424-094508.pdf [601], (参照 2018-12-20).
(69)“さいたま来ぶらり通信”. さいたま市図書館.
https://www.lib.city.saitama.jp/contents;jsessionid=ABBFB3902A6148EF248652D5907D8283?0&pid=122 [602], (参照 2018-12-20).
(70)市立小諸図書館. “ こもろのひろば 「図書館員が行く!」 バックナンバー”. 小諸市.
http://www.city.komoro.lg.jp/institution/2016042900015/ [603], (参照 2018-12-20).
(71)“品川区立図書館広報誌LiLiLi”. 品川区立図書館.
https://library.city.shinagawa.tokyo.jp/tabid/217/Default.aspx [604], (参照 2018-12-20).
(72)“館報「図書館しが」”. 滋賀県立図書館.
https://www.shiga-pref-library.jp/publication/bulletin/ [605], (参照 2018-12-20).
(73)シニア世代へ向けての図書館情報誌 アクティブライフ. 鎌ヶ谷市立図書館. 2018, (9).
http://www.library-kamagaya-chiba.jp/pdf/AL201811.pdf [606], (参照 2018-12-20).
(74)“郷土室だより”. 中央区立図書館.
https://www.library.city.chuo.tokyo.jp/areacontents?4&pid=115 [607], (参照 2018-12-20).
(75)“宮崎県文化講座研究紀要”. 宮崎県立図書館.
http://www2.lib.pref.miyazaki.lg.jp/?page_id=421 [608], (参照 2019-02-01).
(76)“郷土・資料調査室 室報最新号”. 台東区立図書館.
https://www.city.taito.lg.jp/index/library/kyodo/situhou.html [609], (参照 2018-12-20).
(77)青森市民図書館歴史資料室. “メールマガジン「あおもり歴史トリビア」”. 青森市.
https://www.city.aomori.aomori.jp/toshokan/bunka-sportskanko/rekishi/mailmagagine-rekishi-trivia.html [610], (参照 2018-12-20).
冊子版も第18集まで作成されている。
(78)“郷土かわらばん”. 流山市立森の図書館.
http://www.subaru-shoten.co.jp/tosho/mori/issue/ [611], (参照 2018-12-28).
(79)加賀市オーラルヒストリー図書館プロジェクト(2) : 吸坂飴-300年の和菓子-「加賀市立図書館オーラルヒストリー文庫」を発刊. JAIST社会イノベーション・シリーズ2. 2009, (27), p. [1]- [3].
http://hdl.handle.net/10119/8218 [612], (参照 2018-12-20).
(80)“タオルびと”. 今治市立図書館.
http://www.library.imabari.ehime.jp/towelbito/index.html [613], (参照 2018-12-20).
“「タオルびと」制作プロジェクト:地域産業資料・情報の収集と発信”. 図書館実践事例集:人・まち・社会を育む情報拠点を目指して. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/04/09/1346572_028.pdf [614], (参照 2018-12-28).
(81)“「語ろう!東久留米」(オーラルヒストリー事業)”. 東久留米市立図書館.
https://www.lib.city.higashikurume.lg.jp/site/chiiki/oralhistory.html [615], (参照 2018-12-28).
(82)“平成26年度助成事例 聞き書き人の会”. 公益財団法人マルセンスポーツ・文化振興財団.
http://www.marusen-zaidan.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/04/img-262033.pdf [616], (参照 2018-12-20).
(83)関根. 前掲.
図書館による地域情報の発信活動としては、図書館が所蔵する地域資料を活用するウィキペディア・タウンがあるが(CA1847 [617]参照)、そもそも典拠とすべき地域資料が出版されていないということもあり得よう。
(84)木原すみ子. 授業での演習・学生・司書との連携による図書館広報紙作成:司書をめざす学生の実践力育成支援. 短期大学図書館研究. 2014, (33), p. 67-73.
(85)太田潤ほか. 大学図書館員のつくるフリーペーパーの発行 :これからのパブリック・サービスを求めて (2015年度 東地区部会研究部 研究分科会報告大会). 私立大学図書館協会会報. 2016, (146), p. 95-101.
(86)野原の取材記事からもその点が読み取れよう。
野原. 前掲.
(87)ウェブサイトで公開中、もしくは公開の形跡があるもので、国立国会図書館インターネット資料保存事業(WARP)やInternet Archiveで保存されていないものも確認できた。ウェブアーカイブにおける地域資料収集の課題については以前指摘したことがある。
武田和也. 特集, Web アーカイビングの現状と課題: 海外動向との対比からみた日本のWeb アーカイビングの課題と展望 : 国立国会図書館の取り組みを通して. 情報の科学と技術. 2008, 58(8), p. 394-400.
https://doi.org/10.18919/jkg.58.8_394 [618], (参照 2019-01-25).
[受理:2019-02-01]
武田和也. 近年の公立図書館による出版活動の概要:定期刊行物を中心に. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1945, p. 5-10.
http://current.ndl.go.jp/ca1945 [619]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253591 [620]
Takeda Kazuya
Publishing Activities of Public Libraries in Japan: Focus on Periodicals
PDFファイル [623]
関西館アジア情報課:廣田美和(ひろたみわ)
ここ数年、日本の在留外国人数(中長期在留者及び特別永住者)は増加しており、2017年末には約256万2,000人(全人口比約2%)と過去最高を記録した。国籍・地域別に見るとベトナム、ネパール、インドネシアが大きく増加し、構成比も変化している(1)。しかし、日本の公共図書館における多文化サービスの現況は、日本図書館協会が行った「多文化サービス実態調査2015」によると、「全体としては足踏み状態が続いている状況」である(E1900 [624]参照)(2)。
一方、韓国では、1990年代終盤から在留外国人が急増した。1997年に約38万7,000人であった在留外国人数(短期滞在者を含む)は、2007年には100万人を超え、2017年に約218万人(全人口比約4%、短期滞在者を除くと約158万人で同比約3%)に達した(3)。この背景には、外国人労働者及び国際結婚の増加があり、国際結婚による「多文化家庭」の数は2017年に約32万世帯(総世帯数の約1.6%)となっている(4)(5)。
韓国の公共図書館における多文化サービスは、同国に移住した外国人の定着と適応を支援する市民団体等によって2000年代初めに始められた(6)。2009年に文化体育観光部(7)が「多文化図書館設置及びプログラム支援事業」(8)による公共図書館への支援を開始して以降は、多文化サービスを提供する公共図書館が急速に増えていった。文化体育観光部の支援を受けて設置された公共図書館及び資料室と、プログラム支援を受けた図書館の数は、以下のとおりである。
年度 | 多文化図書館・ 資料室の設置数 |
プログラムを 支援した図書館数 |
2009 | 2 | 12 |
2010 | 6 | 16 |
2011 | 11 | 30 |
2012 | 11 | 40 |
2013 | 9 | 89 |
2014 | 7 | 110 |
2015 | 3 | 125 |
2016 | 4 | 127 |
2017 | - | 146 |
また、文化体育観光部は、世界の多様な文化を体験し、相互の文化の尊重と理解の幅を広げるための「多文化サービス活性化事業」を2013年に開始し、多文化サービス企画マニュアルの製作・配布や、担当者教育のためのワークショップ、各種研究などを行っている。2018年には、同事業の一環として、公共図書館で実施された多文化サービスプログラムの8つの優秀事例を掲載した『2018 図書館多文化サービス優秀事例集』 (以下「事例集」)(9)が発行された。
ここで紹介されているプログラムは、多文化家庭の子どもや大人、移住労働者を対象に読書活動を行うもの、韓国人を主な対象として異文化の理解や受容を助けるもの、双方の交流を図るものなど様々である。本稿では、これらの事例の中から、子どもを含む多文化家庭を支援するプログラムと成人を支援するプログラムを1件ずつ紹介することとし、小学校及び大学と協力したメンタープログラム等を実施した「仁川広域市永宗図書館」(10)と、参加者や移住労働者人権団体と協力して読書プログラムを実施する京畿道・安山市の「安山多文化小さな図書館」(11)を取り上げる。
仁川広域市永宗図書館の位置する永宗島は、仁川国際空港を擁する、人口7万人弱の島である(12)。島には約2,000人の外国人が居住しているが(13)、島という立地のため、文化、芸術、教育情報へのアクセスが困難な多文化家庭が多いという。
そのため同館では、2012年、「多文化社会と助け合いin永宗図書館」プログラムを企画、実施することとした。同プログラムでは、多文化家庭の子どもを対象としたメンタープログラムや、多文化家庭と韓国人家庭を対象とした子育て情報の提供・交流などが行われた。
このプログラムは、仁川広域市から多文化家庭の子どもや親を支援する多文化教育中心学校に指定されている仁川空港小学校と、永宗島から仁川大橋を挟んだ対岸にある仁川大学校の協力を得て実施されたものである。永宗図書館は、仁川大学校及び仁川空港小学校との協力関係の構築や、プログラム全体の運営管理を行ったほか、担当司書が大学生と一緒に読書活動を行った。
プログラム内容は、言語的問題のために学校生活で困難を経験することの多い子どもの学習面と精神面に注目して構成され、仁川大学校のボランティアサークルの大学生4人がメンターとなり、仁川空港小学校の多文化家庭の子どもを対象に補習授業と読書活動を行うという形式で実施された。メンターとなった大学生が、子どもに教科を教えるだけでなく、兄弟のように親しく接しながら信頼関係を築いたことで、子どもは精神的に安定し、不足する教科の学習や、読書活動を効果的に行うことができたという。
このプログラムは、一般家庭に比べて子育てに関する情報が入手しづらい多文化家庭に情報を提供することと、多文化家庭と韓国人家庭の交流を促進することを目的として、両家庭を10家族ずつ募集して実施された。内容は、子育てに関する4つの講義と交流で、講義は、幼児の健康管理、美術・音楽教育、安全教育などのテーマで構成され、幼児のためのマッサージと鍼術体験、読書活動、心肺蘇生法(CPR)実習などの体験も含まれている。このプログラムでは、講義によって多文化家庭と韓国人家庭が子育て情報を共有するとともに、体験を通じてコミュニケーションが促進され、連帯感が形成されるといった成果が出ている。
これらのプログラムは過去に実施されたものであるが、2017年現在、同館では多文化家庭と韓国の子どもが多言語絵本を活用して世界の昔話を学ぶ「私たち一緒に学ぼう」など、文化の相互理解を中心とした多文化プログラムが複数運営されている(14)。
安山市は、韓国北西部に位置する、国内で最も多くの外国人が居住する都市である(15)。2008年、安山市外国人住民センターの一角に開館した「安山多文化小さな図書館」(16)は、現在、中国語、ベトナム語、インドネシア語など23か国語1万4,339冊の資料(このうち、韓国語・英語以外の資料は9,877冊)を備えており(17)、まさに「多文化」図書館といえよう。
2014年から同館で行われている「翼のある図書館」プログラムは、移住労働者のための読書プログラムである。プログラム参加者は、母国語で書かれた物語の本などを、順番に一段落ずつ声を出して読み、読後にその感想を分かち合う。
プログラム参加者の大半は、教科書以外の本を読んだ経験がほとんどない青年たちで、このプログラムを通して読書を楽しむほか、他の参加者やスタッフとの交流を通して、移住労働者のための雇用、医療、子どもの教育などに関する情報や、不当な扱いや処遇を受けた時の問題解決に役立つ情報を得ることもできる。
多くの言語の資料を選書し、読書プログラムを運営することは容易ではないが、同館では、プログラムに積極的に参加する参加者を「世界名誉司書」に任命し、この「世界名誉司書」が、各国語資料の選書と読書プログラムの企画を補助している。また、移住労働者人権団体や参加者と連携してプログラムを実施し、図書館がプログラム進行を、移住労働者人権団体や韓国語ができる参加者がプログラム進行の通訳を行うという形で運営されている。
なお、同館では、このプログラムの他に、様々な国籍の多文化家庭が童話とタロットカードを通じてコミュニケーションをとる「絵で理解する私と私たち:絵本とタロットカード」(18)や、多文化家庭を含む地域のお年寄りすべてを対象とした「本と一緒に行う認知症予防教室」(19)など、多くのプログラムを運営している。
韓国は、日本より一足先に、また急速に多文化時代に突入し、政府の多文化政策と共に、公共図書館における多文化サービスも発展を続けている。事例集には、本稿で紹介した事例のほかに6の事例が掲載されているが、そのすべてに共通するのは、多文化プログラムを図書館だけで運営するのではなく、学校や多文化家族・外国人支援機関(20)、民間支援団体、大使館など、関連機関・団体と協力して運営している点である。このような、韓国の公共図書館における多文化サービス事例は、日本の公共図書館で多文化サービスを企画・運営する上でも参考になるものと思われる。
(1)法務省入国管理局. “平成29年末現在における在留外国人数について(確定値)”. 法務省. 2018-03-27.
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00073.html [625], (参照 2019-01-22).
(2)日本図書館協会多文化サービス委員会編. 多文化サービス実態調査2015報告書. 日本図書館協会, 2017, 227p.
(3)정보분석과. “체류외국인 100만명 돌파!”. 법무부 출입국•외국인정책본부. 2007-08-24.
http://www.immigration.go.kr/immigration/1502/subview.do?enc=Zm5jdDF8QEB8JTJGYmJzJTJGaW1taWdyYXRpb24lMkYyMTQlMkYzMTQzOTglMkZhcnRjbFZpZXcuZG8lM0Y%3D [626], (参照 2019-01-22).
이민정보과. “2017 출입국 외국인정책 통계연보”. 법무부 출입국•외국인정책본부. 2018-06-28.
http://www.immigration.go.kr/immigration/1570/subview.do?enc=Zm5jdDF8QEB8JTJGYmJzJTJGaW1taWdyYXRpb24lMkYyMjglMkY0NDA2MDQlMkZhcnRjbFZpZXcuZG8lM0ZwYXNzd29yZCUzRCUyNnJnc0JnbmRlU3RyJTNEJTI2YmJzQ2xTZXElM0QlMjZyZ3NFbmRkZVN0ciUzRCUyNmlzVmlld01pbmUlM0RmYWxzZ... [627], (参照 2019-01-22).
(4)통계청. “인구총조사: 다문화가구 구성 및 가구원수별 가구 - 시도”. 국가통계포털.
http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=101&tblId=DT_1JD1505&conn_path=I2 [628], (参照 2019-01-22).
(5)国際結婚の中でも、特に韓国人男性と外国人女性の結婚が急増し、韓国政府は国際結婚による家庭を支援する「多文化家族支援法」を制定(2008年)するなどの対策を行っている。
白井京. 韓国の多文化家族支援法:外国人統合政策の一環として. 外国の立法. 2008, (238), p. 153-161.
https://doi.org/10.11501/1000155 [629], (参照 2019-01-10).
(6)“8. 다문화 서비스”. 2010한국도서관연감. 한국도서관협회, 2010, p. 342-351.
http://www.kla.kr/jsp/fileboard/almanacboard.do?procType=view&f_board_seq=16378 [630], (参照 2019-01-10).
(7)韓国の図書館政策を所管する行政機関。
(8)国費で7割を補助し、自治体が3割を負担する形式の補助事業で、補助対象は公募により選定される。
“8. 다문화 서비스”. 2010한국도서관연감. 한국도서관협회, 2010, p. 342-351.
同様の支援事業は2009年以降継続して行われているが、名称や詳細な内容は年度によって異なり、2019年度の名称は「図書館多文化サービス支援事業」である。また、2017年度以降はプログラム支援のみ行っている。
(9)2018 도서관 다문화서비스 우수사례집. 문화체육관광부, 한국도서관협회, 2018, 103p.
http://www.clip.go.kr/damunhwa/pds/view.asp?m_code=7&searchMode=&searchWord=&hb_PageNum=1&idx=21 [631], (参照2019-01-10).
(10)인천광역시영종도서관. “다문화 사회와 품앗이 in 영종도서관”. 문화체육관광부, 한국도서관협회, 2018 도서관다문화서비스우수사례집, 2018, p. 12-25.
http://www.clip.go.kr/damunhwa/pds/view.asp?m_code=7&searchMode=&searchWord=&hb_PageNum=1&idx=21 [631], (参照 2019-01-10).
(11)안산다문화작은도서관. “이주노동자의 날개탈린 도서관”. 문화체육관광부, 한국도서관협회, 2018 도서관다문화서비스우수사례집, 2018, p. 88-95.
http://www.clip.go.kr/damunhwa/pds/view.asp?m_code=7&searchMode=&searchWord=&hb_PageNum=1&idx=21 [631], (参照 2019-01-10).
(12)永宗島は仁川広域市中区に位置し、2017年末現在、永宗洞、龍游洞、雲西洞の行政区域を含む。
행정안전부. “행정구역(읍면동)별/5세별 주민등록인구”. 국가통계포털.
http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=101&tblId=DT_1B04005N&conn_path=I2 [632], (参照 2019-01-22).
(13)행정안전부. “지방자치단체외국인주민현황:읍면동별 유형 및 지역별 외국인 주민현황”. 국가통계포털.
http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=110&tblId=DT_110025_A033_A&conn_path=I2 [633], (参照 2019-01-22).
(14)인천광역시립영종도서관. “우리 함께 배워요”. 도서관다문화프로그램공유시스템.
http://www.clip.go.kr/damunhwa/programs/view.asp?m_code=0&addr1=&addr2=&lib_idx=200&program_idx=251 [634], (参照 2019-01-22).
(15)2017年11月1日現在の居住人数(密度ではない)による。
사회통합지원과. “2017년 지방자치단체 외국인주민 현황”. 행정안전부.
https://www.mois.go.kr/frt/bbs/type001/commonSelectBoardArticle.do;jsessionid=LJlWKSgvK2l+qM6NGJpFJCri.node50?bbsId=BBSMSTR_000000000014&nttId=66841 [635], (参照 2019-01-10).
(16)안산다문화작은도서관.
http://blog.naver.com/dadada2661/ [636], (参照 2019-01-10).
ウェブサイトにはプログラムの写真も多数掲載されており、活気に満ちた様子がよく分かる。
(17)안산시중앙도서관. ”다문화작은도서관”.
https://lib.ansan.go.kr/minLib.do?fn_seq=28451&srcYear=2018&srcMonth=8&sitekey1=31&minisitekey=10&gwan1=Y&access= [637], (参照 2019-01-10).
(18)최현호. “[경기문화읽기] 도서관의 진화-안산다문화작은도서관”. 인천일보. 2018-02-23.
http://www.incheonilbo.com/news/articleView.html?idxno=799792#08hF [638], (参照 2019-02-05).
(19)안산다문화작은도서관. “책과 함께하는 치매예방교실 개최”. 작은도서관(문화체육관광부). 2018-10-16.
http://www.smalllibrary.org/library/story/3086 [639], (参照 2019-02-05).
(20)韓国では、多文化家族支援法第12条に基づき多文化家族のための教育・相談・情報提供などの事業を実施する「多文化家族支援センター」のほか、結婚移住女性や移住青少年、外国人労働者等のための支援機関が各地に設置されている。
“다문화・외국인 지원기관”. 다문화 가족지원 포털 다누리. 2018-04.
https://www.liveinkorea.kr/portal/KOR/page/contents.do?menuSeq=211&pageSeq=42 [640], (参照 2019-01-22).
廣田美和. 韓国の公共図書館の多文化サービス-プログラム事例を中心として-. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1946, p. 11-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1946 [641]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253592 [642]
Hirota Miwa
Multicultural Services in Korean Public Libraries:Focus on Multicultural Programs
PDFファイル [644]
奈良大学図書館:森垣優輝(もりがきゆうき)
奈良大学は奈良市山陵(みささぎ)町に立地し、2学部6学科(通信教育1学科)と大学院2研究科4専攻から成る、収容定員2,456人(通信教育1,600人)の私立大学である。1969年の開学当時は同じ奈良市の宝来町にあったが、1988年に現在の校地へ移転した。図書館は校地の南東にあって、北館、南館の2つの建物で構成されており、地上3階地下2階、蔵書規模は約55万冊である。所蔵資料は文化財、歴史、文学の各分野が特に多く、市場に流通せず一般には入手困難な発掘調査報告書や、奈良関係資料が充実しているのが特色である。また、全体の9割以上は開架方式をとっていて、利用者が多くの資料を自由に閲覧可能な環境を整備している。
所蔵資料の1割強は一般社団法人日本考古学協会から受贈した資料群である。登録冊数は6万1,799冊(図書4万4,312冊、逐次刊行物1万7,487冊)で、発掘調査報告書がこのうち3万6,515冊あり、中にはガリ版刷りで流通量が少なく貴重な報告書も含まれている。2014年末から当初3年計画で受入を開始し、約半年間の延長を経て2017年10月に受入を完了した。以降の記述では日本考古学協会寄贈資料を単に「寄贈資料」と略する。
本稿では、受贈と受入の経緯、環境整備ならびに予算措置と資料登録方法について、また利用者への資料提供について述べる。大量寄贈資料の受入、利活用に関して他館業務の一助となれば幸いである。
2000年代後半、日本考古学協会において多年にわたる懸案となっていた図書保管にかかる経費負担の問題を解決するため、一括引受を条件とした寄贈先が検討されていた。2010年5月にいったんは英国のセインズベリー日本藝術研究所への寄贈が決まった。しかし、会員より、国内有数の規模である考古学関連図書コレクションの海外流出を危惧する強い反対意見が出されたため、同年9月に協会臨時総会が開催され、同研究所への寄贈は否決された(1)。
2012年、協会において国内機関を対象とした寄贈先選定の予備調査開始後、奈良大学がこれに申し込みを行い、協会の審査を経て、2014年5月の協会総会にて寄贈先が奈良大学に決定したものである。
奈良大学は日本初の文化財学科を擁して文化財専門職の育成にも取り組み、関連資料も継続的に収集している。寄贈先に名乗りを上げたのは教育効果と社会的意義を総合的に勘案した上層部の経営判断による。
受贈にあたり、奈良大学図書館と日本考古学協会の間で事前協議が行われ、相互に要望と現状を共有して問題点を把握・検討した。
協会からは、会員も利用できる環境であることが要望され、奈良大学図書館側の課題は収容力ならびに人的リソースの不足であった。
6万冊を超える資料を3年で受入するにあたり、既存の書架では収容力が足りず、新たに集密書架等を増設して図書館全体の収容力を増強する必要があった。また、年間受入冊数が約1万1,000冊(2)の図書館には寄贈資料を短期間で整理する余力はなく、外部委託の活用は不可欠だった。
図書館は校地移転にともなう建設当時から1階に手動式集密書架を有しており、今次事業の前には退職教員寄贈資料である水野文庫ならびに洋書を配架していた。このスペースをリニューアルして考古学協会寄贈資料収蔵庫にかえ、1階の図書の移動先として3階閲覧室への書架増設と南館地下への電動集密書架新設を行うことになった。1995年に新棟(南館)を増築した際、その地下2階に将来の書庫用空間を確保し、後日設置予定として長年倉庫用途等に使用していたが、このうち半分の容積を集密書架用としたものである。
実施に必要な事業予算については、遡及事業費を図書館費として、日本考古学協会より事前連絡のあった全体冊数をもとに総額の見積を取得のうえ、3か年計画で納品都度払いとし、納品冊数見通しに基づき業務委託費に毎年計上した(装備材料費は初期に一括支出)。半年間の期間延長に際しては事前の総額見積内に収める覚書を奈良大学と業務受諾者の間で取り交わした。
予算規模は、当初予算としては遡及事業費(遡及作業費、装備材料費、倉庫保管費)に約4,700万円、1階集密書架リニューアルと3階書架増設に約1,100万円を要した。さらに地下2階の電動集密書架新設工事には当初予算とは別に補正を行い、約1億5,360万円(うち書架に6,500万円)を支出している。奈良大学としては通算2億円を超える経費を投入したことになる。
資料整理は逐次刊行物も含めて物理単位で行う方針とした。外部委託にあたり、NACSIS-CATに書誌がないものについてはすべてオリジナル書誌を作成することとして、目録担当専任職員と業務受諾者の間で目録・装備仕様を定めた。寄贈資料の6割は文化財保護法に基づき各地の自治体等が発行する発掘調査報告書であり、これについては当館固有の請求記号付与ルールに則して著者記号に全国地方公共団体コード(3)を使用している。登録番号は通常の購入・寄贈の番号から独立した体系として、備品登録する寄贈図書の中でも特に区別している。既所蔵分に対する複本もすべて登録対象とした。
会報や考古学関連同人誌も物理単位ごとに登録番号を付与して登録しているが、管理上の都合でフラットファイルの1ケースに数十点を収めた(登録番号ラベルをフラットファイルにも全て貼付した)ものもある。
なお寄贈資料の中には事務連絡のプリント1枚という形態のものも含まれており、これらは後日一括登録することとして、前掲の登録冊数には含んでいない。
作業開始後、委託先からは毎月、段ボール箱20個前後(約2,500冊)の資料が納品されてきた。もともと協会の保管先から箱詰めで作業場所へ送付されていたもので、遡及作業にあたってはなるべく都道府県コードの若い順に、すなわち北の地方から順番に実施するのが望ましいと取り決められていたが、実際の作業開始後はどの箱にどの地方の資料が入っているか正確な情報がなく、開梱してはじめて判明する状態だったと聞く。このため納品後に配架すると都道府県別の配架状況に極端な濃淡が生じた。2015年度後半からは大規模な書架調整を毎月行う必要に迫られ、しかも先の見通しが不明のため一挙に調整を済ませることができず、現場合わせの移動作業を30日ごとに行うため図書館の通常業務を相当圧迫した。
発掘調査報告書群の納品終了見通しのついた2016年末には1階集密書架内、ならびに館内一部書架の大調整を行った。寄贈資料のうち約8,000冊を占める一般図書の配架場所を変更するなどの対策を実施することで、集密書架内に発掘調査報告書と逐次刊行物を収めることができた。
先述の通り、日本考古学協会からは、寄贈資料を会員も利用できる形にしたい旨、当初より要望されていた。奈良大学図書館は学外個人への貸出サービスを行っていないため図書館間相互協力による現物貸借ならびに文献複写送付と、来館利用時の閲覧・複写サービスを実施すること、来館頻度の高い方には地域公開制度(4)があることや、一時利用の手続きでも入館できることを併せて回答し、会員に周知されている。
寄贈資料は奈良大学図書館OPACで検索可能で、詳細検索の項目「文庫区分」から「日本考古学協会寄贈資料」を検索キーに指定することで、検索対象を寄贈資料に限定できる。
寄贈資料はそのほとんどが北館1階の電動集密書架に配架されており、自由に利用できる。ただし前述のように1ケース数十点の逐次刊行物を収めた形態の資料については、資料混在・不明リスクを局限したい管理上の要請により閉架書庫に収容した。閉架資料は原則として学外者の閲覧不可であるが、今次受入に際して運用方法を見直し、閉架の寄贈資料については学外者も利用可とした。
既所蔵分の複本もすべて登録対象としたことや、逐次刊行物も物理単位で登録したことで利用機会が増大しており、利用目的を寄贈資料に定めて来館する学外者もあって、寄贈資料の利用件数は増加傾向にある。
統計年度 | 貸出冊数 | うち寄贈資料 |
2016年度 | 42,368 | 540 |
2017年度 | 49,372 | 1,122 |
2018年度※ | 36,812 | 1,006 |
※2018年度統計は12月末まで、以下同じ
統計年度 | 一時利用者数 | 寄贈資料を 目的とした来館 |
2016年度 | 645 | 295 |
2017年度 | 703 | 170 |
2018年度※ | 585 | 128 |
※※いずれものべ人数
統計年度 | 学外貸借冊数 | 寄贈資料の 学外貸借使用 |
2016年度 | 403 | 35 |
2017年度 | 320 | 42 |
2018年度※ | 295 | 52 |
今次受贈事業の結果、奈良大学図書館は特に発掘調査報告書の所蔵冊数において、既所蔵の約5万冊から約1.7倍に増強することができ、質・量ともに充実した考古学関連資料群で学内外の利用者に貢献しつつある。また、短期間に受入冊数が膨れ上がったことが寄与して外部のランキングで高得点を得る(5)という副次的効果も生んだ。実施過程では困難もあったが、受贈事業は成功裏に完成したといえよう。
最後に、長年にわたり資料を蓄積・保管してこられ、寄贈先として奈良大学を選定いただいた日本考古学協会に感謝の意を表して結びとしたい。
(1)石川日出志. 日本考古学協会の記録. 日本考古学年報. 2012, (63), p. 84-116.
(2)日本の図書館2014. 日本図書館協会. 2015, p. 304.
(3)“全国地方公共団体コード”. 総務省.
http://www.soumu.go.jp/denshijiti/code.html [645], (参照 2019-01-25).
(4)学外者の入館には一時利用手続きが必要である。地域公開制度により、希望者は単年度有効のLibrary Cardを取得し、以後の入館手続きを簡略化することができる。
(5)大学ランキング2019年版. 朝日新聞出版, 2018, p. 216-217.
森垣優輝. 奈良大学図書館における日本考古学協会図書の受贈事業について. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1947, p. 14-15.
http://current.ndl.go.jp/ca1947 [646]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253593 [647]
Morigaki Yuuki
Acceptance of Books Donated by the Japan Archeology Association at Nara University Library
PDFファイル [648]
調査及び立法考査局調査企画課連携協力室:春原寛子(すのはらひろこ)
東はキリバスから西はトルコまで、南はニュージーランドから北はモンゴルまで、広大なアジア及び太平洋地域にある40の国・地域の議会図書館長等が参加する組織が、「アジア太平洋議会図書館長協会(Association of Parliamentary Librarians of Asia and the Pacific : APLAP(アプラップ))」である。
去る2018年10月31日から11月2日、APLAPの大会が、国立国会図書館(NDL)主催の下、東京で開催された(1)。本稿では、APLAPの概要と、第12回APLAP大会の様子を紹介する。
1988年8月、第54回国際図書館連盟(IFLA)年次大会(シドニー大会)の議会図書館分科会で、地域協力についてグループ討議が行われた際、日本を含むアジア地域諸国の間で、議会図書館の国際協力機関を設置することが合意された。その後、韓国国会図書館長やパキスタン国民議会図書館顧問の積極的な活動によって、1990年5月にAPLAPの第1回大会(ソウル)が開催され、その場でAPLAPの憲章及び規則が採択された(2)。憲章及び規則において、APLAPの目的は、アジア太平洋地域における国・地域の議会図書館及び議会の調査・情報サービスを担う組織間の相互協力及び知識共有を促進することと定められた(3)。
アジア太平洋地域の国・地域の議会図書館や調査・情報サービスを提供する機関は、年会費を負担すればAPLAPの会員になることができる(4)。国・地域によっては、議会制度や組織の状況から、複数機関が参加するケースもある。2018年12月現在、APLAPには40の国・地域から59機関が参加しており(5)、日本からはNDLが参加している。
APLAPの主な運営は、会長、副会長2人(アジア担当と太平洋担当)、事務局長、会計・財務担当の5役で構成する執行委員会によって行われている。各役職の任期は基本的に1期2年であり、同じ役職に就くことができるのは2期までとなっている。このほか、事務局が設置されており、APLAPの総会運営、会費徴収、公式ウェブサイトやSNSの維持管理等の実務を担当している(2018年12月現在、事務局の職務は、専らオーストラリア議会図書館が担っている)。
APLAPの大会は、原則として2年ごとに開催される(6)。大会では、設定されたテーマに沿って、参加者が報告や議論を行う。開催地は会員のいる国・地域の持回りで、日本は過去にも2000年10月に第6回大会を「議会図書館.新時代の調査・情報サービス」というテーマで東京において開催している。
また、大会期間中には、組織運営に関する協議を行うAPLAP総会が必ず開催される。
NDL開館70周年に当たる2018年、その記念事業の一環として、第12回APLAP大会が日本で開催されることとなった。日本での大会開催は18年ぶりである。
また、折しも2017年4月に開催された第11回大会(ソウル)において、NDLの坂田和光副館長(当時は調査及び立法考査局長)が新APLAP会長に選ばれた。
第12回大会は、東京都千代田区の都市センターホテルをメイン会場とし、10月31日から11月2日までの3日間の日程で行われた。どの参加機関にとっても組織運営上の基本的な課題ということから、大会のテーマに「議会図書館-立法調査サービスの人材育成」(Developing Human Resources for Parliamentary Libraries and Research Services)が選ばれた。
大会には、日本を含む20の国・地域、27の機関から総勢50人が参加した。この中には、APLAPとNDLが共同で渡航費や滞在費等の全額を助成した参加者4人と、NDLが一部費用を助成した参加者5人が含まれている。助成対象者の選考に当たっては、志望理由やこれまでの自己研鑽の取組について、APLAP執行委員会役員が厳正な審査を行った。
大会の主な内容は、次のとおりである。
NDLの羽入佐和子館長に続いて坂田会長が挨拶を行い、広くアジア太平洋の国・地域から集まった参加者に歓迎の意を表した。
続いて、IFLAの「議会のための図書館・調査サービス分科会(IFLAPARL)」会長であり、英国議会下院図書館情報管理部長のワイズ(Steve Alan Wise)氏が基調講演を行った。ワイズ氏は、図書館及び調査サービスの質を支える職員育成の重要性を述べ、英国議会下院図書館の人材育成に関する取組を紹介した。豊富な経験に基づく内容に多くの参加者が触発され、講演後は活発な質疑が行われた。
大会1日目に行った総会では、坂田会長が司会を務めた。まず、前大会の議事録の承認、財務報告等の定例議事が実施された。今回の財務報告では、APLAPの財務状況を改善させるため、会費の額を3段階にする方法が提案され、次回大会までに検討することとなった。
次に、第11回大会で当時APLAP会長であったオーストラリア議会図書館のヘリオット(Dianne Heriot)館長から発議のあった「APLAP憲章及び規則の改正」が議題となった。APLAPの憲章・規則は1990年に制定されて以来28年間変わっていなかったが、APLAP執行委員会は、社会の変化と現状を考慮し、会員要件の明確化や各種手続きの合理化等を取り入れた改正草案を1年以上かけて作成した。総会では、坂田会長が改正のポイントについて説明し、参加機関の賛成多数で改正は可決された。
続いて行われた次期の執行委員会役員選挙では、新しい会長にフィリピン議会下院事務局立法情報源管理部事務次長のパンギリナン(Edgardo H. Pangilinan)氏が選出された。副会長(太平洋担当)と会計・財務担当は交代し、候補者がいなかった副会長(アジア担当)は空席となった。
総会の最後に、次回大会の主催機関を募集したところ、ニュージーランド議会図書館が立候補し、第13回大会は2020年にニュージーランドで開催されることが決まった。
1日目に1回、2日目に2回、合計3回に分けて行ったセッションでは、大会テーマに沿って21機関がそれぞれの課題や取組について報告した。報告をした機関の置かれている状況は様々で、例えば議会図書館・調査サービスに直接関わる職員数を見ても、パプアニューギニア・ブーゲンビル自治州議会事務局の1人から、NDL調査及び立法考査局の約190人まで大きな幅がある。それゆえ人材育成に対する各機関の姿勢も多様であり、報告内容は、人員不足を訴えるもの、研修を紹介するもの、人材育成の戦略的計画を紹介するものなど、非常に多岐にわたった。各機関の報告は、いずれもより良いサービスの提供を目指す努力が示されており、参加者からは大きな刺激になったという声が聞かれた。
ワイズ氏の総評、カンボジア議会下院図書館のチャット(Khoeuth Chhut)館長による挨拶の後、坂田会長が閉会の挨拶を行った。
11月1日夕方にNDL東京本館の書庫等を、11月2日に国会議事堂(衆議院)及び江戸東京博物館を見学した。
また、10月31日の夜には衆参両院議長主催歓迎会が、11月1日の夜にはNDL館長主催歓迎会が開催された。11月1日の昼には、APLAP主催昼食会と文化体験(けん玉)が行われた(7)。
10/31(水) | 午前 |
開会式
基調講演:ワイズIFLAPARL会長
|
午後 | APLAP総会 セッション1(6機関) <衆参両院議長主催歓迎会> |
|
11/ 1(木) | 午前 | セッション2(8機関) <APLAP主催昼食会> ※けん玉体験 |
午後 | セッション3(7機関) 閉会式 NDL東京本館見学 <NDL館長主催歓迎会> |
|
11/ 2(金) | 午前 | 国会議事堂(衆議院)見学 |
午後 | 江戸東京博物館見学 |
今回の大会は、テーマが人材育成という議論のしやすい課題であったことも相まって、参加者同士が互いの知識や経験を共有し、人脈を広げる貴重な機会となった。
しかしながら、大会全体を通じて、APLAPの抱えている次の課題が浮かび上がったのではなかろうか。
まず APLAPの財政に関する課題が挙げられる。前述した会計・財務担当による段階別会費の提案は、財務の安定を図ることを目的としたものである。この提案は次回大会に向けての宿題となったが、財政に余裕のない機関も多い中、合意は簡単ではないだろう。
また、大会を主催できる国・地域が限られていることも課題である。40の国・地域が参加する中、オーストラリア、日本、韓国は既に大会を2度開催している。ニュージーランドも、次の大会が2度目である。より多くの国・地域が大会を主催できるよう、開催に係る負担を軽減するといった工夫が必要となる。
さらにもうひとつ、世界の情報環境等が大きく変化する中、憲章・規則が長らく改正されなかったことに表れているように、これまでのAPLAPの運営体制は必ずしも万全とは言えない。各機関が業務に忙しく、またAPLAP執行委員会の役員が数年おきに交代する状況において、実現は難しいが、APLAPの運営体制の強化は大きな課題である。
このように解決すべきAPLAPの課題は少なくないが、今大会で憲章・規則が改正され、段階別会費の提案がなされたことは、新しいAPLAP作りが始まったことを意味している。その礎石を築いたという点で、NDLは大きな役割を果たしたと言える。今後もNDLは、APLAPの活動を通じた会員の連携強化と、アジア太平洋地域の議会図書館、調査サービスの発展に寄与していく。
(1) 今大会の概要と写真は、APLAP公式サイトで公開されている。
“12th APLAP Conference - Tokyo”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/2018-aplap-conference-japan/ [649], (accessed 2019-01-25).
(2) 藤田初太郎. 議会図書館の国際協力:「アジア太平洋議会図書館長協会」の設立大会に参加して. 国立国会図書館月報. 1990, (353), p. 2-9.
調査及び立法考査局. 新時代に向かうアジア太平洋議会図書館長協会(APLAP):第六回東京大会報告. 国立国会図書館月報. 2000, (477), p. 2-9.
なお、第1回大会の2日前にプレ大会が台北で開催された。
(3) “About APLAP”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/about/ [650], (accessed 2018-12-05).
(4) 具体的には、機関の長(又は同等の職位にある者)がAPLAPの会員(Institutional Member)になる。
Constitution “3. Membership”. “Constitution and By-Laws”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/about/constitution/ [651], (accessed 2019-01-25).
(5) APLAPの会員は公式サイトを参照。
“Members of APLAP”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/members-of-aplap/ [652], (accessed 2018-12-05).
(6) 2006年の第9回大会(ウェリントン)以降しばらく大会が開催されない時期が続いた。しかし2015年に第10回大会(キャンベラ)が開かれて以降、2017年の第11回大会(ソウル)、2018年の第12回大会(東京)と続いている。
(7) 当日の様子は国立国会図書館月報2019年2月号を参照。
第12回APLAP大会. 国立国会図書館月報. 2018, (694), p. 18-21.
https://doi.org/10.11501/11236030 [653], (参照 2019-02-05).
春原寛子. 第12回アジア太平洋議会図書館長協会(APLAP)大会. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1948, p. 16-18.
http://current.ndl.go.jp/ca1948 [654]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253594 [655]
Sunohara Hiroko
The 12th Conference of the Association ofParliamentary Librarians of Asia and the Pacific
PDFファイル [657]
関西館電子図書館課:本田伸彰(ほんだのぶあき)
国立国会図書館(NDL)では図書や雑誌など紙媒体の資料等に加え、再生環境の旧式化や媒体自体の劣化が危惧されるアナログ形式の録音・映像資料のデジタル化を進めている。録音資料のカセットテープやソノシートに続き(E2057 [658]参照)、2016年度からは映像資料であるレーザーディスク(1)(LD)のデジタル化(2)の検討を開始し、2018年度から本格的にデジタル化に着手した(3)。
本稿では、デジタル化に向けた技術面の課題や、デジタル化したデータを「国立国会図書館デジタルコレクション」(4)(以下「デジタルコレクション」)を通じて提供する際に考えられる課題の検証結果などを中心にNDLの取組みについて報告する。
LDは、レーザー光を照射して盤面に記録された映像や音声の情報を読み取り再生する光ディスクである。1970年代に欧米を中心に開発が進み、国内では1981年に民生用のプレイヤーがパイオニア株式会社から発売され「絵の出るレコード」とも言われ人気を博した。
カラオケソフトや映画、アーティストのライブ映像、過去のテレビ番組を収録したものなど多様なタイトルが発売された。多くのメーカー(5)が市場に参入し、1990年代初頭に各社のLD事業はピークを迎えたが、その後は通信カラオケの普及に伴う需要の減少やDVDの登場により、急速に市場が縮小することとなった(6)。2009年には再生機器の生産が終了(7)するなど、長期的な利用を保証するための対策は急務となっている(8)。
デジタル化の検討にあたり、事前調査としてNDL職員による複数の映像関係の業者(9)へのヒアリングや文献調査を2016年度前半に実施した。そこで得られた情報を基に2016年度後半には、デジタル化の仕様決定やコストの検討等を目的にデジタル化の試行を実施した(10)。
2017年度には事前調査や試行の結果について検証を行った。主な検証内容について技術面と提供面に分けて以下に述べる。
LDには、記録方式の違いによりCAV(Constant Angular Velocity)とCLV(Constant Linear Velocity)の2種類のディスクがある(11)。CAVは一定の角速度(12)で回転するディスクで、収録時間が片面30分で「標準ディスク」とも呼ばれる。一方のCLVは一定の線速度(13)で回転するディスクで、収録時間が片面60分で「長時間ディスク」とも呼ばれる。
この記録方式の違いが、デジタル化作業に与える影響やコストの違いについて業者に確認したが、特に違いはなくデジタル化時に留意する必要はないことが分かった。
LDの特徴としてチャプター(14)の機能がある。チャプターの情報は、デジタル変換した際に自動的に移行されず、編集作業により情報を付与するにはコストも掛かるため、デジタル化で再現しないこととした。
なおLDには、チャプターの機能を用いたインタラクティブなソフトがある。再生中に現れる分岐点で選んだ選択肢によって次に現れる映像が異なるものなどがあり、NDLでも実写の映像を使った推理ゲーム(15)などを所蔵している。ただし、現在のNDLの視聴環境(16)では再生できず、チャプターもデジタル化で再現しないことから、当面デジタル化の対象としないこととした。
1993年には、MUSE(17)方式と呼ばれる帯域圧縮技術を用いたHi-Vision LD(18)が市場に登場した。高精細、高品位な映像が特徴であったが、当時はディスプレイが非常に高価だったことなどもあり、大きく普及したとはいえなかった。
また1995年には、映画館に近い臨場感ある音響が楽しめるLDとして、5.1チャンネル(19)の音声素材をまとめて圧縮し、1つのデジタル信号として扱ったドルビーサラウンドデジタル(AC-3)のLD(20)が登場した。
Hi-Vision LDの再生には専用のデコーダ(21)が必要で、現在のNDLの視聴環境で再生することができない。また、AC-3のLDもNDLに専用のデコーダがなく、5.1チャンネルではなく2チャンネルでの再生となっている。そのためいずれも、当面デジタル化の対象としないこととした。
試行では、これまでNDLが実施した他のデジタル化案件と同様、デジタルコレクションを通じて提供することを想定した提供用データと、高品質の保存用データの2種類を作製した(22)。また、データのファイル形式は提供用、保存用ともMPEG-4 AVC(H.264)形式とし、ディスクの片面で1ファイルを作製することを基本とした(23)。
提供用データの仕様は、すでにデジタルコレクションで公開している映像資料(24)に合わせた。保存用データは、なるべく高画質、高音質が理想(25)とされているが、デジタル化に係る手間やコスト、データ容量を考慮し、実現可能な仕様を求めた。4パターンの映像部分のビットレート(26)、3パターンの音声部分のビットレート、2パターンの解像度(27)を織り交ぜ、表1にある8つのパターンの仕様を検証した。
その結果、解像度をフルHDにするとアップコンバートの作業が発生し、データ変換に時間が掛かり、その分コスト増になることが分かった(31)。また、必要以上に映像や音声のビットレートを上げなくても、LDの品質をカバーできることも分かった。そのため、映像部分のビットレートを10Mbps、音声部分のビットレートを128kbps、SDの解像度(表1のパターン6)で保存用データを作製することとした。
保存用データ | 提供用データ | ||||||||
パターン | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
フレームレート(28) (fps) |
30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
ビットレート (映像部分) (bps) |
100M | 50M | 25M | 50M | 25M | 10M | 50M | 50M | 1,024k |
ビットレート (音声部分) (bps) |
128k | 128k | 128k | 128k | 128k | 128k | 384k | 224k | 128k |
解像度 (フレーム幅x フレーム高) |
フルHD(29)
(1920x1080)
|
SD(30) (720x480) |
SD (720x480) |
LDには、吹き替えの日本語と英語が収録された洋画作品や、副音声に別内容の解説が収録されたドキュメンタリー作品など、複数の音声を選択できるものがある。
現在のデジタルコレクションでは、映像の情報と音声の情報を分けて持ち、連動させて同時に再生することはできない(32)。そのため、複数音声が収録されたLDをデジタル化する場合、音声の情報だけを複数持ち映像と連動させることができればデータ容量等を抑えることができるが、実際には音声の種類ごとに音声と映像両方の情報を持ったデータが必要となる。
デジタル化の本格実施に向けては、ファイル容量の増加やデジタル化に係るコスト等に鑑み、全ての音声パターンをデジタル化するのではなく、音声の内容が同じでステレオとモノラルがある場合などは、ステレオのみをデジタル化することなどを決めた。
LDグラフィックス(LD-G)(33)と呼ばれる種類のLDでは、再生中にプレイヤー側の操作によって字幕のオンとオフを切り替えることができる。字幕のオンとオフを切り替える機能は、デジタル化で再現することができず、字幕のあるパターンと、字幕のないパターンをそれぞれデジタル化する必要がある。
そのため、デジタル化の本格実施時には、外国語の音声に日本語の字幕がある場合は字幕がある場合のみをデジタル化するなどとした(34)。
LDでは、映像の途中に静止画が挿入(35)されている場合がある(36)。静止画の挿入されたLDをプレイヤーで再生すると、静止画の挿入場所でいったん停止し、プレイヤー側の操作により先に進むことができる。その一方で、デジタル化したデータをデジタルコレクションの環境で再生しようとすると、静止画で停止せず映像の1コマとして一瞬で過ぎ去ってしまい、内容を確認することができない。静止画を切り出し、映像とは別に画像として提供する可能性を考慮し、デジタル化の試行では静止画を切り出す方法についても検証した。切り出しの方法には、映像としていったん取り込んだものを静止画として切り出す方法と、LDから直接静止画としてキャプチャする方法があるが、後者の方が、デジタルノイズが出にくいことが分かった。
ただし、デジタルコレクション上で静止画をどのように提供するかなど(37)、検討すべきことが多く、当面デジタル化の対象としない方向で検討している。
検証内容(表2)を踏まえ2018年度から、静止画が収録されたものを外すなど、比較的単純な機能を持つ30タイトルから本格的なデジタル化に着手した。LDが持つ複雑な機能をどこまでデジタル化で再現できるのか、再現すべきなのかは大きな課題である。
また、再生機器の確保が難しく、一度にデジタル化することができる数量にも限りがある。音声を1パターンのみ、静止画を考慮しないなどすれば、デジタル化の速度を早めることも可能であろう。ただしその場合、LDを特徴づける多様な機能が失われることになることから、筆者としては引き続き慎重に検討を重ねる必要があると感じている。
検証内容 | 対応方針 |
チャプターの取扱い | デジタル化で再現しない |
Hi-Vision LDの取扱い | 当面デジタル化の対象としない |
ドルビーサラウンドデジタル(AC-3)LDの取扱い | 当面デジタル化の対象としない |
保存用映像データの仕様 | フレームレート30fps、ビットレート(映像部分)10Mbps、ビットレート(音声部分)128kbps、解像度SDとする |
複数音声の取扱い | すべての音声パターンをデジタル化することはしない。音声の内容が同じでステレオとモノラルがある場合などは、ステレオのみをデジタル化する |
字幕の取扱い | すべての字幕パターンをデジタル化することはしない。外国語の音声に日本語の字幕が出る場合などは、字幕がある場合のみをデジタル化する |
静止画の挿入されたLDの取扱い | 当面デジタル化の対象としない |
(1) 過去には「レーザービジョン」や「光学ビデオディスクレコード」などの名称も使われたが、本稿では一般に最も浸透していると思われる「レーザーディスク」に統一した。なお、レーザーディスクに関連する国内の規格としては下記などがある。
社団法人日本レコード協会. RIS 401:1992. 光学ビデオディスクレコード用附属品. 社団法人日本レコード協会, 1992, 10p.
(2) NDLは約1万5,000タイトルのLDを所蔵しているが、国内外の図書館や博物館等で同等規模の数量のLDをデジタル化した事例は見当たらない。
(3) NDLがデジタル化する映像資料の利用については、権利者団体や出版者団体など関係の団体や機関と協議し、2015年度に合意事項を取りまとめている。
“国立国会図書館がデジタル化した映像資料の利用に係る合意事項(国図電1603291号)”. 国立国会図書館. 2016-03-31.
http://www.ndl.go.jp/jp/preservation/digitization/eizou_agreement.pdf [659], (参照 2018-12-28).
(4) 国立国会図書館.“国立国会図書館デジタルコレクション”.
http://dl.ndl.go.jp/ [660], (参照 2018-12-28).
(5) パイオニア株式会社の他、ソニー株式会社、ヤマハ株式会社、松下電器産業株式会社、三洋電機株式会社などがプレイヤーを販売した。
(6) 本稿で紹介するLDの開発や販売に関する歴史的経緯、概要等については、下記の文献等を適宜参照した。
松村純孝. “LD(レーザディスクシステム)の開発、実用化に関する系統化調査”. 国立科学博物館技術の系統化調査報告. 国立科学博物館産業技術史資料情報センター編. 国立科学博物館, 2014, (21), p. 145-216.
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/085.pdf [661], (参照 2018-12-28).
松村純孝. LD(レーザディスクシステム)の歴史:その誕生から終了まで. 電気学会誌. 2017, 137(11), p. 772-775. レーザーディスク協会編. レーザーディスク/ハイビジョンLD ソフトウェア制作ガイドブック. 第4版, レーザーディスク協会. 1996, 50p.
中牟田正造. 図説によるシステムの全貌 光学式ビデオディスクシステム. 電子技術. 1981, 23(12), p. 26-45.
(7) 以下を参照した。
“報道資料 レーザーディスクプレーヤー生産終了のお知らせ”. パイオニア株式会社. 2009-01-14.
http://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/index/422 [662], (参照 2018-12-28).
松村純孝. LD(レーザディスクシステム)の歴史 ~その誕生から終了まで~. 電気学会誌. 2017, 137(11), p. 772-775.
(8) ヒアリングを実施した業者によると、媒体自体の劣化としては、一般的に1980年代前半に生産されたLDで、素材のアクリル樹脂の吸湿性が高いために接着面がはがれたり、内部が変色したりしてしまっているものがあるという。
(9) 単に「業者」と表記するが、ヒアリングした企業はいずれも録音・映像資料を扱う専門性の高い業者である。
(10) 業者に委託して実施した。委託業者にはデジタル化作業時に気付いた点などを、報告することを求めた。
(11) それぞれにディスクの直径が30cmのものと20cmのものがあり、カラオケソフトなど短時間のプログラムでは20cmのものが使われるなどした。
(12) 一定の回転運動において、単位時間あたりに進む角度の変化量のこと。
(13) ここでいう線速度は、単位時間あたりに読み込む情報が記録された溝の長さをいう。つまり線速度が一定の場合、円の内側を読み取る場合は角速度が大きく、外側を読み取る場合は角速度が小さくなる。
(14) チャプターは、LDの内容を幾つかの固まりに分けた先頭の目印のようなもので、プレイヤー側の操作で任意のチャプターから再生することなどができる。
(15) 『ミステリーディスク 殺しの迷路(シリーズ「推理ゲームディスク」第2弾)』(NDL請求記号:YL311-1115)など。このほか、専用のPCやコントローラがないと操作できないソフト(『アストロン・ベルト』(同:YL311-1170)や『バッドランズ』(同:YL311-1172)など)も所蔵している。
(16) NDL東京本館音楽・映像資料室の視聴環境では、再生、一時停止、先送り、巻戻し、前後のチャプターへの移動が可能である。ただし、任意のチャプターへの移動はできないため、インタラクティブなLDの再生は実質不可である。
(17) MUSEはMultiple Sub-Nyquist Sampling Encodingの略で、多重サブサンプリング伝送と訳される。
(18) Hi-Vision LDについては、下記などを参照した。
レーザーディスク協会編. 前掲. p. 29-32. 松村純孝. “LD(レーザディスクシステム)の開発、実用化に関する系統化調査”. 国立科学博物館技術の系統化調査報告. 国立科学博物館産業技術史資料情報センター編. 国立科学博物館, 2014, (21), p. 145-216.
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/085.pdf [661], (参照 2018-12-28).
(19) 高帯域フルレンジの前方3チャンネルと後方2チャンネルに、サブウーハー駆動用の低域専用のチャンネル(0.1チャンネルと呼ばれる)を加え、5.1チャンネルとなる。
(20) ドルビーサラウンドデジタル(AC-3)のLDについては、下記を参照した。
レーザーディスク協会編. 前掲. p. 23-26.
(21) 圧縮されたデータを復元する装置のこと。
(22) 委託業者には、提供用データを外付けハードディスクに、保存用データをブルーレイディスク(BD-R)に格納して納品することを求めた。
(23) LDには、アニメの短編集やカラオケソフトなど、内容を短編1話ごと、楽曲1曲ごとに分けることができる資料も多い。デジタル化で再現しないチャプターの機能を代替するものとして、短編1話ごと、楽曲1曲ごとにファイルを作製してデジタル化することを検討した。しかし、ファイルを分割する編集作業にコストが掛かることや、現状のデジタルコレクションでは分割したファイルを連続再生することができないことなどから、一律片面で1ファイルを作製することとした。なお、録音資料のカセットテープやソノシートのデジタル化の際も、片面で1ファイルを作製している。
(24) 「愛・地球博」コレクションに含まれる映像資料に合わせた。NDLがデジタル化したものではなく、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)に関する資料を一般財団法人地球産業文化研究所(GISPRI)がデジタル化したもの。
“愛・地球博関係デジタル化資料の国立国会図書館への寄贈について”. 一般財団法人地球産業文化研究所. 2016-02.
http://www.gispri.or.jp/newsletter/201602 [663], (参照 2018-12-28).
(25) 理想をいえば、作製するデータは非圧縮の形式が推奨される。試行でも、一部のタイトルについては非圧縮のAVI形式(拡張子「.avi」)、MOV形式(拡張子「.mov」)でファイルを作製し、データ容量の違い等を確認したが、データ容量が非常に大きくなり50GBのBD-R1枚に約4分30秒分の映像しか記録することができなかった。
(26) 圧縮された映像データや音声データが、単位時間(1秒が一般的)あたりどれくらいのデータ量(ビット)で表現されているかを表したもの。以下に詳しい。
IMAGICA. 映画・映像データの取り扱い、仕組みと実際(映像データの取り扱いに関する技術セミナーに向けた,教材作成並びに講師派遣委託事業). 国立映画アーカイブ. 2016, p. 10-13.
http://www.nfaj.go.jp/fc/wp-content/uploads/sites/5/2017/03/a0c8088fdf09bbd4ba1436b1a317da52.pdf [664], (参照 2018-12-28).
(27) 画像や映像の精細さを表すもので、横と縦のピクセルサイズで「720x480」などと表記する。前掲. p.7-10. 及び以下に詳しい。
“ポストプロダクション技術マニュアル”. 第7版, 一般社団法人日本ポストプロダクション協会, 2015, p. 78-80.
(28) 映像を構成する連続した画像(フレーム)が、1秒間に何枚更新されるかを表す。この値が高いほど、画面の表示がなめらかになる。
IMAGICA. 前掲. p. 30-33.
(29) Full High Difinitionの略。BSデジタル放送の一部や市販のBDソフトに収録の映像に使われている解像度。
(30) Standard Definitionの略。アナログ放送時代に主流だった解像度で、市販のDVDソフトに収録の映像に使われている解像度。
(31) モニターレベルでの検視聴では、フルHDにアップコンバートすると、逆に残像が出てしまうことも判明した。
(32) 映像と音声を連動させるプログラムをデジタルコレクションに組み込む方法は、コスト面などから現在は実現が難しい。
(33) 字幕のオンとオフが切り替えられるLDとしては、LDグラフィックス(LD-G)の他、クローズドキャプションと呼ばれる技術を用いたものが後年登場した。
(34) 日本語の音声に英語など他言語の字幕が出る資料は、字幕のある、なし両方をデジタル化することとした。
(35) 理論上、CAV(標準ディスク)の片面に最大5万4,000枚の静止画を収録することができる。静止画の有無、枚数、挿入場所の詳細は、実際にLDを全編再生して確認する必要がある。
(36) 試行では、14タイトルをデジタル化したが、そのうち4タイトルに静止画が含まれていた。医療用内視鏡の画像診断技術を題材にしたタイトルで消化管内部の画像が挿入されていたり、エジプト文明を紹介したタイトルでピラミッドの画像が挿入されていたりした。
(37) 他機関の例では、静止画の部分を1枚5秒にして再生している例もあるが、その方法を採用した場合、静止画の枚数が多ければそれだけで映像の収録時間やデータ量が劇的に増えてしまう恐れがある。
本田伸彰. レーザーディスクのデジタル化に向けた国立国会図書館の取組み. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1949, p. 19-22.
http://current.ndl.go.jp/ca1949 [665]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253595 [666]
Honda Nobuaki
Challenges of the National Diet Library for Digitizing Laser Discs
PDFファイル [669]
新宿区立中央図書館:滑川貴之(なめかわたかし)
国内の公共図書館(以下「図書館」)では、2000年前後からビジネス支援サービスへの積極的な取り組みが実施され、そのサービス内容も多様化し、事業報告も増加してきた。本稿では、図書館のビジネス支援サービスについて、先行文献から研究動向を把握するだけでなく、そのサービスの実態を明らかにすることを目的としたい。
まず、ビジネス支援サービスの発展の経緯を俯瞰し、各図書館の事例報告記事から図書館サービスの実態を明らかにする。一方、図書館がビジネス支援サービスを実施するうえで必要な知識・技術を、日米の職員研修の内容及び文献から把握する。以上により、図書館におけるビジネス支援サービスの全体像が理解できると考えられる。
日本の産業界では、景気の低迷を反映して1996年から1999年には、企業の開業率3.5%、廃業率5.6%という逆転状況となり(1)、大企業を中心にリストラが進み、失業率が上昇していた。そこで、創業を活発化し雇用を拡大するための政策が求められていた。
そのような中、ジャーナリストである菅谷は、米国の図書館についての報告で、各図書館におけるビジネス支援機能の一端を紹介した(2)。これを契機とし、産業界、公共図書館、専門図書館の関係者、菅谷らにより、2000年に「ビジネス支援図書館推進協議会」(以下「協議会」)(3)が設立された。ビジネス支援図書館のモデル事業を展開して、その成果を公開し、新しい図書館の可能性を示すことが目的とされた。こういった協議会の機能が、図書館におけるビジネス支援サービスの普及を促したとみられる。協議会のこれまでの活動については、齊藤らが報告を行っている(4)。
なお、ビジネス支援図書館のあり方については、次のような提案が出されている。竹内は、中小企業の自立に実際に役立つ情報源の整備やレファレンス機能の充実を提案した(5)。情報リテラシー教育を実践する立場の田中からは、図書館とビジネス支援専門機関との連携が(6)、さらに森田からは、図書館と産学官の結びつきの重要性が指摘された(7)。石津は知識経済時代に向けての図書館の役割の重要性とPCや商用データベース導入の必要性を(8)、山重は、地域資源の活用のための図書館の地域資料の重要性を強調した(9)。北は、図書館を取り巻く経済、行政的状況を把握し、ビジネス支援図書館の存在の見取り図を示すこと、戦略と戦術の切り分けの必要性を示した(10)。経営人類学の視点から中畑は、労働者の生活の質向上のためには、図書館の相談業務、レファレンス機能の拡充が必要であるとしている(11)。高坂(12)、常世田ら(13)は、米国の図書館の事例をふまえ、日本の図書館に必要な機能を論じている。
なお、伊藤(14)、田井(15)、大森(16)からは、米国のビジネス支援サービスとの比較や、商用データベースの導入の少なさ、利用者ニーズの欠如、サービス検証の不足などの点から批判も寄せられている。
一方、国の施策としては、文部科学省が、2005年1月に「地域の情報ハブとしての図書館-課題解決型の図書館を目指して-」(17)、2006年3月に「これからの図書館像-地域を支える情報拠点をめざして-」(18)を発表した。前者では、「司書によるレファレンスや情報検索機能、を核としながら、重層的なネットワークを活用することにより、課題解決型の新しいサービスの提供」を提案し、地域課題として、「ビジネス支援」「行政情報提供」「医療関連情報提供」「法務関連情報提供」などをあげている。
こうした動きと前後し、司書養成課程の根拠である「図書館法施行規則」が2011年に改正され、「情報サービス」が重要な領域として位置づけられた(19)。
ところで、同時期、東京都立図書館等の実践の中では、奥村らが「サブジェクトライブラリアン」の可能性を模索している(20)。これは、日々の生活の中でニーズが高いが、情報提供する上では配慮が必要なビジネス、法律、健康医療などの情報支援をとりあげ、レファレンスを中心とした図書館機能の枠内でどのようなサービスが可能かを検討し、そのために必要な能力を明らかにし、人材育成を図るものである。その成果は主に、都道府県立図書館で、市町村立図書館を対象とした研修の実施という形で現れている。
以上が、ビジネス支援サービスが普及した前提の一つと考えられる。
さて、2006年、2008年と2011年に、協議会では現状を把握するため、「ビジネス支援図書館サービス全国アンケート」を実施した(21)。その結果、ビジネス支援の実施館が121館(回答数1,054)から192館(回答数843)、さらに2011年には208館(回答数700)に増加していることが明らかになった。
調査結果からは、住民の課題解決やニーズの変化に対応するため、コーナーの設置や選書の見直しなど可能なことから着手されているものの、ビジネス支援サービスの本格的実施のためには、研修体制、予算・人員、関係機関との連携を課題視している実態がうかがえる。さらに、地域企業と経済の発展のために、地域資料に重要性を見出していることがわかる。
他方、全国公共図書館協議会でもビジネス情報関連サービスの実態調査を、課題解決支援サービスに含めて2014年に実施した(22)。協議会が実施した3回の調査と単純に比較することはできないが、サービスを行っている館は全体で570館(回答数1,342)あり、増加傾向にある。
図書館のビジネス支援機能の普及の原動力となった要因として、米国の先進図書館の事例報告が挙げられる。菅谷はニューヨーク公共図書館をはじめとする図書館について報告し(23)(24)、電子資料や、顧客の情報ニーズの把握、ビジネスの専門家と連携しての事業実施、図書館を核としたネットワークの形成の重要性を強調した。その後、米国のビジネス支援については、安藤(25)・上田(26)が報告を行っている。
これ以後、早期にビジネス支援を開始した図書館や協議会から事例報告が相次ぎ、ビジネス支援サービスを始める図書館向け「支援ガイド」が出された。
豊田は、米国の図書館等の見学経験から、日常のレファレンス質問で頻出である、企業情報、人物情報、業界動向等のテーマに基づき資料を紹介する「テーマ別パンフレット」の重要性を強調している(27)。
常世田(28)(29)、白沢(30)(31)は、2001年度からサービスを開始している浦安市立図書館(千葉県)の実践を通し、浦安市商工会議所との連携で実施したビジネス支援セミナーと個別相談会や、日経テレコン21などの商用データベース、図書館で作成した「ビジネス支援基本情報源」によるビジネスレファレンスの充実について紹介している。また山崎は、秋田県立図書館での実践から、関連資料の収集や提供、専門機関との連携など、段階的に構築していくことと、地域の特性を生かしたサービスを提供することを指摘している(32)。
協議会設立以前からすでにビジネス関連サービスを実施していた図書館のあいだでは、「ビジネス支援」という視点でサービスを整理する動きもみられた(33)。1959年開館の神奈川県立川崎図書館は、自然科学と工学分野の専門的資料の提供を主体としたサービスを展開していたが、1998 年に「科学と産業の情報ライブラリー」としてリニューアルし、さらに、2005 年にビジネス支援室開室により、本格的にビジネス支援サービスを始めた(34)(35)。ここでは、知的財産権分野のサービスを中心に、産業関連団体と連携した発明相談等の相談業務、講座の開催に取り組んでいる。
大阪府立中之島図書館では、1904年の創設(当時、大阪図書館)以来、大阪産業界に対して、主として特許資料を軸に「商工資料」サービスが展開されていたが、2004年4月から、「ビジネス支援室」を設置し、デジタル資料の導入や、ビジネスセミナーの開催がなされ、本格的な支援サービスに切り替わっている(36)(37)。
2005年には、東京都立中央図書館でのレファレンス事例をまとめた『事例で読むビジネス情報の探し方ガイド』(38)が出版された。主題別の構成になっており、レファレンス事例が集約されているため、ビジネス支援サービスを始める図書館には有用である。また、同館の商用データベース提供、レファレンスサービスについて青野らが報告を行っている(39)。
ビジネス支援を行ってきた静岡県立中央図書館(40)では、2006年に『図書館のビジネス支援はじめの一歩』(41)をまとめ、ビジネス支援の概要だけではなく、起業プロセスや産業支援機関・類縁機関ガイドが詳しく示されている。
各館のサービスについては、沖縄県立図書館(42)、静岡市立御幸町図書館・神奈川県立川崎図書館・品川区立大崎図書館(東京都)(43)・諫早市立諫早図書館(長崎県)(44)・北広島市図書館(北海道)(45)・熊本県立図書館(46)の事例が紹介されているが、ここでは、協議会が行ったアンケート調査に基づき、そのサービス内容、方法などを整理し、示すこととする。
協議会によるアンケート調査の結果、コーナーの設置、選書の見直し等、まず資料・情報源の整備に着手する図書館が多かった。さらに、「企業情報」「人物情報」「業界動向」などの頻出のテーマに沿って選定した専門資料をビジネス資料コーナーに別置し、ブックリスト、パスファインダー、その他のレファレンスツールを作成し、利用者にわかりやすく提供するといった工夫が、新潟市立図書館などの事例報告(47)に見られた。これらの資料は、通常の書架で日本十進分類法(NDC)により配架できるが、ビジネス用途にもとづいた頻出のテーマにより分類し、一般の資料と別置した方が利便性が高いと考えられる。各種ツールの中では、国立国会図書館(48)(49)や都道府県立図書館等が作成したパスファインダーは、豊富な所蔵資料をわかりやすく案内するだけではなく、より小規模な図書館の資料選定ツールとなっている。なお、都道府県立図書館と政令指定都市立図書館に対しては、伊藤らによるウェブ上パスファインダーの調査(50)や、高田による情報リテラシー育成支援の調査(51)がなされている。
このように、資料の収集・展示、各種ツールの作成については、先進図書館によって作成された「支援ガイド」等を参照しながら、ふじみ野市立上福岡図書館(埼玉県)の報告事例に見られるように、各図書館が事情に応じて、可能な範囲で取り組んでいる実態がうかがえる(52)。
新潟市立中央図書館等では、日本政策金融公庫と連携して、ビジネス融資相談会を定期的に開催している(53)。起業希望業種に合わせて、事前に図書館側が事業計画の書き方や業界動向などの所蔵資料を準備し、中小企業診断士が起業事例や法的規制などの実践的な情報を持ち寄り、相談に当たるものである。相模原市立橋本図書館では、相模原市産業振興財団と連携し、創業・起業ビジネス相談会を共催し、ビジネスレファレンス機能を拡充している(54)。
専門機関の機能と図書館資料を個々の利用者に対して直接組み合わせて情報支援サービスを行うこうした事例は多くはないが、図書館の提供する情報源と相談事業の相性の良さを示しているともいえる。
例えば滑川は、図書館のビジネス相談を利用して起業した事例を分析した(55)。個々の起業希望者に対し、中小企業診断士が担当した相談内容と、図書館側が担当したレファレンス内容が、起業にどのように影響しているかを捉え、専門家による相談により方向づけされることで、図書館のレファレンス機能が効率化されることを示した。
さらに、浦安市立図書館等のように、数十人の定員でビジネス・セミナーが開催された図書館もある(56)。図書館の起業相談では、経理、起業手続き等、起業に共通する業務や、ビジネスネットワークの形成に苦手意識を感じている例がみられる(57)が、このような参加者に対しては、ビジネス・セミナーが有効と考えられる。
一方で、隣接する行政機関と連携が行われる事例も存在する。熊本市のくまもと森都心プラザ図書館では、「ビジネス支援センター」が併設されており、開館時間中は中小企業診断士、行政書士などの相談員が常時相談を受けている(58)。さらに、館内のビジネス支援センターに隣接する場所にビジネス書を配置する他、企画展示を行っている。2004年からビジネス支援を開始している静岡市立御幸町図書館のビジネス支援サービスは、同じビルの産学交流センター構想とセットで準備が進められ、資料収集のほか、相談事業のシームレス化、講座やイベントでの棲み分けが図られている(59)(60)(61)。
専門機関との連携で相談等の事業を実施した図書館からは、起業に成功した等の成果が静岡市立御幸町図書館(62)・鳥取県立図書館(63)(64)(65)(66)・秋田県立図書館(67)・新居浜市立別子銅山記念図書館(愛媛県)(68)・熊本県立図書館(69)から報告されている。
ビジネス関連資料の収集、提示、専門機関と連携した事業は、現在のビジネス支援サービス事業の核といえるが、さらに発展的な企画が展開され、サービスの可能性を広げている図書館の事例もみられる。
鳥取県立図書館は、文部科学省の委託事業「地域の図書館サービス充実支援事業」を受託して「図書館で夢を実現しました大賞」(70)を実施し、図書館の資料や機能を活用して得られた情報や継続的な利用が、商品開発や技術開発、起業・創業につながった事例を全国公募した。この事業により、特にビジネス分野における図書館活用法の周知が図られた。
広島市立中央図書館では、広島県中小企業診断協会、広島県信用保証協会と連携し、ビジネス相談会を行ったが、2013年から新たに日本政策金融公庫と連携し、日本政策金融公庫が開催する「高校生ビジネスプラン・グランプリ」のための「ビジネスプラン作成講座」を日本政策金融公庫と共催で実施している(71)。これは、ビジネス支援サービスの対象を広げるとともに、学習指導方法「アクティブ・ラーニング」を意識したものである。また、起業相談で起業予定者に対する支援内容である事業計画作成を、高校生のリテラシーの向上、図書館利用率の向上に応用した意義も大きい(72)。
ビジネス支援サービスは、そのサービスエリアの産業とは、密接なつながりを持つ。特に、地場産業に特徴のある地域は、ビジネス支援サービスが意識される以前から、資料選定やレファレンスのテーマに影響を受けてきたと考えられる。
岐阜市立図書館は、地場産業に重点をおきファッションライブラリーとして整備された。専門誌、海外誌を含む専門資料を所蔵しており、岐阜市立女子短期大学等と連携して作品のショーウィンドウ展示や、ファッションショーを行った(73)。
小山市立中央図書館(栃木県)では、「ビジネス支援コーナー」を設置し、ビジネスセミナーを開催するなど、2005年からビジネス支援サービスを開始したが、次の点で独自性が見られる(74)。まず、サービス開始にあたり「おやまビジネス支援連絡会」を発足させ、産官学の各連携先を確保したこと、次に、「農業支援」をテーマに掲げ、農業関係資料を収集するだけでなく、農業支援に特化したウェブコンテンツの中でパスファインダーやリンク集を提供する点、さらに、小山市の農業や特産品が一目でわかる「おやまブランド特産品コーナー」を設置し、関連記事を掲示、パンフレット配布を行っている点である。
さらに、特徴のあるサービス事例として、図書館のネットワークをとおして観光産業を振興させようとする観光展示の取り組みが、愛媛県立図書館や宇佐市民図書館(大分県)を中心に現れた(75)(76)。温泉とサッカーを地域資源と捉え、現地に行かなければ入手できない観光チラシ等を、サッカーチームの本拠地が所在する自治体の図書館同士が交換し、サッカーの試合に合わせて展示するという「図書館で温泉ダービー」の試みである。
他に、地域に特化した資料を集中的に収集している事例としては、自動車産業が集積する地域にある豊田市立中央図書館(愛知県)「自動車資料コーナー」(77)や、集積するIT産業や地場産業の染色業、印刷業を含む約400紙の業界紙を所蔵している新宿区立角筈図書館(78)の事例が報告されている。また、石川県立図書館は、「加賀藩」や「前田家」に関するレファレンス事例をビジネス支援の側面を意識しながら「レファレンス協同データベース」に登録している(79)。伊万里市民図書館(佐賀県)の利用者が世界初の「有田焼万華鏡」を開発した事例からは、地域資料である有田焼関係資料が、売上げを向上させるためのマーケティング資料、焼き物、ガラス、金属などの工業資料、窯業の専門家のアドバイスと組み合わさることで、多様な可能性を生み出すことが理解できる(80)。
以上のような多様なビジネス支援サービスの一端を捉えるために、田村らによる調査「企業活動支援メカニズムとしての公共図書館ビジネス支援サービスの効果」(81)および「利用者ニーズに適合した公共図書館サービスモデルの構築」(82)が行われた。
後者においては、2つの図書館の図書館職員、連携機関スタッフ、利用者の計18人に対するインタビューが行われた。図書館職員に対するインタビューからは、ビジネス支援サービスのアプローチとして、伝統志向型、レファレンスサービス拡張型、専門サービス志向型と3つがあることが確認された。また、連携機関スタッフと利用者は、敷居の低さや、共有する情報源、問題解決のための能力を有する図書館に価値を等しく見出していることが指摘された。
さらに、田村(83)はサービス発展の経緯と現状の課題について、池谷(84)はサービスを組織化の点から捉え、報告を行った。
図書館の機能を生かし、多様な事業を専門機関と連携し展開するためには、それを実践する図書館スタッフの存在が不可欠である。余野は、ビジネス支援サービスを推進するためのスキルアップとして、所蔵資料の把握、レファレンス事例の収集、研修の実施に加え、簿記・販売士検定(日本商工会議所)など一般のビジネス資格の取得を勧めている(85)。同論文では従来の図書館サービスに加え、ビジネス支援サービスで加わった要素をスキルアップの視点から明らかにしており、ビジネス支援サービスの特徴を捉えることができる。
さらに、日米のレファレンスサービスの方法論を比較することにより、ビジネス支援サービスにおける図書館側スタッフに必要とされる能力を把握することが考えられる。
米国図書館協会(ALA)の一部門であるBRASS(Business Reference and Services Section)が2006年からウェブ上で実施している研修、Business Reference 101については、滑川が報告を行っている(86)。この研修は図書館職員のレファレンス技術の向上を目指し現在まで継続されており、外国会員にも開放されている。また、この研修の講師を務めているCelia Rossは、主題のカテゴリーとしてCompany information(会社情報)、Industry information(業界情報)、Investing/Financial Information(投資・財務情報)、Consumer information/Business statistics(消費者情報・ビジネス統計)からなる“The Core Four”を示している。すなわちビジネスレファレンスにおいては、最初に利用者の質問の構成要素を4つのカテゴリーに分解し、各カテゴリーに適する情報源を用いて調査・確認を行い、その結果を結合して利用者へ回答する必要があることを強調している。Rossの著書“Making Sense of Business Reference”ではこの4つのカテゴリーごとに、情報の探し方の説明と、紙媒体、電子媒体、オンライン等の情報源の紹介が行われている。Business Reference 101のカリキュラムもThe Core Fourの概念に基づいて構成されている。さらに、BRASS の委員会メンバーは、主題をさらに細分化し10のカテゴリーとして示している。
一方、日本でも同様の方法が図書館経営支援協議会により『事例で読むビジネス情報の探し方ガイド』で示されている(87)。ここでは、主題を8つのカテゴリー(企業・団体情報、市場・業界情報、統計・データ、経営・ビジネス一般、法令情報、技術・製品情報、起業・就職情報、人物情報)にわけて情報を獲得する方法が説明され、具体的事例を解説し、情報源(紙媒体、電子媒体、ウェブ)も紹介されている。協議会が実施する「ビジネスライブラリアン講習会」や、東京都立中央図書館によって2006年に実施された、Eメールによる「ビジネスレファレンス通信講座」(88)の中でも、このカテゴリーに沿った形で事例解説、情報源の紹介が行われた。
2009年度に協議会が実施したビジネス支援レファレンス・コンクール(89)では、実際に活動しているビジネスパーソンによって出題されたレファレンス質問に対し、全国の図書館から回答を募集する形で行われた。「バイオテクノロジー関連機器の販路拡大」「老舗とんかつ店がランチから撤退」など、漠然とした情報要求に対し、前述の方法論に沿って各主題のカテゴリーに分解し、意思決定に有用な情報源を選び、それを組み合わせて回答した例が多数みられた。
このように、ビジネスレファレンス分野では、日米の方法論や研修方法に類似性がみられる。こういった能力は、専門機関との連携で実施される多様なサービスの核となるものである。
日本の図書館では、従来、十進分類法等に基づき、資料を分類・提示する一方で、各分野の資料の活用を促すため、テーマ展示や講演会などのイベントとともに、ビジネス関係の専門資料も既存の分類のなかで一定程度収集してきた。つまり、ビジネス支援サービスの実施ということは、次のような意味を持つと考えられる。すなわち、図書館が企業情報、人物情報、業界動向等、別尺度のテーマを設定し、資料の収集や提示、イベントなどを提供することで、利用者に利便性を図ることである。課題解決支援の促進のためには、さまざまな切り口が必要であり、ビジネス支援サービスという異なる視点で展開されている支援内容は、その方法として有効性が高いと考えられる。
協議会が実施したアンケート調査の結果では、各図書館ともに、可能な範囲でサービスを実施しており、その導入のしやすさがうかがわれる。だが、本格的にサービスを展開するには、予算・人員の面で課題を抱えている。グローバル化の時代を迎え、業界情報や国外の情報を集めることの可否は重要となっている。
図書館のビジネス支援サービスは、日米だけでなく、英国(CA1523 [670]参照)(90)、シンガポール(CA1726 [671]参照)(91)、中国(上海)(92)での実施が確認されている。国境を越えた事例の収集ができれば、サービスの提供において効果があげられる。協議会が手がけているALAのイベントへの出展や、ALAの実施するウェブ型の研修への参加等を契機として国際協力体制を整える必要があると考えられる。
(1) “付属統計資料10表 業種別の開廃業率の推移(事業所ベース、年平均)”. 2017年版中小企業白書. 中小企業庁, 2017, 554p.
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/08Hakusyo_fuzokutoukei_web.pdf#page=32 [672], (参照 2019-01-04).
(2) 菅谷明子. 進化するニューヨーク公共図書館. 中央公論. 1999, 114(8), p. 270-281.
(3) ビジネス支援図書館推進協議会. “ビジネス支援図書館推進協議会”.
http://www.business-library.jp/ [673], (参照 2019-01-04).
ここに協議会の主な機能を述べる。まず、全国の図書館のビジネス支援担当者を集めた3日間のビジネスライブラリアン講習の実施がある。ビジネス情報源の紹介やビジネスレファレンス研修や先進図書館の事例発表、ビジネス支援事業計画作成などをテーマとしたグループ討議が主で、講習後にレポートが課され、合格すればビジネスライブラリアンとなれる仕組みが提供されている。協議会会員へのサービスとしては、メーリングリストの提供、各地の図書館への講師派遣、図書館と中小企業診断協会や日本政策金融公庫などの都道府県支部との橋渡しも行われている。また、定期的に開催される情報ナビゲーター交流会等のイベントを通し、各図書館関係者の交流や情報交換が促進されている。さらに、全国図書館大会など国内の事業参加だけではなく、米国図書館協会(ALA)年次大会への参加事業では、日本の図書館におけるビジネス支援サービスの事例発表を行っている( E1945 [674],E2045 [675]参照)。
(4) 齊藤誠一, 山崎博樹. “ビジネス支援図書館推進協議会の歩みと成果”. 日本生涯教育学会論集. 2014, (35), p. 161-170.
(5) 竹内利明. 創業支援とビジネス支援機能を持つ公共図書館の提案. 情報管理. 2001, 44(10), p. 708.
https://doi.org/10.1241/johokanri.44.708 [676], (参照 2019-01-17).
(6) 田中功. 情報活用を支援する拠点としての図書館. 情報管理. 2004, 47(9), p. 610-615.
https://doi.org/10.1241/johokanri.47.610 [677], (参照 2019-01-17).
(7) 森田歌子. 図書館と産学官連携を結びつける!創業を支援し,中小企業を知識型基盤社会へ導くのは図書館の役割:ビジネス支援図書館推進協議会 竹内利明会長の行動を探る. 情報管理. 2009, 52(4), p. 226-227.
https://doi.org/10.1241/johokanri.52.226 [678], (参照 2019-01-17).
(8) 石津孝義. 知識経済時代に向けての日本再生と図書館の役割.レコード・マネジメント. 2003, (46), p. 33-52.
(9) 山重壮一. 地域の価値を創造する公共図書館. 現代の図書館. 2015, 53(4), p. 188-194.
(10) 北克一. 「ビジネス支援図書館」像の論議(座標). 図書館界. 2002, 54(6), p. 259.
https://doi.org/10.20628/toshokankai.54.6_259 [679], (参照 2019-01-17).
(11) 中畑充弘. 図書館の「ビジネス支援」と地域活性化:経営人類学の視点から. 政治学研究論集. 2004, (21), p. 55-75.
http://hdl.handle.net/10291/8178 [680], (参照 2019-01-17).
(12) 高坂晶子. 中小企業向けビジネス支援サービスの強化について:アメリカ公共図書館の事例を参考に. Business & economic review. 2007, 17(4), p. 66-76.
(13) 常世田良, 手嶋孝典, 菅谷明子ほか. 特集, ビジネス支援図書館:討論 「ビジネス支援」で公共図書館を変える 図書館改造計画. 季刊・本とコンピュータ. 第二期, 2002, (6), p. 142-154.
(14) 伊藤昭治.小特集, 図書館のビジネス支援を問う:アメリカのビジネス・ライブラリーはどのようなものかご存知ですか. 談論風発. 2008, 3(3), p. 1-6.
(15) 田井郁久雄. 小特集, 図書館のビジネス支援を問う:図書館のビジネス支援サービスは成功しているか. 談論風発. 2008, 3(3), p. 7-14.
(16) 大森輝久. 第183回 日米の図書館差以前の話(INFOSTA Forum). 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 125.
https://doi.org/10.18919/jkg.56.3_125 [681], (参照 2019-01-17).
(17) 文部科学省. “地域の情報ハブとしての図書館(課題解決型の図書館を目指して)”.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/05091401.htm [682], (参照 2019-01-04).
(18) 文部科学省. “これからの図書館像.地域を支える情報拠点をめざして.(報告)”.
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286794/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06032701.htm [683], (参照 2019-01-04).
(19) 小田光宏. “第1部公立図書館におけるレファレンスサービスの課題:実態調査報告書に基づく分析と創造的展開に向けての視座”. 2004年度公立図書館におけるレファレンスサービスの実態に関する研究報告書. 全国公共図書館協議会, 2005, p. 3-56.
https://www.library.metro.tokyo.jp/pdf/15/pdf/r2chap1.pdf [684], (参照 2019-01-17).
(20) 奥村和廣, 瀬島健二郎, 土肥さかえ, 中山康子. 特集, サブジェクトライブラリアンは必要か:東京都立中央図書館の情報サービスとサブジェクトイブラリアンへの課題. 情報の科学と技術. 2005, 55(9), p. 381-386.
https://doi.org/10.18919/jkg.55.9_381 [685], (参照 2019-01-17).
(21) 田村俊作ほか. “利用者ニーズに適合した公共図書館サービスモデルの構築:平成20年度~23年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書”. 2012, p. 38-52.
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https://www.library.metro.tokyo.jp/pdf/zenkouto/pdf/2015all.pdf [686], (参照 2019-01-17).
(23) 菅谷. 前掲.
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Namekawa Takashi
Business Information Services in Public Libraries of Japan
This article reviews literature on business information services in public libraries in Japan. According to an inventory survey, it was clear that the number of libraries which carry out business information services has increased. A factor behind this spread was the support of the Japan Business Library Association and advanced libraries. The content of these services was collection of business information sources, the display of these sources and the making of tools such as pathfinders. Business counseling and seminars were run in cooperation with specialized agencies. In addition, the services were closely connected to the local documents of the library. Furthermore, a methodology for business references was arranged, and opportunities for training were provided. However, there were problems with budget and staff to further develop services. In addition, collecting information from a variety of industries and overseas business intelligence was also a problem.
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