スウェーデン王立図書館(NLS)が実施したBibsamコンソーシアムによるElsevier社との契約解除の影響に関する調査結果をまとめた“Consequences of Sweden Cancelling Elsevier”が、フィンランドの図書館コンソーシアム“FinELib”のTwitterアカウントによる2019年8月16日付の投稿で紹介されています。
スウェーデンでは、2018年5月に同国のBibsamコンソーシアムがElsevier社との契約を解除したことを受けて、2019年1月10日から2月1日まで、NLSが契約解除による影響の調査として利用者及び機関向けのアンケート調査等を行っています。この調査結果をまとめた“Consequences of Sweden Cancelling Elsevier”は2019年6月28日付でリポジトリZenodoに公開されました。
“Consequences of Sweden Cancelling Elsevier”では、スウェーデン国内44機関及びこれらの機関に所属する利用者の回答等に基づいて、契約解除により支出の抑えられた機関予算の使途や利用不可となった論文の入手手段、契約解除に対する利用者の賛否の見解などが示されています。
2019年7月12日、スウェーデン・Bibsamコンソーシアムを代表してライセンス契約の交渉を行っているスウェーデン王立図書館(NLS)は、Wiley社とオープンアクセス(OA)出版等に関する契約締結に向けて今後の交渉の指針となる共通原則を定めた覚書(Memorandum of Understanding)に署名したことを発表しました。
この契約は2019年7月から2021年12月を契約期間とし、スウェーデン国内の4つの研究助成機関(スウェーデン研究評議会(The Swedish Research Council)、Formas、Forte、Vinnova)とBibsamコンソーシアム所属機関のうち31機関が参加しています。研究助成機関がSpringer Nature社のOAジャーナル出版費用の50%を負担することにより、契約参加機関に所属する研究者は、Springer Nature社が発行する576のOAジャーナルで研究成果を発表することができます。対象となるOAジャーナルには、近年スウェーデンの研究者が論文を多く発表している“Nature Communications”や“Scientific Reports”も含まれています。
2019年6月18日、スウェーデン・Bibsamコンソーシアムを代表してライセンス契約の交渉を行っているスウェーデン王立図書館(NLS)は、Bibsamコンソーシアムが米国物理学協会の出版部門(AIP Publishing)と試験的な“Read and Publish”契約を締結したことを発表しました。AIP Publishingの“Read and Publish”契約に参加した研究図書館のコンソーシアムは今回のBibsamが初めての事例になります。
この“Read and Publish”契約に参加したコンソーシアム内の11大学及び当局所属の研究者は、2019年12月末までAPCを負担することなくAIP Publishingのハイブリッドジャーナルへ投稿してオープンアクセス(OA)化することができます。
2019年3月19日付けで、フィンランド・Hanken School of EconomicsのBo-Christer Björk氏による“Open access journal publishing in the Nordic countries”と題したLearned Publishing誌の記事が公開されています。記事では、北欧5か国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)におけるオープンアクセス(OA)誌の状況についての調査結果が紹介されています。
近年,主に海外の図書館において,館内にラボを設置する館が増えてきている。スウェーデン王立図書館(NLS)でも図書館ラボ設置のための検討が行われ,2018年にはNLSのラボ(以下「NLSラボ」)に求められる要件について委託調査を行った。その調査の報告書である“datalab.kb.se:A Report for the National Library of Sweden”(以下「報告書」)が,2018年10月,調査に携わったスウェーデンのウメオ大学教授Pelle Snickars氏の個人ウェブサイト上で公開された。章立ては,(1)欧米の国立図書館ラボの調査,(2)デジタル研究(Digital Scholarship),(3)NLSラボ設置のための推奨事項となっている。本稿では報告書の概要を紹介することで,図書館ラボに関する知見を深める材料としたい。