デジタル保存

E2345 - 英国の国家プログラム“Towards a National Collection”

本稿で紹介するTowards a National Collection(TaNC)は,英国の世界的に著名な博物館・美術館や文書館,図書館に対し,2020年2月から2025年1月にかけての5年間で1,890万ポンドもの大規模な投資を行う,英国芸術・人文科学研究会議(AHRC)が主導する国家プログラムである。TaNCは,研究者や一般の人々が英国の文化遺産にアクセスする上で障害となっている,オンライン上の異なるコレクション間の隔絶を無くすことを企図しており,統合されたバーチャルな「国家コレクション」の創設に向けた最初の一歩として位置づけられている。そして,これまでにない新しい研究課題の設定を可能としたり,各文化施設の訪問者数を増加させたり,英国の文化遺産へのオンライン上のアクセスを劇的に拡大・多様化させたりするほか,経済や社会、健康への好影響を英国に広くもたらすことが期待されている。さらには,イノベーションを促し,デジタル人文学における英国の世界的リーダーシップを維持し,この分野における世界標準を築くという。

Open Preservation Foundation(OPF)、2020年の事業を振り返るレポート“End of Year Highlights 2020”を発表

2020年12月16日、デジタル資料の長期保存を目指す非営利団体Open Preservation Foundation(OPF)が、2020年にOPFが行った事業を振り返るレポート“End of Year Highlights 2020”を発表しました。

実施した事業として、ウェブサイトのリニューアル、デジタル保存コミュニティを対象としたデジタル保存に関する現状調査の実施と結果公表、OPFの設立10周年を記念したオンライン会議“OPFCON”の開催、デジタル保存のツールをテストできる仮想研究環境“Virtual Research Environment”の開発、メンバーシップ・モデルの変更と新たなメンバー募集パンフレット(英語・日本語を含む6か国語版)の公開等を挙げています。

米国のスミソニアン・ライブラリーとスミソニアン・アーカイブスが統合

2020年12月8日、米国のスミソニアンライブラリー(Smithsonian Libraries)とスミソニアン・アーカイブス(Smithsonian Institution Archives)が統合し、スミソニアン図書館・文書館(Smithsonian Libraries and Archives)となったことが発表されています。

統合は、より広範なデジタル基盤の提供、デジタル保存や研究データ管理の拡大、創造的なプログラム・イベント・展示・インターシップ・フェローシップ・教育資源・資金調達の機会を提供することを目的としています。

スミソニアン協会のミュージアムや研究センター内に位置する21の分館(ワシントン,D.C.、メリーランド州、バージニア州、ニューヨーク市、パナマ共和国)で構成される研究図書館機構として、137人の職員が所属し、15人からなる諮問委員会により運営が支援されることになります。

両館の統合により、同館では、芸術学から動物学までの約300万冊の図書と、同協会の1846年の設立以来のアーカイブ資料を所蔵することとなりました。5万冊の貴重書や手稿が所蔵されているほか、12万点以上の電子書籍・ジャーナル・データベースも利用できます。

E2332 - 消滅するOAジャーナルと長期保存のための取り組み

学術雑誌の購読料の高騰,研究成果の迅速かつ自由な共有の実現,社会への説明責任といったことを背景としてオープンアクセス(OA)が推進されてきており,2000年以降掲載論文を無料でウェブ上に公開するOAジャーナルが広まりを見せている。しかし,OAジャーナルを巡っては論文処理費用(APC)の高騰,捕食ジャーナル(CA1960参照)の興隆といった様々な課題が指摘されている。2020年8月27日付でarXivにて公開された“Open is not forever: a study of vanished open access journals”と題されたプレプリント(以下「プレプリント」)では,OAジャーナルの保存という課題について調査が実施されている。著者はフィンランド・ハンケン経済大学のMikael Laakso氏ら3人である。本稿ではプレプリント(9月3日付公開のVersion 3)に基づき,この課題の調査結果と,OAジャーナルの長期的な保存とアクセスを実現するための取り組みについて報告する。

“Virtual Research Environment”のバージョン1.0が公開される:デジタル保存のツールをテストできる仮想研究環境

2020年12月7日、デジタル資料の長期保存を目指す非営利団体Open Preservation Foundation(OPF)は、“Virtual Research Environment”(VRE)のバージョン1.0を公開したことを発表しました。

VREは、OPFとオランダデジタル遺産ネットワーク(The Dutch Digital Heritage Network:DDHN)により開発された、デジタル保存のツールをテストできる仮想研究環境です。

オープンソースのデジタル保存ツールがプリインストールされており、新たにインストール等を行うことなく各ツールの使用・テストが可能となっています。バージョン1.0では6種類のツール(Apache Tika、Droid、JHOVE、VeraPDF、MediaInfo、ffmpeg/Handbrake)が含まれています。

国立公文書館が『アーカイブズ』第78号を公開:「デジタル保存連合によるデジタル保存スキルの普及にかかる取組について」等の記事を掲載

国立公文書館は、2020年11月30日付けで、『アーカイブズ』第78号を同館ウェブサイト上で公開しました。

広島市公文書館のデジタルアーカイブに向けた取組、開館30周年を迎えた鳥取県立公文書館による取組、あまがさきアーカイブズの始動、国際公文書館会議(ICA)のオンライン研修プログラム、令和2年度国立公文書館実習に関する記事等のほか、同館の公文書専門官・渡辺悦子氏による記事「デジタル保存連合によるデジタル保存スキルの普及にかかる取組について」も掲載されています。

『アーカイブズ』第78号(国立公文書館)
http://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no78

E2328 - 米国国立農学図書館によるデータレスキュープロジェクト

2020年8月,米国国立農学図書館(NAL)と米国のメリーランド大学情報学部との協働で実施したデータレスキュープロジェクトの報告書“Final Report and Recommendations of the Data Rescue Project at the National Agricultural Library”が同大学の機関リポジトリで公開された。同プロジェクトは,退職する研究者や閉鎖される研究室のデータや書類を迅速に評価する試験的プロセスの開発を目的としたものであり,データレスキュー実践のガイドである“Data Rescue Processing Guide: A Practical Guide to Processing Preservation-Ready Data From Research Data Collection”を作成している。報告書ではガイドの作成プロセスや実際のデータレスキューの評価,今後の展望について報告している。以下では,どのような視点でガイドを作成し,ガイドを用いてどのような処理を行ったのかに着目して報告内容を紹介する。

英・ケンブリッジ大学図書館、デジタル保存プログラムの開始を発表:現在及び将来における同館のデジタルコレクションへのアクセス保証のため

世界デジタル保存デーである2020年11月5日、英・ケンブリッジ大学図書館は、デジタル保存プログラムを近日中に開始することを発表しました。

ケンブリッジ大学による支援の下で同館が主導するプログラムであり、収集したデジタルコレクションのケアや、オープンソースのシステム・ツール、標準に基づくサービスを提供するものです。これにより、同館はオープンソース・コミュニティを支援しつつ、デジタルコレクションと利用者双方のニーズを満たすことができるとしています。

発表では、同館におけるこれまでのデジタル保存関連の取組、開始されるサービスでは資料作成・登録・利用者によるアクセス等の各段階で長期保存のための工夫を行うこと、サービスの詳細情報は開始後に共有すること等が述べられています。

Cambridge University Library
https://www.lib.cam.ac.uk/
※“Latest news”に2020年11月5日付けのニュースとして“Cambridge University Library launches Digital Preservation Programme”が掲載されています。

英・電子情報保存連合(DPC)、2020年の“Digital Preservation Awards”を発表

世界デジタル保存デーである2020年11月5日、英・電子情報保存連合(DPC)が2020年の“Digital Preservation Awards”を発表しました。

同賞は2004年に創設されたもので、2020年は7つの賞が設けられており、デジタル保存に関するすぐれた取組や、デジタル保存の進展に多大な功績のあった個人に与えられます。

各賞の概要と受賞者は次のとおりです。

・The International Council on Archives Award for Collaboration and Cooperation
組織・専門・セクター・地理的境界を越えたすぐれた連携事例に対して授与される賞であり、米・国家デジタル管理連盟(NDSA)によるデジタル保存支援ツール“Levels of Digital Preservation”の改訂プロジェクトが受賞しました。

英・電子情報保存連合(DPC)、主要リソースの複数言語での翻訳版を公開:組織のデジタル保存における成熟度の測定ツール“DPC Rapid Assessment Model”の日本語訳も

世界デジタル保存デーである2020年11月5日、英・電子情報保存連合(DPC)は、組織のデジタル保存における成熟度の測定ツール“DPC Rapid Assessment Model”について、日本語訳・フランス語訳をPDFで公開したことを発表しました。なお、英語版は2019年9月に公開されました。

その他、以下の資料の翻訳版公開も発表されました。

・意思決定者等にデジタル保存の重要性を説明する際に利用可能なガイド “Executive Guide on Digital Preservation”のフランス語版・スペイン語版(英語版は2019年5月に公開)
・2020/2021年度におけるDPCの新しい活動計画を示した文書“DPC Prospectus 2020-2021”の、アラビア語版・フランス語版・ドイツ語版・スペイン語版(英語版は2020年8月に公開)

DPCは、“DPC Prospectus 2020-2021”において、2020年中には同文書及びDPCの主要なリソースのうちいくつかを複数言語で利用可能とするとしていました。今回の発表では、以下の翻訳についても近日中の公開を予定していると述べています。

ページ